【仮説5】その1

 
「STC理論」
Illustration:どこここ



 翌日、ビルの下から見上げると朝から実験室の明かりが灯っていた。今朝は早かったので待ち合わせずに来たが、長門はもう来てるのか。四階の事務所に入ると長門の鞄が机の上にあった。学校は休みらしくハカセくんもいるようだ。
 
 長門の要望で会議室を時間移動技術の研究用スペースにあてている。だいぶ手狭なのでもう一部屋くらい借りないといけないかもしれない。
 俺は会議室兼実験室のドアを開けて呼びかけた。
「おう、長門来てたのか」
「……おはよう」
「あ、先輩おはようございます」
長門とハカセくんの声だけはするが、実験用長机に向かった二人の背中がじっと動かない。なにをやっているのだろうと覗いてみると、机の上に平たい水槽が置いてあった。
「なにを見てるんだ?」
「亀です」
「亀?」
「覚えてらっしゃいますか、ウサギのお姉さんと祝川の川べりで」
そういえばそんなこともあったな、なんてのは過小表現で、朝比奈さんが誘拐拉致された日のことは忘れもしない。
 
「川に亀を投げ込んでハカセくんにあげたんだったな」
「そうです。あのときの亀です」
水槽の中には、六年経って大きくなったゼニガメがのっそりと首をもたげて俺を見ていた。
「大きくなった。妙に懐かしいな」
ホームセンターのあんちゃんも喜んでるだろう、かどうかは知らんが。
「……」
これは長門の無言ではなくて、俺の無言だ。この亀がここにいることについて、長門がなにか説明してくれるものとばかり期待して待っているのだが、いっこうにそれらしき解説がない。
「もしかしてずっとこれを見てたのか」
「……そう」
「退屈……、しないか?」
「……しない」
そうか。それならいいんだが。俺もパイプ椅子を持ってきて隣に座った。のそのそと動く亀を三人でじっと見つめていた。
 
「おはようございまーす、みんなここにいたのね」
朝比奈さんが両手を擦りながらやってきた。
「そろそろ朝は冷えますね」
「おはようございます朝比奈さん」
「すぐお茶入れますね。あら、それ亀ちゃん?」
「ええ、あのときいただいた亀です」ハカセくんが言った。
「大きくなったのね、懐かしいわ。うちにもこれくらいの亀ちゃんがいてね」
「知らなかった。朝比奈さんって亀飼ってるんですか」
未来で朝比奈さんがゼニガメをペットとして飼ってるなんて、ちょっと想像していなかった。飼うとしたらバイオ養殖されたイリオモテヤマネコとか三葉虫とか。
「あれ?でもあの亀くれたのってキョンくんと長門さんじゃ……」
「そうでしたっけ?」
俺はカンダタがぶら下がっていたのよりはずいぶんと細い記憶の糸をたぐりよせたが、いっこうに覚えがない。
「あっ、ごめんなさい、このときはまだ……」
朝比奈さんがぺろりと舌を出して自分の頭をコツンと叩いた。前にも似たようなシーンを見たな。俺はこっそりと耳打ちした。
「もしかして未来の情報ですか」
「えっと、禁則事項です」
朝比奈さんはそう言っていつものウインクをした。これは楽しいことが起こりそうな予感がする。オラなんだかワクワクしてきたぞ。
 
 水槽の中の亀がのっそりと動いて、じっと朝比奈さんを見ている。口をぱっくり開けてエサを要求しているようだ。
「朝比奈さんのこと覚えてるみたいですよ」
「え、まさか」朝比奈さんは笑った。
「鶴屋さんちに泊まったときのこと、覚えてるんじゃないですか。犬も三日飼えば恩を忘れないといいますし」
「亀ちゃん、お久しぶり。元気にしてた?」
朝比奈さんは亀用の固形エサをひとつ箱から出して亀の口元に持っていった。あの日と同じように、パクリとくわえて丸飲みした。朝比奈さんはお茶を入れるのも忘れて亀に見入っていた。それを見て三人も亀に目を戻した。
 
 亀がゆったりと口をあけてエサを食う仕草、鼻先を水面に上げて呼吸しているらしい仕草、ときおり目を閉じてクビを甲羅の中に引っ込める仕草。じっと、ただじっと見ていた。これはなにかの科学的調査か理論の考察に違いない。
 三十分くらいそうして俺が貧乏ゆすりをしようかと迷っていると、ハカセくんがやっと口を開いた。
「長門さん、分かりましたよ」
「……そう。言語化して」
「亀は自分の中に時計を持っているんですね」
「……そう、正しい」
「まわりとは異なるスピードの主観時間を自分の内部に持っていて、その速度は僕たちから見るとゆっくりに見える、ということでしょうか」
「……正解。亀は甲羅の中に時間平面を持っている」
「じゃあ自分で時間平面を行き来できるんですか」
「……そう。亀がうさぎに勝ったのは、うさぎが怠慢だったからではない。時間平面を飛び越えたから」
なんだか子供にも分かるような分からないような話だが、亀は時間に対して特殊な生き物らしい。長生きの秘訣はそこにあるのか。
「……この亀と最初に出会ったときのことを、思い出して」
「ええと、祝川の川べりでした。季節は二月ごろ」
「……映像を思い浮かべて」
ハカセくんは遠くを見るような眼差しをして、少しの間目を閉じた。それから俺のほうを向いて、
「先輩が小亀を投げたとき、水面に派手な波紋が広がりましたね」
「そうだったな。俺もなんであんな行動をしたか未だに分からないんだが」
その答えは朝比奈さんしか知らない。朝比奈さんをちらと見たが、にっこり笑うだけでなにも言わなかった。
「……そのときの波紋を関数で表してみて」
「え、あれをですか」
「……あなたなら、できるはず」
「ええと、ちょっとやってみます」
ハカセくんはなにやらごにょごにょと呟きながらホワイトボードに水性マジックを走らせていた。水面の動きを数字で表すなんてできるんだろうか。
 
 ハカセくんが考えている間、俺は朝比奈さんと給湯室に行ってお茶を点てていた。あいつら、今日中に結論出るのかな。朝比奈さんが差し入れてくれた和菓子とお茶をお盆に載せて実験室に戻ると、ハカセくんはまだホワイトボードを睨んでいた。
「ハカセくん、ちょっと脳を休めてお茶でも飲め」
「ありがとうございます」
礼を言ったものの、心ここにあらずという感じで考え込んでいた。長門はふと、湯気の立つ湯のみに目を落とした。ゆれるお茶の波紋を見て、ハカセくんにそれを示した。ハカセくんはなにかを思いついたかのように水性マジックのキャップを取った。さらさらと記号を書いている。
「二次元グラフでいうと、横に進むY軸の、ある点を中心にして左右に広がる切り立った山、その裾野に広がる小さな波ですね」
「……そう。この数式はどこかで見たはず」
「これ、もしかしてシュレディンガーの方程式ですか」
「……正解」
「なるほど!」
ハカセくんの顔が輝いた。どうやら答えにたどり着いたみたいだ。この、詰め込まないで生徒から答えを引き出す教え方は実に効果的だな。長門が教職課程を取っていたらいい先生になれたろうに。
「ということは一枚の時間平面の存在って波動関数で表されるわけですね。固定されてるわけじゃなくて、いつでも確率としてあるわけで、」
それからのハカセくんはホワイトボードにうねうねした文字と数字を書きつづけ、ブツブツと独り言を喋っていた。かつてのアインシュタインもこうだったんだろうか。その様子を長門と朝比奈さんが微笑んで見ている。
 
 ハカセくんがホワイトボードにアルファベットのUを逆さまにしたような図を描いて俺に言った。
「確率分布の表現形はこうですよ、物理の授業で見たことあるでしょう?」
「すまんが俺にはとんと分からん」
俺は苦笑して答えた。
「長門さん、言わんとするところがなんとなく分かりました」
「すごいわハカセくん」
朝比奈さんがぱちぱちと拍手した。
「時間も空間も考え方は同じなんですね。これが時間平面の存在確率ということは分かりました」
「……ここまでは正しい。次は、これを読んで」
長門は分厚い本を取り出した。それ、医学の専門書?表紙に神経生理学とかと書いてある。
「次は脳医学ですか……。ほとんど知らない分野ですが」
ハカセくんは渋面を作って目次をめくりはじめた。物理学者だけじゃなくて医者にもなれそうな勢いだな。
 
 数日して、ハカセくんの資料がまとまったということなので、会議室でミーティングを開いた。
「みんな、時間移動技術会議、第一回目よ。いよいよタイムマシンを作るわよ」
「涼宮姉さん、まだ気が早すぎます。まずは時間移動理論を確率しないと」
「えへへ、分かってるわよ」
「ええと、まず、時間と空間の関係について説明します」
パネラーはハカセくん、議事録は俺だ。ハカセくんはホワイトボードに“Space Time Composition”と、サラサラと筆記体で書いた。
「時間とは一直線上に繋がっているわけではなく、一枚ずつの絵が繋がっているようなものだというのがこの理論です。アニメのフィルムを思い浮かべてください。三次元の立体の奥行きを省略したのが、この重なっている絵です」
ホワイトボードには、アニメのセルが横に重ねられたような図が描かれていた。前に朝比奈さんにも聞かされたことがある。
「この一枚一枚のコマは、実はつながりはありません。そこで起る現象はそれぞれ切り離されています。それぞれのコマの間隔は時間の最小単位である一プランク秒になります」
プランク秒がどれくらいの時間なのか分からないが、きっとうんとうんと短い時間なのだろう。朝比奈さんを見るとうんうんとうなずいたり、たまに首をかしげたりしていた。この理論は名前からして朝比奈さんの時間移動技術と同じはずなんだが、これがこのままTPDDに発展するんだろうか。
 
 俺が眉間に指を当ててもんでいると、ハカセくんが心配した。
「分かりづらいですか」
「いや、気にするな。俺は時間論を考える能力がミジンコ並みなんだ」
「じゃあミジンコにも分かる別の切り口でご説明します」
な、なにげにひどい表現じゃないかそれ。
「ここにトランプがあるとします。Aからキングまで並んだ十三枚のカードを思い浮かべてください。一枚ずつの絵柄は違っていますが、数字だけは一ずつプラスされて繋がっています。この繋がりを切り離してみるとどうなるでしょうか」
どうなるんだろう?
「5のカードから8のカードまでを取り除いて、4と9のカードを隣同士にします。トランプの中にいる人がAから4までの時間を進んで、突然9の時間にジャンプしました。自分が現在いるカードの次のカードが、予定を飛び越えて別のカードになっている状態、これが時間移動です」
なるほど。俺たちが住んでいる時間をカードの数字に置き換えたのか。分かったような分からないような、でもなんとなく分かった。
「では4のカードの次にAを持ってきたらどうなるでしょうか」
「過去に飛ぶのか」
「そうです。これが過去への時間移動です。ジャンプした先のAからは、2、3と続く時間の流れが存在します。要は4の次にAが来ているだけで、カードの並びを動かすことで過去に行っているように見えるんです。これが時間平面理論です」
「すごいわハカセくん、すごくシンプルで分かりやすい理論ね」
ハルヒがぱちぱちと拍手していた。朝比奈さんもうんうんとうなずいていた。どうやらこの理論は朝比奈さんのテストに合格したようだ。
 
「ありがとうございます。この時間平面カードの並びを壊す理論を、タイムブレーン・デストロイド理論と呼ぼうと思います」
「え……」
朝比奈さんと俺が耳を疑った。
「ブレーンではなくてプレインのはずじゃ?」
「いえ、ブレーンはmembrane、膜の意味です。平面というよりは次元を巻き上げた膜と考えるほうがいいかと思ったので」
ハカセくんは二人の頭のまわりに漂っているクエスチョンマークに気がつかないまま話を進めた。
「では、どのように時間平面カードの並びを変えるかですが、」
ほうほう、実際にやれるのか。
「今のところ説得力のある理屈はありません」
ハルヒはがっくりと肩を落とした。俺も肩透かしを食らって笑った。
「あー、理論まではいいところまで行っていたのに。ぜんぜん手はないの?」
「ええと、まだ実験段階なんですが、」
「それよそれ!実験段階のやつを見せて」
ハルヒがまた目をキラキラさせはじめた。ハカセくんは困りましたねという感じで長門を見た。ハカセくんもだんだんハルヒという生き物が分かってきたようだな。
「ええと、まだ成功率がすごく低くてもしかしてなにも起らないかもしれませんが」
「それでもいいのよ、どんな新しい発明にも失敗はつきものだわ」
長門がうなずいたので、ハカセくんはちょっと待っててくださいといってゴソゴソと機材を用意しはじめた。いったいなにをやらかすつもりなんだろう。ハルヒのエネルギーが俺にも二ミリグラムほど伝染したのか、自分でもワクワクを抑えきれない。
「お待たせしました」
ハカセくんが抱えていたのは亀の水槽だった。え、これで実験するの?
 
「もしかして動物実験か?」
「ええ。でも心配しないでください、解剖したり脳に電極を繋いだりはしません」
ま、まあそうだろうとは思ったけど。ハカセくんは水槽をテーブルの上に載せた。
「では実験を開始します」
「ハカセくん待って。キョン、念のためビデオカメラを回してちょうだい。成功したら世紀の映像になるかもしれないわ」
はいはい。そんな簡単にスクープ映像が撮れたらワイドショーは廃業しちまうぜ。カメラが回り始めてハルヒが拍手しようとしたらハカセくんに注意された。
「実験中はお静かにお願いします。実験体の気が散りますので」
「えへ、ごめん」
ハルヒはペコちゃんのようにぺろりと舌を出してみせた。
「まずこの亀をテーブルの上に置きます」
亀は持ち上げられて一度首を引っ込めたが、テーブルの上に置かれてゆっくりと首と足を伸ばした。ハカセくんはストップウォッチで時間を計っていた。
「五分経過しました。ここでエサをひとつ置きます」
亀の鼻先から三十センチくらい離れたところにエサをひとつ置くと、のそのそと前後の足を動かして重い甲羅をえっちらおっちらと運んだ。エサのところまで鼻先が届くと、さらに首を伸ばしてエサに食いついた。
「再び同じことを繰り返します」
ハカセくんはそう言って亀を元の位置に戻し、五分後にエサを置くと、亀はまた這ってエサを丸飲みした。
 
「また同じことを繰り返します」
「ねえ、いつまでこれやるの?」
ハルヒがそう言ったのは、最初のエサから数えて十回目だった。腹が膨れたのか、亀もそろそろ動きも鈍くなってきている。
「すいません。うまくいくのが二十~三十回くらいやってやっと一回ってところなんです。そのうちに亀の食欲もなくなってきて失敗に終わることも」
「うーん……」
ハルヒは腕組みをして亀を睨んだ。いいかげん飽きてきたようだな。
「朝比奈さんにやってもらったらどうだろう?」
「え、わたしが?」
「この亀、朝比奈さんのこと好きみたいですし」
「ま、またそんな」
好きという言葉に過剰に反応する朝比奈さんはかわいかったが、相手が爬虫類じゃどうしようもないよな。もう三億年くらい待てば直立歩行するようになるかもしれんが。
「ウサギのお姉さん、お願いします」
言われて朝比奈さんはしぶしぶ、さっきと同じことを繰り返した。亀の位置を戻し、腕時計で五分計ってエサを与えればいいだけだ。
 
 時間を計り始めて二分くらい経ったときだろうか、異変が起った。俺はあくびをかみ殺すのに必死で、ちょうど涙目になっていて起ったことをよく見ていなかった。亀が突然消えたのだ。
「おい、消えたぞ」
「あらっ」
カメラは回っている。十二の瞳全部がその様子を見ている。俺とハルヒが口をあんぐりあけて、亀がいた空間を見ていると、二分ほどしてハカセくんが口を開いた。
「そろそろ五分なのでエサを置いてもらえますか」
「あ、はいはい」
朝比奈さんも呆然としていたらしく、慌てて持っていたエサを置いた。次の瞬間、亀が現れた。
 
 これはいったい、なにごとが起ったのか。
「今の実験についてご説明します」
目の前で起った出来事がショックで、脳内がアナフィラキシーを起こしたように呆然としていた。ハカセくんのその説明とやらは俺の右の耳から入って左の耳に抜けていったかもしれない。
「まず、亀に、テーブルに置かれて五分後にエサが与えられるという条件を教え込みます。延々繰り返したのはパブロフの条件反射のようなものを亀の意識に刷り込むためです」
ハカセくんはボードに、饅頭に足が生えたような亀の絵を描いた。
「五分という時間が亀の意識に達した時点で、エサが与えられるのを待てなくなり、数分先の時間平面に移動しました」
なんという大胆な実証実験だ。物理学と生物学を根底から覆すぞ。朝比奈さんが拍手をしたので俺も拍手した。どうやったらこんなことができるのかと長門を見たが、なにも反応はなかった。
「ハカセくん、あんたすごいわ。ノーベル賞ものよ」
やっと口を開いたハルヒが亀をなでていた。亀はイヤイヤをして甲羅の中に引っ込んだ。
「ありがとうございます。でも、亀がどうやって時間平面を超えているのか、どれくらいの長さの時間を超えられるのか、まだ不明な点が多くて」
「目の前でタイムトラベルを見たんだから、これはもう世紀の発見よ。亀の背中にでも乗って行けそうな気がしてきたわ」
お前は浦島太郎か。
「ハルヒ、まだマスコミにネタを売ったりするなよ」
「そんなケチなことしないわよ。みんな、タイムマシンが完成するまでは社外秘だからね」
 
 それから三十分くらい実験を繰り返したのだが、亀が時間を超えたのを見たのは一度きりだった。ハルヒが亀をなだめたりすかしたりして再現させようとしていたが、首を引っ込めたまま動こうとしない。さすがにエサを与えすぎて食欲がなくなったらしい。
「うーん、みんなおつかれ。今日はここまでにしましょう」
ういーっす、と各々が呟き帰り支度をしていた。
「あ、朝比奈さん」
俺は帰りに朝比奈さんを誘うことにした。ようやく実験に道が開けたので、今後の展開で聞いておきたいことがあった。
「帰りにちょっと付き合いませんか。飯おごりますよ」
「え、ほんとに?嬉しいわ」
「キョン、みくるちゃんを悪の道に誘っちゃだめよ」
人聞き悪い、お前じゃあるまいし拉致したりコスプレさせたりしねーよ。
 
 俺と長門と朝比奈さんは近所のファミレスに入った。さっきの実験はどうも気になる。本当に成功したのか。長門に聞こうとしたときやたら目をそらしていたのが気になる。
「長門、もしかして実験でなにか細工したか?」
「……した」
「あら、そうだったの!?」
「なにをやったんだ?まさか長門自身でタイムマシンを作っちまったんじゃ」
「……違う。わたしは亀を隠して、五分後に戻しただけ」
「なんてこった。それじゃあの亀はタイムトラベルしたわけじゃなかったんだ」
「……人の記憶の中で時間的連続性が途絶えた。時間移動とは、そういうもの」
そうなのか。でもそれがどう時間移動技術に繋がるんだろうか。
 
「じゃあ俺が目をつぶったときお前が消えたとして、再び目を開けたときにそこにいたらそれも時間移動?」
別に茶化してるつもりはなかったんだが、長門は難しい顔をしていた。どうも俺の例えは飛躍しすぎているらしい。朝比奈さんがそれを聞いて考え込んでいた。
「ある意味それは正しいと言えます。STC理論は論文として表現できるようなものではなくて、どちらかというと概念に近い存在なの。つまり、」
言葉を区切り朝比奈さんは自分のこめかみを指差した。
「意識の中に直結しているの」
「亀の実験とどう繋がるんです?」
「亀には亀の、人には人の時間を感じる部分があって、その能力を拡張して時間平面を超えるの」
「そりゃすごい。念じればなんとかなるもんなんですか」
「いいえ、それだけではないの。亀には時間平面を操作する能力があるけど、わたしたちにはないわ。わたしたちの時間移動は、生物学的な時間移動に電子工学的な時間平面技術を組み合わせているの」
ええと混乱してきた。生物学的ってのは動物が元から持っている時間感覚だろう。それに電子工学をプラスするってことは、機械かコンピュータなんかに助けてもらうってことか。
「じゃあこのままいくと、ハカセくんの理論とは別にもうひとつ必要になるわけですか」
「そう。人の時間移動能力は動物と違ってとても弱いから、別の方法で時間を分割してやらないといけないのね。ハカセくんが言っていた、時間をトランプのカードのように分割する技術が必要なの」
なるほど、バイオテクノロジーにエレクトロニクスが組み合わさってできたのがTPDDなのか。エレクトロニクスのほうはまだこれからって感じだな。
 
「人が時間を感じる部分ってどうやって使うんですか」
「ええと、具体的に言うと『禁則事項』で、生まれてから時間を感じる部分が生成されるまでは『禁則事項』の過程をたどって、だいたい十五歳くらいまでに『禁則事項』が『禁則事項』するの」
分かりました、もういいですから。という顔をすると朝比奈さんは首をかしげた。
「分かりづらかったかしら」
「いえ、だいたいが禁則事項みたいです」
「あらやだ」
調子に乗ってしゃべっていたつもりの朝比奈さんは自分に禁則がかかっていることを知らなかったらしく、それに気がついて赤くなった。
 
「ごめんなさい、ぜんぜん気がつかなかったわ。ちゃんとしゃべってるつもりだったのに」
たぶんその禁則事項とやらも俺たちで開発しないといけないテクノロジーなんですね。
「やっぱり説明のしようがないのかもしれないわ」
「……わたしが説明する」
「え、いいのか」
「既定事項を壊してしまわないかしら」朝比奈さんが不安そうな顔をした。
「……この三人の記憶に留まるだけなら問題ない。理論の確立に直接関わっているのはわたしだけ」
「聞かせてくれ」
長門は一息吸って、時間移動理論とやらの言語化をはじめた。
「……基本的には亀と同じ。でも人の脳は亀と違って、時間遡行しかできない。人間のニューラルネットワークを走るパルスと、その認識には時間的なズレがある。平均して0.5秒。それだけあれば時間平面を超えるには十分」
えーと、ちょっとまた頭痛がしてきた。もっと噛み砕いて教えてくれないか。
「……まず、脳内の神経細胞に電気的な信号が発生したとする。意識がその信号を認識するには0.5秒かかる。でも意識はその0.5秒を遡って信号を認識することができる。これが、意識の時間遡行」
「つまりだ、やかんが熱いと感じて手を引っ込めた場合、神経が熱さを感じて脳が認識するまでに0.5秒かかるが、意識はその0.5秒間を遡って認識するということか」
「……それは脊髄反射。大脳の機能とは別」
「えーとじゃあ、目に映った映像が脳に伝わって、それがなんであるか認識するまでに0.5秒かかるが、意識はその0.5秒間を遡って見ているということか」
「……そう、近い」
俺の例えがやや的外れだったようで、長門は首をかしげていた。そんな俺のために朝比奈さんがまとめてくれた。
「たぶん神経から伝わる感覚情報ではなくて、純粋に脳の中にある情報の流れに時間逆行的なズレがある、ということでしょうね」
「……そう。人間の脳は、ときとして光速を超える」
なるほど。脳みそに羽が生えて空を飛んでるシーンを想像するほかなかったが、分かったような分からないような。ともかく俺の脳ってすごいことやってんだな。
 
「その0.5秒の情報のタイムトラベルは、頭の中でいつもやってるってことなのね」
「……そう。そこに時間平面分割技術を融合させると、時間移動が可能になる」
「時間遡行ってことは、過去にしかいけないってことにならないか」
「……時間平面カードの並びを変えてやればいい」
「そうね。未来のカードを自分がいるカードの一枚後ろに置いてやれば未来にも行けるわ。つまり、未来に行ってるように見えて、実際は0.5秒の過去に行っているということ」
俺は右手のグーで左の手のひらをポンと叩いた。やっと分かってきた。これはすごい理論かもしれないな。説明している朝比奈さんの顔も輝いた。
「やっと理解できたわ。自分がどうやって時間移動してるのか、ずっと疑問だったの」
それってクマバチが航空力学的には飛べないはずなのに、自分が飛べないことを知らないから飛べているという学説に似てなくもないな。
「ずっと言語化できないと思ってたんだけど、さすがは長門さんね」
「……これはただの基礎理論。意識と体が時間平面を超える理論の言語化は、無理」
 
 物理が苦手な俺のためにおさらいをしよう。
 脳は元々、ある情報をたどって0.5秒前の世界を見る能力を持っている。本人が気付かなくても日常的にそれを発揮している。そこで時間平面を動かす技術を使って、並んでいるカードの順番を変えてやれば、あら不思議、過去の世界を見ているはずが未来のカードを見ていたよ、ということだ。カードの並びを変えれば、十年過去でも十年未来でも見ることができる。ということだよな。ちょっと不安だが。
「キョンくんにしては分かりやすい説明だわ」
朝比奈さん、あなたも俺のセリフのまねをするんですか。
 
 おぼろげながら、どうやって時間移動を実現するか見えてきたようだ。これはひとえに長門の指導による賜物だが、それを検証している朝比奈さんの協力もあってのことだ。もしかしたらこの会社はほんとうに世紀の大発明をやるのかもしれない。そんな気がしてきた。
 
 翌営業日の夕方、ハルヒが実験室の床をうろうろと這っていた。もしかしてお前も時間移動したくて亀になろうってのか。
「バカね、ちがうわよ。亀ちゃんがいなくなったから探してるのよ」
水槽を見たがいなかった。あれがいないと実験できなくなるな。一緒に探している長門に聞いてみたが、本当にいなくなったらしい。
「こないだエサやりすぎて腹壊して逃げてしまったんじゃないのか」
「今朝まではいたのよ。どうでもいい冗談言ってないで、あんたも探しなさい」
いるはずがない机の引出し、ロッカーの裏、天井裏まで一時間くらい探したが、どこにもいない。あの足じゃ、そんな遠くまで行けるとは思えないんだが。
「しょうがないわね。キョン、ゼニガメを買ってきなさい」
「今日はハカセくん来ないから、明日でもいいだろう」
「いいから行ってきなさいよ。交通費と亀代は経費で出してあげるから」
その経費は俺たちが汗水たらして働いて得た金なんだが。やれやれ、俺は相変わらずハルヒのパシリか。散歩のつもりで行ってくるとするか。
「じゃ行ってくるわ」
俺がネクタイを緩めて背広を羽織ると、長門が自分も行くと言い出した。そんなに遠くじゃないし別に気を使わなくていいぞと言ったのだが、無言でロッカーからダッフルコートを出してきた。
「今日は晴れてるし、ダッフルコートは暑くないか?」
「……」
まだ十月だし、そんな厚着をするほど寒いってこともないと思うんだが、もしかして最近の長門は冷え性なのか。
 
 前に買ったホームセンターは、どっちかというと直線距離で北口駅と光陽園駅の真中くらいにあって、ここからだと電車に乗るのは中途半端な距離だ。まあ歩くしかないだろう。駅前にも小さなペットショップがあるにはあるんだが、あのゼニガメが時間移動技術に関わっているとしたら、もしかしたら遺伝子の系統とか育った環境が関係あるのかもしれない。そんな遺伝が本当にあるのかどうかは知らないが。
 
 俺は長門と連れ立って、てくてくと歩いた。ホームセンターは俺たちが映画の撮影をした池のすぐそばにある。北口から歩いて二十分くらいか。古泉に車を借りればよかったな。
 
 ホームセンターのペットコーナーは熱帯魚の水槽が若干増えたくらいで、六年前とさして変わっていなかった。ケージの犬猫は少なかったが、夏休みに売れ残ったらしいカブトムシのケースとエサの飼育セットがまだ小積んであった。夏場は家族連れで賑わったことだろう。
「さて、ゼニガメはどこかな」
亀は熱帯魚の水槽が並んでいる隅に追いやられていた。数年でこの待遇の変わりようときたら、時代の流れを感じるね。ミドリガメのほうが多い気がする。勢力バランスも変ったようだ。
「すいません、ゼニガメください」
レジのほうに呼びかけると、アナウンスが流れてペット担当の人が現れた。やや、六年前と同じ人だぞ。まだいたのか。あのときは大学生らしき青年だったが、そのまま十歳くらいプラスしたような准おっさんが出てきた。ケースやらエサやらをサービスしてくれてやたら親切だったのを覚えている。
「いつぞやはどうも」
と言ってはみたが、覚えているはずもなかろう。
「お客さん、知り合いでしたっけ」
「六年くらい前にゼニガメを買いに来たんですが、覚えてらっしゃらないかもしれません」
おっさんはしばらくうーんと唸っていたが、結局思い出せないらしい。そりゃそうだ。
「それで、そのときのゼニガメってまだ生きてるの?」
「ええ、元気に生きてますよ。ふたまわりくらい大きくなりました」
今朝行方不明になりましたとはとてもいえなかったが。
「そりゃあなによりだね。カメってやつは長生きするからね。亀は万年って言うし、はっはは」
この人はまだ腹は出ていないが、腹をゆすって笑った。
 
「大きなゼニガメっていますか」
「え、大きいのがいいの?」
「今飼っているやつが淋しそうなんで友達を作ってやりたくて」
亀に友達って俺はガキかと思ったが、ほかに説明を思いつかなかった。
「うーん。大きなゼニガメは置いてないね。これを育てて大きくするんじゃだめなの?」
「できれば大きいやつが……」
そこまででかいやつにこだわるなら川にでも飛び込んで捕まえろ、とでも言われそうな気がする。
「……これ、欲しい」
ずっと黙っていた長門がゼニガメを指差した。
「それでいいのか?」
「……これでいい」
もしかして長門バイオテクノロジーで促成栽培させる気じゃあるまいな。まあ小さくても亀は亀、なんとかなるだろう。
「じゃあこれ一匹ください。小さいケースとエサも」
「まいどあり」
六年前と同じようにケースに砂利を入れてもらい、今回はエサの代金もちゃんと払った。おっさんはニコニコ笑顔で、亀によろしく、と言った。ええ伝えます、残念ながらどこかで餓死してるかもしれませんが。
 
「どっか寄って帰るか?」
だいぶ時間が余ったので、このまま帰っちまうのもなんだなと思い長門に聞いた。
「……行きたいところがある」
「いいよ。時間あるし」
長門は少しだけうなずいて先を歩いた。図書館か本屋だろうと思ったのだが、そこから二十分くらいかけて祝川駅に向かった。電車で行くのか。
 
 日も暮れかかり吹きぬける風がそろそろ冷たくなってきた駅のホームで、膝の上に亀のケースを載せてじっと電車を待った。甘いものを食って帰りたい気分だ。
「善哉でも食って帰らないか。北口駅前に新しく甘味屋ができたらしいぜ。あんみつでもいい」
「……そう」
 俺はあんまり甘いのを欲しがるたちではないんだが、疲れてるのかななどと考えつつベンチに持たれていると、どこからか地響きがしてきた。ダンプでも通りがかったのかと思ったがそうではない。聞こえてくるのははるか路線の下りの方角だった。
「な、なんだあの音」
空自の戦闘機でもあんな音はしないぞ。戦車でもないし、あれはどっちかというともっとのどかな、古き良き日本の風景を思い出させるような……ってなに悠長なこと言ってんだ俺は。遠くで汽笛が鳴った。え、汽笛?
 俺がケースを抱えたまま音の主を探してキョロキョロしていると、長門がベンチからスクと立ち上がった。
「な、長門、あれはいったい何だ?」
長門はなにも答えず、ホームの床に書かれた乗り口の矢印の前でピタリと止まった。
 
 ホームから西を見ると汽笛の主は、モクモクと黒い煙を吐き、白い蒸気を漏らしながら走ってくる蒸気機関車だった。な、なに考えてんですか、蒸気機関車つったら山口とか北陸とか磐梯会津とか、それもシーズン中に走るだけでしょうが。
「長門、なにやってんだ、蒸気で蒸し焼きになっちまうぞ」
「……」
長門は俺に向かって、猫のように手招きをするだけだった。
 轟音を響かせながらホームに入ってきた機関車は、砂をかませてレールをきしませながらどっこいしょという感じで止まった。機関車もだが客車もえらく古い、長門は木製のドアを手で押して開けている。それ、手動かよ。
「……乗って」
乗ってって、こいつどこに行くんですか。もしかして行き先に天国行き片道とか書いてませんか。長門が何度も手招きするので足が勝手にギクギクと動いて客車に入った。客室に入ると、なんだか、ずっと前にかいだ記憶があるような、油の匂いがする。床も木製、シートは青い布張りに木製の枠。
 
 長門は車両の真中あたりのシートにすとっと座った。俺も亀を抱えたまま、向かい側に座った。長門に問い掛ける視線を送ってみるがなにも答えず、窓の外を見ている。
 
 俺、いったいどこに連れて行かれるんだろう。落ち着け俺、よく考えろ、この状況は前にも、いや一度も似たような経験はない。ここは閉鎖空間ではないし、平行世界でもない。まわりを見回してみたが、客は俺たち以外誰も乗っていない。これは本当に天国行きなのか。俺は今の自分にとって最も身近に感じる亀入りケースをぐっと抱きしめた。亀よ、俺の正気を保つにはお前だけが頼りだ。
 オロオロと考えをめぐらせていると汽笛が鳴って、客車がガクンと揺れて動き出した。錆びついた連結器が擦れる音をさせながら、機関車はゆっくりと力強く俺たちを引き始めた。
 
 長門がやっと俺のほうを向いた。
「……いつか、あなたと旅をしたかった」
それにしちゃあこんな唐突に、しかも時代錯誤はなはだしい石炭を焚いて走る列車にしなくても、と思ったが、そうだな、確かに長門を旅行に連れて行ったことが一度もない。それにしてもこの古めかしい車両なんかで……、いや、もうよそう。どうせすぐだ、五分とかからん。これはたぶん、長門のちょっとした遊びなのだ。
 
 窓の外は蒸気の名残を残しつつホームを離れ、町の風景に変わっていった。長門は窓際の小さいテーブルに肘を乗せ、窓の外を見ている。これはいい絵だ。
「それにしてもSLってのは迫力あるな」
「C56形、一九三五年より一九三九年まで、百六十台が製造されたうちの一台」
もしかして長門は鉄ちゃんなのか。
「……そうでもない」
ミリタリヲタだったり鉄ヲタだったり、いろいろ趣味があんのな。俺より多趣味かもしれん。
 俺もまねをして窓の外を見ていたのだが、流れる風景を見るにつけてだんだん不安になってきた。たった今、北口駅の看板が駿足で走っていったぞ。
「長門、北口通り過ぎたんじゃないのか」
「……そう」
「もしかしてこれ超特急ですか」
「……落ち着いて」
「はい。落ち着いた」
特急が止まるはずの北口駅を走り抜けたってことは終点まで行ってしまいそうだよな。まあいい、そこで降りて折り返せばいいだろう。しかし私鉄のこの路線でSLが走るなんて前代未聞だぜ。駅員も客もぜんぜん驚いた顔をしてなかったが、あれが現代人の無関心ってやつか。
 
 北口駅からさらに駅をひとつ飛ばして、なぜか列車は下り坂にさしかかった。え?窓の外を見るといきなり壁が迫ってきて真っ暗になった。おいおいこんなところにトンネルがあるなんて聞いてねーよ。もしかして地下乗り入れか!?ってこの路線の地下化は数年先の話だろう。窓ガラスに、長門のなんでもないよという表情の顔が映りこんでいて、俺と目が合った。なんだか笑ってるような気もする。
 
 ゴトゴトとレールの継ぎ目を車輪がまたぐ音がリズミカルに聞こえ、窓ガラスがガタガタと揺れた。上を見上げるとぼんやりと明かりが灯っていた。蛍光灯じゃなくて、で、電球ですか。えらく懐古趣味だな。
 
 窓の外のトンネルはまだ終わらない。このまま行けば隣の県にまで達してしまいそうだ。
「長門、なんだか寒くないか。この車両暖房効いてるのかな」
「……暖房は、ついていない」
俺は凍えそうだよ。長門がダッフルコートを着てるのはそれでだったのか。窓に息を吹きかけると白く広がった。急激に室温が下がっていた。
 
 県境の長いトンネルを抜けると……雪国だった。脳の底が白くなった。信号所を過ぎたあたりで思考が止まった。もう驚かねえ。これはなにかの夢なんだ。随分昔に見た映画が俺の夢の中で再現されてるだけなんだ。俺は急に風景が変わった窓の外を凝視して、目をこすった。列車は森の中を走っていた。杉の木の上に降り積もった雪がこんもりと丸く固まり、機関車の巻き起こす蒸気と風で地面に落ちてゆく。木の枝が窓のそばまで迫っては離れていった。前の車両から汽笛が淋しく聞こえてくる。
「そろそろ教えてくれないか。どこへ行く気なんだ」
「……未来へ」
「この機関車で?」
「……これは時間移動している」
なんと、石炭で走るタイムマシンなのか。デロリアンよりローテクノロジーだな。
 
 俺が寒さでガタガタ震えていると、長門が立ち上がってダッフルコートを脱いだ。いいって、お前が寒いだろと言おうとしたのだが、コートをシートの背もたれにかけて右手を上げて詠唱した。カシミヤのコートが一枚の毛布に変わった。なるほど。
 長門は毛布を二人の肩にかけて、隣に寄り添った。これは暖かい。
「ありがとよ」
「……」
俺は長門の肩を抱き寄せた。そういえばこんなふうに二人だけでいる時間が、このところなかったよな。
 


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最終更新:2008年01月29日 17:31