「てやっ!」
「とおっ!」
 どうもっ、みなさんっ、こんにちはっ! ただいま、神人狩り真っ最中のっ、古泉っ、一樹ですっ!
「うりゃあっ!」
「古泉、この神人はなかなか強いな……!」
「そ、そうですね……ぜえぜえ、はあはあ……」
 今、僕と会話を交わしたのはっ、多丸裕さんです。ああええっと、孤島事件で殺されてないほうの、双子ですっ。
「そんなこといちいち言わなくても、みんな解かるだろう古泉。」
「そうですかね、孤島でどっちが殺され役だったかなんて覚えてる人も少ないのでは?」
「そ、そうかな……」
「危ないっ!」
「「うわああっ!」」
 危機一髪。今まさに僕と裕さんが神人の拳にペシャンコにされようとするところで、森さんが僕たちを蹴飛ばして助けてくれました。もうちょっと優しい助け方をしてくれれば更に嬉しかったんですけどね。
「そんなこと言ってられないでしょ。神人狩り中に雑談なんて、あんたら死ぬわよ?」
 どっかで聞いたことのあるようなセリフですね。それはさておき、とりあえず早いとこ神人を倒してしまいましょう。
「言われなくてもね!」
 森さんが超スピードで神人に接近。さて、僕らも続きましょう!
「ちょっと待て、古泉。」
「はい?」
「実はな……今日、俺の誕生日なんだ。」
「それはそれは。おめでとうござ――」
「――そんな言葉だけのプレゼントは要らないんだよ。お前にひとつ頼みごとがある。」
「それ、狩りが終わってからじゃダメですか?」
「お前と二人で話せるのは今しかないんだよ!」
 仕方ないですね……森さんには悪いですが、少しだけ話を聞いてあげましょう。
「頼みごとってのは他でもない。俺の誕生日パーティを開いてくれ。」
「た、誕生日パーティ……?」
 なんか前にも同じようなことがありましたね。……すっかり忘れてしまいましたが。
「お前、なんか知らないけどみんなに鼻が利くだろう? 顔もいいしさ。」
 鼻が利くことも顔がいいことも否定させてもらいます。僕はそんな万能人間じゃありませんよ。
「なっ、頼むよ古泉! 一度自分の誕生日をみんなに祝ってもらいたいんだ!」
 つまり今まで一度も祝ってもらえなかったということなのでしょうかね。……あああ、気を落とさないでください! もう、僕はこういう話に弱いんですからね。助けてあげたくなっちゃうじゃありませんか。
「なにより古泉、お前のイメージアップに繋がるぞ!」
「イ、イメージアップ……!」
 イメージアップ。なんと響きの良い言葉であろうか。カタカナだからこそ引き出されるこの奥深さ。
「解かりました、のりましょう、その話!」
「さすが古泉!」
「危ないっ!」
「「どひゃああっ!!」」
 本日二度目の危機一髪。今まさに僕と裕さんが神人の足にペシャンコにされようとするところで、新川さんが僕たちを頭突きで助けてくれました。ってなんで頭突きなんですか。
「そんなこと言ってられませんぞ。神人狩り中に雑談なんて命取りですぞ!」
「すいません、今すぐ僕らも加勢します!」
「とおうっ!!」
 新川さんが激スピードで神人に接近。さて、今度こそ僕らも!
「待ってくれよ古泉。」
「なんですかっ!」
「この神人狩りが終わったら、みんなを集めて誕生日パーティのことを話してもらいたい。」
「ど、どこでするんですか?」
「決まっているだろう、お前の家だよ。」
 それはいつ決まったのでしょうか。その決断会議が開かれていたならば僕も出席したかったですね。
「そういうことで、頼んだぞ!」
「ちょ、ちょっと待ってください、今僕の家には……」
「危ないっ!」
「「あっふぇええっ!!」」
 二度あることは三度あるというのはまさにこのこと。今まさに僕と裕さんが神人の吐息で吹き飛ばされそうになったところで、圭一さんが吐息を全て吸い込んでくれました。ちょ、ちょっと、それどんな特殊能力ですか。
「そんなことは言ってられまい。神人狩り中に雑談なんて正気かお前らはっ!」
「すまない兄貴、こいつが……ほら、古泉行くぞっ!」
「え、えええ!?」
 さっきから引き止めていたのは裕さんじゃ……ああ、行っちゃいました!
「ったくもう! ちゃっちゃと倒しちゃいましょう! ふんっ……もっふっ!!!」
 
 
「よし、やっと終わったわね。」
「やれやれ、少々疲れましたぞ。」
「みなさんお疲れ様でした。」
 さて、早く家に帰って……と思っていた矢先、背中をぽんと叩かれました。
「古泉、言うなら今だぞ!」
「え、ええ……解かりました。ちょっとみなさん、待ってください。」
「どうしたの? 古泉。」
「実はですね、今日は多丸裕さんの誕生日なんです。」
「……へえ。」
 あれ? 反応が薄いですね。
「それで、これから誕生日パーティをすることになったのですよ。それにみなさんにご参加いただけないかと……」
「パーティ? わたしはいいけど……どこでやるの?」
「それが……」
「古泉の家だよ。今からすぐに行ける。」
 だから勝手に決めないでくださいってば! 少しは僕に拒否権を与えてください!
「古泉んちなの? おっけー、早く行きましょーっ!」
 
 
 そんなこんなで結局僕の家へ。どうしよう、今僕の家には……どう言い訳をしたらいいんでしょうか!?
 超能力者5人組が僕の家の前にゾロリと勢揃い。裕さんが目を100万ドルの夜景のごとく輝かせています。もうこの人もいい大人なのに……まるで子供ですね。
 
「た、ただいま……帰りました。」
「いっくん、お帰りなさ……え?」
 ああ、今日はまた一段と可愛らしい姿ですね……長門さん。ピンクのエプロンなんて、僕はもうデレデレになってしまいそうです。この後ろの4人さえ居なければ。
「長門さん、どうしてここに!? それにいっくんって……っぶ、ぶははははは!!」
 わわわ、顔から火を出しちゃいそうです。ってうおおい、後ろの男3人息が荒いっ! あんまり長門さんを直視しないで!
「や、やっぱり今日のところは帰ってください! お願いしますから!」
 そう言いながら笑い転げそうな森さんとセクハラ親父3人を家の外へおいやる僕。長門さんの顔を伺い見るのでさえ躊躇われます。
「おい古泉、俺の誕生日パーティは!」
「中止です! その4人でやっててください、さようなら!」
 
 ガチャン!
 
 なんとか邪魔者4人の排除完了。さて、これからどうしようものか……
「長門さん、これは、その……あの……」
「……いっくんのばか。」
 あっちゃー。長門さんはキッチンへ走り去ってしまいました。が、すぐに何かを持って僕の元へ戻ってきました。
「熱っ、うわっちゃちゃちゃあっ!」
 長門さん、それあなたが昼食に作ってくれたおでん! たまごを投げないで! ダシをかけないでっ!
「さようなら。」
「な、長門さーん!!」
 
 ガチャン!
 
 あれ、なんだろうこの水。目から水が……なんでだろう。あはははは。
 ……それから長門さんとの関係修復と僕の火傷回復に数週間の時間を要したのは、語るまでもないでしょう……?
 
 
おでんは愛より熱し end
 
 
 
……これは、森川智之さんの誕生日に掲載させていただいたSSです。

他の誕生日作品はこちらでどうぞ。
 
 

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最終更新:2008年01月26日 00:06