※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

長門「………もち巾着」

 

長門「………今日の夕食はおでん」

 

長門「………♪」

 

長門「………私は長門有希」

 

長門「………あ」

 

朝倉「あら。お久しぶりね」
長門「………ひさしぶり」
朝倉「お元気そうね。どう? あのSOS団とかいう集団とは、その後も仲良くやってるかしら?」
長門「………もち巾着」
朝倉「……そう」
長門「………そう」
朝倉「……もち巾着なの」
長門「………もち巾着」

 

 

長門「………なぜあなたがここに」
朝倉「ふふふ。驚いた? そうよね。1年近く前に情報連結を解除された自分のバックアップが、こうしてまた有機生命体として存在しているんだものね」

 

長門「………あなたの目的は何」
朝倉「そう質問してくると思ったわ。でも安心してくれていいわよ。私の目的は彼の命ではないんだから」
長門「………」
朝倉「疑ってるの? じゃあ情報統合思念体にアクセスしてみるといいわ。私がキョンくんの命を狙って復活したわけではないことを確認すれば?」
長門「………本当に?」
朝倉「嘘なんてつかないわ。彼を狙ったところで、どうせまたあなたに阻止されるだけだもの。成功確率の低い行動を優先するなんて合理的じゃないでしょ?」

長門「………ならいい」


朝倉「私の目的はただひとつ」
長門「………来て」

朝倉「え? 場所をかえるの? どこに行くのかしら?」
長門「………私のマンション」
朝倉「まあ長い話になるかもしれないし。ゆっくりお茶でも飲みながらっていうのも悪くないわね」
長門「………あなたは、ダシを取る係り」
朝倉「……だし?」
長門「………そう。私はご飯を炊く係り」


朝倉「あの、長門さん? 話がみえないんですけど」
長門「………喜緑江美里は野菜を切る係り。準備は万端」
朝倉「だから、何の話なの?」
長門「………もち巾着」
朝倉「……ああ。おでん」
長門「………そう」
朝倉「……そうなの」

 


~~~~~

 


長門「………もぐもぐ」
朝倉「ほら、長門さん。ちゃんと口元ふいて。汁がたれるわよ」
喜緑「朝倉さん、ご飯のおかわりをよそっていただけるかしら」
朝倉「それくらい自分でしてよ。はい」
喜緑「ありがとうございます」


朝倉「だめよ、ご飯ばかり食べちゃ。ご飯とおかずを交互に食べないと。効率が悪いでしょう」
喜緑「ご飯を食べていると、ついついご飯ばかり食べてしまうの。ご飯もおかずも同時に食べられるなんて、朝倉さんは器用ね」
長門「………もぐもぐ」
朝倉「長門さん、はんぺんとかもち巾着ばかり食べてちゃダメよ。ちゃんと野菜も食べないと。はい、大根」
長門「………いや」


長門「………もぐもぐ」

喜緑「まあまあ、朝倉さん。いいじゃありませんか、野菜を食べないくらいでそんなにかりかりしなくても」
長門「………朝倉涼子はもっと喜緑江美里をみならうべき」
喜緑「うふふ。長門さんったら」
朝倉「こいつら……」


朝倉「ま、まあいいわ」
朝倉「私はね、あなたたちと仲良くおでんをつつくために還ってきたわけじゃないの」
長門「………醤油をとって」
喜緑「はい、どうぞ」


朝倉「私はね。涼宮ハルヒの情報観測をのんびり見守るあなたたちに愛想つかした急進派から、ある特命を帯びて再派遣されたのよ」
長門「………喜緑江美里はおでんにからしをつける派?」
喜緑「私は辛い物が苦手なので、からしはつけませんわ」


朝倉「涼宮ハルヒの情報観測を阻害する存在、谷口を抹殺するためにやってきたのよ!」
長門「………からしをつければ、味のアクセントが強調されて食が進む」
喜緑「でも、辛い物を食べると舌や唇が痛くなって、熱いお料理が食べられなくなるじゃないですか」


朝倉「進化の可能性の幅を広げる涼宮ハルヒに精神的ストレスを与えてそのチャンスを奪う存在、下衆谷口。あれがいなくなれば、より効果的に情報が収集できるのよ!」
長門「………このすり身おいしい」
喜緑「朝倉さんの作ったダシ汁がよくしみているんですね。とてもおいしいですわ」


朝倉「ちょっと2人とも。さっきから熱弁している私を無視して何を淡々とおでん食べているのよ」
長門「………無視とは心外。ちゃんとあなたの話は片手間に聞いている」
朝倉「片手間に!?」
喜緑「長門さんの言うとおりですわ。私たちは、朝倉さんのお話を聞いていなかったわけではないのですよ? ただ単に興味がなかっただけなのですのよ」
朝倉「興味がなかっただけ!?」

 

 


長門「………まあまあ。落ち込まないで」
朝倉「……落ち込んでなんかいないわよ。私は冷徹な殺人マシーンなんだから」
長門「………自虐的になるのはよくない。そんな時は、この料理」
朝倉「おでん食べてもこの不愉快感は……って、鍋に大根しか残っていないじゃない!? 私まだこんにゃくしか食べてないのよ!? これじゃただの大根の煮物じゃない!」
喜緑「まあまあ。そう言わず。朝倉さんの作ったダシはとてもおいしいですよ。騙されたと思って召し上がってごらんなさいな」
朝倉「騙されたと思って!? 誰が栄養配分にまで気を配って作ったと思ってるのよ!」


長門「………今夜は朝倉涼子との、実に一年ぶりの再会を祝しての食事会。大らかな心で許してほしい」
朝倉「私との再会を祝した食事会? ダシ係に命じただけでなく、食器配膳係やご飯をよそう係、お茶くみ係、挙句の果てにカセットコンロに点火する係やテレビのチャンネルを変える係まで私に押し付けておいて、私との再会を祝う!?」
長門「………そう」
朝倉「そう、じゃないわよ! あなた私のことを馬鹿にしてるんでしょ? ねえ、そうでしょ!? 人畜無害な女の子みたいな涼しい顔してるくせに、腹の底では実力で劣る私を見下してからかってるんでしょ!? 分かってるわよ、それくらいこと! そうならそうとはっきり言いなさいよ!」
長門「………そうじゃない」
朝倉「そうじゃない!? だったらどうだって言うのよ! なんのつもりで私をからかって遊んでるのよ!」
喜緑「ちょっと待って、朝倉さん」
長門「………」
朝倉「黙ってちゃ分からないわよ! なんとか言いなさいよ、この厚顔無恥な主流派め!」
喜緑「朝倉さん!」
朝倉「!? な、なによ……」
喜緑「ご飯おかわりです。よそってくださいな」
朝倉「……空気よめ」

 


長門「………怒らないで」
朝倉「怒らないで? 誰のせいで怒るはめになったと思ってるのよ!」
長門「………そんな時は、これでも食べて落ち着いて。はい大根」
朝倉「いらないって言ってるでしょ!」 パシッ
長門「………あ……」
喜緑「お大根が……」


朝倉「ちゃんと真面目に話を聞きなさいよ」
長門「………」


長門「………頑張って、野菜切ったのに……」

 

長門「………ぅうう」 ダッ

 

喜緑「あ、待って長門さん!?」

 

 

朝倉「な、なによ。大根をたたき落としたくらいで。泣きたいのはこっちよ」
喜緑「朝倉さん」
朝倉「な、なに?」
喜緑「ちょっとそこに座りなさい」
朝倉「最初から座ってるんですけど」
喜緑「口答えするんじゃありません」
朝倉「いや、口答えじゃなくて。もう座ってるんですけど」
喜緑「朝倉さん。あなたは長門さんのお姉さんでしょ? もっと寛大な心で接してあげないといけませんよ」
朝倉「私の方が年下なんだけど。外見的には判断できなかもしれないけど、長門さんが長女なのよ」
喜緑「そんな言い訳は聞きたくありません」
朝倉「言い訳を聞きたくないんじゃなくて、あなたが自分に対する反対意見を聞きたくないだけじゃない」
喜緑「姉として、妹の言うことはちゃんと聞いてください」
朝倉「このタイミングで開き直らないでよ」


喜緑「確かに長門さんは感情の起伏を表に出さない人だから気づきづらかったかもしれないけれど。でも彼女は、本当はあなたが帰ってきて喜んでいたのよ?」
朝倉「まさか……」
喜緑「本当よ。確かにあなたに対して冷たく当たっていたかもしれません。いじわるなことをしたかもしれません。でも、それは愛情の裏返しなの。嬉しくて、ついついやっちゃった、そんなかわいらしい子ども心なのよ」
朝倉「………」
喜緑「長門さんだけじゃないわ。私だって嬉しかったわ」
朝倉「喜緑さん……」
喜緑「本当に嬉しかった。久しぶりにカレー以外の物が食べられたんですもの。あなたが帰ってきてくれたおかげで、久しぶりにご馳走が食べられた」
朝倉「長門さんよりあなたの方がたちが悪いわね……」
喜緑「あなたには分からないのよ。お料理のできない長門さんは、カレー以外のものを食べたくなっても作ることができない。だから仕方なくレトルトカレーに走ってしまう。それがあなたに責められて?」
朝倉「責めることはできないけれど……じゃあ、あなたが作ってあげなさいよ」
喜緑「もちろん私だって長門さんの力になってあげたかったわ。でもできないのよ。私には」
朝倉「……穏健派は、見守ることしか許可されていないから、かしら?」
喜緑「私はハヤシライスしか作れないの」
朝倉「最悪の組み合わせじゃない」

 


~~~~~

 


朝倉「あの……長門さん……?」
長門「………」

朝倉「………」


朝倉「ほら。いつまでも押入れに立てこもってないで。出てきなさいよ」
長門「………やだ」
朝倉「はあ……」


朝倉「悪かったわよ。怒ったりして。謝るから、許してよ。仲直りしましょ? だから、そこから出てきてよ」
長門「………うそ」
朝倉「本当よ。なんなら、情報統合思念体にアクセスしてみたら?」

長門「………」


長門「………」 ガラ
朝倉「やっと出てきた」
長門「………」
朝倉「ごめんね。ちょっと頭に血が上っちゃったわ。インターフェースらしくもなかったわ。反省してる」
長門「………」 フルフル


長門「………ちがう」
朝倉「え?」
長門「………ちがう。謝らないといけないのは、あなたじゃない。私の方」
朝倉「長門さん……」
長門「………ごめんなさい」
朝倉「……ううん。いいのよ。やっぱり悪いのは私。長門さんは何も悪くない。私が短気だっただけのこと」
長門「………ちがう。ちがう、ちがう。私がいじわるしたから。だから、朝倉涼子が怒ってしまった。私が悪い」
朝倉「そう」

 


朝倉「長門さんは、私が怒ったこと、許してくれる?」
長門「………うん」
朝倉「よかった。私も、長門さんが私にいじわるしたことを許してあげる」

 

朝倉「これでおあいこ」
長門「………うん」

 


~~~~~

 


朝倉「きれい。1年ぶりだけど、やっぱり屋上からの景色は変わっていないわね」
長門「………ここにいると、自分がインターフェースであることなど忘れてしまいそうになる」
朝倉「本当に」


長門「………」

 

朝倉「………」

 

長門「………あなたは、行くの?」
朝倉「うん。それが、私が還ってきた理由だから」
長門「………そう」
朝倉「うん」


長門「………また、一緒におでんを食べよう」
朝倉「うん」
長門「………谷口を刺したら、またここに帰ってきて」
朝倉「もちろん。谷口を刺し終えたら」


長門「………」

 

朝倉「………」

 

朝倉「今度は、どんなご馳走を作ってくれるのかしら?」
長門「………今度?」
朝倉「そうよ。今日は私、結局こんにゃくしか食べてないんだもの。食事会なんて呼べるものじゃなかったでしょ?」


朝倉「だから、今度こそ。おいしいご馳走でお出迎えしてよ」
長門「………私のレパートリーはカレーとおでんだけ」
朝倉「料理のレパートリー2つしかないの? なによ、そんなんじゃ彼のハートは射止められないよ」
長門「………大きなお世話」
朝倉「あら。怒った?」
長門「………別に」

 


朝倉「今度は、私が作ってあげる」


朝倉「日頃食生活に偏りのあるあなたたちのために、私が腕によりをかけてご馳走を用意してあげるわよ」
長門「………本当?」
朝倉「もちろん! 長門さんにもお料理を教えてあげるから。ちゃんとお勉強するのよ?」
長門「………する」


喜緑「お話は終わったかしら?」
朝倉「うん。あなたにも悪いことしたわね。怒鳴ったりして」
喜緑「いいえ。結構ですわ。それより」
朝倉「ん?」
喜緑「私のおかわりはいつになったよそってもらえるのでしょうか」
朝倉「空気よめ」


長門「………応援している。がんばって」
朝倉「ええ。絶対に谷口の息の根をとめてくるわ!」

 


~~その頃、谷口は~~

 


谷口「ふひふひひ」

 

谷口「この漫画おもしれ」

 

谷口「ほっほほほほ」

 

谷口「うへ? おほ、やべえwwww」

 

谷口「屁が出るぞぉ! 屁が出るぞぉ!」

 

谷口「放屁注意報発令でござる!」

 

谷口「スリー! トゥー! ワン!」

 

谷口「チューリッ!」 プゥ

 

谷口「………」

 

谷口「……………」

 

谷口「……………………やべえ」

 

谷口「実まで出ちゃった……」

 

 

 もらしていた。

 


  つづく

|