谷口「今日、諸君らに集まってもらったのは他でもない。実はさっき、一考に値する噂を小耳にはさんだのだ」
中河「ほほう。それは大変に興味深い。して、その話とは?」

 

谷口「今、SS界では空前のゾクゾクブームらしいですぞ」
藤原「ゾクゾクとな? ゾクゾクというからには、ゾクゾクするSSがはやっているということなのか?」
谷口「そうだ。ゾクゾクだ。空前のゾクゾクフェスタ2008なのだ」

 

谷口「しこうして! 流行に超敏感なイケメソであるところの我々が、この一時的ブームに便乗せずしていかんとする!?」
藤原「なるほど。そういう事情だったのか。それは確かに、便乗せざるをえない事態であるな」

 

谷口「そういうワケで。今日は3人で流行に乗るべくゾクゾク祭を開催したいと思う次第である!」
藤原「うおー!!」
中河「ばんざーい!!」

 


~~~~~

 


谷口「まず一番手は俺が行こう。俺のゾクゾク道を聞いて背筋も凍るほどゾクゾクするがよい」


中河「おもしろい! たとえ我々の仲とはいえ、祭というからには手加減無用。そちのゾクゾクパワーを測定してくれるわ!」
藤原「存分に向かってくるがいい!」

 


谷口「あなたは今、予防接種を受けるため嫌々病院にやってきています」
谷口「あなたの前には10人ほどの人が、予防接種を受けるために列を成して並んでいます」
谷口「鼻腔をくすぐる、アルコールを思わせる薬品臭」
谷口「医者の手には、白熱灯の明かりを受けて白く光る、注射器」
谷口「そしてとうとう、緊張を隠すように黙って列に並んでいたあなたの順番が」
谷口「医者が注射器のキャップを外すと、そこからは糸のように鋭く尖った注射針が……」

 


中河「いや! それ以上いわないで! ぞくぞくぅ!」
藤原「ひぃぃぃ、俺注射ダメなんだよマジで! ぞくぞくぅ!」

 

谷口「ふはは。そうであろうそうであろ。さもありなん」

 

中河「でも実は俺、あんま注射怖くないんだ。アメフトやってると外傷なんて日常茶飯事だし」
谷口「なんと!? くっ、これはなんたる誤算」

 

谷口「ふふふ。しかし面白い。ならば今度はお前の番だ。俺に参ったって言わせてみな!」


谷口「どんどん行くぞ! 次、中河!」

 

中河「おす!」

 

 


中河「あなたは今、私の運転する車の助手席に乗っています」
中河「道路は狭い田舎道で、車幅がだいたい2mくらい。車が2台並べるかどうかという長さです」
中河「対向車にこられたくないなと思っていると、案の定むこうから対向車が向かってきます」
中河「私の車と対向車。お互いに、なんとか道の端ギリギリまでタイヤを寄せて行き交おうとします」
中河「しかしこのままでは接触してしまいます。前輪タイヤは道端のギリギリまで寄せているのですが、ひょっとしたらまだ余裕があるかもしれません」

 

中河「バックして切り返すのも面倒だしぃ、もうちょっとタイヤふってみるか!」
中河「脱輪事故なんて、そんなマヌケな事故は起きないって、自分に限って!」

 

中河「行っちゃえ行っちゃえ! ハンドルもっと切っちゃえ!」
谷口「やめてええええ! もうタイヤはいっぱいいっぱいなのよ!? これ以上ハンドル切ったら脱輪しちゃうって!」
藤原「らめええええ! 脱輪らめええええ! 自分に限って事故に遭うはずないなんて安易すぎる脱輪フラグは心臓に悪いからやめてええええええ!!」
谷口「そういう時って運転手のテンションが上がるほど助手席に座る人は寿命縮みそうになるんだよ! お願いだからおとなしくバックしてよ!!」

 

谷口「ゾクゾクぅ!」


藤原「zkzk!」

 

 


藤原「はあはあはあ。てめえら、そろいもそろってやるじゃないか。さすがだよ。さすが選び抜かれた精鋭たちだよ」

 

藤原「だがな。お前たちはなっていない!」


中河「なんと!?」
藤原「いかに日常のスリル話を持ち出そうと、古来より伝わる古式ゆかしいゾクゾク話には敵うまい!」


谷口「古式ゆかしいゾクゾクだと!?」

藤原「ふふふ。恐怖体験だよ」
中河「きょ、きょうふたいけんとな!?」

 

 


藤原「あれは、しとしとと雨の降る、いやに生暖かい夜でした」
藤原「私が町外れの、人のいない路地を歩いていた時のことです」
藤原「『お兄さん、お兄さん』 と、私にむかって声を投げかける妙齢の女性が現れました」
藤原「女性は艶っぽい仕草で私に問いかけてきます。今、ひとり?良かったらご一緒してくれないかしら、と」
藤原「特に急ぐ用があるわけでもなかった私は、意気投合したその女性とバーへ向かったのです」

藤原「そしてすっかり酔ってしまった女性は私にしなだれかかります。ねえ、私、今夜は帰りたくないんだけど。一晩つきあってくれないかしら?」


藤原「あれよあれよと言う間に、私は気づくとホテルの一室に女性と2人で入っておりました」
藤原「ここまで来たら男の甲斐性一直線でいくしかない。そう思った私は、風呂場でシャワーを浴びました」

藤原「シャワーを浴び終えて部屋へ戻ると、いないのです。彼女が。どこを探しても、忽然と消えてしまったように、どこにもいないのです」

 

谷口「おお、おま、おまえ、それってまさか……」


中河「ゆゆ、ゆうれい? その女性は幽霊で、実は最初からお前ひとりだけだった、とか……?」

 

藤原「ちがうんだ。まあ聞け」

 

藤原「女性はいなくなっていたが、代わりに男がいたんだ」

 

谷口「ちょwwwww」

 

藤原「美人局だったんだ」

 

中河「死亡フラグ確定wwwwww」

 


藤原「聞きたい? ねえ、それから後のこと、聞きたい?」
中河「やめてえええええ! それ以上言わないでえええええ!」

藤原「その男っていうのが頬に切り傷のあるスジモノのヤツなんだけどね」

中河「聞きたくない聞きたくない聞きたくない!}

 

谷口「ああ。でも俺、女の誘惑に負けてマルチ商法にひっかかったことあるぜ」
藤原「ナカ-マ」

 

 


中河「やべえよ。今日はマジやべえよ。風邪ひいてるわけでもないのに、ゾクゾクが止まらねえよ」

谷口「しかし藤原さんよぅ。怖い話路線でいくなら、やっぱ心霊方面で攻めないとダメだろ」
藤原「しかし心霊体験って、人によって怖いと感じるかどうかが一定じゃないだろ。ど派手な心霊現象の話が怖いって言う人がいる一方、そんなの逆に胡散臭すぎて怖くないって言う人もいるだろうし」
谷口「なに言ってるんだよ。百人の人がいたら、百人全員が怖がる話があるじゃないか」
藤原「なに?」

谷口「『牛の頭』」

 

藤原「ひょー、ゾクゾク!!」


中河「ゾクゾク指数90%!」

 


中河「けっこうゾクゾク話ってあるもんだな」
谷口「一般的じゃなくて、個人的な体験談だけどゾクゾクする話っていうのもあるよな」
中河「ほほう。ぞくぞく?」

 

谷口「死にそうなほど緊張して一人でネットラジオをやったはいいが、番組のURLを誤記してしまってリスナー0人とか」

 

中河「うっほほーい、ゾクゾクぅ!」

 

藤原「作者がひとりでゾクゾクぅ!」


谷口「SS書き始めて1年近く経つのに、今だに甘いSSを書いたことなかったから初挑戦してみたら、甘いというよりただの痛いSSになってしまった上、最後に 『つづく』 とか書いてしまって作者ゾクゾク」

 

藤原「ぞくぞくぅ!!」

 

中河「ぞくぞくぅ! 痛いゾクゾク!」

 

谷口「むかし雑談室で自演したことあります」

 

藤原「ピンポイントゾクゾク!」

 

中河「痛すぎるゾクゾク!」

 


谷口「はあはあはあ」


中河「はあはあはあ」


藤原「はあはあはあ」

 

 


中河「そういう、一点集中攻撃はやめようぜ……。書いてる時は作者もノリノリだからいいが、後で冷静になったら絶対へこむから」

藤原「別の意味でゾクゾクするわ」

谷口「そうだな。ちょっと悪乗りがすぎたようだ。ここらで一息いれよう」

 

 

 

谷口「そういや藤原氏。今夜も冷えるが、暖房を入れていないね。エアコンつけてもいいかい?」
藤原「無駄だぜ。うち、エアコンつかないから」

谷口「故障かなんかですか」


中河「さっきからゾクゾク祭の演出だと思って黙ってたが、そろそろ部屋の電気をつけないか? 暗くて仕方ない」
藤原「うち電気とめられてるから。エアコンも電灯もつかないんだ」
谷口「……そうなの?」
藤原「ああ」


中河「……電気とめられてるって、何かあったのか?」
藤原「ん? さっき言っただろ。美人局にひっかかったって」


谷口「………え?」


中河「………あの話って……ここにつながってたの?」

 


 どんどん


 どんどんどん

 


谷口「……あの、藤原さん? あの扉が破られるくらいの勢いのノックは、もしかして……」
藤原「ちっ。電気代も払えなくなるほど金とりやがったくせに、まだケチつけてくるとは。しつこい野郎だぜ」

 


 どんどんどんどんどん

 


男「いるんわ分かっとんじゃあ! おら、とっとと出てこんかい!」


男「俺の女に手ぇだして、ただで済む思ぅとんのかわりゃ!? ああん!?」


男「とっとと出てこんかい!!」

 


 どんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどん

 


谷口「………」


中河「………」


谷口「ゾクゾクぅ!」


中河「リアルゾクゾクぅ!」

 


 どんどんどんどん

 

 

男「海がええか、トンネルがええか! 好きな方えらばしたるわ!」

 

 

 どんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどん

 

 

  ~おわり~


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