「キョンのことよ。好きなんでしょう?ときどきキョンのこと見つめてるじゃない。瞬きも忘れるくらい」
「キョンはちょっと頼りないけど、悪いやつじゃないわ。有希がキョンのことを好きなら、
「団長として応援するに吝かではないわ!」
「私は…」
「彼が…」
「好き」
「善は急げよ!キョンはものすっごく鈍いやつだから、言わないとわからないわ!」
「そうね、中庭の木の下なんてどうかしら。ちょっと狙いすぎな気がしなくも無いけど」
「キョンが戻って来次第行かせるから、有希は先に行って待ってて?」
「なぜ?」
「なぜって、告白よ!ホントはキョンのほうからするべきなんだけど、おとなしい有希のほうから告白っていうのも意外性があって萌えるし!」
「必要ない」
「あなたがなぜ、私の好意を確認しようとしたのか、わからない。けれど、想像することはできる」
「あなたは彼に好意を持っている。しかし、それを認めたくない」
「私が彼への好意を表面化させれば、あなたは自分の好意を圧し殺すことができる。そう考えた。違う?」
「ち、違うわ!あたしは有希のことが好きだからっ!」
「私もあなたのことが好き。だけど」
「私の心は私のもの」
「有希…ごめん…」
「私は、彼と生涯を共にすることを考えたことは無い。それは彼も同じはず」
「そんなはずないわ!キョンは間違いなく有希のことが好きよ!……有希のこと見る目が、すごく優しいもの」
「彼は、私に心をくれた。父親という概念が、彼の存在を表現するに適当」
「彼が私に向ける好意もまた、肉親に対するそれに等しい」
「あなたは彼を独占したいと考えている。先ほどの発言はその裏返し」
「それは、異性に対する好意の基本的心理。認めるべき」
「あたしは……」
『善は急げよ!キョンはものすっごく鈍いやつだから、言わないとわからないわ!』
「有希…っ。そうよね。自分で言ったんだもんね」
「あたし中庭にいるから、キョンのやつが戻ったら来るように伝えて」
「有希、ありがとう」
おわり