※このSSはDSソフト「レイトン教授と悪魔の箱」を基にしています。

 

 

 


───開けた者は必ず死ぬ───

そんな箱の存在を、あなたは信じますか?

 

 

 

 

 

 

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拝啓  SOS団様


突然のお手紙申し訳ありません。
本当は直接あなた方のところへ伺って依頼を致したかったのですが、
事情によりこのような形となってしまいました。お許しください。

本題ですが、あなた方は「悪魔の箱」と言うものをご存知でしょうか?
開けたものは必ず死ぬ呪いの箱、と噂されているもののことです。
私の父は考古学者で、ぜひこの箱の調査をしてみたいと、先月イギリスの
ある町に発ちました。詳しいことは私も知らされておりませんが、レイリス・シュレーダーという博士の助手をしているとだけ聞きました。

ところが先週、父が行方不明になったと…知らされました。
原因も何もかも分からずに、です。
私もイギリスへ行って父を探したいと思ったのですが、
引き止められました。
事実がはっきりしない以上、あなたにも危険が及ぶかも知れないと。

なので、私はあなたたちにこのことを頼みたいと思います。
イギリスで悪魔の箱について調べ、父を見つけてもらいたい…
その一心でこの手紙を書きました。
あなたたちならきっとやってくれる…信じています。

5人分の航空券を手配しておきました。
12月26日の午後3時半、ロンドン行きの便です。
よろしくお願い致します。


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「ねぇ!面白そうじゃない!?呪いの箱と行方不明の父親…まさに不思議って感じじゃない!!」
団長は目をキラキラさせて興奮しながら言った。
「そうですね…僕も興味があります。一度、行ってみたかったですし。イギリス」
古泉が賛成しやがった。面倒なことになりつつある…
「わたしも行ってみたいですぅ」
「…行きたい」
…なんで皆そんな乗り気なんだ?
「どうするの?キョン。あんただけ残る?ノリが悪いわね」
まだ何も言ってないぞ。
「まあ…行ってもいいけどな。妹を預けられるんなら」
「じゃあー決まり!!SOS団の冬合宿inロンドン決定よ!!」

なんかおかしくないか?
なぜ俺たちなのか…わざわざチケットを用意してまでSOS団に行かせる理由とは??
もっとしっかりした機関に頼んだほうが確実なのに。
しかも…父親の名だけが書かれた、宛名のない手紙。
調べたらすぐに分かることなのに…敢えて隠してるのか?
なんか引っかかる……
まあいいか、ロンドン…行けるとなればこんなチャンスはないからな。

 

 

 

今年もクリスマスがおわって、来年まであと何日と数える時期になった。

12月26日、午後2時───

「遅い!!罰金!!」
妹を親戚の家に預けた後、
いつもの声を聞きながら俺は最後に集合場所に向かった。
このバス停から空港へ向かうバスに乗るらしい。
時間があまりないので、今日は喫茶店でのおごりはなしだ。ラッキー。

午後2時20分、皆でバスに乗り込んだ。
ここから空港までは45分ほどかかるらしい。
俺はバスに揺られながら、あの時気になったことを隣に座る古泉に相談した。

「実のところ、僕にもよく分からないんです。今回は涼宮さんはあまり絡んでないようですね。つまり、彼女がはじめから望んだ結果ではない…」
「それで、『悪魔の箱』は本当に…?」
「…それもまだ。上の者ですら、その『箱』について一切の情報を持っていません。おそらく涼宮さんも、何かと恐れているものがあるでしょう」
「ハルヒが『箱』の正体を恐れている?」
「……いや、やはり[楽しみにしている]といったほうがいいでしょうかね。『開けたものは必ず死ぬ』…誰だって、興味を引かれますよ」
「俺はあんまり興味なんてないぞ。なにか裏がある気がしてならん…」
そのとき、補助席を挟んだ隣にいる長門が、俺の腕をつついた。
当のハルヒは、また朝比奈さんにいたずらしているようだ。
「今回の依頼状が来たことには、涼宮ハルヒはほとんど関与していない。そして、『箱』の正体について、彼女は急いで真相を究明することを望んでもいない」
長門はこっちを見ずに淡々と話す。
「…どういう意味だ?」
「本来の目的は依頼人の父親を捜すこと…しかし、彼女にとってはどうでもいい、目的としては二の次。本当にロンドンに行きたがる理由は、『箱』に隠された彼女なりの物語が具現化されているのをその目で見ること」
「つまり、涼宮さんは『箱』に隠された秘密というのを、既に頭の中で想像しているようですね。そしてそれが本当であればいい…そういうことです」
「それって、ただ楽しんでるだけじゃないか」
「違う」
「?」
「涼宮ハルヒは『箱』に関わることでその呪いにより我々の中の誰かが死ぬようなことになるのを恐れている…特にあなた。だから、そんな呪いすら始めからなければいいと望んでいる。呪い以外の、何か別の真相を。しかし、彼女の中に葛藤があるのも事実」
「………?」
「簡単に言えば、涼宮さんは『箱』の呪いが実在すれば面白いと思っている…しかし同時に、その呪いによってSOS団の誰かが死んだりすることを恐れてもいる。特にあなたには…そういうことです」
「なんで俺のことをそこまで強調する?…しかしあいつも子供みたいだな…呪いを信じてるわけだろ?」
「しかし涼宮さんが望めば、箱も呪いも実在することになるんですよ?」
「まあそうだが………相変わらずややこしいな……」

 

 

 

そんなこんなで俺たちは空港に着いたのだった。

「さて…搭乗手続きしてくる。みんなここで待ってて」
こういうとき、ハルヒのリーダーシップは少なからず頼りになる。
朝比奈さんは土産屋で可愛いストラップを探している。
残った3人は、バス内で話題を尽くしてしまったために、無言である。

やっぱり気になるな…ハルヒは何を望んでいるのか。
そもそも『箱』は実在するのか?
分からないことが多すぎる……

一人で深く考えすぎて、いつの間にか時間が来ていた。
午後3時半、俺たちは無事に飛行機に乗り込み、ロンドンへと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


およそ9時間半の長旅を終え、俺たちはロンドンの地を踏んでいた。
そこからタクシーで15分、安そうなホテルを探して町へ。
思えば、飛行機以外はこの合宿行き当たりばったりだな…大丈夫なのか?

荷物を預けたあと二班に別れて、第一回不思議探索inロンドンと称し、手紙に書いてあったシュレーダー博士という人のことを調べに回ることにした。
幸運なことに、俺は朝比奈さんと2人だ。
ハルヒたちは市役所へ行って住所を聞いてくるといっていたので、俺たちは町の人に直接聞き込みをして回ることにした。

「朝比奈さん…どう思います?」
「どうって…『箱』のことですか?」
「あの手紙がきたときから、不自然なところがいろいろとあるんですよ。何か知っていることはありませんか?」
「いえ、何も…もし知っていたとしても、キョン君には言えないことが多いので…ごめんなさい」
「禁則事項ですか」
「はい…」
「でも…朝比奈さんが自分で思っていることについては、口止めはされませんよね?」
「へ?」
「『箱』について、朝比奈さん自身はどう思ってるんですか?」
「………正直、分からないです。その呪いというものにしても、私は何も聞いてませんし、そもそも本当にあるのかどうか……」
まあそりゃそうだ。朝比奈さんの意見はもっともである。
「キョン君は、『箱』のことをどう思ってるんですか?」
「僕は…どうも怪しいと思うんです。わざわざ僕たちに依頼した理由…それに差出人の書いてない手紙。呪いじゃないにしろ、なんか裏があるかも…って」

俺たちは誰から情報を聞き出そうとするわけでもなく、気付いたら普通にロンドン市内を探索していた。
ヤバいな、ハルヒに知られたらまた何て言われるか…その時だった。携帯が鳴りだした。ハルヒからの電話である。

「…もしもし」
『ちょっと、有希と古泉くんが急にいなくなっちゃって。連絡はとれるんだけど、あんたたちと合流してって言われたの。今の場所分かる!?』
「ああ……駅西口だけど」
『わかったわ。今から行くから…あーそれと、あのシュレッダー…だっけ?その博士の家がどこかわかったから、そこに行くわよ!じゃ』
プッ

長門と古泉が…はぐれた?
あいつらが二人で行動する理由は一つだけど…だけどな…
そして電話を切ってみると、古泉からメールが来ていた。
[宿でまた会いましょう]

20分後、俺と朝比奈さんとハルヒは合流し、シュレーダー博士が住んでいるアパートに向かった。
「ハルヒ、何で古泉たちとはぐれたんだ?」
「はぐれたんじゃないわ。なんか急に『用事がありますから』って…こんなところでよ?用事なんてあるわけないじゃない。きっと二人で抜け駆けしたんだわ」
「まあ、あいつらがそんな関係じゃないことくらい知ってるだろ?」
やっぱり…でもまさか…ハルヒは不機嫌そうでもないし…どうしたんだろう?


シュレーダー博士のアパートは、ロンドン中心部から少し離れたところにあった。ハルヒがチャイムを鳴らすと、しばらくして白いあごひげを生やした初老の男がでてきた。
「こんばんは…レイリス・シュレーダーさんですか?」
ハルヒは少したどたどしい英語で尋ねた。
「そうですが…あなたたちは?」
「私たちは日本から来ました。最近行方不明になった、あなたの助手の方についてお話を伺いたいのですが」
「…ケイジ……」
「?」
「いや……入りなさい」

部屋のなかはまるでごちゃごちゃした研究室のようだった。博士は真ん中にあるソファを指して「座りなさい」と言い、向かいの椅子に座った。
「それで…話を聞こうかの」
「はい。まず、この手紙を見てください」
ハルヒは依頼状をテーブルの上に置いた。
「差出人は書かれていませんが、この手紙は日本人の女の子からのものです。そして、その子の父親があなたの助手で、『悪魔の箱』と言われるものの調査中に…行方不明になった」
「………」
「その人について、何か教えてもらえますか?」
博士は悲しそうな表情をしていたが、やがて口を開きだした。
「……わかった。話そう。はっきり言って、わしもあまり思い出したくないのじゃが…君たちが彼の捜索をしてくれるなら………」


「あれは今月の頭じゃった。それ以前からずっとわしと彼…ケイジ・オノサキじゃが…二人で、『悪魔の箱』の謎を追っていたんじゃ。ばかげているのはわかっておるが…実際に死亡事件が多発していての。この1ヶ月で6人じゃ。しかも奇妙な共通点があって…」
「共通点?」
「6人全員、死亡原因がわからない。まるで眠ったように…死んでおる」
「それは確かに奇妙だわ…」
「しかも、この6人とも、以前に何かしら『箱』と関わっておるんじゃ」
「それはなぜ分かるの?」
「……それは警察との話で口外してはいけないことになっておる。すまんの」

(…聞いて、どうですか?)
俺は隣にいる朝比奈さんにこっそり尋ねた。
(やっぱり…変ですよね。『箱』に関係している人間が死んでいる…しかも原因不明で)

「それでな。わしらは『箱』について有力な情報が隠されているらしい場所に向かった。そこで調査を進めるうち…そこの町外れの森の中で………急にいなくなってしもうた」
「急に?」
「本当に急に、いなくなってしもうた」
「で…そのまま帰ってきたの?置き去りにして?」
「わしも必死に捜した。捜索班も派遣したが…その人たちもまた…消えてしもうて…」
「…なるほど。で、その場所とはどこですか?」
「フォルセンスと言ってな…キングズクロス駅から特急で2時間半ほどじゃ。じゃが、もし行く気なら気を付けた方がいい。あそこは…まるで呪われておる」

 

 

 

 

「どうだ?ハルヒ」
アパートを去り、宿に向かう途中、おれは尋ねた。
「どうって?」
「『悪魔の箱』だよ。あると思うか?本当に」
「何言ってんの。あるに決まってるわ。だっておかしいと思わない?博士の話によれば、『箱』に関わった人物が死んだ。尾野崎圭二は行方不明…実際に箱を見たり触れた人は生き残っていない…しかもそれがあるという場所は『まるで呪われている』……呪いの仕業とみて間違いないわ」
「そりゃおまえはそう思うだろうが…」

宿に着くと、既に長門と古泉がいた。
俺は男部屋で古泉に今日のことを尋ねた。長門も呼んで3人で。
「実は今日、小規模ですが…閉鎖空間が発生しました。一応僕が片付けておきましたが、どうやらいつもと違うようでしたので、長門さんにもついて行ってもらったんです」
「いつもとちがう?」
「今日午後5時16分にロンドン郊外のごく限られた地区で局地的閉鎖空間が発生、たまたま近くに居合わせていたため、我々は涼宮ハルヒをあなたの元へ誘導し、午後5時34分に消滅させた。ただし、今回異例なのはそれに涼宮ハルヒが全く関与していないこと」
「それって…ハルヒが発生させた閉鎖空間じゃないってことか?」
「…原因はまだ分からない。しかし、考えられる可能性があるとすれば一つ」
「なんだ?」
「涼宮ハルヒ以外にも、情報統合思念の能力をもつ者がいる。しかも、この地点から半径422.35km以内に」
「ハルヒの能力を持ったやつが…もう一人?」
「…可能性は低い。しかし、もしそうだとすれば厄介」
「厄介って?」
「本来一方向だけに働いている彼女の能力が、もう一つのそれにより一部もしくは全てが阻止された場合、情報統合思念体間衝突によって空間が情報飽和状態に陥り、それが最大許容量を上回ったとき、巨大なビッグバン現象を引き起こす」
「…………」
「例えば、涼宮さんが『神』であるとしましょう。そこにもう一人『神』が現れればどうなるか…世界は涼宮さんの支配下になるものと、もう一方の支配下になるものが生まれる…そうなったとき、なにが一番危険か、と言うことです」
「どういうことだ」
「かつて人間の異なる二大勢力の衝突により勃発した『戦争』という現象…これが全世界を巻き込みます。涼宮さんと『その人物』が直接対面し、彼女がもつ能力が、もう一つのそれと衝突したとき…世界は壊滅する危険にさらされてしまうわけです」
「実際にそうなった場合、そのビッグバン現象を引き起こす可能性は99.79%」
「仮に涼宮さんの力が同時に二つ、真正面からぶつかり合えば、そのときに生じる物理的エネルギーは…そうですね、広島型原子爆弾のおよそ120億倍、とでも言えましょうか」
「………………」
「またそれは、発生から12分以内に地球上のどの場所も壊滅させることができます」
「それを止められるのは、我々の知るところたった一人」
「……………」
「あなた。涼宮ハルヒが選んだ人物」

………………………

「ま、まて、ちょっと」
「無理もない。もともと言語伝達には向かない情報」
「いや違う。お前らの言いたいことはわかった。…ちょっとはな」
「とにかく、あなたしかいないんです。涼宮さんに何か起きた場合、あなたに処理してもらわなければ我々にはどうしようもないんです…分かってもらえませんか…ここにきたのは無論『箱』の調査のためですが、新たな問題が発覚した以上、僕と長門さんはこっちのほうも調べる必要があります…あなたや朝比奈さんにも。協力してください。…まあ、先ほどの話はあくまで仮説ですが」
ちょっとまて。訳が分からん。話の規模がでかすぎる…何?世界が壊滅だって?120億倍?え、しかもまた俺なの────
理解しろだと?無理にも程ってもんがある。今日は歩き疲れたし、時差ボケもあるし…なにも考えたくないんだ。
時計の針は既に12時を少し回っていた。
「……時間をくれ。もうこんな時間だ。長門、もう部屋に帰ったほうがいい。おやすみ」
「…そう」
「おやすみなさい」


その夜俺は遅くまで眠れなかった。

 

 

 

 

 

つづく


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