今、われらが団長様は机に突っ伏して寝ておられる。この間の不思議探索のときに寄った喫茶店でコーヒーを飲みまくって以来、体内時計がめちゃくちゃになったらしい。

 ハルヒが寝息を立てていること以外はいつもの団活なんだが、朝比奈さんはやることがないのかずっとハルヒの寝顔を見ていた。
「涼宮さん、本当に眠たいみたいです。今日はお茶も飲んでいません。」
なんと。今まではどんなときも朝比奈さんのお茶を一口で飲み干していたと言うのに。
「それにしても、かわいらしい寝顔ですね。ふふふっ。」
確かに、ハルヒの外見は誰もが認めるところだ。寝顔だけじゃない。口を開きさえしなければいいのだ。しかし朝比奈さん、最後の笑い声から少し黒いオーラが見受けられたのは気のせいですか?

しばらく朝比奈さんを観察していると、寝ているハルヒの顔をつつき始めた。しかしハルヒはびくともしない。相当深い眠りについているようだ。
「あなたの番ですよ。」
古泉の声で、自分がさっきまでオセロをやっていたことを思い出した。
しかしお前もオセロの腕あがらないな。
「あなたが上達しているからではないでしょうか。」
そうなのか?俺はなにも練習もしていないぞ。

その後も一手打つごとに二人の様子を見ているが、朝比奈さんがいくらちょっかいを出してもハルヒは目覚めそうになかった。変化しているのはむしろ朝比奈さんである。
全身から発する黒いオーラが徐々に濃くなっているのである。それでいて表面的にはいつものエンジェルスマイルなのが
さらに恐ろしい。

そして…ついに決定的瞬間を目撃してしまった。なんと朝比奈さんがハルヒの鼻と唇をつまみ、息が出来ないようにしたのである!10秒…20秒…30秒…ハルヒは顔を真っ赤にして表情を変化させるものの目覚めない。ようやく時計の秒針が4分の3周ほどしたときであろうか、
「ふも、ふも、ふもっふ!」
とどこかで聞いたような声を発し目をさました。最初5秒ほど何があったのか良くわかっていない様子であたりをキョロキョロ見回していたが、やがて俺と目が合った。
「ちょっとキョン!平団員の分際であたしの睡眠を妨害するとはいい度胸ね!」
「ちがう!朝ひ…」
「何言ってるのよ?みくるちゃんがこんなことするわけないじゃない!」
そう、朝比奈さんはハルヒが目を覚ましてから気がつくまでのわずかな間に、ゆっくりと、しかし無駄のない動きで定位置に戻っていたのである。そして今は何事も無かったかのようにお茶かなんかの本を読んでいる。
「みくるちゃん聞いて!キョンったらみくるちゃんに罪をなすりつけようとしたのよ?信じられる?」
「あ、はい、なんでしょう?本に夢中で聞いていませんでした。」
さっきまで出していた黒オーラが消えている。そして何事も無かったようにエンジェルスマイルを見せている。
「…みくるちゃんがいいならいいわ。それにしてもキョン、あんたもみくるちゃんを見習いなさい!不器用に見えるかもしれないけど、いつも手を抜かないで本気で物事にぶつかっているわ!今日だってほら、あたしたちに淹れてくれるお茶の研究してるのよ!」

…軽くめまいがした。とりあえず、朝比奈さんだけは絶対に怒らせないようにしておこう。そう心に誓った。

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最終更新:2007年12月23日 11:12