お風呂から上がったわたしが部屋に戻ると長門さんが座っていた。でも、何故だか俯いている。

「長門さん、お帰りなさい」
わたしは座っている長門さんに言った。でも、長門さんは俯いたままだった。
「長門さん?」気になったわたしはもう一度、長門さんを呼ぶ。


「何故、貴女が彼に心配される」俯いたままの長門さんが言った言葉にわたしは疑問に思った。
彼?心配する?長門さんの言っている事が理解できなかった。


「何故!わたしではない!」顔を上げてわたしに向かって怒鳴る長門さんの表情は鬼のようになっていた。
「な、長門さん?落ち着いて?何のことか分からないわ」わたしを睨みつけながら立ち上がる長門さんに私は言った。
しかし、長門さんはわたしの言葉に「うるさい!」と言ってわたしの首を両手で掴み、握り締めた。


「何故!わたしは彼に尽くしているのに!彼に迷惑をかけている涼宮ハルヒや何もしていない貴女のことを彼は心配する!」
長門さんはもの凄い力でわたしの首を締め付けながら言う。
恐らく、彼と言うのはキョンくんの事だろう。わたしの心配をしてくれていたなんて意外だと感じた。
首を絞められているため息が出来ないわたしは苦しくてもがきながらも心の中で思った。

やっぱり長門さんはキョンくんの事が好きなんだと。その想いは自分以外の人が彼に心配される事に殺意を覚えるくらいに。


突然、長門さんがわたしの首を絞めていた手を離した。窒息死寸前だったわたしはそのまま床に倒れる。

「ゲホ、ゲホッゲホ!」わたしは咽ながら長門さんの顔を見る。
目を見開いて何かブツブツと呟いている。意識の朦朧としていたわたしには少ししか聞き取れなかった。


「邪魔…な…ころ…や…る」
何か呟いていた長門さんと目があった次の瞬間、長門さんがわたしのお腹に強烈なつま先蹴りを入れる。


「ぐぎぇっ」
お腹を中心に激痛が走る。わたしはお腹を押さえながら顔から床へ倒れこむ。
「おえぇ…」
お腹を蹴られた事により、わたしは嘔吐したが何も食べていないわたしが吐いたのは胃液のみだった。
その後、また首を絞められた。ガチャというドアの開く音がした。そこでわたしの意識は途切れた。


気が付くとわたしは布団に寝かされていて、江美里が傍に座っていた。

「気が付いたようですね…長門さんなら学校に行きましたよ」

わたしはまた、スタンガンで虐められるのではないのかと身構えていたが、そんな事もなく江美里は立ち上がってわたしに言った。


「申し訳ありませんが、私も学校に行かなければならないので…貴女は欠席すると学校には連絡しておきました」
江美里はそう言い残して出て行ってしまった。

一人になった私は「もう、どのくらい学校に行っていないのだろうか?」等と考えながら布団をたたんで片付けた。
する事が無くなり、わたしは部屋の隅で壁にもたれかかりながら外をぼうっと眺めていた。


ピンポーン

部屋に響くインターホンの音。その音を聞いたわたしは時計を確認する。午後1時半
こんな時間に誰だろうか?わたしは立ち上がり、ノロノロとインターホンの受話器の場所へと向かう。

受話器のディスプレイに写る意外な人物の姿にわたしは不思議に思った。
わたしは受話器を取り、話す。「はい…」

「古泉一樹です。少々お話したい事があります」北高の制服を着た古泉一樹がそこに居た。


意外な人物の来訪にわたしは動揺した。
以前のように情報操作能力が使えれば、動揺する事も無かったのだが、今のわたしは普通の女の子に過ぎない。
古泉一樹に限って無いだろうが、もし襲われたら力で対抗するのは絶対に無理だろう。

迷った挙句、わたしは古泉一樹を部屋に入れた。
彼は腕と額に包帯を巻いており、顔色あまり良いとは言えなかった。自分もあまり変わらないけど。

古泉一樹が部屋に上がってから暫くの間、わたしも古泉一樹も黙ったままだった。
何か言わなければと思いながらも、わたしは古泉一樹のことをあまり知らない。
知っているのは涼宮ハルヒの作り出す閉鎖空間内に出現する神人を討伐する超能力者だという事だけ。

沈黙に耐え切れず、そろそろ何か切り出そうとした時、古泉一樹から切り出した

「突然お邪魔してすいません。今日は貴女にお願いがあってきたんです」


苦笑しながら古泉一樹は続ける。
「最近、長門さんが涼宮さんと彼のことで度々衝突しているんですよ…貴女に長門さんを止めて欲しいんです…」

そう言う古泉一樹の目は必死だった。きっと閉鎖空間の処理で追い詰められているのだろう。
でも、わたしはその願いにNOと答える事しか出来なかった。


「ごめんなさい古泉くん…わたしには…長門さんを止める事は出来ないの」わたしは古泉一樹に答えた。
わたしの言葉に古泉一樹の表情が歪む。


「何故…ですか?一緒に暮らしている貴女なら、多少でも何とかできるでしょう!」
古泉一樹は立ち上がってわたしに怒鳴る。
「そうは言っても…わたしには無理なの…」わたしは俯きながら答えた。

「まさか…貴女は長門さんの味方をするんですか?」
古泉一樹はわたしの方に歩み寄ってくる。

「彼に頼んでもダメ!喜緑さんにも!あなたに頼んでもダメ!…一体どうしろと言うんだぁ!!」

古泉一樹はわたしの胸倉を掴んでわたしに怒鳴る。その目は血走っていた。

「うわぁぁぁぁ!」
胸倉を掴んでいた古泉一樹はそのままわたしを思いっきり横へ投げ飛ばす。
「キャ!」投げ飛ばされたわたしはバランスを崩し、床に倒れる。

床に倒れたわたしが古泉一樹の方へ向くと、古泉一樹は愕然とした表情をしていた。
古泉一樹の視線の先を見ると、それはわたしの体だった。まさかと思い自分の服を確認する。

投げ飛ばされた際に掴まれていた服の前ボタンが千切れて服がはだけ、そこから昨日受けた暴力の痕であるアザが見えていた。


とっさにわたしはアザを隠すように古泉一樹に背を向ける。他人には見られたくなかった。

「朝倉さん、貴女まさか…」古泉一樹がわたしに何か言おうとしている。

「ご、ごめんなさい!お願い!帰って!」
聞きたくない聞きたくない!わたしは両手で耳を塞ぎながら叫んだ。

暫く沈黙していたが、わたしは突然後ろから両手を掴まれて押し倒される。突然の出来事にわたしは混乱した。

押し倒されたわたしの目の前には古泉一樹の顔があり、両手は床に押し付けられて身動きが取れなかった。

「すみません…」
悲しい目をした古泉一樹はそう言って自分のネクタイでわたしの両手を縛る。そして、ボタンの千切れた服を無理矢理脱がした。


「イヤァ!」
わたしは長門さんの暴力によって出来たアザを見られたくなかった。
必死に抵抗しようとしても無駄に体力を消耗するだけで、何も変わらない。

ただ、自分の無力さを呪う事しか出来なかった


どれくらい時間が経ったのだろうか?何もする気が起きない、何も考えたくない。
「…すいませんでした…」
誰かの悲しそうな声が聞こえる。でも、誰か分からない。わたしは壊れてしまった?

ガチャン
扉の閉まる音がした。誰か出て行ったのかな?ああ…体が痛い、べたべたする、お風呂に入ろう…
わたしは立ち上がると、自分がほとんど裸の上体である事に気が付いたが、どうでも良かった。

浴室へと繋がるドアのノブに手をかけたとき、ふと手首にアザがあるのに気が付いた。


「アザ?アザ…アザ…あ…ああああぁぁぁぁ!」

わたしの頭の中に蹴られたり殴られたり、乱暴される映像が駆け巡る。頭が痛い


「朝倉さん!?どうしたんですか!?」「イヤァァァァァァァァ!」


殴られたくない、蹴られたくない、痛いのは嫌だ!どうしてわたしが?なんで?なんでなんでなんで?

「落ち着いてください!朝倉さん!」誰かがわたしを呼ぶ。


「助けて!痛いのは嫌ぁ!長門さん助けてぇ!」
怖くて、助けて欲しくて叫んでいたら、目の前が真っ白になった


|