とてつもなく暇な一日。任務も無く、あの無意味な集まりも無い今日はまさに休日と呼ぶに相応しい。
ただ、この時間平面で休日を貰っても僕にとってはまったく嬉しくもない事実だがな。
まあ貰える物は貰っておこう。さてまず行き着けの床屋にでも行くかあの店はこの時間平面では中々に腕が良い。
「へい、らっしゃい。お!藤原君久しぶりだね!いつも通りでいい?」
「ああ、頼むよマスター」
相変わらず不可解な挨拶をするマスターだ。まあ腕はいいのだから多少の事は気にしないで置こう。
「SASASA散髪だ~マスター!オールバックで頼むぜ!」
何だあのアホは。ん?もう一人客が来たようだ。な!あいつは…!
「ちわっす」
「お!キョン君!これまた久しぶりだね!いつものもみ上げセットでいいかな?」
「ああ、お願いしますマスター…ってお前!!何でこんな所にいやがるんだ!」
「それはこっちの台詞だ!せっかくの休日だったのにアンタの顔を見るとはとんだ厄日だ!」
「それこそこっちの台詞だ!今日は珍しく不思議探索が無かったからたっぷりプライベートタイムを満喫しようと思っていたのに、よりによってお前なんかと遭っちまうなんて何の罰ゲームだ!なあ谷口」
「へ?い、いや俺に振られても」
「黙れ!おいマスター!こんな無意味にもみ上げを伸ばしきっている奴に隣に座られては適わん。追い出してくれ!なあ谷口」
「あ、あのアンタ誰?」
「俺のもみ上げをバカにすんな!お前のギャル男みたいな髪型よかずっとマシだ!なあ谷口」
「お、俺はオールバックだな」
「誰がギャル男だ!さっさと出て行けモミー!!なあ谷口」
「ねえアンタ誰?何で俺いきなり呼び捨てにされてんの?」
「なんだとパンジー!もみ上げはな!もっとも男らしい髪型の象徴なんだよ!!なあ谷口」
「聞いてないよね!俺の話聞いてないよね!」
「知るか!その目障りなもみ上げ今すぐ切り落としてやる!なあ谷口」
「いやそんな物騒な事、俺に許可とるなよ!」
「切られてたまるか!お前こそそのギャル男ヘアーをガリガリ君にしてやる!なあ谷口」
「ちょっ二人共!勝手にハサミ使わないで!やめてってば!聞いてますかー!うわっ危っ!!お、俺のオールバックがあああああ!!」」

 

まったくとんだ災難だ。あのモミーのお陰でせっかくお得意様になった店に出入り禁止になってしまった。
さて次は…DVD鑑賞でもするか。まあそのなんだ、この時間平面の情報をより詳しく知る為にだな。
おっ丁度返却されていたか。さて借りるか…。
「「すいません。コレお願いします」」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「またアンタか!先に並んでたのは僕だぞ!」
「ふざけんな!俺の方が先だ!大体なに借りようとしてんだ!何々『ツインテールの休日』?はっはっはっはっは何だこりゃ!こういうのに興味無さそうな顔してやる事やってんだなこのムッツリめ!」
「グッ余計なお世話だ!アンタこそ『ポニーテールで朝食を』だと?フン、アンタにお似合いの下卑た趣味だな!」
「貴様!ポニーテールをバカにすんのか!あの良さが解らないとはお前のいる未来とやらもつまらんだろうな!」
「何を!ポニーなど所詮は一本!ツインテールの方が一本多いしうなじもバッチリ見える!この性能の差が解らんか!」
「はっ!バカめツインテールには決定的な欠点がある!それはあまり揺れないという事だ!ポニーはその点あえて一本にする事で揺れ幅を大きくし、うなじとのチラリズムを生む!要するに量より質だわかったか!」
「フン!アンタが変態だと言う事はよくわかった!」
「変態はお前だ!」
「いやアンタだ!」
「いやお前だ!」
「ど、どっちも変態さんですぅ~!!」
「あ、朝比奈さん!?」
「あ、朝比奈みくる!?」
「鶴屋さんと見ようと思ってディズニー映画を借りに来たら…ななな、なんて話をしてるんですかっ!」
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっは!キョン君とパンジー君だっけ?二人共こんな場所で猥談はいけないっさー!」

 

くそっ!一体今日は何の日だ?これも全て既定事項だとでもいうのか?
あの変態の所為で朝比奈みくるには軽蔑の眼差しで見られるわ、馬鹿笑い女には痙攣するまで笑われるわ。
不運にも程がある。しかし認めたくないが僕と奴の行動は似ているらしい。なら次はどうする?
僕としては釣堀でのんびり魚でも釣りながら読書をしたいが今までの結果からして奴と遭遇する可能性が多い。
がその裏をかいて喫茶店に行く、という奴の既定事項のそのまた裏をかいてそのまま釣堀に行った方がいいな。
え?もうそのまま家に帰ったらって?うん、それ無理。

「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「おい、お前よお~いい加減にしろやコラあああああ!なんだって行く先行く先、付いて来んだ!そんなオプションはいらん!!」
「アンタこそ何でここにいるんだ!まさか僕が考えた事と同じ事を考えたんじゃないだろうな!」
「気色悪い事を言うな!俺は今日はこの後釣堀に行って読書しながらゆっくり釣りを楽しみたいが、またおまけとしてお前が付いて来るかもしれないのでやっぱやめとこうかな~でもそれじゃ俺がアイツの為に動いてるような気がして癪だからやっぱそのまま釣堀に行こう。そんな事はいちいち気にしない方がいいって?うん、それ無理って思って来たんだよ!」
「うん、それ無理。しか僕と合ってないじゃないか!なのに何で遭遇するんだ!今すぐ立ち去れ!」
「お前が立ち去れ!お前のような奴がいたら釣れる魚も釣れなくなるわ!」
「言ったな!アンタ如きに釣られる間抜けな魚など、ここにはいないぞ!」
「なら教えてやる!俺とお前の釣りの腕の違いをな!」
「望む所だ!茶番に付き合ってやる事をありがたく思え!」
…釣れん。いつもなら間違いなく釣れてる筈なのに何故だ?理由は解っている隣のどうしようもなく無知な阿呆の所為だ。
「おい、アンタ。よりによって何で今日あの下らん茶番が休みになったんだ?」
「いちいち癇に障る言い方をする奴だ。ハルヒの奴が用事があるって言ったんだよ。今日の朝五時にな」
「フン、ご苦労な事だな。あんな傍若無人、厚顔無恥な女に直接振り回されて」
「…振り回されてるのはお前等だろ。というかお前にハルヒをどうこう言われるのはムカつくな。あいつだって仲間思いな所があるんだぞ」
「信じられないな。なんせ気に入らなくなったら世界を壊してしまおうなんていう迷惑極まりない思考の持ち主だ」
「それは橘の言い分だろ。あながち間違っちゃいないが、それは奴の一方的な決めつけだ。俺にとってはあの女の方がある意味迷惑だ」
「…確かにあの女は愚かだが涼宮ハルヒよりはマシだ。あれはあれで頑張っているしな」
「ハルヒだって頑張ってる。あいつは何かしら面白い事をやろうと常に必死なんだ」
「それが迷惑だと言うんだ。大体あんな女と付き合っていたら即ノイローゼになりそうだ」
「お前に如きゃ無理だな。それにあいつにだって以外と可愛い所があるんだ」
「何?」
「昨日の夜なんてそりゃもう可愛かったぞ。舌足らずになりながらおねだりしてくる所なんてもうたまらん」
「フン、そのくらい橘だって毎回している。昨日なんて五回だぞ?羨ましいだろ」
「言った筈だぜ。量より質だとな。俺達が昨日三回のうち一体いくつの体位を試したと思ってるんだ?」
「なら僕達は五回中四回一緒に達した。どうだ、これはお互いの阿吽の呼吸が無ければ出来ない芸当だろう」
「やれやれ…言っとくが俺達は三回中三回一緒にイった。愛なら俺達の方が上だな」
「何をバカな事を。回数では僕達の方が上だ!それに三回までは一緒に達していた!」
「けど結局四回目は一緒じゃ無かったんだろ!なら確率的に俺達の方が上だ!」
おのれやはりコイツとは決着をつけならばならないようだな!おや?誰かコッチに向かって走って来るようだが…。
「アンタ達…こんな所で何話してんのよおおおおおおおおおおお!!!」
「はっハルヒいいいいいいいいいい!?」
「はははは!とんだ茶番だな!せいぜい痴話喧嘩を盛り上げるといい!」
「ふ~じ~わ~ら~く~ん」
「た、たたたたた橘!!?」
「京子って呼んで!!」
「きょ、京子なんでここに!?」
「たまたま近くを通りかかったら信じられない事を大声で叫んでる二人が見えてたのよね~」
「キョ~ン~とそこのアンタ!二人共…」
「「恥を知れえええええええええええええええええ!!!!!!」」
「「どわああああああああああああああああああああああああああああ!!」」

「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「やっぱり今日は厄日だ…」
「それは俺の台詞だ…」
「「やれやれ」」

 

  完

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最終更新:2007年12月09日 08:04