朝比奈さんと旅行をすることになった。知っての通りあまり口外できるものでもなく、ひっそりと冬の三連休にいくということになった。
 行き先が日光なのは、紅葉の枯れかかった山の色が好きとかいう年寄りくさい発想でもなく、手軽だからという感じだった。
 インターネットでホテルの予約をとるときなんかは二人で顔を紅くしてパソコンの画面を見つめたりして、うれしはずかしといった感じだった。
 と、いうわけで日は過ぎて。
 
妹が入ってないかよくバッグをあさったりして、朝6時には待ち合わせの駅に着いた。朝比奈さんは先にいた。まだ薄暗いなかでも目立つ白をベースとした暖かそうな格好で思いっきり手を振ってきた。
日の出がまだだった。駅前の暖房の効く店内でチーズバーガーとコーヒーとポテトを二つずつ待っている時に朝日がさしてきた。コーヒーを飲んで、「五臓六腑に染み渡るなあ。。」なんて言葉に笑う幼い顔が可愛かった。
朝から手を繋ぐのはちょっとはずかしかったので、俺の荷物と朝比奈さんの荷物を両手に持って歩いた。
車内はちょい通勤ラッシュということで、座るところが無いので、ドアに二人でよっかかった。
朝日に照らされる町がなかなか綺麗だった。すぐ乗り換え。浅草へ。
しりとり?ああ、、やりますか。
リンゴ「ゴリラ」ふふラッパ、、。
浅草には7時半に着いた。日光行きは9時頃の特急に乗ろうということで浅草寺へ。
「浅草のデパ地下でお弁当買いますか。」
「作ってきました。」
 ワロスワロスですね。という会話は車内であった。
 大きな提灯の前で初老の男の人に写真を撮ってもらった。
「恋人かい?」と聞かれて。
「はい」と異口同音なのはいいなやっぱり。
 はずかしがらずに言えるのはまだ先みたいだけど、俺も。
 浅草寺に行くまでの店であげまんをかった。いけませんか?
 なんか大きな線香入れみたいのがあって煙が出てる。
あの煙を悪いところにつけるというかかぶるとそこが悪くなくなるらしいですよ。と。言った。
朝比奈さんはどこにつけるかなー。顔?嫌味かな。
「私ドジだから。」
「そ、そこも悪いところではないですよ。」と言って俺も頭につけた。
 階段を上り。パン!パン!お参りをして目をつぶって願をかけるとき、どんな顔して祈っているのかと朝比奈さんを見れば、朝比奈さんと目があった。えへへって笑うなよ。抱きしめたくなる。
 とまあ旅行が無事にうまくいくことを祈って。おみくじ売り場へと階段を下る。
「なんて祈ったんですか?禁則事項ですか?」
「そうです。禁則事項です。」
 そうですか。はは。
 吉が俺で、朝比奈さんが中吉。
「朝比奈さんくくらなくてもいいんですよ。凶じゃないんですから。」
 
 
 
 特急券を買って、しばし寒い閑散としたホームで待つ。
 隣に座る。ベンチの近くに鳩がいる。
「鳩ってあんなに首振っても脳震盪にならないんですね。」みくるさんが虚ろな目をしていった。
「眠いんですか?」
「いいえ。」
 茶色い髪を俺の肩へ抱きしめた。
「ちょっと寝ても大丈夫ですよ?」
「えへへ。」可愛いなあ、、。
 キョンくんよろしくね。と言って肩によっかかってきた。心地よい重さ。
 「よろしく」がいつの時間帯をさすのか。これからずっとか、それとも旅行についてか。
「ずっと、、。」
 倒置法ですか。小悪魔ですね。と思った。
 鳩が飛びだった。俺たちの進行方向へ飛びだった。鳩ってあんなに長く飛べるんだ。俺は見えなくなるまで鳩を目で追った。左肩に暖かさを感じながら。
 鼻歌をしてみる。もみじ。秋の夕日にふふふふもみじ。
 ふーふふふーふーふーふーふんふーふーふーふんふーふーふー。
 優しげな風が背中の方から吹いてきた。なんか朝比奈さんが香る。シャンプーとリンスのにおいだ。良いにおいだ。
 電車がやってきた。が、後10分ぐらい待たなければいけない。車内を清掃してもらうのだ。起こすことないし、もう少しこうしていたかった。
 ふーふふふーふーふーふーふんふーふーふーふんふーふーふー。
 ふーふふふーふーふーふーふんふーふーふーふんふーふーふー。
 もうそろそろ行こう。
「朝比奈さん電車来ましたよ。」
 ここでキスはしないほうがいいだろうな。
 朝比奈さんのバッグを持ってあげる。彼女は席を立って僕の左肩の代わりに左腕を抱いた。
 いやあ心地よい重さだなあ。
 電車の中で花札しましょうねと言われた。
「そうですね。ところで窓際と通路側どっちがいいですか?」
「ひざの上がいいなあ、、。」
 小声でなに言ってんだこの人
「キョンくんこれからよろしくね。」
 小悪魔ですね。と思った。
「あたしはどっちでもいいかなあ。」
 結局俺が通路側だった。俺も朝比奈さんの隣ならよかったんだ。景色より朝比奈さんですよね。
 静かに電車が旅立った。隣に朝比奈さんがいる。
 2両目のトイレ側の2席で、通路を挟んで隣に人はいなかった。駅からとってきたパンフレットof日光を二人の間で開く。ああなんかいいな。
「夕ご飯はなにがいいかなあ、、、。」と言ってまじまじとパンフを見る彼女。
「俺が決めてきましたよ。輪王寺の近くにあるレストランです。」
「楽しみだなあ、、。」
「ね。」
 
 
 
 
 彼女の一喜一憂が楽しい。札がめくられるごとに口から目から体まで反応する彼女を見続ける。特に、口の前に札を当てて笑みと興奮を隠そうとする仕草はいい意味でやばかった。
 花札で賭けようと言ったのは朝比奈さんだった。彼女が可愛らしい小さなノートを千切り、その一枚一枚に何か書いた。上に「いうこと聞く券」と書かれたその紙。
「この券に書いたことを絶対に守らないといけません。勝った方にあげます。えへへ。」
 なんつって5連敗している朝比奈さん。一枚取るまでは止められないようで、見事6連敗を達成した彼女は目がうるるとしてきて、7連敗して泣いた。
 僕はしかたなく彼女に二枚プレゼントした。5枚あれば十分楽しめる。彼女はその可愛い「いうこと聞く券」を大事そうにポッケに入れた。
「キョン君昼食にしませんか?」
「いいですね。俺お茶買って来ますね。」
「はい。よろしくお願いします。」
 販売車でお茶とチョコとペンを買って、俺はなんでもいうこと聞く券を取り出した。
買ったばかりのペンで「食べさせて下さい」と書く。
楽しい旅が始まるなあ、、。と強く思った。
 
 
 

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