放課後、俺はいつものように部室にて古泉と将棋をしていた。
まだ俺と古泉の二人しかいない。ふむ、ハルヒと朝比奈さんはともかく長門がいないのは珍しいな。
まあ大方コンピ研にでも行っているんだろう。そのうち来るだろうと古泉へ止めの一手を刺そうとした瞬間だった。
 
バァン!!!ガタァン!!
 
もの凄く乱暴に扉が開いた。……この音を聞いた瞬間、俺は誰が扉を開けたのか理解した。こんな乱暴に扉を開けるヤツは一人だけだ。
 
「おいハルヒ!そんな乱暴に開けたら扉が壊れ……」
 
あれ?そこに居たのはハルヒでは無く、可憐なエンジェル、朝比奈さんであった。
おかしいなあ、確かに物凄い乱暴にドアが開く音がしたんだが。しかし朝比奈さんがあんな乱暴にドアを開けるはずもないし……
 
「どうかしたんですかぁ?」
 
愛くるしい小動物のように首をかしげるそのお姿はやはりいつもの朝比奈さんであり、先程の音とは釣り合いがとれない。
うん、さっきのは幻聴だな。きっといつものハルヒの音に慣れすぎてしまい……
 
ドドン!!ガタァン!!
 
と、脳内フォローをしているうちにまた乱暴に扉が開いた。今度こそハルヒかと思って振り向いたが……
 
「な、長門?」
「コンピ研の手伝いをしていて遅れた。」
「そ、そうか……」
「そう。」
 
受け答えはいつも通りなのだが、長門鑑定士一級を持っている俺から見ると、何やら負のオーラを放っている。
俺は目の前の超能力者に小声で話しかけた。
 
「おい、なんかみんな変じゃないか?」
「確かに、僕の認識では、お二方ともあんなに乱暴に扉を開ける方では無いはずですが……」
「やはりアレは幻聴じゃなかったのか……しかし」
 
ガコォン!ドタン!バタァン!!
 
またまた物凄く乱暴に扉が開かれた。これはもうハルヒで確定だが、それでも普段のハルヒの2倍は乱暴な音がしたような気がするぞ。
 
「おいハルヒ!そんな乱暴な開け方すると扉壊れるぞ!」
「そうねぇ~、気をつけるわ~」
 
なにかがおかしい。ハルヒの態度もいつもと違う。俺は思いきって聞いてみることにした。
 
「な、なあ。ハルヒも長門も朝比奈さんも、なんかいつもと違うような気がするんだが……なあ古泉。」
「え、ええ。そうですね。何かあったのでしょうか?」
 
その問いにハルヒは、営業スマイル的な笑みを浮かべた。
マズいな。この顔をしている時は大抵……
 
「べっつに~、あたし達は全然怒ってないわよねぇ~?」
 
怒っているのを隠している時の顔である。
 
「そうですよぉ。全然怒ってなんていませんよぉ?」
「……ない。」
「ところで古泉くん、今日って何日だったかしら?」
 
ハルヒが古泉の方を向いて尋ねた。古泉はとっさにいつもの笑みを浮かべて切り返す。
 
「今日ですか?今日は、3月の15日でしたね。……あ」
 
完璧な返答。しかしその後に何かに気付いたらしく、営業スマイルがどんどん蒼白になっていく。
一方の俺も気付いてしまった。何故こんなに女性陣の様子がおかしいのか、全てを理解した。
 
「別に、ホワイトデーだとかそんなものを楽しみにしてたワケないじゃないのよ~。」
「そうですよぉ。でも私達はあんなに頑張って企画したのに、まさか何にも無かったなんて予想外でしたよねぇ。」
「まったく怒ってはいない。別に日付が変わる瞬間まで何かを期待していたなんてことはまったく無い。」
 
ああ……そうですよね、そりゃ怒りますよね……
そう、俺と古泉はホワイトデーをすっかり失念して居たのだ。バレンタインデーにあれだけの企画をやらされておきながら。
俺は古泉にアイコンタクトを取る。古泉も頷いた。そう、俺達が今すべきことは1つだ。
 
「「すいませんでしたァ!!」」
 
決まった!俺と古泉の華麗なるジャンピング土下座!!
結局部活終了まで逆立ちの刑を受けた上で、最低一人につき一万円以上のプレゼントをすることでようやく許してもらえた。
ほんとすみませんでした。ハルヒ、長門、朝比奈さん
そして、無意味なとばっちりを受けた、我が部室の扉よ。
 
終わり


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