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素直なキモチ~第2話 墓参り~2

実際には数分だろうが、俺には何時間にも感じられた。ハルヒはまだ顔を埋めているが泣き声はおさまり、今は鼻をすする音だけがしていた。
ハルヒがこうしている以上、俺もまだ抱きしめざるおえない。だがよく考えると、俺はいまとんでもなく恥ずかしい事をしているわけで・・・とうさん、しかも相手はあのハルヒだ。 普段ならたとえ天地がひっくり返ろうとも起こり得ないだろうが、な。


「・・・・・・もう・・・大丈夫・・・」


俺の胸で小さくそう言うとハルヒは、バッと俺から離れた。そしてこちらに背を向け腰に手をあて仁王立ちし、


「あぁーー泣いたわーー」


と、まるで中年サラリーマンが「あぁー喰った喰ったー」と言わんばかりの口調で吠えた。コラッ、ハルヒ! 女の子がなんて口の聞き方をするんですか!! お兄さんの前ではしたない!


「へーきよ! お兄ちゃんは心が広いの。この位で怒ったりしないわ」


どうやらさっきまでのしおらしいテンションから、いつものに戻りやがったようだ。もう少しさっきの状態が続いてたら俺は・・・どうなってただろ?
ハルヒはなにやら手で顔をゴシゴシしている。涙跡でも拭いてるのか。ハンカチを使いなさい、女の子なんだから! って、まぁこの方がいつものこいつらしくて・・・いいか。
そしてくるっと振り向いたコイツの表情は、いつもの100Wスマイルだ。


「・・・どうだ? スッキリしたか? 」
「7年分泣いたわ! 」
「そうかい」


それから俺達はお墓を掃除し、花を供えた。先にご両親が来ていたのであらかた綺麗になっていた為、たいしてする事は無かったが、それでもハルヒはなんだか楽しそうだった。
墓前には他にハルヒが買ったお煎餅詰め合わせとホットのお茶缶を供え、最後にお線香をあげた。
ハルヒは墓前でしゃがみ、俺はハルヒの後ろで立ったまま手をあわせた。・・・俺はお兄さんに言いたいことがあった。


~はじめまして。突然水知らずのむさくるしい男が挨拶してすみません。俺はハルヒの・・・妹さんの友人の一人です。
一言だけ、言わせて下さい。


ハルヒを助けてくれて、有り難うございます

 


「・・・・・・キョン、悪いけどお兄ちゃんと二人にさせて」
「? ・・・あぁ」


暫く手をあわせた後、ハルヒは、正面を見据えたままで言ってきた。まぁ、ハルヒも復活して落ち着いた所で、兄妹水入らずで話したい事もあるだろう、俺はH区画を出て、通り沿いにある近くの自販機で缶コーヒーを買い、隣のベンチに腰掛けた。ここからでもハルヒの姿は小さくだが見える。だが声は聞こえない。


――改めて言うね。ごめんなさいお兄ちゃん、今まで会いに来なくて。なかなか気持ちの整理がつかなくて、お兄ちゃんが・・・・・・死んだ事実を受け入れる事が出来なくて、今日まで掛かっちゃったけど、もう大丈夫よ。
 それと・・・助けくれてありがとう。おかげであたし、いまここにいる事ができる。もしあのままだったら、あたし・・・・・・。
お兄ちゃん、あたし聞いちゃったんだあの病院で。もしあのままだったら・・・あたし、中学生になれない、そこまで生きられなかったって事。
 あれはたしか病院に初めて入った日、たまたま親父たちが先生と話してた部屋の前を偶然通りかかった時にね、聞こえちゃったの。でもその時のあたしは、自分が死ぬかもしれないって事にピンとこなかった。後になって、これはお兄ちゃんや皆に会えなくなる事なんだとわかった時はものすごく怖くなった。だったけど、すぐにそれほど感じなくなったの。だって中学生になるまでは生きられる。その頃のあたしは中学生ってすごい大人に感じてたから、大人になるまで大丈夫だわって。すごい子供よね。だけどある意味すごいポジティブ。おかげでその後は普通に過ごせてたんだけどね。
 そしてその後よね、お兄ちゃんが助けてくれたのは。たしかあの時、お兄ちゃんも親父たちと一緒に話聞いてたんだよね。だけどそんな素振り見せずに、普通にあたしに接してくれた。元気付けてくれた。だからほんとお兄ちゃんには感謝してもしきれない・・・命の恩人だもん・・・・・・でもだからって、お兄ちゃんが身代わりになること・・・ないのに。・・・お兄ちゃんが中学生になれなくなること・・・ないのに・・・。神様って残酷だよ・・・ひどいよ・・・。どうしてお兄ちゃんに力をあげておいて・・・お兄ちゃんを連れていったの? ・・・どうしてあの力で、助けてくれなかったの? どうして!? ねぇ、どうして!! ・・・・・・やっぱり、だめ・・・お兄ちゃん・・・こんな別れ方、悲しいよ・・・いやだよ・・・お兄ちゃんがかわいそすぎるよ・・・・・・会いたい・・・お兄ちゃん・・・もう一度会いたいよ・・・会って・・・話がしたい・・・・・・・・・


<・・・ルヒ・・・ハルヒ>
 ・・・・・・・・・・・・えっ?
<ハルヒ>
 お・・・にいちゃん?
< 久しぶり、ハルヒ>
 お兄ちゃん? ・・・ほんとにお兄ちゃん!?
<久しぶりだからって、もうお兄ちゃんの顔を忘れたのかい? >
 ううぅん・・・忘れるわけ・・・・・・忘れるわけないじゃない! ・・・グスッ
<フフッ、それより、もう高校生か。それじゃお姉ちゃん、だね>
 ちがうわ! お兄ちゃんはお兄ちゃん、あたしがお婆ちゃんに
 なっても、お兄ちゃんだからね!
<そういう頑固なところは変わってないな>
 そうよ! あたしはあたし。今までも、そしてこれからも変わらない
 わ!
<そうか。でもほんと、元気になってよかったよ>
 うん、お兄ちゃんのおかげだよ。お兄ちゃんが助けてくれたか
 ら・・・あたし・・・ここまで・・・
<ちがうよハルヒ、お兄ちゃんはちょっと手伝っただけ。
 あとはハルヒが頑張ったからだよ>
 お兄ちゃん・・・グスッ・・・ありがとう・・・
<ハルヒには辛い思いをさせちゃったね。ごめん>
 ううぅん、お兄ちゃんが謝ることなんてない・・・
 謝らなきゃいけないのはあたし・・・だって・・・
<会いに来なかったことかい? 気にしなくていいよ>
 お兄ちゃん・・・
<実はお兄ちゃんは今までずっと、ハルヒのこと見てたんだぞ>
 えっ!?  ほ、ほんと?
<そうさ。ハルヒの・・・あんな事や・・・こんな事や・・・>
 えっ!? ちっ、ちょっと!? ・・・ど、どこまで知ってるの!?
<言っていいのか? そんな恥ずかしい事>
 ちょっ、ちょっと待って! は、恥ずかしい事って・・・
 あれとか・・・こ、これとか・・・だっ、だめだめ!! いやあぁぁっ~!! 
 やめてえぇぇ~~!! ぜ~~~ったいに言っちゃだめ~~~!!
<・・・そんなに恥ずかしい事があるのか、ハルヒ? >
 へっ?
<うっそぴょ~~ん! >
 ・・・お、お兄ちゃん?
<ハハハハッ!! ビックリした!? これでまたお兄ちゃんの勝ちだな>
 ・・・お兄ちゃん・・・やられたわ、まだまだ修行が足りないわねあた
 し・・・
<そうさっ!  お兄ちゃんに勝とうなんて100万年早いさっ! >
 はいはい、恐れ入りました
<ところでさっきの恥ずかしい事ってなn・・・>
 だめっ! ぜっったいにいや!!
<ちぇっ、冥土の土産に教えてくれてもいいじゃん。いままでいろん
 な事教えてあげただろー? >
 冥土の土産って・・・小学生が使う言葉とは思えないわね・・・
<何言ってるんだハルヒ、あれから7年経ってるんだ。
 もう小学生じゃないんだぞ>
 どういう事?
<つまり、こっちの世界でも成長してるって事。
 姿、形は死んだ時点で止まっちゃったけど・・・>
 そ、そういう物なの? そっちの世界って。
 ふ~ん、勉強になったわ。ねぇお兄ちゃん、もっと教え・・・
<うっそぴょ~~ん!! ま~た引っかかった~>
 ・・・・・・ハァ、なんか疲れたわ。今まで悲しんでた事がものすごく
 腹立たしくなってきたわ。
<そうさ、もう悲しむ事はないんだよ、ハルヒ>
 え!? お兄ちゃん?
<そりゃ、お兄ちゃんもハルヒともっと一緒にいたかったけど・・・
 でも今は結構幸せな気分なんだ、ハルヒが元気になってくれて>
 ・・・・・・・・・・・・あり・・・がとう
<ん、どうしたんだハルヒ? >
 ・・・お兄ちゃん、せっかくの機会だから何もかもぶちまけるわ。
 あたし、もう一つ謝らなければならない事が・・・あるの
<なんだ?>
 あたし・・・あたしね・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<・・・そうか・・・>
 ごめんなさい。あたしお兄ちゃんを、裏切るとこだった・・・
<それで? >
 えっ?
<それで今は、どうなんだ? >
 ・・・うん、大丈夫、大丈夫よ
<本当だな? >
 本当だよ、大丈夫
<ハルヒッ!  >
 はいっ!
<お願いだ・・・もう二度とそんな事、考えないでくれ>
 うん、わかったわ。ごめんね、もう絶対そんな事しない!
<そうか、よかった。もしやったらお兄ちゃん化けて出るからな~>
 ・・・お兄ちゃん、それじゃぁ今のあなたは・・・なに?
<・・・・・・そ、そういえば~>
 なに話はぐらかそうとしてんのよ
<一緒に来てる人は、彼氏? >
 なっ! なっ! しょっ小学生がそんな事聞くもんじゃありません!!!
<こんな時だけ子供扱い? 僕はハルヒの兄だぞ? ハルヒだって
 いつまでもお兄ちゃんはお兄ちゃんって言ってたじゃないか。
 それに兄として可愛い妹の幸せを願うのはトーゼンだろ? >
 ああああああのね~、あいつはそそそそんなんじゃなくて~、
 あの、その、そそそう! ボディーガードよ! あたし団長だから!
<・・・じゃあ質問を変えよう。あの人の事好き? >
 言い方変えただけじゃない!! しかもさっきより直接的になってる
 し・・・
<どうなんだハルヒ? 答えてくれないと、お兄ちゃん化けて出るから
 な>
 だからもう出てるんじゃ・・・って、もうしょうがないな~・・・ん~~
 何ていうのかな~一緒にいると安心ていうか、落ち着くっていう
 か~・・・
<ハッキリしなさいっ! >
 ひぇっ! は、はい・・・好きか嫌いかと言えば・・・・・・嫌い、じゃない
 わ。す、好き? なんだけど~~ん~~!? そう、お兄ちゃん。
 お兄ちゃんみたいな感じがする・・・て・・・えっ? なに?なにこの感
 じ? ・・・なんか前にも感じたような・・・
<そうかい、わかったよ。じゃあ一言だけ兄として言わしてもらうよ。
 ハルヒ、あの人は・・・ダメだ>
 えっ!? ・・・・・・どうして? ・・・・・・
<お兄ちゃんにはわかるんだ。あの人は、ハルヒを幸せに出来な
 い、逆に不幸にさせる>
 お兄ちゃん・・・お兄ちゃんはあいつの・・・キョンの何がわかるって
 言うの・・・何を知ってるって言うの・・・?
<わかってしまうんだよ。ハルヒも知ってるだろ? お兄ちゃんの不思
 議な力の事を? >
 力が何だっていうの!! そんなもんでキョンの何がわかるっていう
 の!?
 キョンは・・・そりゃちょっと頼りないとこもあるけど・・・マヌケ面だ
 し・・・でも優しくて・・・時には怒ってくれて・・・いつもあたしのこと
 見ててくれて・・・今日だってあたしが心配だからってついてきてく
 れて・・・だから・・・力が何だろうと、あたしはキョンと一緒にい
 るのが楽しいのっ! 嬉しいのっ! いくらお兄ちゃんでもキョンのこと
 悪く言うのは、あたし許さないからっ!!
<・・・今の言葉、本気か? >
 ええ、本気よ!! ・・・・・・・・・・・・って、えっ?
<フ~やれやれだね、まったく素直じゃないんだから>
 えっ? えっ? なに? ひょっとして・・・また?
<うっそぴょ~~ん! >
 ・・・・・・・・・・・・え!?
<安心しな。いくら力を使ってもそんな事わかるわけ無いよ。それ
 に未来なんていくらでも変えられるしね。・・・ただ、やり方に
 よってはそういう未来になるかもしれないけど>
 ・・・・・・させない
<ハルヒ? >
 あたしは・・・絶対に不幸な未来にはさせない!
<そうだね。ハルヒなら出来るよ>
 もちろんよ!
<ところであの人、さっき僕に挨拶してくれたんだ。ハルヒを助けて
 くれて有り難う、って>
 えっ! キョンが!? そ、そう・・・キョンが・・・そう
<あの人はどんな人? >
 あ、あいつは鈍感なのよ、ニブチンなの!
 ・・・あたしの気持ちなんかに・・・気付いてくれないし・・・
<誰かさんと似たりよったり、かな>
 あたしは鈍感じゃなくて、素直じゃないだけよ!
<ということは、認めるんだね。”好き” だって>
 えぇっ!? ・・・うん・・・・・・好き
<よし!  素直でよろしい!  >
 ・・・・・・もう、ほんとお兄ちゃんには敵わないわ。
<トーゼン!! ・・・・・・じゃあ、お兄ちゃんはそろそろ行くよ>
 どこへ?
<どこへって・・・ハルヒ? >
 あっ! ・・・・・・ご、ごめんなさい・・・・・・うん
<ハルヒ、お兄ちゃんの事はもう気にしなくていいからな。これから
 も自分の好きなように、生きてくれ>
 うん・・・お兄ちゃん?
<なんだ? >
 ありがとう
<うん、じゃあね! >
 ほんとに、本当にありがとう・・・・・・お兄ちゃん
 ・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・
 ・・・・


・・・ルヒ・・・ハルヒ
「・・・・・・お兄ちゃん・・・? 」
・・・ハルヒ・・・ハルヒ!
「・・・え? ・・・」
・・・ハルヒ ! しっかりしろ!
「・・・・・・キョン・・・? 」
「大丈夫か! おいっ、しっかりしろ! ハルヒ! 」
「キ、キョンッ!! 」


ガバッ! ゴツンッ!!

「・・・っ痛たたたたたっ、て何してんのよこのバカキョン!! 」
「・・・っ痛~~~~~っ、てそりゃこっちのセリフだ石頭!! 」


両手で額を押さえ、明らかに今までとは違う涙を滲ませてるハルヒ。
両手で額を押さえ、今までなんとか我慢していた涙を滲ませてる俺。
・・・説明しよう。
俺はハルヒを抱き起こしていたんだが、気が付いたこの石頭がいきなり起きあがろうとして、心配で顔を覗き込んでいた俺にヘッドバッドを喰らわしやがった。以上。で、何でハルヒを抱き起こしてたかって? べつに変な事しようってんじゃないぞ。


「ああああんた! このあたしにななな何しようとしてたのよエロキョン!! 」
「何だと! 人が心配で助けてやったのに、そんな言い草はねーだろ!! 」
「えっ? どういうこと? 」
「はあっ? 覚えてないのか? 」


俺は説明してやった。
通りのベンチでコーヒー飲みながらハルヒの様子を見てたら、いきなりこいつが倒れたので俺は飛んできた、という事を。
ハルヒはキョトンとした表情で、


「あたしが、倒れた? 」


そこでハルヒはようやく辺りを見回し、いま自分が墓前で倒れていた事を認識した。そしてゆっくりと立ち上がり、尻をはたいた。俺も立ち上がり、ハルヒの背中をはたいてやった。


「一体どうしたんだ? いきなり倒れやがって。具合でも悪いのか? 」
「ねぇ、あたしどの位倒れてたの? 」
「はぁ? そうだな、倒れたのを見て、駆けつけて、頭突き喰らうまで2,3分てとこか」
「・・・そう、そうなんだ・・・」
「・・・? とにかく、ベンチで少し休もう。歩けるか? 」
「うん・・・」


なにやら不思議そうな顔でベンチへ向かうハルヒ。某ニュータイプ専用マシンのファンネルのように、? マークが頭の周りを飛び回っているようだ。俺は自販機からホットのお茶と二本目のコーヒーを持って、ハルヒの隣に座り、お茶を手渡した。


「ありがとう・・・」
「とりあえずそれ飲んで落ち着け。話があるならその後で聞いてやる」
「うん」


カポッ
ハルヒは両手でお茶缶を暖かそうに持ち、一口啜った。
俺も二本目を開けた。いったいどうしたってんだ?

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