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 翌日の朝。俺は懐かしい早朝ハイキングコースを歩いて学校へと向かっていた。
 とは言っても、向こうの世界じゃ毎日のように往復していたけどな。
 
 北高に入り、下駄箱で靴を履き替えていると、
「おっ。キョンくん。おはようっさ。今日もめがっさ元気かい?」
「キョンくん、おはようございます」
 鶴屋さんの元気な声と朝からエンジェル降臨・朝比奈さんの可憐なボイスが俺を出迎えてくれた。
何か向こうの世界じゃ何度も聞いていたのに、帰ってきたという実感があるだけで凄く懐かしい気分になるのはなぜだろう?
 
 靴を履き替え終わった頃、長門が昇降口に入ってきた。
「よう、今日も元気か?」
「問題ない」
 声をかけてやったが、やっぱり帰ってきたのは最低限の言葉だけだ。ただし、全身から発しているオーラを見る限り
今日の朝は気分はそこそこみたいだな。
 
 階段を上がっている途中で、なぜか生徒会長と共にいる古泉に遭遇する。
「やあ、これはおはようございます――どうしました? 何かいつもと雰囲気がちょっと違うように見えますが」
「朝からお前と遭遇して、せっかくの良い気分がぶちこわしになっただけだ」
「これは手厳しい」
 ふと、俺はあることを思い出し、古泉と生徒会長を交互に見渡して、
「とりあえずご苦労さんとだけ言っておく」
「はい?」
 俺の台詞の意味がわからず、呆然とする古泉と生徒会長を尻目に俺は自分の教室へと向かった。
 
 そして、教室に入ってみれば、ハルヒのしかめっ面が俺をお出迎えだ。
少しはこっちの気分を読んで欲しいぞ、全く。
「遅い! せっかく良いもの見つけたから、朝ご飯食べながら学校に走ってきたのに!」
「お前の都合でどうこう言われても困るぞ」
 団長様のありがたい怒声を聞きつつ、俺は自分の席に座る。
 見ればハルヒは机の上にチラシを沢山並べていた。どうやら何かの催しの案内らしいな。今度は何だ。
全米川下り選手権にでも丸太に乗って参加するつもりか?
「ほら見てよ、これって凄くおもしろそうじゃない? ついでにSOS団のアピールもバッチリだわ! これは――」
 意気揚々と語り始めるハルヒ。俺はそれを耳から垂れ流しつつ、ちょっとした考え事に入る。
 
 最初に言っておくが、これは昨日の夜家に帰って風呂に入りながら考えた俺の妄想だ。
 俺はずっと向こう側の世界に行って、SOS団を作り上げるまで試行錯誤しまくってきたわけだが、
実際のところ不可解な点もたくさんあるのが実情だ。
 特に情報統合思念体については明らかに矛盾している点がある。連中は長門によるハルヒの力の使用は二度あって、
一度はハルヒのリセットで隠蔽、もう一つは直前で阻止したようだったが、今俺が帰ってきた世界の長門の世界改変分が
カウントされていないのはなぜだ? 最初に聞かされた話じゃ、ここの連中とあっちの連中も結局は同じもののはずだからな。
そう考えれば、俺の知る限り長門による力の行使は三回あったはず。これはあきらかに矛盾している。
 じゃあ、実はハルヒの勘違いで、こことあっちの連中は実は別物と言う可能性はどうだろうか? 一応パラレルワールドみたいなものだし、
その分だけ情報統合思念体が存在していてもおかしくはない。が、それはそれで矛盾がある。見たところ同じような考えを持った
存在だったことを考えれば、この世界で長門が世界改変を実施したら、同じように長門の初期化、さらにハルヒの排除という
流れになるんじゃないだろうか。向こうの連中は過剰反応しただけで済ませるにはどうにも腑に落ちない。
 
 まあ、なんだ。前置きが長くなったが言いたいことはこういうことだ。
 俺が去った後にリセットされてやり直されている世界――それが今俺のいる世界なんじゃないかってね。
 つまり俺はずっとここに至るまでの軌跡をずっと描き続けてきたってことだ。
 情報統合思念体にも実は俺たちとは違うが時間の流れみたいなものがあって、あの交渉の結果、
この世界では長門の世界改変がスルーされた。約束通りに。
 それだといろいろつじつまの合うことも多い。
 ハルヒがどうして宇宙人(長門)・未来人(朝比奈さん)・超能力者(古泉)・異世界人(俺)がいることを望んでいたのか。
それは最初からSOS団を作るために、探していたんじゃないだろうか。だからこそ、不思議なことを探してはいるものの、
全員そろっている現状に密かに満足しているのではないのか。それだと唯一いないと言われている異世界人は、俺だし。
 それに……
 ――――
 ――――
 ――――
 なーんてな。考えすぎにもほどがある。本当にそうなら、今目の前にいるハルヒは自分が神的変態パワーを持っていることを
自覚していることになっちまうが、それなら最初に世界を作り替えようとしてしまったこととか、元祖エンドレスサマーとかの
説明が全くつかなくなってしまう。自覚してあんなデリケートな性格になっているんだから、あえてやるわけがない。
普段の素振りを見ても、そんな風にはとても見えないしな。自覚しているハルヒを知っている身としては。
 ……ただし。
 
 ――あんたの世界のあたしがうらやましい。何も知らずにただみんなと一緒に遊んでいられるんだから――
 
 この言葉が少々引っかかるが。
 まあ、どっちにしろ凡人たる俺にそんなことがわかるわけもない。一々確認するのも億劫だし、面倒だ。
現状のSOS団に満足しているのに、わざわざヤブを突っつく必要なんてあるまい。
 俺の妄想が本当かどうかはその内わかるさ――その内な。この世界も別の神とか宇宙的勢力とか出てきて、
まだまだ騒がしい非日常が続いて行きそうな臭いがプンプンしているし。
 
「ちょっとキョン! ちゃんと聞いているの!?」
 突然ハルヒが俺のネクタイを引っ張ってきた。やれやれ、妄想もここまでにしておくか。
 俺はハルヒの手をふりほどきつつ、
「で、次はどこに連れて行ってくれるんだ?」
 その問いかけにハルヒはふふんと腕を組み、実に楽しそうな100W笑顔を浮かべて、
 
「聞いて驚きなさい。次はね――」
 
 
 
 ~涼宮ハルヒの軌跡 完~

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