素直なキモチ~第2話 墓参り~1

お兄さんのお墓は、ここから電車で1時間位、郊外の公園墓地にある。ということで、今俺達は車中の人だ。俺達は四人がけのボックスシートに向かい合わせで座っている。休日だというのに俺達が乗っている車輌には他に誰もいない。


「休日だというのに、ずいぶん空いてるわね。こういう時こそ外出してお金使わないと、日本経済が滞ってますます不景気になるじゃない。金は天下の回り物って言うけど、自分で回さなきゃダメなのよ」


窓枠に頬杖をつきつつ、車内を見回して呟くハルヒ。それなら少しは俺に労いの言葉を掛けてくれよ。ほぼ毎週末、俺にしてみればかなり回してるぜ。それといつからお前は経済アナリストになったんだ? お前は森〇卓郎か? ミニカー何台持ってるんだ? いらないなら俺にくれ。それを売って日本経済の前に俺の経済を回復させたいからな。
それよりまだなにか企んでるのか? それで人払いしたんだろ?
それは見事的中。だがこの話は俺に新たな衝撃を与えた。
まぁ、聞いてくれ。


「あたしね、中学の時・・・お兄ちゃんに会ったの」
「えっ? どういうことだ? 」
「もちろん本人じゃないわよ。正確には、お兄ちゃんによく似た人」
「・・・? 」
「中学一年の時、あたしは夜中にある事をしようと中学校に忍び込もうとしたの。そしたら<その人>が現れた。<その人>は高校生だったわ。なんで分かるかって? 制服を着てたのよ、それも北校の。おまけに<その人>女の子をおぶってたわ。怪しいと思わない? 真夜中に女の子をおぶってさまよってるなんて。・・・まぁ怪しさでいえばその時のあたしも負けていなかったけどね」


そんな事で勝負するんじゃない! 頬杖ついたまま、先程までの経済的観点による車内巡視が終了し、その矛先を車外へと転じたまま語るハルヒ。それよりなんだか既視感を感じる話なんだが、ある事ってまさか・・・一応突っ込んどくか? いや、止めておこう。藪を突付いてハルヒが出てき兼ねん。「じゃじゃじゃじゃ~ん! 」ってな。


「<その人>が言うには、おぶってるのはお姉さんで、なんでも「眠り病」とかいうのに掛かってるんだって。暗くてよく見えなかったけど、どう見ても年上には見えなかったわ」


あぁもちろんその女の子は俺のお姉さんじゃないさ。でも一応年上だぞ、っじゃなくて! い、いかん、なんか嫌な汗が出てきそうだ・・・


「まぁそれはいいとして、<その人>はあたしがやろうとしてた事を手伝ってくれたの」


ずいぶん美化してくれたな。”手伝ってくれた” だと? ほとんど俺にやらせたんじゃないか、ってちっが~う! これは紛れもない、あれだ。


「でね、<その人>と一緒にいたとき感じたの。なんかお兄ちゃんみたいな感じがするって。雰囲気というか何というか・・・。あたしが中学一年で<その人>は高校生、歳の差的にもお兄ちゃんと同じ位だから、もしかしたらあたしが成長したようにお兄ちゃんも成長して還ってきたんじゃないかって。だからあたし、その時初めて会ってとても怪しい人なのに、もっと一緒にいたい、なんて思ったわ。でもそう思った途端、なんか急に恥ずかしくなってきちゃって、だからやる事済んだら私から先に帰っちゃったの。本当はもっといろいろ話したかったんだけどね」


たしかにその時の俺は高一だ、半年前の事だからな。お前は中一だから歳の差は三つ、同じだ。
もうおわかりだろう。
校庭落書き事件。
ハルヒが中学校の校庭に書いた(というより俺が書かされた)現代版ナスカの地上絵。この、ハルヒが考案したというけったいな絵文字が、偶然かはたまた神のいたずらか、ハルヒの願い通りの意味として宇宙のとある存在の目に止まった。
そしてハルヒの言う<その人>とは、ジョン・スミス、つまりこの俺だ。という事は俺がお兄さんに似てるって? ・・・んー、お兄さんよりできれば・・・・・・彼氏・・・って、えぇっ!! 今なんて事を俺は思っちまったんだ!? すまん、誰か俺に銃を貸してくれ。
しかしこれはまずい! 俺はいまどんな顔をしてる? よく無意識の内に考えてる事が顔に出てしまうらしいが大丈夫か? ばれてないか? ハルヒはとんでもない所で勘が働くからあなどれん! いかんいかん、まずは冷静になれ俺! 落ち着け!
俺はそうっとハルヒの顔を覗いてみると、なんか疑惑の目で俺を睨んでやがる。ヤバッ! 感づかれたか?


「・・・ねぇ、前にも聞いたけど、あんたとあたしってほんとに昔会ったことなかった? 」


どきっ!! たしかに前に一度そんな事聞いてきたな。あれは入学して間もない、まだお前の髪がロングで七変化をやっていた頃だ。あの頃はまだ俺の周りが極々普通の正常な世界だった。当然ハルヒともこの北校で、同じクラスになったあの時に初めて出会った・・・そう思ってたさあの頃は。だからあのとき聞かれても平然と否定できた。ところが今は違う。よもやその後に、三年前のお前に会いに行くとは思わなかったからな。俺は努めて、出来る限り冷静に、


「お前の言う ”昔” というのが、はたして今からどのくらい前の事を指しているのかわからんが、俺がお前に初めて会ったのは、お前が突飛な自己紹介でクラスを氷漬けにさせたあの時だ」
「・・・何よその言い草! 自己紹介ってのはね、インパクトが必要なのよ。月並みなこと言ったってつまらないじゃない! それにあれは突飛でもなんでもない、本当の事よ」


たしかにお前のはインパクトがあったさ。ありすぎて好奇を通り越して変人扱いだもんなー。
ハルヒはプイッと横を向き、再び窓の外を眺め始めた。やれやれ~なんとかこの場は切り抜けられた様だ。
・・・だが、俺の本心は違っていた。出来ることなら・・・打ち明けたい。この俺が<その人>、ジョン・スミスだと。これは決して、暴露する事でハルヒから何らかの特別な想いを俺にいだいて欲しいからじゃない。どこか寂しく、悲しそうな今日のハルヒを元気付けてやれるなら・・・。


俺達は途中で電車を乗り換え、目的の駅へ着いた。そこからは歩きだ。ハルヒは、途中の花屋でお供え用の花束を購入した。その際、最初一束だけ注文したが、チラッとなぜか俺を見た後、もう一束を注文し、それを俺に手渡した。これは?


「何言ってんの、これはあんたの分よ。今回は特別にあたしが出してあげるわ、感謝なさい」
「・・・いいのか? 俺も行って」
「はぁ? 今日のあんたはあたしのボディーガードでしょ。最後までついてきなさいよ。それに、墓地の中だからって安心出来ないでしょ。幽霊が襲ってこないとも限らないじゃない」


ハルヒに襲い掛かれるほどの勇気と根性のある幽霊がいたら、俺は喜んでその人に自分の体を進呈して生き返らせてやるぜ。それにもしホントに幽霊が襲ってきたら・・・後は任せたぞ、ハルヒ!

次にハルヒは、お菓子屋で煎餅の詰め合わせを購入。ちょっと高級なものだ。


「お兄ちゃん、お煎餅が大好きだったわ、それとお茶ね。・・・お兄ちゃんて、年の割に結構爺臭かったのね、いま気が付いたわ」


たしかに好みが渋いぜ、お兄さん! でもそれ、わかりますよ俺には。日本人はこうでなくちゃね、うんうん。


「・・・・・・」


ハルヒがジト目で俺を見ている。何だよ!


「なに頷いてんのよ。まさかあんたも渋いのが好みだっていうの? でもお兄ちゃんとは全然違うわね。お兄ちゃんは爺臭いだけど、あんたはただの爺ね」


若者に対して爺臭いも爺も同じ様な気がするんだがハルヒよ、その違いは何だ? 原稿用紙5枚以内にまとめて提出しなさい。
ちなみに先ほど買った花束と今の煎餅詰め合わせだが、ハルヒは珍しく自分で持っていくと言い張った。いつもなら荷物は自分の物まで俺に押し付けてくるんだが、やはりお兄さんにお供えする物だから自分でという事らしい。意外といじらしい面もあるんだな、 こいつにも。俺としては今日ぐらいは荷物持ちに徹してもいいと思ってたんだが、おかげで今の俺は、さっきハルヒの驕りによる花束一束のみだ。


そして俺達は公園墓地へ着いた。
俺も話には聞いていたがかなり広い。そのためA~Hまで区割りされており、お兄さんはH区画とのこと。中央を走る大通りを挟んで左手前から奥へA~D、続いて右手前からE~Hとなっている。したがって一番奥の右手になるんだが・・・さっきも言ったが広い!  いま大通りの入口にいるが、果てが見えねぇ。


「・・・行きましょ」


呆気に取られてる俺とは違い、ハルヒはさっきまでとは打って変わって神妙な面もちで歩きだした。俺も後に続く。
実は、喫茶店の所ではあんな事を言って無理矢理ハルヒについて来ちまったが、正直、他人の俺が何でしゃばってんだと、ついて来た事を少し後悔していた。こいつにとってはいい迷惑だったんじゃないか。たしかにお兄さんの事を話してはくれたが、話を聞いてもらうのと実際に同行してもらうのは違うんじゃないか、と。だがあの状態のハルヒが、はたして一人でここまで来れただろうか? 1時間電車に乗り、歩きで花と煎餅を買い、こうして墓地に来る。それを複雑な思いのまま、気晴らしに話す相手もいないたった一人で・・・。いまこうして俺と一緒の時のあいつは、まぁ普段ほどではないにしろ、今朝よりはだいぶ落ち着いているように見える。・・・ここまではな。だがメインはこれからだ。お兄さんと対面した時、ハルヒはどうなる? そしてその時俺はどういう役回りをこなすのか? これもハルヒが望んだことなのか? ・・・・・・


通りの両側には、休憩用のベンチや飲物の自販機が所々に設置されている。公園墓地なので当然公園が隣接しており、晴れやかな休日の午後のひと時ということもあって、家族連れやら子供達の歓声が俺達の背中から聞こえてくる。だがそれも、歩いていくに従って徐々に小さくなっていく。いかにここが広いか解っていただけるだろうか。
お盆でもお彼岸でもない1月だ、墓参りに来る人は殆ど、いや、全然いない。ただ一組の老夫婦とすれ違っただけで他は俺達だけだ。その老夫婦はすれ違いざま「こんにちは」とやさしく挨拶してきたので、こちらも笑顔で返した。たとえ赤の他人でもこういうコミュニケーションは大切にしたいね、人として。ところで喪服の女とラフな男の俺達、どんな風に見えてんのかな・・・て、何でそんな事気になるんだ俺?


H区画に着いた。ここまで来るとさすがに公園からの声は完全に消え、どこまでも澄み切った雲一つ無い青空だというのに辺りは静寂に包まれている。今朝の気象予報士のお告げどおりに気温は上がり、1月にしてはかなり暖かいのだろうが、辺り一面お墓だらけで人は俺達のみということもあり、どこかひんやりする。
さて、お兄さんのお墓なんだが、H区画のどの辺りなのか、ハルヒも知らないらしい。まぁ、一度も来たこと無いんじゃ仕方ないだろうが、さっきちゃんと聞かなかったのか?


「き、聞いたわよH区画って! それだけ聞けばわかると思ったのよ・・・まさかこんなに広いなんて思わなかったわ・・・」


さすがのハルヒも呆れ顔だ。ちなみに”さっき”というのは、俺達がまだ喫茶店を出て駅へ向かう時、ハルヒの携帯にハルヒ母から電話が掛かってきた時のことだ。やはり心配で掛けてきたらしい。
それにしてもこの中から探すのは 大変だぞハルヒよ。なにしろ一区画だけでもかなり広いし、どれも似たような形だ。手分けして探すかと提案しようとした所、ハルヒが「・・・あれ」と、ある一角を指さした。その先にはうっすらとだが一筋の煙が立ち上っている。そうか! そう言えばハルヒの両親が先に来てたんだっけ。ということはあれは両親があげたお線香か。ちなみに周りを見回したが他に煙は立っていなかった、間違いない。


「・・・・・・」


ハルヒは立ち上る煙を凝視したまま、じっとしている。ハルヒにしてみれば亡くなって以来だもんな、お兄さんに会うのは。7年ぶりになるのか。会いにくいだろうがハルヒ、正直に、素直になって今思っていることを吐き出してこい!
だがハルヒは一向に動こうとしない。それどころか俯いてしまっている。どうしたハルヒ、けじめをつけるんじゃなかったのか?


「えっ!? 」


驚きで大きく見開いた目で俺を見るハルヒ。えっ? どうした? なぜ俺を見てるんだ? ん? この左手の感触は何だ・・・ってなんだぁ!?


「キ、キョン!? 」


俺は自分の左手に視線をやると、そこにはハルヒの右手を握ってる俺の左手があった! なにやってんだ俺! こんな雰囲気でなに恥ずかしいことしてんだよ! ハルヒにはっ倒されるぞ!! 俺は左手を離そうとしたが、なぜか離れない、いや、離そうとしない! なぜだ!?
俺は「な、なにこんな時に手なんか握ってきてんのよこのエロキョン!! 」というセリフと共にやってくるだろう衝撃に備え歯を食いしばっていたんだが、そんな俺の脳内予想とは裏腹な事が起きた。左手に何やら力が逆に込められてきた。なんとハルヒが握り返してきたのだ。ちょっとドキッとしちまったぜ、ってなに考えてんだ俺? ハルヒの表情はというと、赤鬼の様な形相というこれまた俺の脳内予想を裏切り、また俯いてしまっていて表情がわからん、と思っていたら


「・・・ありがと・・・」


ん? なんかボソッと呟いたみたいだが小さくて聞こえん。


「あ、ありがとって言ったのよバカキョン!! 」


いきなり俺の顔に向けて真っ赤な顔で怒鳴ってきやがった。怒ってんのか感謝してんのか、どっちかハッキリしてくれよ、まったく! もし怒ってんなら手を離してくれ、逃げられねぇじゃねーか。チェーンデスマッチなんて御免だぜ。
まぁ何だかわからんが、ハルヒは気持ちの整理がついたらしい。俺の手を握ったまま、真っ赤な顔でプンスカしながら立ち上る煙の方へ歩きだした。
それにしても今日の俺はどうしちまったんだろうねほんとに。何だかキャラに会わない、こっちが恥ずかしくて赤くなりそうな事を平気でやってのけてる。体が勝手に動いてる様だ。これもハルヒか?
・・・いや違う。いつまでも人のせいにするんじゃねぇ俺。おまえさっきハルヒに対して何て思った? 正直に、素直になれだ? 笑わせるぜまったく。今のお前にそんな事言えるのか!? お前自身正直でも素直でもなんでも無いだろうが。体が勝手に動いただと? それがお前の素直な行動だろ。それでいいんだよ。ハルヒだって、悲しい、辛いお兄さんとの思い出を話してくれただろう、涙混じりで。あのハルヒが涙だぞ? いままでこいつには血も涙も無いんじゃないかと思ってたあのハルヒが人前で、それもお前の前で泣いたんだぞ? その涙は作り物か? それは演技か? お前はそう思ってたのか? 違うだろ? 進化の可能性だか時間の歪みだか、はては神様だとか言われているが、そんなの関係ねぇ、ハルヒはハルヒだ、こいつもただの人間、俺達と同じなんだよ! 今日のあいつを見てそう思ったんじゃないのか俺よ? なら、それでいいじゃないか。外野がとやかく言おうと、そんなもんに惑わされるな。お前自身の素直な気持ちを大切にしろ! ・・・どうだ、少しは目が醒めたか? だったら言ってみろ、お前の素直な気持ちを言ってみろ!


俺は、ハルヒの事が・・・・・・



いま俺とハルヒの目の前には、ある人のお墓がある。風もなく穏やかな青空の元、お線香の煙りは真っ直ぐ上へと上っていく。俺の左手にまた、力が込められてきた。ハルヒは唇を噛みしめ、必死になにかを堪えているかの様な表情で目の前を見つめている。そんなハルヒを見て、俺は左手を握り返す。それが合図かのように、ハルヒはなんとか微笑みを浮かべ、そして俺の左手から手を離した。もう大丈夫だと言いたげに。


「・・・久しぶりだね、お兄ちゃん」


しばしの沈黙・・・


「・・・あたし、高校生になったんだよ。前会った時はまだ、小学生だったのにね。びっくりした? だったら、これでおあいこ。あたしもよくお兄ちゃんに驚かされたからね・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・追い越しちゃったねあたし・・・いきなりで、ごめんね・・・・・・今まで・・・会いに・・・・・・来なくて・・・グスッ・・・ごめんね・・・・・ヒグッ・・・ほんとうに、ご・・・ごめんね・・・・・ウグッ・・・ごめん・・・なさい・・・・・・お・・・兄ちゃ・・・ウゥッ・・・ヒグッ・・・ごめんなさ・・・・・・ウゥッ・・・ウグッ・・・」


バサッ
ハルヒは左腕に抱えてた花束や煎餅の紙袋を落とし、両手を着く様にその場に崩れてしまった。そんな姿のハルヒを見た俺は、情けなくも一瞬固まってしまったがすぐ我に帰り、必死に押し殺す様に嗚咽しているハルヒがいたたまれなくなって、後ろからハルヒの両肩に手を置くと、ハルヒはゆっくりと振り向いた。


「・・・ヒグッ・・・・・・キョン・・・」
「ハルヒ・・・・・いまは好きなだけ・・・とことん泣いちまえ」


俺はそれしか言葉を掛けられなかった。


「うわああああああぁぁぁぁぁーーーーーん! 」


堰を切ったように泣き出したハルヒは、幼子の様な泣き顔で俺の胸に飛び込んできた。


「どうして・・・ウグッ・・・あたし・・・お兄ちゃんに・・・・・・ヒグッ・・・ウグッ・・・・・・会いに・・・どうして・・・ウグッ・・・会いたかったのに・・・エグッ・・・お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・・おにいーちゃぁーーん!! あはああああぁぁぁぁぁーーー」


ハルヒは俺の胸に顔を埋め、両手は握られたまま、俺の胸に押し付けている。


「もっと・・・もっとお兄ちゃんと、グスッ・・・遊びたかった・・・」


・・・ハルヒ


「・・・ヒグッ、もっと・・・いろんなこと・・・教えて欲しかった・・・」


ハルヒ


「もっと、ウゥッ・・・もっと一緒にいたかったのに・・・」


ハルヒっ !


「ウグッ・・・・・・でも・・・」


そう言ってハルヒは、顔だけをお墓に向け、そして出来るだけの笑顔で


「ありがとう・・・・・・お兄ちゃん」


そう言ってまた、顔を埋めて泣き出した。俺は、普段のこいつからは思いもしなかった位小さなハルヒの背中を、力いっぱい抱きしめることしか、出来なかった。


「うわあああああぁぁぁぁぁん! あはああああぁぁぁぁぁーーーん!! 」


ムカつくほど真っ青な空の元、ハルヒの泣き声だけが、いつまでも、いつまでも悲しげに響いていた・・・・・・

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