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 俺たちは今海の家に居る。
 そして、海の家の不味いラーメンを食っている。
「この不味さこそ、海の家って感じよね」
 どういう理屈だハルヒ。
「ええ、そうですね」
 お前も頷くな古泉。
 っていうかお前等なんで自ら進んで不味い物を食おうとするんだよ。
 俺には理解が出来ん。
 いや、海の家のラーメンは不味いものだって認識は分からないでも無いが……。
 しかし、店のおっちゃんもおっちゃんだよな、こんなことをでかい声で言われても全然気にしている様子が無いもんな。慣れっこなのか?
「ほえええ、やきそばがくっついたままですようっ」
 朝比奈さん、その程度のことで一々驚かないでください。
 いやまあ、こんな出来そこないのやきそばモドキめいた物に苦戦する朝比奈さんというのもまた可愛くてよろしいものだとは思うのですが。
「……」
 長門は、無言でラーメンを眺めている。
 どうした、長門? 食べないのか? 不味いけどさ。
「……わたしには、不味い物を食べたがる涼宮ハルヒと古泉一樹の趣向が理解出来ない」
 正直だな、長門。
 そのお前の正直な告白のせいで、ハルヒがちょっと苦い顔をしたけどさ。
「あのね有希、これは日本の夏の風物詩なのよ」
 ハルヒがそんな風に長門に切り替えした。
 どんな風物詩だよ……。こら、古泉、頷くな、朝比奈さんも感心しない!
「風物詩?」
「そう、風物詩よ。わざわざ海まで来て、楽しんで、たいして美味くも無い、ううん、むしろ不味いとさえ思える海の家のラーメンで一応腹を満たす。これこそ夏の風物詩よ!」
 ……お前、絶対、風物詩って単語の意味間違えているだろ?
 反論する気も沸いてこないけどさ。
「そう」
 っておい長門、お前納得したのかよ!
「納得は出来ない。でも、そういう習慣が有ることは理解した」
 理解ってなあ……。
「で、食べるの? 食べないの? 食べないならあたしが貰うわよ」
「食べる。……お腹は空いているから」
 宇宙人でも食欲は味に勝るんだな。
「そう、それでいいのよ」
 ハルヒはうんうんと頷くと、残っているラーメンをあっという間に平らげ、朝比奈さんが食べているやきそばを強奪しにかかった。
 いや、違うな。
「ほらほらみくるちゃん、これはこうやって切って食べるのよ!」
「そうそう、そうよ」
 食べ方の解説を始めやがった。いや、一部を奪って食べても居るけどさ。

 しかしだな、ハルヒよ。
 宇宙人と未来人に変な知識をつけるのは……、いや、まあ、そんなことを今更言っても仕方が無いか。
 俺は溜息を隠し、ラーメンを啜った。
 海の家のラーメンは、やっぱり不味かった。


 終わり

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