序
 
俺の手が朝比奈さんの手を握っていた。自分から握れるようになったのはいつからだろう?この小さくて白い手は、俺の感覚という感覚を全てだらしなくするようだ。目は垂れて細く、鼻孔はふくらみ、足取りもおぼつかなくさせる。こんな顔を見られるのが恥ずかしくて、ついつい先を歩いて顔を隠してしまう。
 辺り一面が冬景色だ。朝比奈さんも、手袋は持っている。マフラーも耳当てもしている朝比奈さんは、手袋をしていなかった。というより、下駄箱に隠れて手袋をはずす彼女を俺は見た。
 にこにこ笑いながら手袋をはずしたのは朝比奈さんだけではなかったのだが。
 俺たちの、小指と小指がうまく組み合わさっていなくて、掛け違った釦みたいになっている手を、直すのも恥ずかしい。そして、俺はどんどん先に進んでしまうのだ。
 朝比奈さんはどんな顔をして付いてきているのだろうか?夜空と降る雪を見上げて笑顔なのだろうか?
 繋いだ手を見て頬を赤らめているのだろうか?
 俺は振り向いた。それに気づかず歩き続ける彼女が俺にぶつかった。いつものあれだ。俺たちは笑いあった。
 いつもの大きな目で、いつものように上目遣いで俺を見る彼女が、どうにも愛しかった。
「どうしたの?キョンくん。」
 だらしない顔になっていたのだろうか?ちょっと笑いながら朝比奈さんは言った。
「朝比奈さんがどんな可愛い顔をして付いてきたんだろうと思って。」
 彼女の頬がみるみる紅く燃えていった。ははは。
「なに笑ってるの、、。」
 まだまだ俺のほうが上手だ。こうしていじくっては、笑い、そして笑いあう。この短い決まりがあるだけで、俺は幸せだった。彼女はどうなのか。多分俺と同じことを考えている筈だ。そうであって欲しかった。それを確かめるだけの勇気はまだ足りない。
 でも、、そろそろはっきりしたかった。俺たちが好きあっていることを、、。
 こうして一緒にいるだけで、とても幸せでいられるということを、、。
 
 
 
 
 
 
 
 
 1.
 
「スースー。んわ。sos団に、入り、、なさいよお、、。」
 楽しかった昨日の帰路を思い浮かべるしかない俺がそこにいた。試験終了1分前、窓からの風が可愛い寝息をたてるハルヒのリボンを揺らし、俺の美しく白い解答用紙を揺らした。
 もう夕日が西へしずむ頃、最後の試験。西日が、諦めを受け入れ、ただただチャイムを待つ俺の横顔を照らす。さぞ絵になったことであろう。
 ふう。ハルヒはどんな夢を見ているのだろう?異星人と楽しくお話でもしているだろうか?sos団か、、、、ハルヒにも感謝しなければな、、。朝比奈さんと会えたのはこいつのおかげだものな、、。
 チャイムが鳴る。いやいや起きたハルヒが、ぶんどった俺の解答用紙を見ると、憐れみと優しさを籠めた瞳を投げかける。
「キョン、、。」
 いいんだハルヒ。いいんだ、、、。
「そんなこと言っても、やばいわよ?これは。」
「ああ。ありがとなハルヒ。俺は先に部室に行ってるよ、、。」
 力なく笑ってゆっっくり席をたち、かばんを手に取る。はやく、はやくお茶を飲まなければ。
なんだか殺気を感じた。ワワワが国木田を連れて俺の席に走ってくるではないか!俺は逃げることにした!スタートダッシュをきった俺に、―なんだか複雑そうな顔をしたハルヒが見えた気がした。
 静かにひんやりとした廊下に出て、部室までターボをかける。振り切ることは出来なかった。谷口がヘッドスライディングを決めたのだ。
「キョン。テストどうだった?」満面の笑みであった。
 またそれか。というか離せ。
「ふふふっはっは。」
 谷口が手を離すとともに、俺は走った。昨日と点数がさして変わるはずも無いのだ。谷口は親指を立てて見送ってくれた。仲間だという合図に違いなかった。国木田は笑ってた。
 少し気が紛れた。
 俺も親指を立てた。ははは。
 ちょっとペースを落として、部室まで走る。あさってから冬休みだから、ハルヒがなにか言い出してくれないと、俺はみくるさんに会えなくなってしまう。
 いや、会える。自分から会おうと言えばいい。
 ただ、言えないのだ。
 ここについても、自分がへたれだからと言わざるを得ない。もうここは仕方ない。諦めている。
 でも、すごく会いたい。へたれを返上して、強気で誘おうか。みくるさんは喜んでくれる気がする。
 クリスマスが、ちょっと遅くならないだろうか。
 クリスマスまでに、確認したい。俺達のあるべき姿を。
 こんこん。いつもどおりノックした。返事は無い。でもストーブの音がした。がちゃ。
「おう長門。寒いな。」
「そう?」
「うん。」
「そう。」
 なぜ走ってきた俺より早いのか。本を読めるのか。もうそこらへんに疑問は感じなくなってきた。
 長門なら、クリスマスを遅らすことができるかもしれないなんて、とってもくだらないことを考えて、俺はホームページの更新作業に入った。
 アクセスカウンタはたいして変わっていない。
 トップページを簡単に雪っぽくした頃に、古泉がやってきた。
「あはっは。いつも通りですね。」
「長門さん。何をお読みで?」
「ほう。面白そうですね。」
「麻雀はおできで?」今度は俺の目をみて話す。
「―いや。なんで?」
「友人にもらったのです。」
 こいつなりに、ハルヒの退屈を止めようとしているのだろうか。
「へえ、教えてくれよ。」
「はいはい。長門さんもどうですか?」
「やる。」
 こんこん。がちゃ。
 朝比奈さんがやってきた。
「朝比奈さんもどうですか?麻雀。ちょうど4人揃いました。今テーブルを動かします。」古泉が言った。
 みくるさんはまず俺に笑いかけてくれた。はい。と言って、お茶を淹れ始めた。
 俺と古泉はテーブルを動かした。
 長門は、、いいか言わないで。
 間もなく、お茶と麻雀卓ができあがった。日は暮れ、蛍光灯の光が卓を照らす。さすがに古泉も下に敷くシートは持ってこなかったらしいので、ジャンパイが鳴る。その音とストーブの音を、冷えた空気が吸い込んだ。
 まず基本を教わる。1雀頭4メンツだとか、簡単な役を教わった。その間、何回か朝比奈さんと目が合って、そのたびに笑いかけるみくるさんが可愛くて仕方なかった。
 手を握ろうか思った。なんだか授業中にバイブを作動させるみたいな楽しみが、、、。
 不意に背中に激痛が走る!ガン!
 ドア側に座っていた為に、ハルヒのノーノックドアオープニングが、背中にヒットしたのだ。
「そんなところに座っているのが悪いのよ!」
「だ、大丈夫?キョン君?」
 涙目の朝比奈さんが背中を撫でる。トゥントゥントゥルルーン。
 本当は転がり回りたかったが、悔しいので、少し涙を浮かべるぐらいで、俺は指をbの字にして見せた。
 古泉が席をハルヒに譲り、また同じ説明を始めた。俺達もまた聞くことにした。
 朝比奈さんの手を繋ぐのは止めた。ハルヒに見つかったら殺される。
 古泉はみんなに教える係りになって、美少女3人と俺の、麻雀が始まった。
 
 
 
 ―なかなかの盛り上がりで、麻雀は終わった。下校時間10分前に、ハルヒの顔が何か思いついたふうになって、発表がありますとらんらんと言い出した。結局一番勝ったのは俺であった。次点にハルヒ。長門、朝比奈さんの順だった。
 俺は安い役ばっかりやっていたから、早くあがれたんだろう。対してハルヒは、大きい役狙いだったらしい。平和、三色同順、ドラドラを作り、皆を驚嘆させた。
 長門もなかなかの役をやっていった。なんだか知らないが、ハイテイラオユエとかいう最後のジャンパイで上がるというやつを2回やった。
 朝比奈さんは皆からロンされ、反則を5回した。朝比奈さんが弱すぎて、場が盛り上がったのかもしれない。
 古泉は卓の周りをずっと廻って、助言をしまくっていた。さすがに疲れた風だった。
 俺と古泉がテーブルをもとに戻し、着席すると、朝比奈さんがまたお茶を淹れてくれた。可愛かった。
 その朝比奈さんが俺の隣に座ると同時に、いすに立っているハルヒの口がパッ!と開いた。
「えー、こほん。さて、あさってから冬休みですね。我がsos団は、すばらしい活動をすることに決まりました!それは、サンタがやってくる頃!クリスマス!あんなわけのわからないお祭りを、私たちが見過ごしていいはずもありません!というわけで!12月24日!私たちで町を散策します!」
「ついては、しあさって!12月21日!作戦会議をするわよ!」
 これは、GJだな。
「ちょっと待て。みんなの都合があるだろ?大体どこに集まるんだよ。」
「あんたの部屋よ。」ちょ、、。
「来たくない奴はこないでもいいわ!」
「ちょっとお前、、。え!?」
 おかしい。これはおかしい。俺の部屋なのだから俺はいるはずだ。来たくない奴は来ないでもいいだって?二人きりになるかもしれないじゃないか!
 朝比奈さんの目が真剣になっていった。
 古泉の目は笑っていなかった。
 長門は本を読んでいた!
 当の俺は、冷や汗を掻いて、ハルヒをポカンと見つめていた。
 
 
 なんか失礼なことをしていたらまじですいません。続かせていただけるようでしたら続かせていただきます。ありがとうございました。本当にありがとうございました。誤字脱字は許してください。本当にありがとうございました。

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