やあ皆さん、朝見ている方へ、おはようございます。昼間見ている方へ、こんにちは。夜見ている方へ、こんばんは。今仕事から帰って来た方、お疲れ様です。今閉鎖空間で戦ってる同士の皆さん、頑張ってください。
 今から寝る人へ……って、あ、長いですか? どうもすみません、冒頭部分の語り方がいまいちよく解からないもので……では気を取り直して。 
 皆さんこんにちは。SOS団副団長に加え、『機関』の一員で超能力者であるというステータスを持った男子高校生、古泉一樹です。
 実は今日の話に”彼”は出てきません。つまりあの彼のような喋り方がない、まるで鳥の骨のように中がスッカラカンな話になってしまうこと請け合いですが、どうかそこらへんは大目に見てくれたら光栄に思います。
 ですので必然的に――まあ僕も結構な重要人物ですから――僕が語り手をさせていただくことになりました。はい? 何故彼が出てこないかって? そりゃあ当たり前ですよ。なんたって今日は、『機関』内でのお話ですからね。
 説明するより見せた方が早いでしょう。百聞は一見に如かずです。では今日僕が体験した話を、ちょっとだけ鑑賞して頂きましょう。
 
 
「……で、何なの? 古泉。」
「僕に訊かれても困りますよ、僕だって何も知らされていませんから。」
「じゃあなんで古泉の家に集合なわけ?」
「だから、知りませんてば。」
 今、僕の家のリビングで二人っきりで話している相手はそう、同じ『機関』での同士、森園生さんである。あ、喋り方ですか? 普段はこうなんですよ、女性なんだからもう少し清楚な感じの喋り方にして欲しいものです。
「古泉、何か言った?」
「い、いいえ何も。」
 怒る時も怖いんです。僕の中での、一種のトラウマでもあります。
「それで、何でわたしを呼んだの? せっかくの休みだっていうのに。」
 あなたは人の話をちゃんと聞いているんですか? 僕だって知らないって、さっきからあれほど……
「そんなの意味分かんないじゃない。誰かにわたしを呼べ、とか言われたんじゃないの?」
「ええ、新川さんに。」
「……それを教えなさいって言ったんでしょーがっ、このバカ古泉!」
 うわ、そんなに怒鳴らないでくださいよ。鼓膜が破れたらどうしてくれるんですか。
「あ、そういえばね。鼓膜って、破れても1ヶ月くらい経てば治るらしいわよ。」
「へえ。」
「…………」
「…………」
「何!? この空気! もうちょっと面白いリアクションしなさい。わたしが馬鹿みたいでしょ!」
 もうこの人滅茶苦茶です。ずいぶんと疑問符が多いし、なんだか辛い……長門さんも呼べば良かった。
「それで、新川も来るんでしょ? まだなの?」
「もう既に来ているはずの時間なんですが……おかしいですね。」
「……さっきから、ここに居ますよ……」
 う、うわわっ!? ちょっと新川さん、僕の首筋に吐息を吹きかけるように喋らないでくださいっ! 背後からの登場も、これからは禁止です!
「いつから居たの? 新川……」
「森が来る前から居ましたよ……ずっと気付いていくれなかったから、寂しかったのです。」
 それなら一言声をかけてくれればいいのに……影薄いなあ。
「それで、話があるなら早く本題に移ってくれない? わたし、これからちょっと用事があるんだけど。」
 僕だって長門さんと会う約束があります。手短にお願いしますよ、新川さん。
「やはり……気付いていないのだな……」
「はい?」
「今日が何の日か……全く覚えてないのだな2人とも……!」
「今日が何の日か? ええっと、そういえばイヴの日の丁度1ヶ月前ね。で?」
「あんまりですぞ2人ともぉっ! 今日はわたしの、誕生日ではないかぁっ!」
 ……失礼かとは思いますが――僕のキャラ的にもこんな言葉は不適切だと思いますが――、言わせてもらいますね。
「「知るかっ!」」
 僕と森さんの声がシンクロしました。シンクロ率200%です。……それはさておき、ちょっと言い過ぎたでしょうか。新川がとてつもなく可哀想な顔をしています。
「『機関』結成の時に皆で自己紹介をしたではないか! ちゃんと名前と誕生日と、趣味とか特技とか、好物や週末の過ごし方などなど! しっかりと教えあったではないか!」
「あのね新川。わたしは過去は見ないことにしてるの。わたしは未来だけを見続けてやってきたのよ、だから覚えてないわ。」
 まるで涼宮さんのような志ですね。涼宮さんと気が合うのではないでしょうか、森さん。……ってあああ、新川さんの哀愁の表情がMAXに達してしまいそうですよ。
「あ、新川さん、これからお祝いしましょうか、ねっ?」
「こ、古泉……」
「気付けなくてどうもすみません。僕でよければ、一緒にお誕生会をしていただけますか?」
「おお、そう言ってくれるか古泉!」
 ふふふっ、今の僕、良かったですか? 好感度の滝登りですねこれはっ! ……いやいや、気をしっかりと保て古泉一樹!
「まあそんなことなら仕方ないわね。わたしもお祝いするわよ新川。」
「感謝感激ですぞ、やはり2人を信じていて良かった……!」
 さっきの顔とは一変、涙腺を震わせそうな表情になった新川は僕の手を握り締めてブンブン腕を振り回してきます。ちょっと痛いですよ、それに少し汗ばんでる……?
 と、ここで僕の着ているジャケットの内ポケットが振動しています。メールが着たようですね、ちょっと失礼して。
 
 
メール1件 長門さん
件名:確認
本文:今日は予定通りに行ける? ……会える時が待ち遠しい。
    1時からでも大丈夫?
 
 
 長門さんからのメールです! 即座にメールを返信。1時からでも、大丈夫ですよ……っと。ふふふ、僕も待ち遠しいです。
 ちょろっとテレビの方に目をやると、あの国民的お昼の番組、『笑っていい○も』がやってます。テレフォンショッキ○グですか、今日のゲストはあの方なんですね……ってありゃれあれーっ!?
 ちょっと、今12時30分じゃないですか! 待ち合わせ場所に行くには20分程度かかるし……まずいまずい、緊急事態です! あ、メールだ。
 
 
メール1件 長門さん
件名:了解
本文:解かった。楽しみにしてる。
 
 
 なんとっ、長門さんがもう楽しみにしちゃってます、これは絶対に裏切れぬ約束! っく……ここはやはり!
「『解かった。楽しみにしてる』? 何これ、古泉の彼女? ああしかも、これ長門有希じゃない!?」
 森さん、人の携帯を盗み見るものではありませんよ! これは人としてのマナーです!
「どれどれ? 『会える時が待ち遠しい』だって、熱々じゃない古泉!」
 しかも勝手に画面を操作されてしまいました。全くもう、どこまでエチケットがないんですかあなたは!
 って、そうこうしてる間に33分! 長門さんを待たすわけにはいきません!
「すいませんお2人共! 僕は急用があるのでこれで!」
「なっ、古泉……!?」
「あれ、もうこんな時間だったの? さっきも言ったけど、わたしも用があるの! ごめんね新川!」
「え、あれ……うそ?」
「とりあえず僕は行かなければならないのでっ! 新川さん、別にここに居てもいいですけど、帰る場合は鍵を閉めて行ってくださいね、鍵はここに置いておきますから。」
「じゃあね新川、また任務の時にでも。」
「そ、そんなぁ……。」
 ああ、間に合うかどうか心配です! とにかく急がなければ!
「古泉っ、せめてケーキでも買って来てはくれまいか!?」
「ええ、解かりました!」
 ガタン、と扉を閉めて待ち合わせ場所に向かう僕。新川さんには……また後日、謝っておくことにしましょう。とりあえず今日のところは諦めて帰っているでしょうから。
 
 
 ……だから、僕は驚きました。長門さんとのいわゆるデートから帰って来て、家の鍵が空いてると思ったらリビングに体育座りで新川さんがポツンと座っていたんですから。思わず変な声を出してしまいました、てっきり幽霊かと。
「古泉、お帰りなさい……」 
「あ、ただいま帰りました。」
「ケーキは……?」
「…………あ。」
 
 
新川、ケーキ、待ち合わせにて end
 
 
 
……これは、大塚明夫さんの誕生日に掲載させていただいたSSです。

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