耳朶に心地よく触れる涼しい風を愉しみながら歩く晩秋の下校道。俺らが歩く道の両側に定間隔に植えられた木々から、紅く染まった枯れ葉が落ちる。
「……風流だな。」
「そう」
 いつもの短い返事をしてくるこの人は、珍しく本も読まずに俺の隣でてくてくと歩を重ねている。夕日で顔が枯れ葉のように紅く染まった白い肌と、ショートカットの持ち主……長門だ。
 ちなみに他に人は居ない。厄介な団長さんも、自称時を駆ける美少女も自称イケメン超能力者も居ないわけだ。
 何故こんな美味しい状況に俺が置かれているかというと……ハルヒの奴が珍しく風邪で休んでな。SOS団メンバーでお見舞いに行くことになったんだが、朝比奈さんは受験勉強で居ない。
 古泉も大事な機関の会議があるだの何だの言ってすぐ帰ってしまった。まあ、あいつの場合は居なくてもいいけどな。……で、必然的にこんなシチュエーションになってしまったのだ。
「この枯れ葉たちは、どうなってしまうの?」
「か、枯れ葉か?」
「このまま地面に落ちて、そのあとは?」
 枯れ葉がこのあとどうなるだって?そりゃあ……土に帰っていくんだろ。
「わたしは生茂るように顔を出す葉の方が好き。あなたは?」
 ……今日の長門はなんだか饒舌だ。この手の話に興味とかあるのかね。
「こういう枯れ葉も悪くないけど、俺も夏の葉っぱの方が好きだな。」
「この葉たちは、もう木の枝へ戻れないの?」
「……ああ、そうなるな。」
「……そう」
 しゅんと頭を下げる長門。そんなに枯れ葉に感情移入しなくても……悲しそうな顔の長門を見るのは辛いぜ。
「そうだ、ハルヒにでも頼んでみたらどうだ?」
「……?」
「長門の好きな葉っぱたちが、落ちないようにしてくれ、ってさ。きっとあいつなら叶えてくれるぜ。」
「……あなたは優しい」
 長門の頬に朱の色が浮かんだのは、夕日だけの影響ではないと信じたい。
「さあて、早くハルヒん家行かなきゃな!」
 この枯れ葉たちが、全て落ちてしまう前に。
 
end
 


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