「お久しぶりね、キョン君」

ん・・・?この声は・・・?まさか!?

そう、俺は、一番聞きたくない奴の声を聞いて目を覚ましたのだった。

 

「朝倉!?どうしてお前らがここにいる!?というかこれはどうなっているんだ!?それに・・・そこにいるのはハルヒか!?おい、ハルヒ!無事だろうな!?」

 

場所は今、文芸部部室、もといSOS団アジト。いつもの平穏な空気など微塵も残っておらず、今や部室内は一面が闇に包まれ、暗黒に染まっている。

その中で、ひとつの闘いが、今まさに幕を閉じようとしていた。

 

「なんか彼、ごちゃごちゃうるさいけど、覚悟はできてるわね?それじゃあ本当に終わりにしましょうか、涼宮さん?いくわよ?・・・・・の攻撃!プレイヤー涼宮ハルヒにダイレクトアタック!!!」

 

何も言わずにモンスターの攻撃を喰らって吹っ飛ぶハルヒ。そしてライフも0になった。

 

「大丈夫か!?ハルヒ!?」

 

駆けつけようにも情報操作でもされているのか、俺の体はピクリとも動かない。

クソ・・・なんでこんなことになっちまったんだよ!?

なんで朝倉が復活してるんだ!?こりゃあ一体どうなっているんだ!?これもハルヒの力のせいなのか!?

なぁ、ハルヒ。本当にお前がこんな状況を作り上げたのか?

俺は、『闇のゲーム』に立ち会うこととなった原因へとフラッシュバックした。

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

 

俺は、相変わらず自分に搭載されているコンピューターでは解析不能な「英語」という名の謎の文字列の授業を、素晴らしき「夢」という名の世界に旅立つことによって克服し、SOS団のアジトと化した我等が文芸部室へ歩みを進めていた。

ハルヒはハルヒで、授業が終わるや否や教室を台風の通り過ぎるようなスピードで飛び出していった。たしか手に何か本みたいなのを持っていた気がするな。あまりのスピードでよくわからんかったがな。本なんかアイツに似合わんが一体どうしたんだ?

なんて、そんなことを考えているうちに俺の足は文芸部室のドアの前についていた。

コンコン、とノックをする。もしかしたら、麗しのマイスイートエンジェル、朝比奈さんがお着替え中かもしれんしな、うん。たまにはノックをし忘れたことにしてそのお姿を拝見してみたい、なんて考えたことないぞ。本当だ。本当だからな。

 

「はぁ~い、どうぞぉ~」

 

天使のような声が耳をうずかせる。どうやらもう着替えは終わっているようだ。ちょっと残念・・・なんて思ってないからな。

かちゃり、と戸を開けると、そこにはいつもの席で石像の様に静かに本を読み続ける宇宙人、小動物のように愛くるしい未来人、0円スマイルを貼り付けてニヤニヤしている超能力者、そして、我等が団長、涼宮ハルヒがいた。

 

「すぐにお茶を淹れますから、ちょっと待ってて下さいね~」

 

いつもいつもありがとうございます、朝比奈さん。もう俺はあなたのお茶なしでは生きていけませんよ。

 

「うふふ、ありがとうございます。お世辞でもうれしいです」

 

そういうと朝比奈さんはちょこちょことお茶を淹れにいった。教室で少し様子のおかしかったハルヒは、というと、相変わらず、まるで長門のように本のようなものを読み漁っていた。

その本が何かって?そんなの俺にも分からんさ。なぜならカバーをかけているからな。

それに、険しい顔して読んでるもんだから、聞く気にもならんしね。

 

「おい古泉、ハルヒのやつ、また機嫌でも悪いのか?授業の時からずっとあんな感じなんだが」

 

「いえ、そういう事はないようです。僕のところにはなんの連絡も入っていませんし」

 

まあ古泉がそういうんだ。間違いはないだろう。触らぬ神に祟りなし、というやつか。

 

「それはそうと、久々にアレ、やりませんか?実は結構楽しみにしてたんですよ」

 

別に構わない、というより実は俺も結構楽しみにしていたぞ。最近ご無沙汰だしな。だが手加減はせんぞ。俺の無敗伝説をコレでも更新したいからな。

 

「今回は甘く見ていると痛い目にあうかもしれませんよ?」

 

望むところだな、それじゃいくぞ!

 

 

 

「「決闘(デュエル)!!!」」

 

 

 

結果から言ってしまうと俺の勝利だった。マイスイートエンジェル、朝比奈さんの前で醜態を曝す訳にはいかないからな。長門もちらちらと見てたし。だが、古泉は古泉でなかなか強かった。

少しでも手を抜いていたら下手したら負けてたかもしれん。

 

「今回は結構自信があったのですが。いやはや、やはりあなたはお強いですね」

 

いつもより一割くらい減ったニヤケ具合で話しかけてくる。お前はそんなに俺に負けたのが悔しかったのか?でもお前も十分強かったぞ。

 

「あなたが僕のことをそういうなんて珍しいですね。僕もまだまだ捨てたもんじゃないってことですか」

 

調子に乗るな。そういうのは俺に勝ってから言え。挑戦は受けてたつぞ。

 

「ではお言葉に甘えまして、もう一勝負どうです?今度は負けませんよ?」

 

いいだろう、相手をしてやるよ。来い、古泉!

 

「それでは・・・」

 

 

「「決・・・」」

 

闘と続けようとしたが、突如、

 

「覚悟はいいわね、キョン!!!滅びの呪文、デス・アルテマっ!!!」

 

との言葉とともに後頭部に激痛が走る。あまりの痛みに、少しの間、頭を抱えたまま悶絶する。そしてしばらくして後ろを見ると、モップの柄をもって、目をキラキラ輝かせながら団長様が仁王立ちしていた。

 

「痛ってえな!なにしやがる!」

 

「何ってデス・アルテマよっ!あんた、聞いてなかったの?」

 

そういう問題ではない。俺が聞いているのは何でお前がモップの柄で俺の頭を叩いたのかってことを聞いているんだ。ただでさえ赤点レーダーギリギリ低空飛行な俺の頭がこれ以上悪くなったらどうするんだ?

 

「あんた、もうあんまり悪くなりようがないじゃないのよ。そんなことよりやっぱりデュエルモンスターズは王国編よね!ストーリー的にあれが一番面白いわよ!」

 

そうかい、俺の話はもうスルーかい。そしてお前が今日ずっと読んでいたのはアレだったのか・・・。それと古泉、お前、見えてたんならあいつをちゃんと止めろよ。俺は痛いこととか苦しいこととかはまっぴらなんだからな。

 

「すみません、不注意でした」

 

そのニヤニヤ顔で言われても全く誠意が伝わってこないのだが。

 

「ごごご、ごめんなさい、キョン君・・・」

 

いえいえ、あなたが謝るなんて、とんでもないですよ、頭を上げてください、朝比奈さん。悪いのはハルヒの馬鹿なんですから。

 

「…………」

 

お前も気にしなくていいぞ、長門。

 

「あんたを差し置いて誰が馬鹿よっ!それにあんたねぇ、もう過ぎたことを気にしても遅いのよ!ちゃんと前を見なくっちゃ、前を!」

 

やれやれ、当の本人がなんとも思っちゃいないなら意味ない、か。

 

「それよりもキョンに古泉君、あんたたちがやってるのって、デュエルモンスターズよね!?私もいまデッキあるのよ。さあ!どっちか決闘しなさい!」

 

そういって、ハルヒは自分のポケットからデッキを取り出した。目には炎を灯らせてな。しかもなぜか腕章には『決闘王』の文字が。

悪いが古泉、続きはまた今度になりそうだな。

 

「そうですね。残念ですが仕方ありません」

 

「そこっ!コソコソしゃべらない!じゃあ・・・そうね、キョン。あんたが相手しなさい!」

 

やれやれ、もうすっかりさっきのことを忘れてやがる。仕方ない、カードで軽く仕返しでもしてやるか。

 

「分かったよ、こい、ハルヒ」

 

「あんたなんかに絶対負けないんだからね!」

 

こうして俺たちの決闘は始まった訳だが、思惑通りあっさり勝負は決まってしまった。

 

「・・・え?嘘よ・・・こんなの嘘よ・・・もう一度勝負よ!」

 

構わんぞ。何度やっても変わらんと思うがな。それに俺の鬱憤晴らしにもなるしな。

その後、三回ほど決闘し、俺が全勝したところで長門がパタンと本を閉じて、お開きとなった。俺に数連敗してぶつくさ言いながらぶーたれているハルヒをよそ目に俺はカードを片付け、デッキをしまおうと鞄をあけた。そうしたら中に何のラベルも貼られていない謎のディスクが入っているではないか。ここに来る時は確かなかったよな?古泉とやるために鞄を開けたときは・・・・覚えていない。が、恐らくその時にでも紛れ込んだのだろう、と思って他の部員に声をかけた。

今思えばあんな怪しいものはないのだが、そのときの俺はなんとも思わなかったのかね。出来る事なら過去に戻って面倒なことになるからやめろ、と過去の俺に言ってやりたいくらいだ。残念ながら俺にそんな記憶はないので、できない話なんだろうがな。

 

「このディスク、誰のだ?俺の鞄に入っていたんだが」

 

古泉、お前か?

 

「いいえ。違いますよ」

 

じゃあ長門か?

フンフンと頭を横に1ミクロンくらい振る。

なら朝比奈さん、あなたのですか?

 

「ふえっ?何ですか?え~と、そのディスクですか?う~ん、違う・・・と思いますよ」

 

ということは消去法でハルヒ、お前のだな?

 

「違うわよ。でも何か怪しいわね!キョン、これの中身調べるわよ!」

 

と言ってディスクを俺の手から奪い取った。

 

「なぁ、長門、あのディスク、大丈夫なのか?」

 

「……分からない。あのディスクには高度なプロテクトがかけられている。それを解くには情報操作が必要」

 

と言ってチラッとハルヒを見た。そうか、アイツがいるからそれができないんだな?

そう聞くと長門はコクッと頷いた。古泉もこの話を聞いていたらしく、アイコンタクトを送ってくる。ピコッ、とパソコンの起動音がした。

 

「さぁて、この中身はなんなんでしょうね!?もしかして宇宙人からのメッセージが入ってるとか!?あ!まさか!キョン、実はあんたのディスクで、中にいやらしい画像とかが入ってるんじゃないでしょうね?」

 

馬鹿かお前は。もし本当に自分のだったらいちいち人に聞かんぞ。

 

「さぁ、どうかしら?あ、ついたついた」

 

そういって起動したパソコンに目を移す。長門は少し緊張した顔をしている。古泉もいくらか真剣な目をしていた。

カチッ。

その音を聞いて俺は自分の意識を突如として失った。

 

 

 

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「一体何よこれ!?どうなってんのよ!」

 

ディスクのデータをクリックして起動させたとたん、部室一面が闇に覆われてしまった。

ぱっと見、前に見たキョンと二人っきりの夢の世界に似てるけど・・・

ううん、ぜんぜん違うわね。あの巨人こそいないものの、なんか禍々しいものを感じるというか・・・

 

「ね、ねぇキョン?」

 

これどうなってんのよ!?と言いかけてあたしは言葉を失った。

だってそこにはさっきまでいたはずのキョンが、いや、キョンだけじゃない。有希やみくるちゃんや古泉くんといったみんなが、どこを見回しても影も形もなく消えちゃってるんだもの。

もう一度パソコンに目を移す。だってこれをやってからおかしくなったのよ?だったらもっかいなにかをやれば元に戻るはずよ!そう思ってパソコンに手を伸ばしたとき、突如あたしの後ろから声がした。

 

「ふふふ、お久しぶりね、涼宮さん?」

 

ハッとして後ろを振り返る。

 

「あんたは・・・朝倉?!いつの間に!?いったいどこから!?」

 

「あら、せっかくの再開なのに、その言い様はないんじゃないの?」

 

「そんなことどうでもいいのよ!それよりも、ねえ、あんた、みんなのこと知らない!?」

 

「知ってるわ。だってあたしが閉じ込めたんだもの。」

 

「ならさっさと解放しなさい!」

 

「いいわよ。ただし、命をかけた『闇のゲーム』でわたしに勝てたら、だけどね。もちろん決闘で」

 

そういって朝倉は左手をガッツポーズの形にした。その腕にはいつの間にか決闘盤(デュエルディスク)がついている。一体いつの間につけたのかしら?それに『闇のゲーム』って・・・まさにあたしが今日読んでたあたりじゃない!でも今はそんなこと気にしてる場合じゃない。

 

「なんだかよく分かんないけど、その勝負、乗ってやろうじゃないの!このあたしに決闘を申し込んだことを後悔させてやるわ!」

 

そう言ったとたん、急に左手に重量を感じた。なんと、あたしの腕にも決闘盤が。

ほんと、これこそまさに不思議よね。・・・てそんな場合じゃなかった。

 

「分かったわ。それじゃあいくわよ?」

 

「「決闘!!!」」

 

掛け声とともにあたしたちはデッキから5枚のカードを引いた。

 

「ふふふ、闇のゲームの始まりよ!わたしの先行、ドロー!そうね、ここはリバースカードを2枚セット、さらにモンスターを守備表示でセット。これでわたしのターンは終了」

 

朝倉がカードをセットするのと同時に巨大なカードのビジョンがブォンという音と一緒に部室内に現れる。何よこれ!超おもしろそうじゃないの!

 

「それじゃいくわよ!朝倉!あたしのターン!ドロー!あたしはヂェミナイ・エルフ(1900/900)を召喚!」

 

さっきと同じように、ブォンという音とともにフィールドに双子エルフのヴィジョンが出現する。

 

「それじゃ、いくわよ!ヂェミナイ・エルフであんたのモンスターを攻撃!」

 

エルフの姉妹の息のあったコンビネーション技が相手に決まり、セットされたモンスターがパリーンという音とともに撃破される。凄いじゃないの、これ!!!

 

「やったわ!どうよ、朝倉!さっさと観念しなさい!」

 

「ふふっ、ありがと、涼宮さん。あなたの攻撃したモンスターはリバースモンスター、メタモルポット(700/600)だったの」

 

メタモルポット・・・確かアレは・・・

 

「あなたの攻撃でメタモルポットは表表示となり効果発動!お互いのプレイヤーは手札を全て捨てて、新たにデッキから5枚引く」

 

やっぱり!?せっかく手札にいいカードがあったのに!ううう、悔しいわね。

 

「あんた、よくもやってくれたわね!?」

 

「ううん、本当はこれからなのよ?」

 

といって朝倉が微笑む。それを見たあたしは、なんだか嫌な予感がしたの。まあそれは奇しくもあたることになるんだけど・・・

そして突然、ウヲヲヲヲヲヲという地獄の底から響いてくるような雄たけびが聞こえ、暗黒の渦が現れ、雷とともに中から一体の白銀の悪魔がフィールドに舞い降りた。

なんで!?なんでこんな強そうなモンスターがいきなりでてくんのよ!?

 

「このカードは暗黒界の軍神シルバ(2300/1400)。このカードは他のカードによって手札から墓地に送られたとき、フィールドに特殊召喚することができるの。あなたがメタモルポットを攻撃してくれたおかげよ。そのおかげでデーモンの召喚が墓地にいっちゃたんだけどね。一応お礼を言わせてもらうわ」

 

何よそれ、反則じゃない。いきなり2300とか対抗できるわけないじゃないの!

 

「だ、だったらリバースカードを1枚セットしてターン終了よ!」

 

朝倉、かかってきなさい!あんたなんか次のターンでボコボコにしてやるんだから!

 

「わたしのターン、ドロー!まずは手札から魔法カード、未来融合-フューチャー・フュージョン-を発動!このカードが発動したとき、わたしは融合モンスターを指定して、それの融合素材をデッキから墓地に送る。そして2ターン後のスタンバイフェイズ時にその融合モンスターを特殊召喚することができるの。ちなみにわたしが選ぶモンスターは有翼幻獣キマイラ。よって、デッキから幻獣王ガゼルとバフォメットを墓地に送るわ」

 

ううう、厄介なカードね。でもなんでキマイラ?あれはそこまで強くないじゃない。

 

「そして手札からシャインエンジェル(1400/800)を召喚!」

 

リクルーターね。戦闘で破壊してもデッキから特殊召喚してくる嫌なカードだわ。

 

「ふふふっ、それじゃバトルフェイズね。いくわよ!暗黒界の軍神シルバでヂェミナイエルフを攻撃!」

 

やっぱり来たわね。でもこの攻撃をくらうわけにはいかないのよ!

 

「今よ!リバースカードオープン!攻撃の無力化!よってシルバの攻撃は無効よ!」

 

「なんですって!?」

 

「残念だったわね、朝倉!これであんたのバトルフェイズは終了よ!」

 

「やるわね。ターン終了よ」

 

ふう、危なかったわ。エルフが破壊されてたら結構やばかったかもね・・・いくわよ!朝倉!

 

「あたしのターン!ドロー!あたしは手札から魔法カード、召喚師のスキルを発動っ!このカードは、デッキから星5以上の通常モンスターを手札に加えるカード。あたしはこの効果で真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)を手札に加えるわ。」

 

「あら、あなたのフィールドにはモンスターは1体しかいないわよ?どうやって出すつもり?」

 

「まだあたしのメインフェイズは終わってないわ!今度は手札から黒竜の雛(800/500)を召喚!」

 

「ふふっ、なぁに、そのかわいい竜は・・・ん?・・・・はっ!そ、そのカードは!?」

 

「ようやく気がついたようね、朝倉!あたしは黒竜の雛の効果を発動!表表示でフィールドに存在するこのカードを墓地に送ることによって、あたしは手札から真紅眼の黒竜を特殊召喚することができる。出でよっ!真紅眼の黒竜((2400/2000)!」

 

フィールド上にいた可愛らしげな雛が閃光に包まれたかと思うと、疾風とともに中から大きな黒竜が現れた。くううう、かっこいいじゃない!あたしのレッドアイズ!!!

 

「えっ・・・ここで一気に形勢逆転されるなんて!?」

 

朝倉の顔に驚きの色が浮かぶ。いくわよ、レッドアイズ!

 

「バトルフェイズに入るわ!レッドアイズでシルバに攻撃!」

 

レッドアイズが口を開き、そこに熱く燃え盛る炎がみるみるうちに集まっていく。

 

「喰らいなさい!黒・炎・弾!!!」

 

レッドアイズの口から炎が発射され、シルバを捕らえた。ドガァァァァァンという轟音の後にはもはやシルバは完全に消え去っていた。

 

「くっ!!!やるわね!?」

 

よし、朝倉のライフが3900になったわ。このまま一気に攻めるわよ!

 

「それと、ヂェミナイエルフでシャインエンジェルを攻撃!」

 

「きゃあああ!!!!」

 

これで朝倉のライフは3400。このまま一気に押し切るわよ!

 

「ちょ、ちょっと待ってもらえる?シャインエンジェルの効果を発動するわ」

 

なによ?なんかあるわけ?

 

「シャインエンジェルが先頭で破壊されたとき、わたしは攻撃力1500以下の光属性モンスターを特殊召喚することができるわ。だからわたしはもう一度シャインエンジェルを特殊召喚」

 

リクルーターだったのすっかり忘れてたわ。まぁ盾ってわけね。なかなかしぶといじゃないの。

 

「これであたしのターンは終了よ」

 

「それじゃあわたしのターンね。ドロー!そうしたらリバースカードを2枚セット。シャインエンジェルを守備表示に。これでターン終了するわ。かかってきたらどう?涼宮さん?」

 

なんだ、朝倉ったらよくわからない魔法使っただけで何もしかけてこないじゃない。あのリバースカードは気になるけどね。あたしのライフはまだ無傷だし、攻撃あるのみ、かしら。

 

「あたしのターン、ドロー。下級モンスターはこない、か。なら戦うしかないわね、いくわよ、ヂェミナイエルフでシャインエンジェルを攻撃っ!」

 

どうどう?トラップは来るの!?・・・とハラハラしたが、どうやら間違いだったみたいね。だって、苦い顔しながら効果でもう一度シャインエンジェル出してきたくらいだもん。

これってかなりのチャンスよね!?

 

「続けてレッドアイズでシャインエンジェルを攻撃よっ!黒・炎・弾!!!」

 

朝倉のモンスターは攻撃表示。特殊召喚されるのは厄介だけど、1000ダメージは大きいわね。なんて思ってる間に黒炎弾がシャインエンジェルに命中し、爆発が起きる。それで出た爆煙がフィールドを埋め尽くした。

でも朝倉が包まれる寸前、その顔に笑みが浮かんでいたのは気のせい、よね・・・?

 

「どうよ朝倉。1000ダメージは痛いでしょ!?あんたがいくらモンスターを呼ぼうと・・・」

 

「それ、よんでたわよ、涼宮さん!あなた、自分のライフを見てみなさい」

 

煙の中で朝倉が笑う。何が言いたいのよ?あたしのライフ4000のままでしょ?減ってるわけが・・・・・

あれ?なんで?なんであたしのライフが3000になってんの!?

 

「それはわたしがトラップを発動したから」

 

煙が徐々に晴れ、そのトラップが姿を現した。

 

「トラップカード、ディメンションウォール。このカードは、プレイヤーが戦闘ダメージを受けたときに発動するカード。その戦闘ダメージを相手に与えることができる。よってあなたに1000ダメージ!」

 

「くっ、そうくるなんて思ってもみなかったわ」

 

最初の攻撃で使ってこなかったのは戦闘ダメージが発生しなかったからなのね。モンスターを伏せてこなかったのも、確実にシャインエンジェルに攻撃させるため、か。

ホント強いわね、こいつ。ライフ的には負けてるけど、朝倉の場はリバースカード1枚と未来融合だけ。次の朝倉のスタンバイフェイズにキマイラが出てくるけど・・・

レッドアイズの敵じゃないわね。それにこのカードがあればキマイラなんてちょちょいのちょいよ。しょうがないけど、このターンはもう何もできないかな。

 

「あたしはリバースカードを1枚セットしてターン終了!」

「いくわよ、私のターン。ドロー!スタンバイフェイズで有翼幻獣キマイラ(2100/1800)を未来融合によって特殊召喚!」

 

残念だったわね、キマイラは破壊させてもらうわよ!

 

「今よ!リバースカードオープン!速攻魔法、サイクロン発動!」

 

相手ターンでも使える速攻魔法。サイクロンはその中でもかなり優秀で、フィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊することができる。

未来融合は、未来融合自体が破壊されたら特殊召喚した融合モンスターも破壊する効果も持っていたはず。これで相手のフィールドはほぼがら空きね!

 

「もちろん破壊するカードは未来融合よ!」

 

グラフィック化された未来融合のカードに向かって一つの竜巻が迫る。これで朝倉ももうお終いよ!

 

「惜しかったわね!リバースカードオープン!カウンタートラップ、マジックジャマー!このカードは手札を1枚捨てることによって、相手の魔法カードの発動を無効化し、破壊することができるカード。よって、わたしは手札を1枚捨てて、サイクロンの発動を無効化するわ!よって、キマイラも健在よ。」

 

竜巻の進行方向に魔方陣が突如として現れ、竜巻を吸い込んでいった。

 

「ふ、ふんっ。でもあんたのフィールドにはキマイラしかないじゃない。だったら早めにあんた自身で負けを認めなさい!それで、このゲームを終わらせてみんなに会わせなさい!」

 

あたしがそう言ったとき、朝倉は、ふふふっ、とこれで何度目か分からない笑いをこぼしたの。その眼には狂気の色を浮かべて。

 

「そうね、このゲームを終わらせるのにはわたしも賛成だわ。でもね、負けるのはあなたよ」

 

何言ってるのよ、圧倒的に有利なのはあたしのほうじゃないの。

 

「見てれば分かるわよ。嫌でもね」

 

その時あたしはなんだかとっても嫌な感じがしたの。何度もそれが何かの間違いであるように願ったわ。でもね、嫌な予感ってのはなかなかはずれないもんなのよね。

 

まずは速攻魔法、魔道書整理を発動。これによってわたしはデッキの上から3枚までのカードを見て、それを好きな順番で戻すことができる」

 

朝倉はデッキの上から3枚のカードをめくり、ふふん、と笑って順番を入れ替えた。何考えてるのかしら?まったく分からないわ。

 

「残念ね、涼宮さん。あなたの負けはもう規定事項みたい」

 

は?あんた何言ってるのよ?

 

「ふふっ。すぐに終わらせてあげるわ。わたしは、墓地に存在する、デーモンの召喚、暗黒界の軍神シルバ、バフォメット、シャインエンジェルの、3枚の闇の悪魔、1枚の光の天使をゲームから除外し、混沌の世界から破滅の使者を呼ぶわ!降臨せよ!天魔神ノーレラス(2400/1500)!!!!!」

 

そう朝倉が言い放つと、あたしと朝倉の間に闇が集まり、ゲートを作り出した。そのゲートの中心部から一筋の光が放たれ、その中から暗黒の巨体に闇の翼を生やし、髑髏の仮面をつけた、邪悪な魔人が現れた。なんなのよ、コイツは・・・

 

「お、大口たたいた割には、出てきた奴はレッドアイズと同じ攻撃力のモンスターじゃない。あんた、まだ本当に勝つつもりなの?」

 

確かにレッドアイズと同士討ちされて、キマイラでヂェミナイを攻撃されたら痛いわね・・・でもあたしの手札には聖なるバリア-ミラーフォース-があるのよ。次のターンで相手モンスター全滅よ!この状況であたしが負けるわけないじゃない。

 

「あら、何を勘違いしてるの?わたしはノーレラスでは攻撃しないわ」

 

じゃあ何のために出したっていうのよ?

 

「もちろん効果のために決まってるじゃない。あなたを敗北の道に突き落とすための効果をね」

 

あんた、一体なにを考えてるのよ?

 

「見せてあげるわ!ノーレラスの効果発動!プレイヤーはライフを1000払うことによって、お互いのフィールド、手札を全て破壊し、墓地に送る!その後、お互いはカードを1枚引く」

 

ええ!?あたしのミラーフォースが!レッドアイズが!なんてことなの!フィールドと手札がリセットされちゃったじゃない!こんなのって反則よ!

で・・・でも何かしら?何か忘れているような気が・・・・

 

「あながちそれも間違いじゃないわ」

 

その言葉であたしは朝倉のフィールドを見て、そして驚いた。

「なんで!?すべてのカードが破壊されたはずなのになんであんたのフィールドにモンスターがいるのよ!」

 

おかしいじゃない!まだカードだってドローしてないわよ?

 

「あなた、キマイラの効果、覚えているかしら?」

 

キマイラの効果・・・?確か・・・キマイラが破壊されたときに、墓地から幻獣王ガゼルかバフォメットを場に特殊召喚できる・・・・・っ!!!

 

「そうよ。ノーレラスによって破壊されたキマイラは効果を発動!わたしは幻獣王ガゼル(1500/1200)を攻撃表示で特殊召喚!」

 

あたしには今手札も場もがら空き・・・次のターンまでもつの?!

 

「それよりも涼宮さん、わたしたちはまだドローしてないわよね?」

 

ええ、そうね。このドローで次のターンにつなげるしかないもの。

 

「それと、さっきわたしが使ったカードも覚えてる?」

 

何だったかしら?確か・・・魔道書整理・・・ってまさか!?今のために!?

 

「そうよ。全てはこのときのため。それじゃあゲームを終わらせましょうか。あなたの敗北でね。幻獣王ガゼルを生け贄に、偉大魔獣ガーゼット(0/0)を召喚!」

 

攻守0ですって?そんなカードで何ができるっていうのよ?

 

「あら、あなたはこのカードの効果を知らないの?なら教えてあげる。このカードはね、このカードを召喚するのにつかった生け贄モンスターの攻撃力の2倍の数値を自分の攻撃力として得ることができるのよ」

 

そ・・・それじゃあ今、ガーゼットの攻撃力は・・・・・

 

3000、ね。ちょうどあなたのライフポイントと同じね」

 

あたしは絶望した。この攻撃を耐えることなんて不可能だから。そう・・・あたしの負け、なのね・・・

 

「朝倉、あたしの負けよ。でも、ひとつだけお願い聞いてもらえないかしら?」

 

「いいわよ。どうせこの後消えちゃうんだもんね。わたしにできる範囲なら構わないわ」

 

よかった。それを聞いて安心したわ。

 

「じゃ、じゃあ・・・・・キョンに会わせてほしいの」

 

「あら、そんなことでいいの?いいわよ、会わせてあげる。でもしゃべっちゃ駄目よ?」

 

分かったわ。会えるだけでも十分よ。それを聞いて朝倉は満足したのか、ポケットからカードを1枚取り出し、なんかよくわからない言葉を早口でつぶやいた。そして、カードが一瞬光ったかと思うと、部室の空間の一角が歪み、そこからキョンが出てきた。

あれから数十分しか経ってないのに、すごく懐かしく感じる。でも、キョンは目を閉じていた。

 

「ちょっと!キョン、気失ってるじゃない!あんた、何やったのよ!」

 

朝倉は、大丈夫よ、と言うと、また謎の早口言葉を始めた。なんなのかしら、あの呪文は。

 

「お久しぶりね、キョン君」

 

しばらくして朝倉がそういうと、キョンが目を覚ました。

ああ、これでもう未練はないわ。いや、もうすこしこいつと話がしたかったな・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・

 

 

 

「大丈夫か!?ハルヒ!?」

 

体が動かせない分、ありったけの声を張り上げる。頼む!無事でいてくれ!

 

「そんなに心配しなくてもすぐ起きるわ。何もしてないもの。だって彼女、まだ罰ゲームを受けてないからね」

 

「貴様!これ以上ハルヒを苦しめるな!なんなら俺が相手になってやるぞ!」

 

俺なりに一番迫力がありそうな眼で朝倉を睨み付ける。身体はエースキラーに捕まったウルトラ兄弟みたいな格好で動かせないがな。そこ、ダサいとか言うな。

 

「でもこの決闘は彼女も望んでしたこと。きつく言うようだけど、部外者のあなたには関係ないことよ。闘ってみたいっていう気持ちもあるけどね」

 

な、なら俺と・・・!

 

「あら、彼女が起きたみたいよ」

 

俺は、朝倉がそう言い終わるのよりも早くハルヒのほうを向いた。

 

「おいハルヒ!ここからさっさと逃げろ!逃げるんだっ!」

 

「・・・あんた、何勘違いしてるの?」

 

ハ・・・ハルヒ?その顔は冷静そのものだった。

 

「決闘ってのはね、そもそも古代ローマで、奴隷たちが自由を求めて命を懸けて闘ったのが始まりなのよ?それはあたしたち決闘者も同じ。あたしは負けた。命を懸けた決闘に。その闘いはあたしの望んでしたことだった」

 

その真剣な表情に俺は何も言い返せなかった。俺にこんな覚悟はできるだろうか。俺はハルヒみたいに何かに命を懸けられるだろうか。

 

「だからね。あんたには笑って見送って欲しいの」

 

ハルヒ・・・お前・・・

 

「お話中悪いけど、そろそろいいかしら?もともとしゃべらないって約束だったんだし」

 

「ええ・・・そう、ね。もう時間ってわけか。」

 

ちょっと待ってくれ・・・頼む朝倉・・・待ってくれ!

そんな俺の必死の願いも虚しく、朝倉はポケットから何も書かれていないカードを取り出した。

 

「それじゃ、さようなら。涼宮さん。罰ゲーム!!!魂の牢獄!!!」

 

そしてその口から無情な言葉が発せられた。ハルヒの体から光が抜け出し、カードに吸い込まれていく。全ての光がカードに吸い込まれる直前、あいつは言ったんだ。

 

「今までありがとね・・・キョン・・・」

 

静かに、そして悲しい微笑みを浮かべながら。

 

「ハルヒ!?ハルヒーーーーっ!!!!!!」

 

 

 

ドサッ。

 

 

 

ハルヒが床に倒れる。その瞬間、俺の体も動くようになっていた。その証拠に、その場に俺は泣き崩れていたんだ。

 

「くそおおおおぉぉおおおぉおおぉおぉ!!!!」

 

なんで!なんで俺じゃなかったんだ!なんで俺じゃいけなかったんだ!

 

「ひとつだけ、いい事を教えてあげる」

 

なんだ・・・?

 

「涼宮さんがわたしの闇のゲームを受けたのはね?あなたたちのためだったのよ?」

 

・・・・・それはどういう意味だ?

 

「わたしは、あのディスクが起動したとき、対象を全ての能力を封じ、かつ意識を失わせた上で空間閉鎖された亜空間に閉じ込めるようにしたの。あ、いい忘れたけど亜空間っていうのはこのカードね」

 

そういって朝倉はみんなが描かれたカードを見せてきた。

 

「もちろん、対象と言うのはあなたたちのこと。」

 

それじゃあハルヒは・・・

 

「あなたたちを助けるためにわたしの決闘を挑んだのよ」

 

体中に電撃が走ったみたいだった。悔やんでも悔やみきれないとはこのことだろう。そう。この事件は俺が引き起こしたも同然、いや、俺が引き金となって起こったものだったのだ。そのために古泉が。長門が。朝比奈さんが。そしてハルヒが。

それと同時に俺は分かったんだよ。俺が命を懸けれる、懸けなければならないものってのがな。

 

「・・・・・朝倉」

 

「なにかしら?」

 

「俺はお前に闇のゲームを申し込む」

 

あいつらのためなら、あいつらとの毎日を取り返すためなら、この命、微塵も惜しくはない。

 

「そうね。いいわよ」

 

ならば話が早い。いまここで・・・

 

「でも条件があるわ」

 

条件だと?さっさと言え。

 

「それはあなたがわたしのところに辿り着く事」

 

はぁ?お前はなにを言っているんだ?全く話がつかめんぞ。ちゃんと言え。

 

「んん、もう。キョン君が突っ込むのが早いんじゃない。ちゃんと聞いてよね」

 

ああ。分かった。

 

「これからあなたにはある島に行ってもらって、その島にあるお城を目指してもらうわ。でもここからが重要。お城に入るには4つの証が必要なの。その4つを持っているのは4人のプレイヤーキラー。11つ持ってるから全員倒してもらうわ」

 

簡単に言うと、全員倒さなきゃお前とは闘えんということか。

 

「うん。そういうこと。言い忘れてたけど、あなたのライフと命は繋がってるからね」

 

簡単に言うと、俺のライフが0になったら俺は死ぬってことか。

 

「うん。そういうこと」

 

・・・負けるわけにはいかないな。あいつらのためにも、俺のためにも。

 

「分かった。それじゃ、俺を島へ送ってくれ」

 

構わん。俺は勝たなきゃならないからな。いや、勝つんだからな。

 

「ふふっ。そういうところ、嫌いじゃないわよ。ええ、分かったわ。始めましょうか。」

 

・・・・・すぐに助けてやるからな。待ってろよ、ハルヒ、長門、古泉、朝比奈さん。

 

「「それじゃあいく「わよっ!」「ぞ!」」」

 

 

 

「「決闘!!!」」

 

 

 

そう口にした瞬間、俺は閃光に包まれ目を閉じた。

失ったもの、命を懸けられるもの、その「答え」を取り戻すため。

俺は長く険しい闘いのロードへと足を踏み出したんだ。

 

 

涼宮ハルヒの決闘王国2へ続く

 

※この作品は「涼宮ハルヒの決闘」を参考にさせていただいております。

このような場所で恐縮ですが、改めてお礼とお詫びを言わせていただきたく思います。

作者様、どうもありがとうございました。そして、許可なく参考にさせていただき、すみませんでした。


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