それはある日突然訪れた。
不意に暗転する視界。
――なんだ?何が起きた?
そして、耳元で響く声。
「だーれだ?」
おお!この声は、地上に下り立った天使(正しくは現代にやって来た未来の美少女だが)
朝比奈さんのものではないか!
なんて昔の俺なら思っただろうがな。今の俺は前ほど喜ばないのさ。
なぜって?俺にはハルヒがいるから。
「突然なんですか?朝比奈さん」
「そうよ、みくるちゃん。何やってんのよ!」
「と、特になんでもないですよぅ。ただなんとなく……」
「ふうん。ま、一回までなら許すわ」
心の広いことで。
「一回までならいいの?」
こら長門。まさかお前までやりたいとか言わないだろうな?
「では、ぼ……」
「黙れ、古泉」
「冗談ですよ」
いや、目がマジだった。

長門が本を閉じ、今日の活動は終了。
そしてなぜだか集団下校のはこびとなった。
そして、また暗くなる視界。
「だ~れだ!」
「ハルヒだろう?」
「ブー、惜しい。あんたをすきな涼宮ハルヒよ!」
「ああ、俺の大好きなハルヒか」
何も言うな。恥ずかしすぎることは分かってるんだ。俺にも。
だが、それ位好きなんだ。
……やっぱ、恥ずかしい。だれか、俺がすっぽり入れるぐらいの穴を知らないか。
「……バカップル」
「何か言ったか、長門?」
「別に」
そうそう、歩きながら本読むのは……
「ッ!」
遅かったか。近ごろドジッ子化してるな、長門。今時電柱にぶつかるやつなんて、そうはいないぞ。
「有希ったら、馬鹿ねえ。怪我してない?」
「へいき」
「そ。ならいいんだけど。ところで、古泉君は?」
あれ、あいつはどこ行きやがった?
と、猛烈に背筋が寒くなり、俺は反射的に叫んでいた。
「だ……」
「よるな、古泉!」
そう、背後には古泉がいた。
「なんで分かったんですか?」
俺の危機察知信号が真っ赤に点灯したものでな。
「古泉君。さすがに男同士は引くわ」
同感。
「嫌だなぁ。軽いジョークですよ?」
ジョークだって言えば済むと思ってないか?
「滅相もない」
ある意味地獄な状況を回避し、俺たちはそれぞれの家路を辿った。
もっとも、俺はハルヒを家まで送ってからわが家に帰るわけだが

いや、今日は疲れた。こんな日に夜更かしは禁止だな。さっさと寝よう。
俺は、ベットに潜り込んで、目を閉じた。
視界が暗くなる拍子に聞こえて来たのは、今日散々聞いた台詞。
それは俺のよく知ってる声。

「ダーレダ?」
…………
長門有希は自室のベランダに立っている。
今日一日のことを思う。
自分が出来なかったことを思う。
それを悔しがることはエラーと認識する。
それでも、悔しい、残念だ。
だから、自分にわがままを許した。
普段は情報統合思念体のために使う情報操作。
それを自分のために使う。

些細な想像。彼の後ろに立って、目隠ししてこういうのだ。
「だーれだ?」

――この声が届きますように。
fin.

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