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「いい?ストーリーのおおまかな流れはこうよ!今から、1800年くらい前の三国時代の中国に、ある男がタイムスリップするの。その男は、現代では全く仕事をしないダメダメな男なんだけど、実はIQ200の天才で、戦術をたてるのがめちゃくちゃ上手いの!そして、あっという間に領土を広げていって、4つ目の国を自らの手で作って、時代は四国時代に・・・・・・」

 
おいおい、どんどん違う道へ脱線している気がするぞ・・・・・・
 
「ちょっと待て。それじゃあ、歴史小説とは言えねぇだろ?」
 
「いいじゃない、面白かったら。大体、あんたの頭じゃまともな歴史小説なんてね、書けやしないのよ!だから、私が代わりに考えてあげてんじゃないの!何?あんたは、そんな私の優しさを踏みにじる気?」
 
へいへい、分かりましたよ。しかし、そんなに自信満々で話せるストーリーがあるんなら、もっと早く教えてくれてもいいんじゃねぇのか?
 
俺は、笑怒顔(命名、俺)でいかにも楽しそうに、イラストをつけてまでストーリーを説明しているハルヒに逆らうことが出来ず、また、逆らうつもりも途中でなくなった。
 
まあ、何だ、こいつが考えたストーリーだ。これなら、仕上げて早々、没なんて事はないだろうしな。
 
「・・・・・・・最後は、中国を統一したけど、実はそれは夢でした、ってわけ。ま、ざっとこんな感じね。じゃあ、これを元に書きなさい。」
 
ハルヒは、イラスト付きのあらすじを俺に手渡すと、そのまま俺の背後にパイプ椅子を移動させて陣取った。
 
「・・・・・・」
 
「・・・・・・どうしたの?早く書きなさいよ。」
 
いや、とりあえず、そこから立ち退いてもらえますか?
やりにくいったら、ありゃしない。
 
「いいじゃない。こうでもしないと、あんた書かないでしょ。いいから、早く始めなさい!」
 
ピーチクパーチクわめくハルヒを背後に置いて、俺は嫌々、キーボードに手を付けた。
 
う~ん、文章というものは、書き出しが難しいんだよな、書き出しが・・・・・・
 
 
 
 
 
「・・・ま、あんたの力じゃ、所詮こんなもんね。いいわ、あとは、クライマックスだけね。もう遅いし、今日はこれくらいにしましょう。」
 
ふう・・・疲れた・・・・・・。
 
あれから、ハルヒの「ちょっと、それ、もっといい表現できないの!?」とか、「それじゃあ、全く臨場感ってもんがないじゃない!迫力が足りないのよ、迫力が!」とかいった、ダメ出しを何発も受け、瀕死寸前になりつつも、何とか俺の原稿が8割方完成した。
 

残りは、主人公の男が軍を引き連れて、蜀の都、成都に攻め込み、蜀の軍師、諸葛亮孔明と頭脳戦を繰り広げるシーンを書くだけだ。

 

全く、俺は一体何を書いているんだろうね。
 
 

 

 

帰り道の下り坂。辺りは、もうだいぶ薄暗くなっている。
 
1番前には、ハルヒと朝比奈さんがいて、何やら談笑している。
 
その後ろでは、長門がとぼとぼと歩いている。
鞄がやけにふくれているのは、ノートパソコンが入っているからだ。
どうやら、家で原稿の続きを書くらしい。
 

そして、1番後ろを俺は、フラフラと歩いている。

 

谷口なら、「全く、今日はいつもみてる番組があるのによ~!」とか言って、真っ先に帰ってしまった。

 
さあ、今日の晩飯は何だろうな。出来れば軽いモンがいい。さっきから、激しい頭痛に襲われているからな。
 
そんなどうでもいいことを考えていると、そのうち光陽園駅前に辿り着いた。
ここで、みんなとはお別れだ。
 

「じゃ、明日も気合入れて書くのよ!もう、明日中に仕上げちゃいたいからね。」

と、ハルヒ。
 
「じゃあね、キョン君。お疲れ様。」
と、朝比奈さん。
 
「・・・・・・」
は、長門の沈黙だ。
 
さっきから長門は、気のせいか、ぼーっとしているような気がする。
というか、小さな表情の変化すら全く見られない。
どうした?いつの間にか、元の長門に戻ったか?
 
「どうした、長門?何か、気になることでもあったか?」
 
俺の声に長門は一瞬ビクッとしたが、それでも表情は変えずに、
 
「・・・何でもない。」
 
と、呟いた。
 
「そうか、それならいいんだが・・・・・・」
 
「・・・・・・」
 
俺の言葉に沈黙で応答した長門は、そのまま逃げるようにマンションの方へと向かっていった。
 
う~ん、何なんだ?気になるな・・・・・・
 
 
 
 
「少しお願いしたいことが御座いましてね。電話させていただきました。」
 
疑問をお土産に帰宅した俺のもとに、古泉からの電話がかかってきた。
お前のお願いは、大体厄介事ばかりなんだがな・・・
 
「まあ、そう仰らずに。今回のは、簡単な頼み事ですよ。あなたの先ほどの話を『機関』に報告したところ、我々は新たに『異時空間内閉鎖空間対策本部』というものを設置することになりました。」
 
異時空間内閉鎖空間対策本部?何だ、その無駄に長くて、分かりにくい上に、意味もそのまんまという、読者に不親切な名前は?
 
「そうですか?僕としては重要機関みたいな感じで少し気に入っているのですが。」
 
電話越しにでも顔が想像できそうな声で、いかにも疑問げにこう言った古泉は、いくらか声のトーンを抑えて、さらにこう続けた。
 
「もう、お察しかもしれませんが、その本部の部長に僕が任命されました。臨時の部なのでそれほど名誉なことではありませんが。我々は、何らかの方法でその別時空に向かい、閉鎖空間内へと侵入するつもりです。そこに神人が例え存在していないのだとしてもね。」
 
そうかそうか、それはご苦労なこった。まあ、せいぜい死なない程度に頑張ってくれ。
 
「ずいぶん冷たい言い方をなされますが、今回の任務はあなたが大きな鍵を握っているんですよ?あなたは昨日、こちらの世界に一時的に来ていた『長門有希』とコンタクトを取っています。となれば、長門さんがどうやって別の時空に戻ったのかご存知のはずです。違いますか?」
 
なるほど。俺が方法を教えてやらないと、お前らは何も出来ないってことだな?
 
「そういうことです。どうです?何か知っていることでも?」
 

俺は、昨日、長門の部屋で見た、何やらよく分からないカラフルな空間『パラレルゲート』のことと、その向こうにあった、あまりにもミスマッチな襖のことを話した。

あの襖の向こうに長門は消えていった。
ってことは、あの向こうがおそらく別世界へとつながっているんだろう。
 
「だが、長門はあのゲートは変な力を持った奴は通れないとか言ってたぞ。お前らみたいな超能力者は大丈夫なのか?」
 
「ああ、その点でしたらご心配なく。我々は、普段は何の力も持たない普通の一般人ですからね。」
 
完璧に執事やメイドや、気が付いたら警官にさえなっているような人々が、果たして普通の一般人と言えるのだろうか?
 
「まあ、そうかもしれませんが、おそらくゲートに拒絶されるような力を持っているとは、認識されないでしょう。」
 
俺は、「突然お尋ねしたら、ひょっとしたら入れてくれないかもしれませんからね。」という、古泉の無駄な心配のせいで、長門の家まで同伴することになった。
何だ?俺が着いていっても同じことじゃないのか?
 
とりあえず、長門に電話してから行こうと思ったが、誰も出なかったので、そのまま向かうことにした。
 
ふう・・・まさか、2日連続行くはめになろうとはね・・・・・・。
 
 
 
 
 
PULLLLLLLLLL
 
部屋の電話が鳴る。
しかし、私はそれに出なかった。
と、いうより気が付いていなかった。
 

頭の中で、今日の部室の中での、彼と涼宮ハルヒの様子を思い浮かべる。

 

何でだろう?
この事を思うと、胸が締め付けられるような思いがする。
涼宮ハルヒのことが羨ましくて仕方がない。
 
今まで、涼宮ハルヒのことを羨ましく思ったことがないと言えば、それは嘘になる。

私は、いつもの4人で集まった時に見せるあの明るい笑顔や、何でもそつなくこなすところを何度も見てきた。

それに対しては、尊敬の思いもあったし、羨望の思いもあった。

 
しかし、今回のは、それとは違うのだ。
何か、それよりももっと苦しくて、辛いような、とにかく今まで経験したことのないようなものだ。
 
彼が、そんな私のことを心配してくれているのも、さっきの帰り道で分かった。
しかし、私はろくに返事もせずに、ただ逃げるようにして立ち去ってしまった。
 
どうしたんだろう、私・・・・・・。
 
 
 
しばらく、ぼーっとしていた私は、不意に鳴ったインターホンのベルの音で我に返った。
 
誰だろう?
私は、パネルを操作し、そこから聞こえてきた声に驚愕した。
 
「ああ、長門か。俺だ。ちょっと、用があってよ。入ってもいいか?」
 
え、彼?
彼が、私に何の用なの?
 
私は、心臓の鼓動が高まるのを感じながらも、ボタンを押して彼をマンションの中へと通した。
 
 
 
「よう、今日も来ちまったな。」
 
「今晩は、長門さん。」
 

彼は、何故か古泉一樹を引き連れてやって来た。

 

それだけじゃない。
その後ろには、誰だか分からないが、清楚な感じの女の人が立っている。
 
「森園生と申します。私は、古いz・・・失礼。一樹の従姉にあたるものです。よろしくお願いします。」
 
そう言うと、彼女は深々と礼をした。
茶道か何かをやっているのだろうか、とても綺麗な礼だった。
 
私の心臓の鼓動が少し収まった。
何だ、彼1人じゃないんだ・・・・・・。
 
彼は、何やら戸惑う素振りを見せつつも、言葉を選ぶようにして、こう切り出した。
 
「えっと・・・あのな、長門。この2人は、長門、あ、もう1人の方な。そいつのアシスタントなんだよ。アシスタントというか、仲間というか・・・とりあえず、あいつがハルヒの力を消すのを手伝いに来たんだ。それで、向こうの世界に行かないといけないんだが、あっちとつながってるのは、この世界じゃ、どうやらこの部屋だけらしいんだ。だから、この人達をちょっと、中に入れてもらえないか?襖の奥のよく訳の分からん場所に入れてもらうだけでいいんだ。」
 
「すみませんね、夜分遅くに。ご迷惑をお掛けします。」
 
そう言って、笑顔と共にお辞儀をした古泉一樹と、森という女性を見た。
そういうことなら、別にいいけど・・・・・・
 
「・・・・・・どうぞ。」
 
「すみません。失礼します。」
 
そういうと、2人は部屋の中へと入っていった。

その後を、私と彼はついていく。

 

 

 
「では、行って参ります。遅くとも、明日中には帰れると思います。ご心配なく、涼宮さんの方には、明日は親戚の用事で学校をお休みすると伝えておきましたので。」
 
「おう、気をつけてな。」
 
彼とこう言葉を交わした後、2人は襖の奥にある、もう1つの襖の奥へと消えていった。
 
 
 
「ふう・・・すまんな、突然押しかけちまって。」
 
そう言うと、彼は周りを見渡した。
 
「あれ、夕食まだか?邪魔しちまったな。」
 
邪魔?別に、邪魔ではない。
それどころか、夕食を食べていって貰いたいくらいだ。
 
「じゃあ、俺、帰るわ。また、明日な。」
 
そう言って、彼は玄関の方へと歩いて行った。
 
ちょっと待って!もうちょっと一緒に・・・・・・。
そう思って声を掛けてみた。
 
「あ・・・・・・」
 
それだけしか声に出せなかった。
 
「どうした?」
 
彼が、きょとんとした顔をこちらに向ける。
えっと・・・・・・
 
「・・・何でもない。」
 
「そうか、じゃあな。」
 
その言葉を残し、彼は玄関の外へと出て行った。
 
 

何故だか、自分にものすごく腹が立った。

 

                            

   ~Different World's Inhabitants YUKI~カヨウビ(その一)~ へ続く~

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