【1】サミット開幕
 
皆さん。初めての方は初めまして。初めてでない方はこんにちは。まあなんだ、初めての方が居られるとしたら原作をきちんと読め、といいたいところだけど、いまひとつ存在感のない僕がそんなことを言うと自意識過剰かそれとも負け組の僻み、皮肉か。それはさておいて。
あどけないベビーフェイスと闇より黒い腹、心でお馴染みの名脇役、国木田です。
フルネームは禁則事項なんだ。どうしても気になったら谷川流か京アニか、とにかく君の納得の行くまで調べてみたらいいんじゃないかな?どうせ答えは出ないけどね、ブツブツ…
 
今回は特別に僕の発案で『涼宮ハルヒの憂鬱・脇役サミット』略して脇役サミットを開催させていただこうと思う。全然略せていないような気がする、という意見は申し訳ないがスルーしよう。
僕を筆頭に、多くの脇役がこの物語で不遇の扱いを受けている。心象描写も台詞も登場シーンも少ないが故に本編で語られない僕らの不満は既に発射寸前のペットボトルロケットの中身くらいパンパンなんだよ。タイムアップ直前のボンバーマンのステージ並に危険な状態になっている僕らの不満や愚痴を少しでもぶつけるためのサミットを開き、今後の作品でも頑張って脇役を務めていこう、そんな立志式にもなれば、と思ったわけだ。どう見ても後からとってつけたような理由だが、お構いなく。
 
問題になってくるのが本サミットの出席資格である。一般的な意味での『脇役』はかなり広義なものとなってしまうので、数ある登場人物の中から誰を呼び、誰の出席を拒否するかを前もってことわっておく必要がありそうだ。下手をすればキョンと涼宮さん以外の全員がこのサミットに集結してしまう恐れがあるから事前に手はうっておきたいものね。
 
まずSOS団の面々はこの会議に出席できない。
当たり前だろ?キョンと涼宮さんはいうまでもないとして、長門さんも無口キャラの癖に僕達より台詞多くて美味しいところをいつも浚っていくし、朝比奈さんも萌キャラを最前面に押し出して、ルックスとドジっぷりで読者を釘付けにしてしまう主役級の存在だ。古泉くんは些か不憫なキャラではあるが、それでもイケメンという属性を付与され、なおかつSOS団のイベントの際には進んで状況説明を行なう(しかもそれがまた長ったらしい)ため、台詞が多い。目立ちすぎだ。よって除外。大体、微笑を浮かべた知的キャラって、僕と被ってるんだよね。困ったもんだよね。
 
ついで佐々木団。これは呼ぶべきか否か悩んだところだ。もちろん本編のストーリー的には脇役に違いない。だが単行本にしてわずか1冊だけしか出てきていないのに、もう僕らを喰っている感があるのはいただけないね。電波団長と無口女とドジっ娘とニヒルっていう図式はSOS団の丸パクリだが彼らを脇役サミットに参加させると完全に僕らが目立たなくなる。ここは佐々木団も外すことにしよう。大体、あの電波団長の男喋りは僕の口調と似ていて困る。本当に困る。このSS作者には二人を書き分ける余裕なんてないんだ。そしてこういう卑屈な言い訳を作品に散りばめるのも、この作者の常套手段だと思って許してやって欲しいな。世の中、そんなご都合主義で回るもんなんです。はい。
 
そういうわけで脇役サミットの開催である。司会進行モノローグは全てこの国木田が担当させて頂くことになるね。よろしくどうぞ。大丈夫、激奏みたいに必要以上にシャシャる事はしないつもりだ。
 
【2】第一の議題
 
「それでは最初の議題から。」
僕はプロジェクタ-に議題を映し出した。
「『古泉一樹、喋りすぎ』。これは機関代表・森園生さんの発議ですね。ではどうぞ」
森さんはちょっと会釈するとマイクのスイッチを入れて語りだした。
 
「私、『機関』の方で工作員をしております森園生と申します。今回は我が機関のメンバーの一人、古泉一樹に対する意見を述べさせて頂きます。我々の機関の監視対象となる涼宮ハルヒに一番近いところにいる機関メンバーだというのは分かるのですが、それにしても彼は喋りすぎです。日常生活はともかく、機関主動のイベントや企画などの時ですら説明役を無理矢理買って出る。これでは我々の立つ瀬がありません」
 
ふん、なるほど。僕の意見もほぼ同じだ。前項でも述べたが、あのイケメンはとりあえず厚遇され過ぎな感がある。その嘘くさい笑顔をやめろ。お前はスマイリーキ●チか。おっと、僕の心象描写はこの辺りにしておこう。森さんの二度目の会釈と時を同じくして機関代表の新川さんが挙手した。
 
「森がそんなことを言うとは、私も驚きですなぁ。古泉のことに関しては同意ですが、森はこの物語でも数少ないフルネームを与えられている存在です。それに私の役割はよくて運転手、森は『陰謀』で誘拐犯を捕まえて活躍しているではないですか。それだけ目立っている森が古泉のことを目立ち過ぎなどといえるでしょうか」
「そうだそうだ。私達兄弟に至っては、刺された演技とか喧嘩してる演技とか高飛びしようとしている演技とか、登場シーンのほとんどがあの茶番のためのポーズなんだぞ。『陰謀』でも一応ちらっと出たけど、要するに警官のコスプレしかしてないじゃないか」
 
新川さんに便乗するような形で多丸兄弟までもが発言した。ちなみに本作では多丸(圭)と多丸(裕)を書き分ける予定はない。皆さんの脳内では兄弟がユニゾンで喋っているという風に変換して下さって結構だ。なに、読者諸兄にとってもさしたる影響はないだろう。
このあたり、脇役サミットらしくて非常によろしいんじゃないかと思うね。
新川さんと多丸兄弟の発言は明らかに森さんに対する非難、指摘であり、当然森さんがそれをスルーするはずもなく、メイド笑顔をそのままに保ったまま森さんの反論が始まるわけだ。
 
森:「若干本サミットの主旨から外れてしまいますが反論させていただきます。新川は古泉一樹がキョンさんを閉鎖空間へお連れする時にも確か運転手を務めておりました。登場シーン数でいえば私より若干多いはず。『孤島症候群』の時点では確実に新川の方が台詞、印象度共に私を上回っています。その格差が『陰謀』で是正されただけに過ぎません。それに多丸兄弟もフルネームは設定されています。また『孤島症候群』では役柄上、演技上とはいえ多丸兄弟の身の回りの世話は食事掃除洗濯に至るまで全て私と新川でやっておりました。多丸兄弟はただ部屋でくつろぎ、たまに喧嘩してるふりをしたり胸にナイフをセットして床に寝転がったり電話をかけるふりをしていただけでしょう。それで同じ賃金が機関より支払われるのですから、優遇されすぎではないでしょうか」
 
新:「多丸兄弟の優遇については同意ですな。しかし『孤島』で森がしていた雑用といえばせいぜい清掃のみ。調理と洗濯は全て私がやっておりました。あれだけの人数分の食事を用意するのはかなり重労働ですからな。私の登場シーンが多いとしても何ら違和感はありませんな。それ以外での私の登場シーンなど運転姿のみ。しかも古泉一樹の閉鎖空間案内時には全く顔も映っておりません。本編でも実際に私が運転していたという描写はない。そもそもその時点において新川という名前が定着していない以上、読者に与え得る印象は名無しの運転手に過ぎない。よってあれは登場シーンのうちに入るとは到底いえませんな」
 
多「ちらっとでも姿が出るだけ感謝すればいい。私達兄弟はフルネームがあっても下の名前なんかほとんど覚えてもらえないし、大体兄弟の見分けがつく人だって滅多にいやしない。しかもいつも兄弟で1セット。キャプ翼でいうところの立花兄弟だぞ!」
森「登場さえすればそれなりに読者に印象を与えられるのも立花兄弟そっくりですね。私などは下手をすれば単なるメイド服を着たモブにすらなり兼ねないのに」
新「よく言いますな、『陰謀』をみている限り今後も出番を増やそうと画策しているようにしか思えませんでしたが。『森園生の陰謀』にタイトルを差し替えるよう角川書店に手を回そうかとまで考えた次第ですが」
多「そうそう。明らかに私達とキャラが違うんだよ。どんな手を使ったんだ?ん?」
 
「静かにして」
脇役サミット名誉顧問、朝倉委員長が口を開くと同時に全ての発言者は皆押し黙った。
この朝倉涼子という美少女、登場話数は大したことがないものの重要シーンで強烈な印象と共に登場し、しかも容姿、スペックは優れたものを与えられてフルネームまで持つという、率直に言ってこのサミットへの参加資格すら疑われる存在だったのだ。うん、実際僕は呼んだ覚えがないのだ。
ないのだが、どういうわけかサミット当日にいて名誉顧問を買って出たのである。サミットに顧問も名誉も何もないような気もするんだが、この招かれざる名誉顧問がスカートの下に隠し持ったナイフを見ると何故かそんな反論は雲散霧消だ。何故だ。いや、僕は怖いわけじゃない。本当だ。
「このサミットって、そういう口喧嘩をする場じゃないと思うのよね」
前言撤回。怖い怖い。ナイフの刃の方も怖いがどっちかっていうと背の部分のギザギザが怖い。
「ねえ、もう機関の人は五月蠅いから帰っちゃっていいんじゃない?帰るのって嫌?」
暴君から非情な決断が下された。ナイフを弄りながら憂いを帯びた顔でそう言われると、誰にももうその判断を覆すことはできないだろう。しかしこの判断は間違ってはいないな。機関の人達は未だかつてないほどに喋ったし、本音もぶち撒けた。これ以上の彼らの発言は余計だし、脇役にしては目立ち過ぎてしまうしね。今後機関の様子が若干ギクシャクするかもしれないが、これだけ出番を与えられれば本望だろう。
森さん、新川さん、多丸兄弟はブツブツいいながらサミット会場を後にした。エンドテロップに名前が載るかも怪しいタイミングだな。最初から騒がしい事になってしまったようだ。
 
【3】第二の議題
 
機関の人々が渋々退場し、サミットの再開である。
僕は新川さんが後ろ手に扉を閉めたのを確認して、マイクのスイッチを入れた。
「それでは気を取り直して、第二の議題へ映りましょう。次は『朝比奈みくる、猫被り』ですね。発議人の鶴屋さん、どうぞ」
鶴屋さんはのんびりと立ち上がり、マイクを手に取った。
 
「ちょっと聞いてよ。みくるってばさ、あんだけ可愛くって、あんだけ胸があって、しかも天然系で絶対猫を被ってるとしか思えないにょろよ。普通に考えて、あれで性格がよかったら人間国宝といってもいいんじゃないかなっ。実際、たまに出てくる朝比奈さん(大)だっけ?あの人って何か隠してるっぽい雰囲気をめがっさ漂わせてるしさっ」
 
まあ言ってみれば主観に基づいた議題だが、さらに喜緑さんと朝倉委員長もそれに賛同する。
「そうですね。キョン君も大人の朝比奈みくるに対してはかなりの疑念や不満を抱いているような描写がなされていますし、この先朝比奈みくるが裏切ってもおかしくない、という事はあります」
「あたしもそう思うわ。だって美人でスペックもよいあたしがナイフを持った通り魔的扱いなのよ。
朝比奈みくるは鉈とか鋸とか持っててもおかしくないよね。案外最終回でキョンくんの首をばっさり刈っちゃたりしてね♪そしたらその首をあたしが鞄に入れて…」
名誉会長、発言は挙手してからお願いします。それから笑えません。スクールデ●ズか。しかもそれはただのヤンデレで裏があるというのとはちょっと違うぞ。ヤンデレやツンデレについて熱く語り始めると僕の今まで作り上げてきたキャラ像がぶち壊しになるので、ここでは割愛しよう。
そういうのは谷口か、もしくは出番の少ないコンピ研の部長あたりにでもやらせておけばいい。
脇役にとってキャラ作りは大事だからな。
「ついでに長門さんからも書状を預かっているわ。ちょっと読ませてもらうね」
 
というわけで朝倉委員長に託された長門さんの書状を以下に全文(ママ)掲載することにする。
 
まずは私という個体の名称及び分類をテンプレートとして記入する。
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース01型の長門有希。今回は脇役サミットへの参加資格が得られなかった。それでも私から伝達すべき事項があるので書状にしたため朝倉涼子に委ねる。私の私的見解・分析の伝達に齟齬が発生するかもしれない。でも、読んで。
朝比奈みくるの甘ったるい鳥肌の立ちそうな声と巨乳というより爆乳と呼ぶべき胸部ユニット、なおかつアニメで下着姿が披露されている扱い、並びに『お嫁にもらってくれますか』発言を総合すると、どう考えても涼宮ハルヒの鍵となる存在である『彼』を篭絡するキャラクタリスティックが与えられているとしか思えない。『憂鬱』で世界崩壊の危機を生み出す引き金を引いたのは朝比奈みくるであるし、肝心なところでは『ふぇぇぇ』などと無能ぶりを晒す。そのくせ愛しの彼はデレデレで胸の谷間の星をじっくりパソコンで見たりとかわざわざ隠しフォルダに設定したりとかメイド服見るたびに邪な妄想を抱いたりとかなんだよそんなに巨乳がいいのかよそんなにでっかい乳がよければ秋本治の漫画でも読んでろやあれは爆乳というより奇乳だよそうだよでっかい乳なんか奇形だあたしだって情報統合思念体がこんなまな板につくらなきゃ愛しの彼にあんなこt
 
「要するに、長門さんのいいたいことをまとめると『朝比奈みくるには裏がありそう』っていうこと。それでいいよね?」
もういちいち聞かなくていいです。朝倉名誉顧問の台詞の最後に音符とクエスチョンマークが並ぶ時は大抵どちらかの手にナイフが握られているので、これはもう誰が見るまでもなく質問でも懇願でもなく恫喝だ。誰が反論するというのだろうか。
長門さんの書状を見る限りかなり情報の伝達に齟齬というかノイズというか私怨が発生していたようだったが、とりあえずここは朝倉委員長の的確な要約に感謝しておこう。朝比奈さんの厚遇ぶりに関してはやはり僕も同感だ。とはいえ、目の保養になるのも事実だから困る。アホ谷口は全身からホルモンを分泌する精巣人間だから、困るどころか発情し続けているのだろうが。
そこへ喜緑さんが挙手した。
「朝比奈さんに実際に裏があるかどうかの議論は証明が難しいところですね。現状ではほとんどボロを出していませんから。実際の世界にはあんな女の子絶対にいませんが(作者涙目w)あくまでアニメ、といってしまえばあのキャラクターを全否定するのは早計かもしれませんよ?もうひとつ、朝比奈さんの厚遇ぶりを果たして長門さんが指摘できるのか、という重要な問題点もありますが、それを言い始めるとまたさっきみたいに内輪揉めになりかねないので、ここではやめておきますね」
「それでも、全く欠点のないキャラクターというのは滅多にないものだし、やっぱり何かあるのが普通だと思うけどな。さっき鶴屋さんも言ってたけど、あれで性格もよかったら完璧超人よ。あたし達みたいなインターフェースでもないのに自然にそんな個体が生まれるとは考えにくいわね」
喜緑さんは朝倉さんの発言に対しては特に返事をしなかった。表情や動作を見る限り、まあ肯定していると見ていいだろう。喜緑さんならばあるいは朝倉委員長に対峙しうると予想したのだが、喜緑さんもおおむね同じ見解のようだ。
 
この空気の中、さすがに猫被り説に反論は出ないだろうという僕の思惑を超えて挙手したのは僕の友人にしてナンパの頻度以外の全てのスペックで標準的な男子高校生を下回る哀れなかませ犬、ピエロの谷口だった。原作に倣い呼称するとアホの谷口だ。倣わなくていい?
まあこれも一種のテンプレだから、一応、ね。
「おいおい、朝倉も鶴屋さんも喜緑さんも、いくら美人だからって言っていいことがあるぜ。誰がどう考えたって朝比奈さんは天然だよ。巨乳で美少女で天然でロリでドジっ娘でメイド!これが男のロマンだろ。朝比奈さんに裏があるはずがないぜ。そんなことをいう奴のほうが実は裏がありありなんじゃないのか!」
 
 
あっという間に場が沈黙した。
まあ最初からまともな意見が聞けるとは思っていないのだが、プラスマイナスゼロかマイナスならせめて前者にして欲しかった。さて、この場をどう繕うか。というか谷口の発言の真意は結局どういうことなのか。
なんとなく朝倉さんからは憤怒、喜緑さんからは侮蔑、鶴屋さんからは憐憫のオーラが放出され始めたのを察知した。僕は彼女達(特に朝倉)が谷口の口を永遠に閉ざしてしまう前にいちおう谷口に確認してみる。
「ええと、谷口」
「なんだよ、国木田。お前もそう思うんだろ」
「いや、あのさ、結局朝比奈さんに裏がないっていう根拠はなんだったんだい?」
「ちゃんと聞いておけよな。もう一度いうぜ。巨乳で美少女で天然でロリでドジっ娘でメイド!これが男のロマンだろ」
 
いつの間にか三人のオーラは全て侮蔑に変わっていた。いや、正直僕も谷口には呆れたよ。
要するに自分の感情として『天然であって欲しい!』ということなわけで。他には何ら根拠がない。
まあ今までの鶴屋さんと朝倉さんの論理も根拠なしといえば根拠なしなのだが、空気ってもんを読んでみなよ、谷口。流れ的にあそこは反論せずにスルーするところだろう?
会場全体も毒気を抜かれたというか、なんとなく白けた雰囲気になってしまった。そういう空気、たぶん味わったことがある人も何人かいるのではないだろうか。相手があまりに低レベル過ぎて戦意を失ってしまうこの感覚。沈黙を破ったのは鶴屋さんだった。
「うーん、なんかどうでもよくなってきたね。よく考えてみれば今のところみくるはめがっさいい娘だし、邪推していろいろ言ってもしょうがないにょろ。現状のまま、暫く観察を続けるということで手を打って、この議題はここで取り下げることにするっさ」
「そうね。なんかあたしも馬鹿馬鹿しくなってきちゃった。今後の動向は気になるけど、現状は朝比奈みくるは天然美少女ってことでいいわね」
なんと、アホの谷口のアホさが逆に場を落ち着かせ議論を収束させるとは。雨降って地固まるとはこのことなんだろうか。素晴らしい反面教師ぶりをありがとう、谷口。
 
【4】第三の議題
 
「というわけで本日の最終議題です。『鈍感キョンに正義の鉄槌を』か…谷口、頼む」
谷口を指名するのも気が重い。もうこいつの発言に対して説得力がないのは分かりきっていることだし、むしろ喋らせないで議題だけ提示したほうがまともな議論になるような気もする。
 
「クラス男子代表の谷口だ。たぶんみんな気づいていると思うけど、俺の読みでは涼宮はキョンの事が好きだぜ。でもキョンの奴鈍感だろ?だから朝比奈さんとか長門有希とか他のAランク級の女の子とかにもいいとこ見せたりとかするしよー、なんていうかとにかく女の敵なんだよ。なあ、一回あいつにわからせてやんないと駄目だと思わないか?」
ナンパ常習犯のお前がいうか。しかも失敗ばかりしているからモテない男の僻みにしか聞こえないのもまた説得力を失わせるのに一役買っているし。
「別に僻んでいるわけじゃないぜ。ただ、一度に複数の女を翻弄する男は伊藤誠も真中淳平も読者の怒りを買ったもんだ。このままだとキョンだって危ないぜ」
 
「確かにキョンくんは女心が全然わかってないよね」
「ハルにゃんと早くくっついちゃえばいいのに、めがっさ鈍感だから困っちゃうね」
「まあそれには涼宮さんにも責任はあるんですがね」
「大体キョンくんのどこがいいのかしらね」
「うーん、ヘタレっぷりとかはどうにょろ?もしくはアッチの方がめがっさすごいとか」
「顔も運動神経も普通、成績が下の下ときたらもう可能性は絞られてきますよね」
この三人娘は好き勝手言っているな。珍しく谷口の意見に賛成したのはいいのだが、途中から徐々に議題が逸れているのでできれば可及的速やかに流れを元に戻したいのですが。大体アッチってなんだ。鶴屋さんのキャラ的にそぐわない台詞を言わせるな、と。
 
そこへ阪中さんが挙手した。おお、ここへ来て初の登場シーンだ。僕の中で、涼宮さんはおろか長門さんや朝比奈さん、朝倉さんも凌いでトップランクに位置する、野に咲く花のように普遍的な日常的な安心感と包容感をもたらす美の象徴、阪中さんの登場に僕の胸も人知れず高鳴っているじゃないか。フフ… おっと、この笑いは決して下卑たものではなかったと自己弁護をしておこう。
「ひとつ谷口くんの発言で気になることがあったのね」
「おう、なにかな?」
「Aランクって、なんなのね?」
「北高の女性を俺的美少女ランキングに当て嵌めた時のランクさ。AからDまであるんだ。Aが一番上の階級だ。涼宮はまあ顔はAランクだが性格がアウトだね。朝倉はAAランク+。ついでに長門有希はAランクマイナー。俺くらいになると顔をみるだけで性格の良し悪しもわかっちゃうんだよな」
 
はい、また沈黙。この場で沈黙をつくりだす能力者は二人いるってことだね。一人はナイフと
恐怖で沈黙を構築する朝倉涼子委員長。もう一人は場の空気を一切無視した発言によってその場から会話そのものを消滅させる谷口。後者はそう長く続かないんだが。
「つまり、整理すると、谷口くんはいつもそういう目で女子を見て品定めしているって事なのね」
「ああ、え、いや、ちg」
「それで見た目で女子を判断してランク付けしているのね」
「いや、そういうわk」
「最低なのね」
最低、という言葉を聞き慣れているだろう谷口もやはりその衝撃には未だ慣れていないようで、愕然とした表情のまま二の句が次げずに口をパクパクさせている。
 
追い討ちをかけるように女性陣が口を開く。
「AAランク+を貰えたのは素直に嬉しいけど、そういう見方ははっきり言って女の子に失礼。
谷口くんってキョンくん以上に女心わかってないよね。最低」
「最低ですね」
「最低にょろ」
皆さん、あんまりやると谷口の人格崩壊を招きかねないのでほどほどにしておいて欲しい。
なんせ谷口は全身から男性ホルモンを分泌している生物だから、一度に多数の女性に拒絶されると本能的にショックから逃れようと自我を崩壊させてしまうかもしれないからだ。
案の定、谷口は立て続けに喰らった『最低』コールに既に顔面を蒼白にして口から泡でも吹きそうな表情を浮かべている。というか、吹いている。
 
「ふーっ、じゃあこれで一応今日の議題は全て論じられたことだし、あたしが今日の総括をさせてもらうね」
なんでもいいが、朝倉委員長喋りすぎじゃないか。モノローグじゃないところでは基本的に朝倉に説明させておけばいいや、という作者の安直な意図がちらほら見え隠れしているぞ。
AAランク+をつけられた委員長は心なしか上機嫌だった。つけたのがあの谷口でも多少は嬉しくなるのかな。
「とりあえず、今後は古泉一樹くんが何か説明を始めようとしたらすかさず遮ってあたし達脇役がそれを代行する。それから朝比奈みくるは現状のまま観察を続ける。それからキョンくんに関しては…」
委員長はちょっと逡巡するようなそぶりを見せた後で、またニコっと笑ってこう言った。
「早いとこ、涼宮さんとくっついてもらえばいいんだけどね。暫くは様子見で」
結局そうなるのか。まあ現状維持が一番簡単だしSSも書きやすいし、うむむむ。
 
【5】サミット閉幕
 
そんなわけでサミットは閉幕だ。
ちなみに出席したのに一度も台詞がなかった人が何人かいる。生徒会長とコンピ研部長とENOZの四人とキョン妹と吉村美代子と中河の9人だ。脇役サミットですら登場しないのは不憫すぎるから今度は彼らにも発議を打診してみることにしよう。
 
帰り際に僕は阪中さんに呼び止められた。
「国木田くん、ちょっと話があるのね」
「うん、なにかな」
「涼宮さんとキョンくんのことなんだけどね、今度私達で遊びに誘って無理矢理くっつけちゃうっていう話をしてたんだけど、国木田くんにも協力してほしいのね」
「ふーん、具体的にはどうするんだい?」
「例えば、みんなで遊園地に出かけてジェットコースターや観覧車であの二人がペアになるように仕組むとか、レストランや映画館でも必ずあの二人が隣になるように工作するとか、催淫効果のある香を使ってそういう気にさせちゃうとか」
最後に何か危ないことを言った気がするが阪中さんはそんなこと言わない。絶対に言わない。
「おもしろそうだね。協力させてもらうよ」
「ありがとう。また連絡するね」
そう言って阪中さんはにこやかに帰っていった。うーん、やっぱり僕は電波カチューシャとか再萌メイドとか無口読書お化けとか眉毛殺人鬼とかおでこスモチ女みたいな一風変わった女性よりも阪中さんのような女性がいいね。癒される。AAAランク+。
その瞬間阪中さんが突然振り返って「ランクって何?」と聞いてきたのはもちろん全力でスルーさせていただいた。
君子危うきに近寄らず。国木田という男はそんな石橋を叩いて渡る慎重な男なのだ。
 
ひょっとしたら黒木田キューピッド編に続くかも続かないかも
 
 


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