長門有希の雨雫
夢を見ていた。
夢、そんなものみないはずなのに、見ていた。
なぜだろうか?なんでそんなことがありえるのだろうか?
まず、今のが夢というものなのだろうか、みたことがないので彼女は、
理解することはできるはずがなかった。加えて、内容も理解することができなかった。
いや、理解したくもなかったのだ。あまりにも、突飛すぎていたし、
何よりも凄惨なものだった。
が、しかしこの夢はすぐに消えてしまった。
 
学校はいつものように、文芸部の部室、兼SOS団の部室に入り、
パイプ椅子にすわって本を読む。それを繰り返していく毎日。
その毎日にいつも彼からの話かけられることがあった。
自分の正体を知りながらも、やさしく声をかけてくる彼。
「今日は何の本をよんでいるんだ?」
「………SF」
「そうか。」
「読む?」
「いや、その量は読める気がしない。」
「……そう」
なぜだろう?もうすこしだけ話していたかった。
彼と話していたかった。人の気持ちなんかもってないはずなのに……
自分は、少しずつ壊れている。そんな気がした。どうしてこんなに胸がいたいのだろう?
彼は、私を壊すイレギュラーなのだろうか?敵性なのだろうか?
考えを巡らしている間の途中、意識は消えた。
 
気がついたときには、もう空虚な空間の中にぽつんとすわっていた。
自分はなにをしていただろう?あの後は何をしたのだろう?
まったくおぼえていなかった。
やはり、私は壊れてきているのだろうか?
 
翌日、いつものように、いつもの場所で本を読んでいた。
そして、いつものようにガラっと扉をあけ、いつものように、カバンを下ろし、
いつものように、やさしく話しかけてきた。
「よう。今日も元気そうだな。」
「……元気。」
「そうか。元気でうれしい。」
「…どうして?」
「どうしてっていわれもな。」
「どうして、人が元気だったら、あなたはうれしい?」
「大好きな仲間が、元気じゃなかったらいやだろう?」
「……そう」
大好き?それはなんだ?人の感情?
私が持ち得ることができない。そういう類のものか。
「私は、感情の概念を持っていない。」
「そんなことはないぞ。長門おまえだって絶対あるはずだ。
絶対なくしたくないものが。ほしいものが。」」
「…………」
なくしたくないもの・・・・・
絶対に無くしたくないもの、ほしいもの・・・・それは・・・・?
なんだろうか?私にもそんなものあるのだろうか?
唐突にガラっと、大きい音がした。
涼宮ハルヒだった。彼に話しかけている。
それがなぜか嫌だった。見ていて嫌だった。・・・・・どうして?
…………私が、絶対にほしいもの、なくしたくないものは彼なのか?
そんなことはあるはずがない。そんな感情、プログラムされていない。
 
時間がきた。帰る時間だ。涼宮ハルヒは用事があったらしくとっくに帰っていた。
残っていたのは、彼と私だけだった。
きれいなオレンジ色の夕焼けをみながら帰り支度をしていた。
「一緒に帰るか。」と彼。
私は、こくりとうなずいた。
さっきの夕焼けの残影をのこした帰路につきながら、
「欲しいもの……」
「……?。みつかったのか?」と彼
「それは、…あなた。」
「……!」
自分は何を言っているのだろう?こんなことありえない。
でも、制御ができない。彼が欲しい。欲しい。…………欲しい。
涼宮ハルヒには…………。
その時、プツっと意識が途切れた。
 
フっと、意識を取り戻した。
目の前にあるのは、彼の死体だけ。
ふと少し前の記憶が怒涛のように流されてきた。
なんだ?これはなんだ?
なにをしている?「やめろ!やめて!“」
私はなにをしていた!?
私は、彼を殺したのか?なぜ?どうして?彼がほしかったのに。無くしたくなかったのに。
彼と一緒にいたかったのに。なぜ殺した?
涼宮ハルヒにわたしたくなかったからなのか?
それを教えてくれる彼はいない。
それを教えてくれる彼を私は…………殺した。
あの夢を思い出す。あの凄惨な夢を。
私は、もう何も見えない。何かが目からながれている。
なんだろう?いつも、そういうことを教えてくれていた彼は、もういない。
いろんなことを、伝えてくれていた彼は、もういない。
大好きな彼は、もういない。
その時。美しい出で立ちをし、きれいな涙を流す彼女は自問自答する。
そして、その答えは、彼が、彼女が言った言葉を答えたものと同じものだった。
「……………情報連結解除。」
Yes。」
彼女はやさしくそう言って、彼と消えていった。
そう。最後の彼の言葉を思い出しながら。
 
もうその場所には、二人の影はない。
いまだ夕焼けの残影を残す帰路。二人の影を失った空は、ただいたずらに反転していく。
 
                                       完

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