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えっと、絵本ですか?
 この間いっぱい見ましたけど……、あ、はい、この間童話を作らなきゃいけなくなったんで、そのために見たんですよ。
 絵本って不思議ですね、絵がいっぱいで、文字が少なくって、でも、ちゃんと伝えてくるものが有って……。
 あ、今ですね。わたしは図書館に居ます。
 長門さんと一緒に。
 ええっと今日は不思議探索なんです。
 わたしは長門さんと同じ組。そう、わたしと長門さんだけです。
 結構珍しい組み合わせかも知れないですね。
 どこに行こうか迷っていたら、キョンくんが「長門は図書館に連れて行くのが良いです」って教えてくれたんです。
 なので、わたしは長門さんといっしょに図書館へやってきました。
 本当は一緒にお洋服を選んだりしても良いかなって思ったりもしたんですけど、他の三人の誰かが居る時ならともかく、わたしと長門さんだけじゃちょっと間が持たない気がするんですよね。
 そうそう、絵本の話に戻りましょう。
 長門さんが、どういうわけか絵本を読んでいるんです。
 それも、一冊の本をずっとです。
 原点回帰とでも言うんでしょうか……。

 えっと、長門さんが読んでいるのは『白雪姫』です。

 皆さん知っていますよね。
 毒リンゴを食べさせられちゃったお姫様を王子様が起こしてくれる、あの白雪姫です。

 長門さんとは図書館に入ったところで一度別れたんですけど、お料理とか編物とかの実用本を幾つか選んで本を読む場所を探そうかなと思っていたら、児童書コーナーで白雪姫を読んでいる長門さんの姿を見つけたんです。
 長門さんが児童書なんて全然イメージに合わなかったんですけど、ちょっと気になったんで、わたしはそのまま長門さんの近くに腰を下ろしました。
 高校生が二人児童書コーナーにいるというのも何だか変な感じですけど、たまにはこういうのもいいですよね。
 ちょっと恥ずかしいですけど、涼宮さんにコスプレ衣装を着せられる事に比べれば、全然マシです。
 それにしても……、長門さん、なんであんなにずっと白雪姫を読んでいるんでしょうか。
 ううん、何ででしょう。
 ちょっと気になりますね。
 あ、長門さんが顔を上げました。
 え、あ、あの……、何でわたしの方をじっと見ているんでしょうか。
 ううう、ちょっと怖いですよう。
 わたしは思わず本で自分の顔を隠してしまいました。
 ごめんなさい、長門さん。
 ……。
 ……本をずらして、目より上だけを出してみます。
 長門さん、まだわたしの方を見ていました……。
「あ、あの……。何か、面白い所でも有ったんですか?」
 わたしは本を退けて、長門さんに訊ねました。
「……」
「あのう……」
「読んで」
 長門さんが、わたしに本を突きつけました。
 え、ええっと……、な、何なんでしょう、一体。
「え……」
「読んで」
「は、はい……」
 ううん、わけがわからないです。
 でも、長門さんが読めって言うのなら読んじゃいます。
 つい最近何度も目を通した話なんで、それこそ何も見なくても語るくらいできそうなんですけど、わたしは絵本の中の字をゆっくりと目で追い、それを言葉に乗せていきました。
 長門さんは、何も言わず話を聞いています。
 白雪姫、ですか。
 王子様がお姫様を起こしに来てくれる物語。

 ……長門さんも、王子様を待っているんでしょうか?

「はい、読み終わりましたよ」
「もう一度」
「え、ええっ……」
「もう一度、読んで」
「は、はい……」
 うう、何なんですか一体。

 結局、7回も白雪姫を読まされちゃいました。
 さすがにちょっと恥ずかしかったですよ。最後の方は周りに子供達が集まっていましたし……。
 ああでも、こんなに読んだら内容がしっかり頭に刻まれちゃいますよね。

 あ、そうそう、読みたかった実用本は全然読めなかったんですけど、どうしようかなと思っていたら、長門さんが貸し出しカードを作るのを手伝ってくれたんです。
 何だか意外……、でも、ちょっと嬉しいかも知れません。
 バレンタインの外れチョコのときもそうでしたけど、長門さんも気の遣い方とか、誰かのために自発的に何かをする、ということを覚えているのかも知れませんね。

 結局白雪姫を何度も読むことになった理由は分からなかったですし、恥ずかしい思いもしちゃいましたけど、長門さんの新しい一面を見れた気もするので、プラスマイナスで言ったらちゃんとプラスですよね。

 そうそう、今日の話をキョンくんに伝えたら、何だかちょっと微妙な表情をしていました。
 何ででしょう……、うーん、でも、これは聞いちゃいけないことかもしれませんね。

 気になりますけど、もう少し自分で考えてみましょう。
 長門さんと白雪姫、かあ……。
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