佐々木の家出というサプライズが起きた今年の夏休み、今年は二週間がエンドレスすることはなく今は秋真っ盛り。
朝比奈さんが受験勉強のためSOS団を一時離脱しているのを除けば何一つ異変はない。
そしてある日の放課後、いつものように俺達SOS団は文芸部室を占拠している。
 
…ああ、朝比奈さんのお茶が恋しいねえ。
 
「なんなら僕が煎れて差し上げましょうか?」
 
いらん、俺は朝比奈さんの煎れたお茶が飲みたいんだ。
 
「フフッ、残念です」
 
古泉とそんな取り留めもない会話をしていると、妙にソワソワしているハルヒが目に入った。
 
「どうしたハルヒ、妙に挙動不審じゃねえか」
 
「な、なんでもないわよ!」
 
そう言いながらもハルヒは時計を何度も確認している。
いや、どう考えてもなんかあるだろ。
俺がそんな言葉を口から出そうとしたとき、部室の扉がノックされた。
ハルヒがそれと同時に叫ぶ。
 
「待ってたわよ!入って!」
 
そう促され部室に入ってきた人物は、最近会う機会がコペルニクス的転回が起きたように急増した………、ああ、用法が違うとかはつっこまんでくれ、まあなんだ、とにかく佐々木がいた。
言い忘れていたが佐々木の家出事件以来、ハルヒはことあるごとに佐々木を呼び出すようになっていた。
佐々木の迷惑も考えてやれー、と言いたいところだが佐々木のやつも楽しんでいるご様子なのでまあいいかな、と思う。
それと俺の考え通り、佐々木とハルヒの相性は良かったらしくすぐに友達になった、2人が話しているときの笑顔は絶品だったね。
とまあ、少々長々と語ったが今の問題はそこではない。
なぜここに北高の制服を着た佐々木がいる。
 
「何ブツブツ言ってんのよキョン。
木を隠すなら森の中、本を隠すなら図書館の中、そして佐々木さんを隠すなら北高の中じゃない」
 
まったくもって意味が分からん。
佐々木がここに来た理由は何なんだ。
 
「僕は涼宮さんに届け物があってね。
それよりどうかな、この制服似合ってる?
涼宮さんが制服を2枚持っているというのでね、貸してもらったよ」
 
佐々木は俺の前でクルリと回ってみせた。
………正直たまりません。
実は内緒にしていたが俺はセーラー服萌えでもあるのだ、おっとご都合主義の設定とか言うなよ。
それにお前らもこの佐々木を見たら思わずそうなっちまうさ。
ああ、スカートからチラチラ見える太ももがたまりまs―――――
 
ここでハルヒのハイキックが飛んできたのは言うまでもあるまい。
いやー、ダイナマイトやC4も真っ青のナイスキックだったね。
俺の首から聞いたことない音が聞こえたくらいだもの。
おい古泉、顔真っ青だぞ、病院に行った方がいいんじゃないか、ああそうか、病院に行かなきゃならないのは俺の方だ。
 
「まったく間抜け面して、今の顔はホントに危なかったわ!それより佐々木さん、例のもの例のもの」
 
ん、そういや佐々木は届け物があるとか言ってたっけ。
ハルヒ宛ての荷物だったんだな。
 
「はい、これよ」
 
そう言って佐々木は本のようなものを渡す。
 
おや、それ遠い昔にどこかで見たことある気がするが、気のせいか?
 
「見たことあるのは当たり前じゃないか、これは僕等の中学校のアルバムだ」
 
そうだっけ、やはり先程のハルヒの蹴りが不味いところにはいってしまったんじゃ……。
 
「そんな訳ないでしょ!あんたにこの前アルバムのこと訊いたらそんなもの知らん、って言ってたからただ忘れただけでしょ!」
 
ああ、そういやそうだ。
学校からアルバム貰って一度も開かずに無くしたからな。
俺くらいのもんだぞ、そんなをことするやつは。
 
「何威張ってんの、バカ!そんなことより、アルバム見ましょ」
 
そう言いながらハルヒはアルバムをめくり始めた。
俺もきちんと見たことないから一緒に見るとするか。
それから俺はしばらくハルヒと共にアルバムを見ていた、………懐かしいな。
俺がそんな気持ちに浸っているとき、一定のリズムでページをめくっていたハルヒの指が突然止まった。
 
おい、どうしたハルヒ?
 
「キョーン、この写真な あ に?」
 
そう言いながらハルヒは俺を見てくる。
うおっ、ハルヒの顔怖っ!フレディ&ジェイソンも真っ青だ、ホラー慣れしたアメリカンもHAHAHAの笑い声が引きつるのは必至だぜ。
とまあそれよりもだ、ハルヒが指差した写真――そこには俺と佐々木が照れ笑いしながら相合い傘をしている写真が写っていた。
俺は思わず佐々木を見る、そして制服に見とれる!おおっと、そんな場合じゃない。
佐々木はというと苦笑いを浮かべこっちを見ている、頬が少し朱を帯びている気がするが気のせいか、な。
はあ、そんなことよりさ………なんでこの写真がアルバムにあるんだよ……。
 
―――その写真を撮った日は修学旅行の二日目にあたる。
しかしそれに至るまでの経緯を説明するには一日目の話からしなければならない、まあそこまで長くないかもしれんから聞いてくれ。
一日目、俺達はクラス全員で特に興味もない寺巡りをさせられていた、大仏様とか正直どうでもいい。
新しい寺に訪れるたび、横からは佐々木が蘊蓄を懸命に話すのが聞こえてくる、いつもならそれでいいのだがその日の俺はどうしようもないくらい疲れていた。
何故かって?前日に修学旅行が楽しみでほとんど眠れなかったんだよ、畜生、悲しくも妹と同レベルである自分に失望したね。
まあ、そんなこともあり俺は佐々木の話を聞き流すことに専念していたわけだ、無意識に変な発言をしてまっては困るからな。
だがしかし、それが不味かったらしい、暫くすると佐々木は俺をじっと見て悲しそうな顔をし馬鹿、とだけ呟き女子の方へ行ってしまった。
結局、その日はそれ以降佐々木と話すことはなかった。
 
でもって問題の二日目、天気は生憎の曇り空。
ちなみにこの日はグループ別での行動となっており、俺のグループは国木田、須藤、岡本、そして佐々木だ。
ホテルを出た俺達はしばらくその辺りをブラブラすることにしていたのだが……、正直かなり気まずい、俺と佐々木はあの時以来未だに一言も言葉を交わしていないからな。
そしてある土産物屋に入ったとき、岡本が俺に話しかけてきた。
 
「ねえキョン君」
 
……ん、何だ?
 
「今から私と国木田君と須藤君は一旦別行動するから、その間にちゃんと佐々木さんと仲直りしてあげてね」
 
は!?おい、岡本――
 
声をかけるが時すでに遅し、岡本達は脱兎のごとくその場からいなくなっている。
 
取り残された俺が呆然としていると、佐々木はそんな俺に構うことなく店を出て歩き始める――、と思ったのだが、なかなか店から出ようとしない。
何事かと思い外を眺めると……、雨かよ。
とりあえず傘を買おうかな、と思い探してみるが一本しか見つからない、……これ何てフラグ?
 
俺が傘をどうしようかと迷っている間、未だに佐々木は外をじっと見ていた。
そして次の瞬間、何を思ったのかいきなり走って出て行った。
うおいっ!焦った俺は変な叫び声をあげながら急いで財布の中からお札を取り出しレジの前に叩きつける。
 
釣りはいらないぜ
 
ちょっとかっこいいな俺、一応言っとくがナルシストではない。
 
「――佐々木、待てよ!」
 
急いで出たのが良かったのか、意外にもあっさりと佐々木を捕まえることができた。
しかし佐々木の制服は時間の割に思いのほか濡れている。
それを見た俺は学ランを脱ぎ佐々木に被せ、傘の中に入れようとする。
しかし佐々木は断固として入ろうとしない。
……このままではダメだ。
 
「風邪引いちまうだろ!いいから入れ!」
 
少し強めに言うと、佐々木は肩をビクッとさせて傘の中にそろそろと入ってきた、つまり俗に言う相合い傘という状態なんだが、………気まずい………とりあえず、謝っとくか。
 
「……昨日は、すまん」
 
「……僕も、少し意地を張っていたよ、申し訳ない」
 
俺も佐々木も前を向いたまま言った。
恥ずかしかったんだろうな、きっと。
そして佐々木は続けた。
 
「昨日は本当に悪かった、一方的にあんな態度をとってしまって。
でも……キョンにだけは僕の話を聞いてもらいたかった……。
君くらいだったんだ、いつも僕の話に付き合ってくれるのは。
実際に三年に上がるまで僕は誰一人として話し相手がいなかったからね。
………だから、キョンにまで見捨てられたかと思ったらこれ以上なく悲しくなってきてね………、言いたくないが昨日は柄にもなく涙が出てきてしまったよ」
 
激しい自己嫌悪に襲われる………、昨日の俺をフルボッコにしてやりたい、寝不足ぐらいなんとかしやがれって言いながら。
てめえのせいで、佐々木はここまで傷ついたんだぞ。
そしてふと思う。
―――今の俺に出来ることはないだろうか?
 
「………なあ、佐々木。お前が嫌じゃないならさ、もう一度寺にでも行かないか?」
 
「何故かな?」
 
「お前の話が聞きたい、それだけだ」
 
ここで久しぶりに佐々木の顔を見た。
1日くらいしか経っていないはずなのに、まるで長年見ていなかったような感じがする。
俺が佐々木をじっと見ていると佐々木も顔を上げ俺の方を見てきた、そして少しの間をあけ、くくっと笑い出す。
 
「君は本当に、本当に優しいね、キョン。……行こう、君とならどんなところでも嫌じゃない」
 
その後、俺達は昨日も訪れた寺を巡った。
昨日はつまらないとしか感じなかったが、今日はとても楽しい。
理由?そんなもんは決まってる、佐々木と一緒にいるからだ。
 
ちなみに電車代などは佐々木に奢ってもらった。
理由?傘を買ったとき間違えて諭吉さんを置いてきちまったから金が無いんだよ、くそっ。
 
 
 
最後の寺を出たとき、空は綺麗な夕暮れに染まっていた、横にいる佐々木は思わず感嘆の声を漏らしている。
気が付くと、雨もすっかりあがっていたので、俺が傘を畳もうとすると、佐々木に腕をつかんで止められた、甚だしく痛い、力が強すぎる。
 
「ん、どうした?というかめちゃくちゃ痛いんだが」
 
「おっと申し訳ない。ただ傘を閉じるのは少しだけ待ってくれないか」
 
そう言うと、佐々木は近くにいた異国の方と話し始めたではないか、なぜだかちょっぴり感動しちゃった。
暫くして佐々木が戻ってくる、異国の方の右手にはカメラ。
なるほど記念撮影してもらうってか、あれ、じゃあ傘は邪魔じゃねえのか?
そう思いながら傘を持っていると佐々木が再び傘の中に入ってきた。
 
……おい、まさかこの状態で撮ろうなんぞ思ってないよな?
 
「何を言ってるんだい、この状態で撮らないと傘がある意味が見出せないじゃないか」
 
いや、わざわざ見出してやることもないだろう。
しかも恥ずかしい。
 
「今までずっとやっていたのに今更だ。……それに僕だって恥ずかしいさ」
 
佐々木は聞こえるか聞こえないかギリギリの声でそう呟いた、と思う。
佐々木の顔はほんのり赤くなっている、夕焼けのせいだけじゃなさそうだ。
 
 
―――とまあそんな話だったのさ、おしまい。
 
 
 
「おしまい、じゃないわよ!このアホンダラッ!
その後どうしたの、まさかキs…………、死ねぇ!」
 
なんなんだコイツは、久しぶりに喋ったかと思えば支離滅裂なこと言いやがって。
その後って普通に写真を撮ったに決まってんだろ、それで出来上がったのがそのアルバムに載ってるやつってことだよ。
……それでだ、佐々木。
なぜこれがここに載っている、この写真は俺とお前しか持っていないはずだ。
 
「キョンはこの写真を現在どう保管しているんだい?」
 
お前、そりゃ大事に飾ってるに決まってんだろ。
この前俺の家来たとき見なかったのか?結構目立つところに張っていたはずだがな。
全く、お前は変なところで抜けてるよな。
今度からはちゃんと周りに気をつかえるようn………………、って話をすり替えるんじゃねえ!!
ったく、結構ノっちまったじゃねえか。
 
「人の所為にするものではないよ、キョン。
現在の世の中、騙される方が悪いんだ」
 
もうそれはいい、俺の質問にさっさと答えなさい。
 
「君もせっかちだね、少しは遊び心というものをもったほうがいいよ。
実は岡本さんに深く懇願されてね、二人きりにしてあげたのだからその礼物として撮ってきた写真をアルバムへ献上しろ、と」
 
……いや、待て。何故岡本が写真のことを知っていたんだ。
 
「彼女のアイデアだからさ、相合い傘での撮影もね」
 
………はあ、そういうことかい。
うーむ、じゃあしょうがねえな。
そのおかげで照れるというレアな佐々木が見れたし。
 
「な!?僕が照れるわけ無いだろう!」
 
はいはいワロスワロス。
 
「………あんたら、いつまでいちゃついてんのよ」
 
おい、これのどこがいちゃついてるって言うんだ、ただの口喧嘩だろ。
まったくお前は何言ってんだよ。
 
「……あなたって人は……」
 
お前まで何だ古泉、それに佐々木も何だ、ホントに渋い渋柿を食べたような顔して。
それよりハルヒ、アルバムの続き早く見ようぜ。
 
そう俺が言うと同時に長門が本を閉じる音が聞こえた。
ちぇっ、じゃあ続きはまた明日か。
その後、俺達は妙な空気のまま帰宅した、特にハルヒの周りには邪悪なオーラが漂っていたな。
俺はその日少々興奮していたこともあり、珍しくもうすぐ日を跨いでしまうくらいの時間まで起きていた。
そして、俺が寝る前にトイレに行こうかと思い、部屋のドアを開けると……………………、あれ?何で?
 
ここでみんなに聞きたい、俺の部屋を出るとどこに出る?いや、まあ普通に家の廊下なんだがな。
ところがどっこい、なんと俺は家の外に出てしまったではないか。
しかも寝間着から中学時代の学ランになっている、意味が解らん。
更に太陽が眩しい、意味が解らん。
思わず意味が解らんと二回呟くぐらい意味が解らん。
 
 
 
何なんだろねこれは、トンネルの向こうは不思議な世界でした、みたいな○ブリの某神隠しアニメみたいな状況なのか。
まだ俺は豚にはなりたくないぞ。
 
ここで右肩に異様な重みを感じた、見ると大きなボストンバックが右肩からかけられている。
何故?WHY?
………落ち着け俺、頭を整理するんだ。
学ラン、ボストンバック、そして今日あった事………………、そうか、謎はすべて解けた!
 
きっとこれは俺の夢だ、おそらくこの頃の事を懐かしく思って夢に出てきたのだろう、うん完璧な推理。
 
「違います」
 
声がした方を振り向くと学ランを着た古泉がいた。
そういやこれで学ラン古泉を見るのは二度目だな、などと考えている意外にも冷静な自分にびっくりだ。
 
そして、古泉の後ろからひょっこり顔を出したのはブレザー長門である。こっちは初見なだけに新鮮だな。
 
「それで、何が違うって?」
 
「これは夢ではありません、間違いなく改変された世界です」
 
「そんなわけない、これは夢だ、夢なんだ!」
 
「………現実逃避カッコ悪い」
 
な………!?
 
俺はペルー海溝より深く傷つけられた。
長門にあんなこと言われちまうなんて、俺も落ちぶれたもんだぜ。
 
すまん長門、古泉。
俺もう逃げないよ。
 
「まあ気持ちはお察ししますよ。ところで、何故今回このような改変が起きてしまったかご理解していますか?」
 
さあな、あいつが考えることなんぞわからん。
それとお前達何で記憶があるんだ?
前の世界改変のときは記憶がなかったじゃねえか。
 
「後者については昨日のうちに長門さんにナノマシンを注入してもらっていました、長門さんが違和感を感じていたそうなので念のためにですね。まあ、それがなかったらまた記憶を無くしていた危険があったので長門さんには感謝していますよ。そして前者の件ですが、あのアルバムの写真に原因があります。簡単に言うと佐々木さんに対するジェラシー、つまり嫉妬を起こしたんです。さらに、起因することとしては―――」
 
おいちょっと待て、話に付いていけん。
嫉妬だと?あいつに限ってそりゃないだろう。
 
「…………本気で言ってますか?とりあえず……今は話を続けます、とにかく彼女が改変を行った根本的な理由は御存知いただけましたね?」
 
まあ多々納得できんことはあったが何となくは解った。
それで、さっき言い掛けていたことは何だ?
起因がどうちゃらってやつ。
 
「笑顔、ですよ」
 
笑顔?何じゃそりゃ。
 
「彼女の中学時代のアルバムに笑顔で写っている写真は一つも存在しません、今では信じられませんけどね。原因はあなたも御存知の通り彼女のエキセントリックな発言や行動にあります、あのような発言の手前、彼女はどうしても周りと同じようにすることが出来なかった。しかし、心の奥底では素直になりたいと思っていました。だから彼女は佐々木さんに嫉妬すると同時に羨ましかったんですよ、素直に笑顔で写真に写ることができてね」
 
…………はぁ、さっさと学校行くぞ。
ったく面倒くさいやつだな、あいつはよ。
お前等もそう思うだろ?
 
「ふふっ、僕としてはあなたも充分面倒くさい方ですけどね」
 
俺はその言葉を軽く聞き流す。
この古泉の言葉の真意を"今はまだ"解っていなかったからだ、というか考えようともしていなかったな。
このとき俺が考えていたことはただ一つ。
今から始まるであろう、ハルヒも加わっているはずの二度目の中学修学旅行、この間だけでも中学生のハルヒに笑顔でいてもらいたいということだけだった。
 
 
 
さて、そんなわけで俺は母校に到着した。
自転車ではなく徒歩だ。今更ヘルメットを被って自転車には乗れんからな。ヘルメット…………全くもって忌々しい!
ああ長門と古泉?あいつらなら例の黒塗りタクシーで先に行っちまったさ。
最初にタクシーを見たときはこの世界にも機関は存在してるっぽいなーとかのほほんとしたことを考えていたよ、うん。だがあいつらが乗ったタクシーを手を振って見送っているときに気づいた。………普通、俺も乗せるよな……これイジメ?精神を侵していくタイプ?
……いやいや、そんなことを考えてはいかん、きっと事情があるのだろう、信じろ俺。頑張れ俺。
………しかしどうにも腹の虫が治まらん、後で古泉にファイナルカットでもしてやるか、それくらいの権利は有しているはずだ。
え、古泉の首が危ない?お前らは忘れてるかもしれんがハルヒに蹴られた俺の首の方が遥かに危険だと思うがね。
 
……俺は何を言っているんだろうか、お前らって誰だ?やはり首か、首なのか?今頃影響が出てきたのか?
なんて少し電波っぽいこと考えながら校門をくぐると―――――――――――――俺は校門に記してある中学名を確かめる。
えっとうん、間違いなく俺の母校だ、さすがに忘れているはずはない。
だがなあ………ここにいる生徒はどう考えても北高生だろうって話だ。制服だけは辛うじて中学のものだが。
ああ、俺の中学時代の級友よいづこへ――
 
「涼宮さんはあなたの中学時代のクラスメートなど知る由もありませんからね、これは必然ですよ」
 
おおっ、あいつ六組のやつだっけ。阪中が告白された奴だよな確か。
あの時は俺とハルヒが付き添って断りに行ったりして大変だった。
しかしまあ甚だしく学ラン似合ってねえな、お気の毒なこった。
あ、あっちには四組の女子がいる。谷口がAAランクと言っていたから覚えているがやはり美人だ。着る物を選んでいないね、ブレザーがよく似合っている。いやあいいもの見れたぜ、眼福眼福。
 
「………」
 
おっと、そんなことよりハルヒを探さなきゃな。とりあえず俺のクラスだったとこに行ってみるか。
待ってろよハルヒ!
 
「あの無視だけは……」
 
とうっ!!
 
「うわっ!!ファイナルカットだけは、ファイナルカットだけは……」
 
何言いやがる。これくらいの仕打ちは当たり前だ。
いっくぜぇええぇぇえ!!
 
ガアッ グイッ ドンッ グシャッ(どんな技か知りたかったら調べてくださあい byみくる)
 
「首が……ぐすっ……僕の首が………」
 
何時までもグジグジ言ってんじゃねえよ、うるさい。某わ○めでは思いっきり死亡フラグ立てたくせに。
 
「あぁ!某○かめなんて言っていいんですか!?」
 
「大丈夫だって。某わか○ってちゃんと伏せ字も使ってるし」
 
「それもそうですね。○わかめって伏せ字を使えば安全ですね」
 
「古泉、その伏せ方ドボン」
 
「ワッカーメ」
 
 
古泉との馬鹿話もすんだ俺は意気揚々と昔のクラスの元へ向かった。
しかしまあ、この様子だと俺のクラスは今の二年五組のメンバーなのかね、どうせなら昔のクラスメートとまた行ってみたいもんだがしょうがねえか。
こんな能天気なことを考えていた俺は隣のクラスまで来たところである異変に気づいた。
あれ、俺のクラスのところだけポッカリと穴が空いてる。
これはどういうことだ?これ以上進むのが何故か怖いんですけどね。
 
俺が歩くのを躊躇っていると、不意に後ろから肩を叩かれた。
 
「キョン、どうした。早く集合しないと遅れてしまうよ」
 
くっくっと笑いながら話すそいつのブレザー姿は見慣れたものだった。
………どうして佐々木がここにいる。ここは北高生だけのはずじゃねえのか?
いや、考えてみると簡単である。こいつはハルヒの友達だから、何よりも代え難いやつだからだ。
こいつは元の記憶を保持しているのかね?今の疑問と共に訊いてみるとするか。
 
「なあ佐々木、お前元の世界って言ったら何か解ることあるか?」
 
佐々木は下唇に親指を当て考えるような仕草をした後、本当にすまなそうな顔をしながら告げた。
 
「残念ながら君の質問に相応しい答えは思い付かなかったよ。僕達もまだまだといったところだね」
 
決定。こいつには元の世界の記憶はない。長門、佐々木にもナノマシンを注入してやれよ。
だがなんだろうか、元の世界とは少し雰囲気が違うような気がする。ホントに些細なものなんだが………。
「ああキョン、君の質問に答えられなかったのは悪かった。しかしいつまでも呆けている訳にはいかないよ。ほら、早く行こう」
 
佐々木が俺の手を掴んで歩き出す。やっぱり何か違うんだよなあ……。
ってそれを差し引いてもちょっと待て。お前は何処に向かおうとしている。そこには誰もいないだろう。
 
「何を言っている。元からこのクラスには3人しかいないじゃないか」
 
…………3、人?
 
「そうだ。僕と君と涼宮さんの3人だろう。涼宮さんはまだ来てないようだけどね」
 
…………泣いていいですか?
嘘だろ、3人ってなんだ3人って!いくらなんでも無茶しすぎだ!
 
そのとき悪魔がやってきた。とびっきりの笑顔の悪魔が。
 
「おはよう、キョン、佐々木さん!とうとうこの日がきたのね、血が疼くわ」
 
いや疼かないでくれ。頼むから。
 
「何言ってんのよ。相変わらず爺臭い顔して。喋ることまで爺臭くなったら救いようがないわよ」
 
 
―――俺のこの旅行の目的を覚えておられるお方はいるだろうか?まあぶっちゃけ誰も覚えていないだろう。
今回の目的、それはハルヒを笑顔にすること。
うん、つまり目的達成しちゃってるわけだ。どうしたもんかね。
もう帰っていいですか?
 
しかし次の瞬間、佐々木が俺を再びこの世界にいることを余儀なくさせるような衝撃的な発言をした。
 
「涼宮さん、おはよう。しかしいくらなんでも人の彼氏に爺臭いとは非道いじゃないか」
 
え、ちょっ……佐々木さん!?イマナンテ……
 
「別にいいじゃない。この旅行であたしの彼氏にするつもりなんだし」
 
どうやら俺の聴力は相当弱ってしまっているらしい。早く耳鼻科に行こう。予約しないと……。
こんな言い訳を思い浮かべながら、男1人に女2人というどう考えても変態的で、この世界が存在し続けたらこの先100年、いや200年は語り継がれるであろうという珍旅行と言うには小さすぎる旅は始まったのであった。
 
 
 
 
 
「煽りすぎ、無視できないレベル。この作品がそんなに大層なものになる確率を期待するくらいなら乾がデータテニスを捨てる確率を期待した方がよほどマシ」


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