今思うと、ハルヒを無我夢中で助けているとき、俺はこの世で一番大切な存在ができていると感じていたのだろう。
Japan sinks? 3
200X.08.06 am11:08
俺はハルヒ達の家族とともに東中に来ていた。そういえばここに来るのも朝比奈さんとタイムスリップしたとき以来だな……。校舎はかなりの損傷を受けているように見えた。体育館に入った俺達は、その人数の多さに驚いた。発生から数時間が経った今では、ハルヒ達が過ごすスペースすらなかったのだ。
「困ったわね…、家も潰れてるし……」
ハルヒの母親はもう泣き止んでいて、冷静に災害後の対策を練っていた。父親はハルヒの右足にできたすり傷に消毒液を塗っている。
「いたっ! もっと優しくしてよ!」
父親に向かってものすごい言い草だな……。
「そうだ、あなたの近くの中学校ってまだ空いてるかしら?」
「分かりませんけど……母に電話してみます」
俺はポケットから携帯を出し、母親の電話番号を呼び出して通話ボタンを押した。2コール鳴って母親が出る。
『どこにいるの? 心配させないでよ!?』
「ごめん、今涼宮さんの家族といるんだ。避難場所がいっぱいで困ってるんだよ、そっちまだ1スペース空いてるかな?」
『となりだったらまだ2つ分位』
「分かった、じゃあもうちょっとしたらそっちに行くから」
俺は電話を切るとハルヒの母親に行った。
「大丈夫そうです、僕らの家族のすぐ横が空いてるみたいなんで」
「そう!? よかったぁ」
だがそうは言っていられない。実を言うと俺の出身校である中学校の体育館は少し老朽化が進んでいるため、次に大きな余震がきたときに大丈夫という保障はあまりないのだ。数年前から騒がれている建築偽装の手には及んでいないのだが、危険ではある。俺はそんな不安に押し殺されそうになっていたが、家に押しつぶされそうになっていたハルヒの不安を考えると憂鬱になってしようがなかった。無理に笑顔を作って俺は言った。
「いったん家に戻って使えそうな物を探してから、体育館に行きましょう」
一方、首都圏を襲った震度5弱の地震被害は、広島地震までには至らず、死者5人という少ない人数で被害がストップしている。家屋被害もあまりなく、その程度の地震ではまだ東京は耐えていたのだ。だが、この首都も後々広島地震以上の大震災に見舞われることとなるのである。
母親に連絡をしてから40分程経った頃、俺とハルヒ一家は体育館に到着した。倒壊したハルヒの家から取ってきた物を抱え込みながら体育館に入ると、妹とじゃれあっている朝比奈さんと、それを笑顔で見ている古泉がいた。
「どうしてここに?」
「あなたのお母さんと長門さんが炊き出しを取りに行ったので、妹さんを見張っているのですよ」
古泉、質問と答えが合っていない。俺は朝比奈さんにもう一度質問した。
「どうしてここに朝比奈さん達が?」
「我々もすぐ近くの体育館に避難しようと思ったのですが、どこもいっぱいでしてね。たまたまここが空いていたのですよ」
だから古泉に聞いてない。俺は荷物を降ろすと、すぐ後ろで荷物を抱えていたハルヒを座らせた。
「ちょ、何偉そうに、」
「怪我人は黙って健常者に従ってろ。お前はしばらく休んだほうが身の為だ、少しは俺に頼ったらどうだ」
絶対ハルヒは何か言ってくると思ったが、災害時だ、そんなことはもうどうでもいい。
「……わかったわよ」
ハルヒ一家全員が隣に荷物を置き、毛布やら布団だのを運び始めた。妹もハルヒと一緒にいるせいか、地震発生時よりかは結構復活しているようにも見えた。
こうして俺達SOS団の面々は、同じ体育館で避難生活を送ることとなったのだ。そして今後、怪我から復活するハルヒは俺達を巻き込んで広島地震の復興&元気付けの新たなプロジェクトを後々考案するのだが、そこに至るまでにも、広島東京以外で火山噴火や地震が相次ぐのだが、その話は次回とその次回にしておこう。
Japan sinks? 3 終
予告
4…体育館でのSOS団避難生活に慣れ始めた頃、北海道と九州を中心に災害が発生。
5…相次ぐ災害に恐怖を覚えたハルヒは、新たな試みを決意。