今日もとあるイベントが終わった。俺は今自分の部屋のベッドに横たわり溜息をこぼしているんだが、明日にはもっとでかいビックウェーヴが待ち構えていることを考えると、寝付けが悪いぜ。
 この日も俺にとっては日常茶飯事な出来事と化してしまうのだが、今日のはちっと種類が違うものだった。生命の危険を感じるものでもないし、ましてや未来からの手紙が来たわけでもない。
 振り返ってみたほうが早いな。じゃあ、いきなりだが少しだけ俺の回想に付き合ってくれ。
 
……………
………

 
「えー、とりあえず皆さん。兄として妹に代わり、お礼申し上げます…って、なんか言い方が堅いかな」
「何よ、白けるわね。いつもの感じでいいじゃないの!」
「そ、そうか。じゃあみんな、今日は妹のためにこんなパーティに来てくれてありがとう!」
 何を隠そう、今日は俺の妹の誕生日、10月19日だ。8日前に俺の誕生日があったんだが、日めくりカレンダーも1日くらい休めばいいものを、あっという間に妹の誕生日がきてしまった。
 いつまでも甘えてないで、もう少し大人になってもらいたいもんだ。
「キョンくんっ、妹ちゃんは無邪気さがあってこそ可愛いんじゃないかっ!そこらへんはにょろーんと見逃してあげなよっ!」
「ですがね鶴屋さん、こいつももう小学校高学年になるのに……」
「堅苦しいことはなしって言ってるでしょ!今日は思いっきり楽しめばいいのよ。」
「さっすがハルにゃん、それが一番っさ!」
 このハイテンションコンビに言い丸められてはもう手が出せない。こういう場合は素直に言うとおりにするのがいい、というのが俺がここ最近で学んだひとつの回避方法だ。
「えへへ、みんなありがとねー!」
「いいのよ妹ちゃん。いっつも妹ちゃんには感謝してるしね!……それに将来の義妹を祝うのは当然だしっ」
 ハルヒが最後にボソっと呟いたが、上手く聞き取れなかった。くそ、気になるぜ。
「いやあ、あなたの妹さんは本当に可愛らしいですね。僕が引き取ってあげたいくらいですよ。」
「お前ロリコンだったっけか?」
「へ、変なこと言わないでください。僕には心に決めた人が居るんですから。」
 知ってるぜ、そんなこと。ちょっとからかってみただけだ、本気にすんなよ。
「ふふふ、あなたこそ、涼宮さんとはどこまでの関係まで?」
「べ、べ別になんでもねぇよっ。」
「焦るところが怪しいですね……キスはもちろん、しましたよね?」
「閉鎖空間以来したことねぇよ。な、なんか文句あるのか?」
「これは驚きました。あなたたちならもうてっきり……」
「お前には関係ないだろ。俺はこういう話には疎いんだ。」
 
 古泉とのくだらん話もそこそこに――実際、もうこの手の話はしたくなかったからだが――、すぐにプレゼントの件で話題が統一された。
「はい、ノートと鉛筆に、筆箱です。」
「わあ、ありがとうみくるちゃん!」
 朝比奈さんから妹に手渡されたものは、どれも可愛らしい文房具たちだった。ピンク一色で、いかにも朝比奈さんらしいプレゼントである。
「じゃ~あたしからはこれねっ!」
「……鶴屋さん、なんですかそれ。」
「何って、見て分からないのかいっ?どーみても万年筆っさ!」
「いや、俺が聞いてるのはそういう意味じゃなくて……」
 小学生の誕生日プレゼントに万年筆はないでしょうよ。それに、これいくらだったんですか?かなり高そうに見えるけど。
「なあにっ!ちょろんと7万ぽっちしただけだよっ!」
「な、ななまっ……!?」
 なんてこった。つくづくこの方の気前の良さと全てを抱擁するような大らかな心には、感服しぱっなしだぜ。
「妹さんのご希望の品がよく分からなかったもので……こんなもので良ければ。」
 古泉が畏まり気味に差し出したその両手の上には、古風を感じさせる野球盤が乗っていた。どうしてお前はそんなにゲームが好きなんだよ。
「わーい、古泉くんありがとう!あとで遊ぼーねっ!」
「ええ、もちろんです。」
 我が妹を機関へ勧誘しようということなどあらば、俺がただじゃおかないぜ古泉。……俺はシスコンじゃないからな。
 その後、長門からはやたら分厚い辞書――に見えたが、まさか何かの呪文書か何かじゃないだろうな――を、俺からは例年と同じく『1度だけ何でもしてあげる券』なんていう馬鹿げた券を3枚贈呈した。……仕方ないだろ、これじゃなきゃ嫌だって言うんだから。
「ふふふ、最後はあたしからねっ!」
 不適な笑いを観衆に見せ付けたあと、ハルヒは自信満々な口調で語りだした。
「物ってのはね、いつかは朽ちてしまうもんなの。ノートはスペースが無くなったら不要になるし、ゲームも万年筆も、壊れちゃったら終わりよね。手書きの紙っぺらなんて、もっての他!」
 うるせぇ。誕生日プレゼントってのは形ある物を、ってのがセオリーなんだよ。で、お前のは何なんだ。
「それで、ずっと考えてたのよ。でも決めたわ!妹ちゃんが喜びそうなプレゼント!」
「なになに~?」
「あなたの兄の生涯、ずっと面倒見てあげるわっ!」
 なんじゃそりゃ!……っていうか、それどういう意味だよ。
「ハルにゃんがおばあちゃんになっても、キョンくんの傍に居てくれるってこと~?」
「そう、察しがいいわね、妹ちゃん!死ぬまで付き合ってあげるわ。もちろん、今日の今からずっと一緒に居てあげる!」
「待て待て待て、そんなプレゼント、認めないぞ。」
「妹ちゃんが認めてるんだからいいじゃない。ってことで、明日の不思議探索は中止ね。」
「それはまた、どうしてでしょう。」
「明日はキョンがあたしに一日中付き合ってくれるってことになったから、二人で出掛けるのよ。」
「了解です。」
 どうしてそこで納得してしまうのか、そして何故話が勝手に進んでるのか俺に解かる余地もなく、解かりたくもない。
「じゃああたしたちはそろそろ帰るからねっ。明日はキョンだけ1時駅前集合。」
「待てと言ってるだろ。俺は行かないぞ!」
「じゃあキョンくん、この券1枚目使うねっ!明日、ハルにゃんの言うとおりにしてあげなさい!」
「なっ……」
「じゃあ決まりね!」
「それじゃあキョンくん、明日楽しんできてね。わたしも帰ります。」
「キョンくんっ、ハルにゃんを退屈させるんじゃないよっ?」
「頑張ってくださいね。ご幸運を祈っておりますよ。」
「……頑張って」
 何をどう頑張ればいいのか、そこらへんを3行程度にまとめて紙に書いて渡してくれ。明日、それ見ながら行動するから。
「じゃあ明日、遅れたら罰金だからねっ!」
 

………
……………
 
これで明日、俺がハルヒに振り回されてしまうことは規定事項と化してしまった。
とんだ妹の誕生日だったぜ……やれやれ。
 
しすたーばーすでい end
 
 
 
……これは、あおきさやかさんの誕生日に掲載させていただいたSSです。

他の誕生日作品はこちらでどうぞ。
 


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