九曜にどうやったら諭吉の弔いができるか、考えながら、3人の待つデパートの入り口へと歩く。
入り口に着くと、朝比奈さんと佐々木が仲良く話していた。あの2人はかなり気が合うようだな。
九曜のことはどうでもいい。
「--おこってる?」
「--なんで?」
「--わたし--のせい?」
「--ごめん--なさい」
「--ゆるして」
上目遣いで謝ってくる。やばい、これはかなり強烈だ。これのせいで九曜への怒りが霧散しまった。
俺って、ダメだな。
「別に怒ってないぞ。気にするな」
「--ありがとう」
……九曜、抱き締めていいか?可愛いすぎるぞ。
「キョン、僕たちの前でイチャイチャするのはやめてくれないか?早くしないと日が暮れてしまうよ」
「キョンくん、あまり、いろんな女の子の所に行っちゃいけませんよ」
黒いオーラが見える。朝比奈さんには、黒なんて似合いませんよ。
だから、早くその変なオーラを消してください…
黒いオーラを纏った2人と、元から真っ黒なやつらと共に、ゲームセンターを目指した。
 
しばらく歩き、ゲームセンターに着く。
ゲーセンなんて中学の時以来だな。高校に入ってからは、来る暇なんてなかったもんな。
店内に入ると、九曜はさっさとどこかへ行ってしまった。
「いいじゃないか。時間の過ごし方は人それぞれだ。自由にすればいいさ。僕たちも何かしようじゃないか。」
佐々木に言われ、俺たちも移動することにした。
UFОキャッチャー、レーシングゲーム、シューティングゲーム、太鼓の○人など一通りのゲームをやった。
UFОキャッチャーでとったぬいぐるみを朝比奈さんにあげた、その時の笑顔。あれは、極上の笑顔だ。
1700円も使ってしまったことや、隣で佐々木が睨んできたこと、全く気にならないね。
しばらく遊んで、休憩をとることにした。佐々木と朝比奈さんを残し、2人のためにジュースを買いに行く。
こうでもしないと、さっきから、なぜかムッツリしている佐々木の機嫌が良くならないからな。
ジュースを買って戻ると、待っている2人に同じく2人組の兄ちゃんが話しかけていた。一方は金髪、もう一方は坊主だ。
何だアレ?ナンパか?よく分からないが、良い雰囲気ではなさそうだ。
「なぁ、俺たちとどこか遊びに行こうよ」
「気持ちいいことしようぜぇ」
決定、あれナンパだ。しかし、あの2人は頭悪そうだな。
佐々木は無言で2人のことを睨み、朝比奈さんは目に涙を溜めて震えていらっしゃる。
ここは俺の出番のようだ。困っている女性を助けなきゃ男が廃るぜ!正直、少し怖いけどな。
「おい、止めろ。2人が嫌がっているじゃないか」
「なんだテメェ!」
「邪魔すんじゃねぇ!」
何だこいつら。ちょっと注意しただけじゃないか。人の話もまともに聞けないのか?話して納得してくれる奴らじゃないな。仕方ない、あの手を使うか。
俺は、2人に買ってきたジュースをおもいっきり振った。金髪と坊主はポカンとしている。
そして、そのジュースを2人に向けて開けた。
もう、お分かりだろう。俺が買ってきたものは炭酸ジュース。ちなみに、コーラね。勢いよく飛び出たコーラはあいつらの目に入ったようだ。あちゃー、あれは痛い。何やら訳の分からないことを叫んでいる、金髪と坊主。
ちょっとやりすぎたかな?
その隙に、朝比奈さんと佐々木の手を取り、店から飛び出した。2人の手を引き、全速力で近くの公園までノンストップで走る。そして、無事公園に到着し、息を整えた。
「はぁっ、はぁっ、まったく、きみはもう少しマシな助け方はできなっかたのかい?」
「し、仕方ないだろ。2対1で喧嘩しても勝てる訳なっかたんだからな」
「何故、そこで喧嘩するという考えが出てくるんだ?もう少し話し合う努力をするべきだったはずだ。でも、君に助けられたのは事実だそこ関してはちゃんと礼を言うよ」
お前が感謝してくるなんて珍しいな。少しは男を見せたかいがあったようだ。
 
朝比奈さんは話すこともできないくらい疲れている。この人は本当に体力がないんだな。まあ、そこが、庇護欲をそそる、魅力の1つなんだがな。
「それよりどうするんだい?店には戻るんだろう?」
「何でだ?まだあいつらが居るかもしれないじゃないか」
「君。九曜さんのこと忘れていないかい?」
あっ、忘れてた。
 
朝比奈さんの体力が回復するのを待ち、再びゲームセンターに向かう。
ゲームセンターに着き、入り口から中を確認すろ。よし、あいつらはもういないようだ。
3人で九曜を探す。
九曜を探していると、店内の一部に人だかりができているのを見つけた。何だと思い、その集団に近づいていく。
集団の中心にあるのは、どうやら格闘ゲームのようだ。なんでも、たった1コインでずっとやっている凄腕の少女がいるとのことだ。まさかと思いつつ、集団」を掻き分けて前に進む。そこには、予想通り、九曜がいた。
画面には、67連勝と映っている。
「お前、どんだけ強いんだよ!」
思わずつっこんでしまう。
「--れんしゅう--してる」
そうですか。お前の相手ができるのは、長門くらいなもんだろうな。
「九曜さん、お楽しみのところ悪いが、そろそろ帰らないかい?朝比奈さんがもうお疲れのようだしね。時間もいい頃だ」
佐々木が話しかける。
「------わかった」
長い沈黙の後、名残惜しそうに九曜が答える。
 
再び4人となり、店を出て駅まで歩く。丁度、駅まで半分ときたところ、
「キョン、ちょっと頼みがあるんだ」
「何だ?」
「実は、さっきのゲームセンターに忘れ物をしてしまってね。あれがないと、とても困るんだ。取りに行こうと思うんだが、1人で戻るには不安がある。さっきみたいにね。だから一緒に戻ってくれないか?」
正直また戻るのは、しんどい。でもまた、佐々木が危険にあうことは絶対に避けたい。
「分かった。一緒に行ってやるよ」
「君はそう言ってくれると思っていたよ。本当に助かるよ」
佐々木はどことなく嬉しそうだった。
 
「俺と佐々木は戻りますけど、朝比奈さんはどうしますか?周防もどうする?」
「わたしはこのまま帰ります。キョンくん、今日はありがとう。今日かったお茶は、明日淹れるから、楽しみにしててくださいね。佐々木さんと九曜さんも今日はお疲れ様でした」
「--たのしかった--また--いっしょに」
それぞれ挨拶をし、朝比奈さんと九曜は駅の方に歩いて行った。
 
俺と佐々木は、もと来た道を戻る。
「何を忘れたんだ?お前が忘れ物なんて珍しいじゃないか?」
「それはゲームセンターに戻ってからのお楽しみだよ」
「はあ?」
何で、人の忘れ物を楽しみにしなければいけないんだ?そんなこと考えていると、再びゲームセンターに着いた。
佐々木は中に入り、真っ直ぐと、ある場所を目指す。そして、佐々木が立ち止まった場所は…
「これがお前の忘れ物か?」
「そうだよ。せっかくゲームセンターに来たのにこれをしなかったのは、僕のミスだ」
「プリクラがか?」
「僕だって、女だ。普通の女の子っぽいことをしてみたくなるんだよ」
「1人で撮るのか?」
「君は僕がそうするように見えるかい?もちろん、2人で撮るんだ。キョン、君とね」
「わざわざ、このためだけに俺を連れて来たのか?」
「あぁ、そうだとも。では、早速撮ろうではないか」
佐々木に強制的にプリクラ機の中に引っ張り込まれる。やれやれだな。
中はこうなっているのか。知らなかった。佐々木は何かフレームがどうのこうの言っている。
「キョン、きみはいつもしかめっ面をしている。でも、今くらいは笑ってくれないか?」
しかめっ面で悪かったな。生憎だが、笑顔は結構得意なんだぜ?なんせいつもニヤニヤした奴とオセロをしているくらい
だからな。笑顔なんかそいつの真似すりゃいいだけだ。
機械の声に合わせて、俺は古泉ばりの笑顔をする。よし、決まったぜ!
「…キョン、君に笑顔は似合わないね」
うるさい!ほっとけ!
撮り終わった後、佐々木は画面に何か書いている。覗こうとすると、全力で阻止された。
「見せてくれたっていいじゃないか」
「急がなくいてもいい。いつか絶対見ることができるはずだ」
佐々木の意味ありげな言葉が俺を不安にさせる。何だよ、いったい…
 
帰り道、俺と佐々木は並んで歩いていた。
「こうやって歩くのも、ずいぶん久しい感じがするよ」
「四月にも歩いたじゃないか」
「あの時はまだ明るかった。今は夜だから余計に中学の時のことを思い出してしまうんだ」
「そうか?俺は一緒だと思うがな」
「君はやっぱりまったく変わってないね。いや、変われないのかな?」
「どういう意味だよ?」
「今の君には分からないよ。それよりも、今日は楽しかったかい?」
「それなりにな」
「そうか、それは良かった。僕も羽を伸ばすことができて楽しかったよ。またどうだい?今度は、涼宮さんも一緒に」
「ちょっ、それだけは勘弁してくれ。どう考えても疲れるに決まってる」
「それは残念だな。君のこまっている顔も見てみたかったんだけどな」
 
中学の時みたいに、くだらない話をしながら歩いていたら、佐々木の家の前に着いた。
「キョン、今日は楽しかったよ。ナンパの件も含めてもう一度礼を言うよ」
「気にするな。男として当然のことをしたまでだ」
「ジュースをかけただけじゃないか。それともうひとつお願いがあるんだがいいかな?」
「今度は何だ?」
「君の携帯電話をみせてくれないか?そろそろ機種変更などと考えていてね。選ぶ時の参考にしたいんだ」
何だそりゃ、と思いつつも携帯を渡す。
佐々木は受け取ると、俺に見えないようにして、何かコソコソし始めた。中のデータを覗いているわけではなさそうだ。
別に見られても困るものは入っていないけどな。
やりたいことが終わったのか、佐々木が携帯を返してきた。
「じゃあね、キョン。またあえる日を楽しみにしているよ」
「ああ、じゃあな」
 
俺は佐々木と別れ帰路につく。
家に着いた俺は、風呂に入り、夕飯も食べ終えると、すぐにベッドに寝転んだ。
今日は本当に疲れた。
これじゃあ、ハルヒがいてもいなくても変わらないじゃないか…
しかし今日の俺は普通の高校生みたいに遊んで疲れたんだ。
たまには、宇宙的、未来的、超能力的、神様的なこと以外のことで、疲労するのも悪くないな。
そう物思いにふけっていると、前日の寝不足のせいか、睡魔が襲ってきて、すぐに夢の世界へとダイブしてしまった。
 
そんな日曜日も、いいじゃないか
 

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最終更新:2007年10月14日 17:08