「それじゃあさっさと行くわよ、キョン」

今日、俺とハルヒはいつものSOS団御用達の喫茶店ではなく
中心街にあるちょっとオシャレなファミリーレストランに来ていた。
というのも、昨晩ハルヒがいきなり俺に電話をかけてきて
「明日映画を見に行くわよ、予定空けときなさい」
と俺の言い分も聞かずにいつも通り言うだけ言って
電話を切ってしまったからである。別に用事もなかったし、
何より他ならぬハルヒの頼みならば聞かないわけにも行くまい。

そして今、目当ての映画を見終え食事も終えた俺たちは
定まってもいない次なる目的地を目指しファミレスを後にした。
外に出てみると、空には一面の曇天が広がっている。

「……天気が良くないわね。早く行きましょ」

で、結局どこに行くんだ?まさかまた映画を見に行くわけじゃないだろうな。

「そうね、あんたにはこれからあたしの歌声をただで聞かせてあげるわ。
感謝しなさい」

要するにカラオケってわけだ。この選択にはきっと特に意図などないのだろう。
女性経験の乏しい筆者が若者のデートスポットにこれしか思いつかなかったというわけでは
ないことを、ここで俺が弁明させてもらう。

俺が大宇宙の意思を受信していたその時、遥か遠くの空に光の柱が立ち、
空をつんざくような轟音が辺りに響き渡った。

「きゃあああああああ!!」

両耳を抑え、目を堅く閉じてその場にへたり込むハルヒ。
小っちゃくなってぷるぷる震えているその姿には
某金融会社の小型犬でも叶わないことだろう。
というかハルヒ、雷が苦手なのか?

「苦手とかそんな問題じゃないわよ!もしも私が神様なら
雷なんてこの世から追放するわね!そもそもなんであんなものが……」

またも空に閃光が走る。ごろごろと鳴る重低音にハルヒの高音が
混ざり、なんとも不可思議な状況を作り出している。
と、ハルヒが目にも映らぬ速さで立ち上がり俺の胸へと飛び込んできた。
小刻みに震えるハルヒの振動が俺にも伝わってくる。

そして俺のシャツが濡れそぼっているのは気のせいではないだろう。
なんだ、お前泣いてるのか?

「何よぉ、私が泣いちゃいけないわけぇ……」

その言葉にいつもの覇気がない。やれやれ、本当に参っちまってるみたいだ。
仕様がねないな。そのカッコでもいいいからついて来いよ。
とりあえず俺ん家まで行くからな。いいか?
コクリ、とハルヒが顔を見せずに小さく頷く。普段からこうなら可愛いのに……
おっと、前言撤回。普段からしおらしいハルヒはハルヒじゃないな。

道中、雷が落ちるたびにピクン動くハルヒを抱いたまま、
俺は公共交通機関を乗り継ぎ家まで帰ってきた。
そしてハルヒを俺の部屋に通して天気の回復を待ったのだが、良くなるどころか
雨まで降り出し、今日はそのままハルヒと一泊になってしまった。






妹「昨晩はお楽しみでしたね?」

キョン&ハルヒ「!!?」

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最終更新:2007年01月12日 13:46