おまけ
 
「キョンくんごめんねー、ハルにゃんにはバレバレだったのさっ」
そう言って鶴屋さんは店に入ってきた。
「やっぱりねー、キョンからなんか甘い香りがするし、
 朝からなんかそわそわしてるなーと思ってたのよ」と、ハルヒ。
朝比奈さんは、「おいしそうな香りですねー」っと瞳を輝かせていた。
その表情を見れただけでも昨日がんばった甲斐があります。
 
長門は、またいつもの無表情かと思ったが、微妙に違っていた。
この顔は、初めて図書館に連れてった時に似てるな。まあ、無言なのはいつもと同じだ。
 
で、ハルヒ、もしバレバレだったとしても、そこはあえて騙されていてほしかったぞ。
「なにいってるの、一応学校にいる間は騙された振りしといてあげたのよ、感謝しなさい」
へいへい、そうですか。
俺が今日部活に参加できないって言った時、キョトンとしてたのは、
すでに感づいてたからだったのか。なんてこった。
 
「で、キョンの手作りケーキはどれかしら」と言って並んでるデザート艦隊を見回し、
「わかったわ、この不恰好なやつね」と、ひとつのケーキを指差すハルヒ。
不恰好で悪かったな、
だが、ここにあるのはほぼ全部俺の手作りなんだよ。
 
と、言った瞬間、現場の空気が変わった気がした。
「へー」と、店内を見渡す鶴屋さん。これが普通の反応だ。しかし、
「ほぼ全部?」と、ハルヒ。
「キョン君の」と、朝比奈さん。
「……手作り」と、長門。
 
なんだ?あとの三人の反応は。
そんなに俺の手作りじゃあ不安なのか?
そもそも俺にドジっこ属性は無いぞ。
砂糖と塩、小麦粉と片栗粉を間違えたりするなんてベタな事はしてないはずだ。
 
まあ、見た目はいまいちかもしれんが、味は保障しておく。
でないと、俺はともかく教えてくれた新川さんと森さんに失礼だしな。
 
「ち、違うわよ、味はともかく、コレだけの数一人で作ったのが信じられなかっただけよ」
見た目で勝負は無謀だと踏んで、量で勝負しただけだが、
意外とハルヒの感心を得たようだ。
朝比奈さんも、「お菓子作りって結構時間かかるんですよね」と言って頷いている。
休日に家でお菓子作りをしている朝比奈さんを想像する。
うんうん、俺なんかよりよっぽど、お菓子作りが似合いますよ、朝比奈さん。
 
長門は、というと。
すでにトレーとトングを持って、
夢遊病患者のようなステップでふらふらとケーキを物色し始めていた。
なにやら「……手作り、……手作り」とぶつぶつ言ってる様に聞こえる。
図書館に来た時と同じ反応だな。
なんだか分からんが、長門は初めて来た場所で興味がある時はこんな感じになるようだ。
 
と、まあこんな感じでみんなもデザートを物色し始めた。
 
余談だが、ハルヒと長門の食べっぷりは予想どうりだったが、
鶴屋さんは意外と食べていなかった。
やっぱ鶴屋さんでも普通の人だ、甘い物の大量摂取は何かと不都合な事態になると、
判断したのかもしれん。
代わりに朝比奈さんの方が予想よりも食べていた。
やはり甘い物は別腹か?
とはいっても、あくまでも予想よりもであって、常識の範囲だったわけだが。
 
「キョンくんの手作りデザートはとってもおいしいよっ、
 でもあたしは甘い物よりどちらかっていうと、おつまみとか珍味の方が好みなのさっ」
そう言って鶴屋さんは飲み物の方を所望してきた。

ふむ、たしかに鶴屋さんは洋菓子より和菓子、甘味より珍味って感じがする、
乾き物か燻製物とか好きそうだな。
 
て、古泉、何お前まで食おうとしてんだ!
足りないかも知れませんって言ってたの忘れたのか、おい!
 
今度こそ古泉の頭をハリセンで叩いてやった。

 

      おわり


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