プロローグ

 

その日から一週間、俺は学校を休んだ。
無断欠席などしたらあの団長様が黙っていないだろうことは明白だ。
しかし、そうはいってもその時、俺はこの世に存在していなかったのだから仕方ない。

 
弁解の余地もできない…、まぁ、俺の居ない間のハルヒの面倒は、
他のSOS団メンバーを信頼するしかない。頼んだぜ。

っと、なんだか遺書めいてしまったが、心配するな。
ちゃんと俺は生きてるからな。

 
いつもいつも巻き込まれてる俺だが今回ばかりは、蚊帳の外のようだ。
だが、一番の当事者でもあるらしい。なんだかな。
いつものハルヒのような立場、てのがしっくりくるか。

ま、そんな感じの一週間だったらしい。
ことの発端は、日曜の夜みんなで心霊スポットめぐりをした次の日だった…。

 

 
その日、目が覚めたら一週間後だった。
日曜日の夜に寝て、また日曜日が始まったのだ、エンドレスサンデーか?

いやいやそんなことより…。
「なんで朝比奈さんが俺の部屋にいるんですか?」
ええーと、ひょっとして夢?
たしかにあなたのエンジェルヴォイスで起こしてもらえたらいいな~、なんて。
思ったりしたこともあったりするかもしれない気がするよ~な…。
ええ~い!落ち着け、俺!

 

「あのーわたしにも詳しくはまだ知らされてないのでよくわからないのですが、
 取り敢えずこの後のことは古泉君に聞くように、とのことです。
 実は私も七日前から来たばかりなので」
と言って朝比奈さんは少し困った表情で微笑んだ。

じゃ、俺は一応未来にやってきたってことなのか?

 
「はい、そのようです。あの、ごめんなさい、わたしそろそろ元の時間に帰らないと、
 キョン君またね」
と言って朝比奈さんはそそくさと俺の部屋から出て行ってしまった。おーい。
ひとりポツンと残される俺、そもそも俺の部屋なので残されるってのも変なのだが。

 

……えーとなんだっけ?一週間後!?
ま、朝比奈さんがいたってことは時間移動をしてきたってことで間違いないだろう。
で、後は古泉に聞けってか!?こんどはなんだぁ?いつもながら唐突だな。くそ。
しゃーない、朝飯食ったら古泉を電話で呼び出してやる、っと軽く思ってたら…。

 

ウチの家族が誰もいねえっ!どこいった?なにがあった?
事態は思ったより深刻な状況のようだ、すぐに着替えて家を出る、とそこに。
タクシーが一台停まっていた。見覚えがあるぞこの車は。

「やあ、お待ちしておりました」
「古泉か、わざわざ電話する必要もなかったって事だな。いったいなにがあった?」
「そのことについては後で詳しくお話します、でもまず、
 これから僕とあなたでしなければならないことがあります。一緒に来てください」

真面目な顔をするな古泉、それに気色悪い誘い方をするんじゃねえ。

とはいっても誘いに乗るしか手はないか…。
仕方なく俺はタクシーに乗った。



俺がいなくなってた一週間に何があったんだ?


      第一章

 

月曜日である、俺はその時間、いやその期間この時空に存在していなかったのだから、
当然学校には行っていない。
試験後の短縮授業なので休んでいても、それほど勉学に支障はないだろう、だが!
無断で学校を休んだりなどしたら、あの団長さまが黙っちゃいないだろう事は想像が付く。

 

 
しかし、俺が存在していないこの一週間を俺が語るってのも少々無理がありそうなんだが…
仕方ない、こればっかりは誰かに譲るわけにはいかないんでな、我慢してくれ諸君。
なのでこれからのことは誰かに聞いた事と俺の憶測、推測、
そして説明不足などいろいろ出てくるかもしれんが、細かい突っ込みはなしってことでよろしく。
では、話を戻そう。


宇宙人的情報操作の賜物だろうか、
俺の家族は田舎の親類のお葬式に借り出されていることになっていた。
いわゆる忌引きってやつだ。
田舎で初七日まで終わらせるって話になっていた。
ま、ハルヒ対策にはもってこいな事情だな。

 

で、その日の放課後。
いつもの、じゃなかった、俺が居ないSOS団はどうだったのか。
またハルヒが朝比奈さんをおもちゃにしてなきゃいいが…などと心配したが、
いまさらどうしようもない事に気づいた。それに、心配するようなことは起きなかったらしい。
だが、何も起こらなかった訳ではないそうだ。

 

「話がある」
なんと、長門の方からハルヒに話し掛けたそうである。
「なに?有希、めずらしいわね」
その場にいないので二人がどんな表情なのかわからんが、長門は無表情だったろう。
「事情があって明日からしばらく部への参加が出来なくなった、許可を」
「…え!?」ハルヒじゃなくてもあっけにとられるだろう、俺だって驚くさ。
「事情ってなに?」っと言った後、
小声で、「まさかキョンがいないからってんじゃないでしょうね…」っとハルヒ。
おいおい、いまだに俺と長門のこと怪しいと思ってるのかね、あの団長は。

 

数回瞬きしたあと長門は「……家庭の事情」っとボソリと言った。
「…………!」
きっとハルヒも朝比奈さんも古泉ですら絶句しただろう。
もうすぐ春だというのに世界が凍りつきましたよ長門さん。
その凍った世界からいち早く抜け出したのはハルヒだった。
がたっと椅子から立ち上がり、
「有希、ちょっと一緒にきて」っと言って部室から出て行った。

 

まあ、ハルヒのことだ、雪山遭難時に俺が言った半分作り話を思い出したのだろう。
長門が転校するかもしれない、ってやつだ。
だがその心配をする必要はなかったはずだ。

現に、部室に戻ってきたハルヒは機嫌が悪くなってなかったらしい。
長門がなんとハルヒにいったのか?それは…。

妹がくるのでその相手をしなければならないって事だそうだ。
長門の妹?朝倉涼子や喜緑江美里さんに次ぐ第四のインターフェースか?

 
まさか次の新一年生で北高に入ってくるんじゃないだろうな。
なんだか右わき腹がちくちくうずく。またトラウマがふえなければいいんだが。

当然のことながら、長門の申請は許可された。
ちゃんとした理由さえあれば強制参加はしなくていいのがハルヒ流らしい。
それに、なぜか俺たちSOS団メンバーについて深入りしてこなかったしな。
まあ、俺は隠さなければならない生い立ちなどもないから別にいいのだが、
他のメンバーは詮索されると困る事情があるからな。
でも、ハルヒはそんなことはしないだろう、なぜかは知らんが、
それがハルヒなのだってことにしとけ。

 

      第二章

 

火曜日である。
授業中のハルヒについてはクラスの違うSOS団メンバーに聞いても仕方ない。
谷口か国木田あたりに聞くしかないのだが、そんなことをすれば、
また変な誤解を生むことだと悟った俺はなにも聞かなかった。
なのでその日の放課後だ。ついてこい!

 

だが、別段なにもおこらなかった、いや、水面下で起こっていたのかもしれんが、
それはあとで知ることになる。

 

涼宮ハルヒは退屈していた。
これはなんとなく分かる。メンバーが俺を含め、二人もいないのだ。
ハルヒが何か思いついたとしても、絶対五人で行動するはずだしな。
こんな調子じゃいずれ古泉のバイトも発生するだろう。
そうなると朝比奈さんとハルヒだけになってしまう。
不機嫌なハルヒと朝比奈さんのおろおろする姿が見えてきた。

そんなこんなでこの日のSOS団はいつもより早く終了した。

終了間際、
「有希とキョンが戻ってくるまでSOS団の活動も中止にしようと思うけど、…いい?」
っとハルヒが言ったらしい。
むろん朝比奈さんも古泉も異論はないだろうが、
なんだ?ハルヒらしくない言い回しだな、いつもなら決定事項だけ言って終わりのはずなのだが。
朝比奈さんや古泉相手だと態度がちがうのか?


「いえ、そうではありません、涼宮さんはあなたがいる時だけ決定事項でいうのですよ」と、古泉。
どういうことだ?そりゃ。
「現在、涼宮さんの言動に意見するのはあなただけです」
たしかにそうだが。

 
「なので何をいっても賛同する我々にはああ言う風な言い回しをしてきます、
 彼女の理性的な部分と言いましょうか…まぁ、あなただけ特別扱いされてるということですよ」

なんだそりゃ、全然意味がわからん。しかもうらやましそうに言うな。

 
そんなに特別扱いされたきゃお前も意見すればいい、そうすりゃ俺も少しは楽になる。
「それは…遠慮しておきましょう、僕の存在理由が問われる問題に発展しそうだ」
まぁ、古泉が所属してる機関と呼ばれる所は、ハルヒを神扱いしていて、
神に逆らうなんて言語道断!ってことなんだろうが…。

 

一瞬素の古泉が見えた気がしたぞ。おまえ、今、少し考えただろ?


      第三章

 

水曜日である。
この日はなにも起こらなかったそうだ。
…おいおい、いいのかそれで、これじゃ三日坊主の日記以下じゃないか。
これじゃ何のために俺が一週間後まで飛ばされたのか全然理解出来んぞ。
それにウチの家族はどこいったんだ?

まさか本当に田舎で葬儀の準備してるんじゃないんだろ。

「半分は当たってます、っといいましょうか…
 あなたの御家族もあなた同様未来に飛びました、あなたより一日多くです。
 それに、おそらくこの一週間の出来事を記憶した状態で現れると思います。
 出来事といっても偽りの記憶だと思いますが、あなたの御家族は、
 本当に田舎で葬式をした記憶を持っていることになってるはずです」と、古泉。

 

記憶の改竄…
そんなこと出来そうなヤツはそうそういない。
長門か?
と、思っていたら。もう一人の宇宙人製インターフェース、喜緑さんのほうだった。

聞くところによると、上級生インターフェースは事後処理担当だそうだ。
言われてみれば納得しそうな気もしなくはない、事なかれ主義って感じだったしな。
ていうか何を考えてるのか分からん、ってのが正解か。
なんかもっと含みのある感じもするし、言っちゃ悪いが腹黒い気もする。

 

長門は表情こそ乏しいが心情が伝わってくるし、よっぽど人間っぽいよな。
朝倉は長門とは逆に表情は豊かだったが、笑顔で襲い掛かってくる姿は…
やっぱやめよう、思い出したくもない…。

 

「そういえば、あなたは以前TFEIの朝倉涼子に命を狙われたようですが、
 まあ、よく無事でいられたものですね」
わざとか古泉、今思い出したくないって考えたばっかだぞ。
お前は人の心を読むエスパーか?いや、ある意味エスパーであってるんだったな。

 

「長門のおかげで命拾いさせてもらった、一度ならず二度までもな、
 ま、ほかにも色々助けてもらってるけど」
くそ、お前のせいで脇腹に刺さる冷たい物の感覚を思い出したじゃねえか。
はっきり言って、あんな感覚を体験してて生きてるのは俺ぐらいじゃないのかって思ってると。

「長門さんの能力がすごいのは十分承知しています。
 ですが、本当に長門さんの能力だけであなたを守ったのでしょうか」
ちょっとまて、なにがいいたい?

「我々は他のTFEIとも会っています、はっきり言いましょう、
 あの方たちなら、『命を狙われている』
 ということすら知らない間に目的を遂げることが出来るはずです」

 

……言葉がでなくなった。思い出してみろ、
朝倉はわざわざ教室に俺を呼び出して、ナイフを持って襲い掛かってきた。
いかにも命を狙ってますよってのを俺にわからせるかのように。
俺を殺したいのなら古泉の言うとおり、わざわざ姿を見せる必要がない、
交通事故でもいいし、階段から落ちて頭を強打でもいいだろう。いや、よくないが。

 

「あれは茶番だったということか?」
「その可能性が高いというだけですが、まあ、既定事項と言った方がいいかもしれませんね、
 それに、あなたもうすうす勘付いてたんじゃありませんか?」

いや、実際刺されるまではそう思ってたんだがな。いかんせん、あのトラウマは強烈なんだ。

だからこの前、ハルヒが言っていた『泣いた赤鬼』の話、
青鬼に合ったら親切にしてあげるのよ、と言っていたが、ちょっとできそうにないな、まだ。
節分の時の鬼面を頭に付けた長門の姿が浮かび、改変世界の寂しげな表情をした長門とダブった。

 

そういや、朝倉の居たあの世界は長門の望んだ世界だったよな。

 

「あと、長門さんは、ほかのTFEIと違って、オンリーワンの存在になりつつあります」
どういうことだ?

 
「今の僕と似たような状態でしょう、きっと彼女は情報統合思念体の端末という立場より、
 SOS団の一員として行動するほうを望んでいる節があります」

古泉の言いたいことはだいたいわかる、まったくもってそのとおりだと思う。

 
しかし、古泉がこの話を振ってきた理由がこの一週間の出来事が起因だとは思いもしなかった。

      第四章

 

木曜日である。
さて、もう後半だ、何が起こったのか、もう起こっているのか、
そろそろ教えてくれてもいいんじゃないのか?みんなもそう思うだろ。

学校での出来事は、昨日と同じく省略だ。
と、いいたいが、大きな違いがあったようだ。

長門が、あの長門有希が学校を欠席していたのである。マジか!
吹雪の洋館以来の衝撃だ、ちくしょう、なんでその時俺はいないんだ!
などと今更言っても仕方がない、もう過去の出来事である。
今現在、すでに事件は解決していて全員無事ってことだしな。

 

さて、ここで疑問があるのだが、ハルヒは長門が欠席していることを知っていたのか?
もし、知っていたら電話でもして長門に欠席理由を聞き出しているだろう。
そしてその欠席理由が雪山の時のような体調不良なのだとしたら、
絶対長門の家に押しかけて来ているに違いない。
団員の心配をするのは団長の務めらしいからな。

 

だが今回、ハルヒに知られては少々やっかいな事になるらしいそうだ。
どういうことだ?というと。
長門が言っていた、妹、が原因だったからである。
さあ、やっと核心に近づいてまいりましたよ。

 

今回の件、すべての発端は長門の妹と称される、
第四のインターフェースが、ある人物に危害を加えるのが目的である、
ということが判明したからだそうだ。
ちょっとまて、ある人物って、まさか……。

 

……そのまさかだった。マジで?
なるほど、保護対象である人物を守る方法として最適だろう、今の俺の状況は。
俺が当事者で蚊帳の外である理由も納得だ。

 

宇宙人同士の本気の戦いがどんなものなのか、
長門と朝倉の戦いしか見てないからあの状況しか想像できないが、
ハルヒがのこのこと長門の家に行って、串刺しの長門の姿なんぞ目撃したら、
それこそどんなことになるか想像できん。
いくら長門が「へいき」といっても、ちっとも平気には見えねえんだからな。

 

なにはともあれ、長門が欠席していることはハルヒに知られずにすんだようだ。
しかし、そうなると長門の妹とやらは相当手強い相手だったってことか。
などと楽観視していたのは、すでに全員無事である、
ということを聞いていたせいなのだが、実際はそう楽観視出来ない状況だったらしい。
下手をしたら長門が朝倉の様に消えてしまっていてもおかしくはない状態だったそうだ。

 

後から聞いたんだが宇宙人同士、いや、情報生命体の端末である彼女たちのの戦いは、
もちろん情報戦である、とのことだそうだ。
なので、いくらでも再生可能な肉体に損傷をあたえる攻撃などは意味がないそうだ。
なるほどね、串刺しでも平気なわけだ。
 
で、情報戦というのはどんなものなのか?というと。

簡単にいえばシミュレーションゲームのようなものらしい。
いや、ちょっと違うか、コンピューターウイルス対ワクチンプログラム、
ってのが近い概念だそうだ。

 

吹雪の洋館での長門の様に、少しずつ動きが緩慢になって、
最後には行動不能になってしまうらしい。
考えたくはないが、長門が学校を休んだと言うことは、
今回もそのような状態になってしまったのか……。

 

      第五章

 

金曜日である。
俺が時間移動してきた日曜の朝には事件が解決していた。てことは、
少なくても金、土あたりには決着がついたはずである。
その時間にいない俺としてはいまいち緊迫感に欠けてしまうんだが、
話を聞いてるとその場にいなくて正解だったかもしれん。
精神衛生上良くないことのオンパレードだったそうだ。

 

その日、長門は少々…いや、結構窮地に立たされていた。
何度も言うが、長門の妹は相当強かったそうで。
このままだと金曜日中に、長門は行動不能となっていて、
長門の妹を止める事ができなくなっていただろう。
結果として、俺が今こうして無事でいられる訳はないことは明白だ。

じゃあどうやって勝利したのか。
 
それは、この日の授業終了後での出来事から始まったそうだ。
「どうしたんだいっ、みくる。今日は朝から元気ないじゃあないか、
 悩みでもあるのかい?」
なぁんて事を言ったかどうかわからんが、鶴屋さんから朝比奈さんに声をかけた。
 
なにやら朝比奈さんは冬休み明けの時と同様、憂鬱状態に陥っていたらしい。

そりゃあまあ、当時危機的状況だったから、
憂鬱になってもしかたないっちゃあそうなんだが。
実は原因はそれだけではなかったらしい。
なにやらまた、未来から指令が来ていたそうだ。

 

で、その指令だが、ちょっとばかし朝比奈さんには荷が重いかもしれない内容だった。
『下校時、涼宮ハルヒをある場所にまでつれてくること、
 ただし二人きりでなくても良い』
と、まあこんな感じの内容らしい。

 

朝比奈さん一人でハルヒを誘っても、うまく誘導できず、
なんだか余計ややこしい事になってしまいそうだろうし、
かといって本当のことを言うわけにもいかない。
二人きりでなくて良いってんなら、前回のこともあるだろう、俺を誘っていたに違いない、
しかし、俺はその時間存在していなかった。
となると、朝比奈さんの正体を知ってる人間で、誘えそうなのは古泉位しか残ってない。

 

てなわけで、俺はてっきりSOS団の残りの三人で指令の場所へ行くのだろうと、
思っていたのだが…。
なんてことだ!古泉の野郎、朝比奈さんのお誘いを断りやがった。

 

「そんなに怒らないで下さい、僕としても魅力的な女性お二人を、
 エスコートする方を選びたかったんですが、
 どうしても外せない用事があったものですからね」
なんだ?とうとう例のバイトがはじまったのか。

 

「いえ、そうではありません、ですが、その方がよかったかもしれません」
真面目な顔をするな、お前のその顔はなんだか心臓に悪いぞ。
「今回の件、以前あなたと約束したことをしなければならないのではないかと判断しまして…」
約束ってなんだっけ?
あ、思い出した!はい思い出しました。だからその顔はやめろ。

 

長門が窮地に追い込まれて、それが機関にとって好都合だとしても、
古泉は一度だけ機関を裏切って俺たちに味方するってやつだったな。
だが、今の状態がその機関とやらにとって好都合なことだとは思えないんだが…。

 

「そうです、我々としてもこのまま長門さんに負けてもらっては困ります。
 ですが、長門さんに加勢したくても通常空間では僕もあなた同様一般人です、
 足手まといにしかなりません。
 ではどうすれば良いか?簡単です、相手を閉鎖空間に追い込めば良いんです。
 そうすれば少しは戦力になれるでしょう、しかしながら、その当時、
 閉鎖空間は発生していなかった。そこが問題でした。
 機関の一員としては、涼宮さんに閉鎖空間を発生させる様な行動をとるなんて、
 許可されるはずありませんからね。」

 

今までに知り合った機関の人たちを見ても、
それほど頭の固い連中とは思えないんだがな。
まぁ、すべて演技だったかもしれんが。

 

「長門さんに加勢することに関してはすでに許可されてました、
 後は閉鎖空間の自然発生待ちでした。
 涼宮さんがSOS団の活動をしばらく中止にしたから、
 閉鎖空間も木曜から金曜あたりに発生するのではないか、
 と思ってたんですが」

 

そういえばなぜ発生しなかったんだ?
SOS団の活動はハルヒにとって退屈の緩和、ストレスの解消になってたはずだ。
 
なぜか?っていうと古泉曰く、
団の活動休止とともにハルヒの思考も休止していたってことらしい。
授業中ずっとぼんやりと窓の外を見ているハルヒが浮かんだ。

 

なにか思いついたらすぐ行動する団長様だ、
すぐに行動出来ないのなら何も思いつかない様にしていたってことか。
普段どうでもいい時に閉鎖空間を発生させてるくせに、
肝心な時に発生させないとは、まったく、とんだ神様だな。
で、古泉、ハルヒに閉鎖空間を発生させるのにどんなことをしたんだ?
ちょっとそこが興味あるな。

 

「そのことですが、金曜の昼くらいに特例で機関の許可と協力がえられましてね、
 正直胸をなでおろす気分でした。
 ですから、あなたとの約束はまだ継続中です、安心してください」

 

おいおい、安心したのは俺じゃなくておまえだろ。
 
      第六章

 

金曜日その2である。
その日の放課後だ。
ハルヒと朝比奈さんと鶴屋さんが指令された場所に向かっていた。
朝比奈さんがあたふたしながら鶴屋さんに事情を説明して、
鶴屋さんが細かいことは気にせず、
「わかったてばっ!みくる、
 取り敢えずハルにゃんをその場所にうまく連れ出せばいいってことにょろね~」
てなやり取りがあったのだろう。
ま、鶴屋さんならハルヒをうまく誘導することが出来そうだ。

 

「あれ、この先って……」とハルヒ。
「そうだねっ、意外と不思議な物って近くに在りすぎて、
 見落としやすいかもしれないってことっさ」
なにか不思議な物を見つけたからその場所に行こうとでもハルヒに言ったのだろう。
どうやら目的の場所はハルヒの知っているところらしい。
そしてもうすぐ目的地ってところで意外な人物にであったそうだ。

 

生徒会長と喜緑さんがいた。
「あんた達!まさかあたし達より先に不思議な物を手にいれようと先回りしてきたのね、
 そーはいかないわ!どっちが先に見つけるか勝負よ!勝負」
ハルヒのことだ、こんな感じにまくしたてたか、あるいは。
「何?ひょっとしてあたし達をおびき出そうとして偽の情報でも流したのかしら?
 そんな回りくどいことしなくてもSOS団はどんな勝負も受けて立つわよ!」
などと言って結局、勝負事にもっていきそうだな。

 

鶴屋さんなら「あれあれ、ひょっとして逢引き?お安くないなあ!あやかりたいっ」
なぁんてこと言ってたかもしれないが。

 

それはともかく、なぜ生徒会の二人がこんなところにいたのか。
だいたい、古泉の差し金だろうってことは察しが着く、
ハルヒに閉鎖空間を発生させる為の人材として、あの生徒会長はもってこいだろう。

 

「なにを勘違いしてるか知らんが、我々がここに来たのは、
 国家公務員に情報提供をするためだ。
 最近ここらで北高らしき制服を着た不審人物を見かけたらしい、
 とのことで、全生徒の容姿を把握しているという喜緑くんと共に来ただけだ」

 

「ふーん、不審人物ねぇ、なるほど。ますますSOS団の出番のようね」
などと言って、ハルヒはいつもの様に瞳を輝かせたんだろうな。
「涼宮くん、なにやら喜んでる様にも見受けられるが、少々不謹慎ではないかね、
 国家公務員が動いている、ということはすでに被害が出ているということだ。
 それにその様子だと、事情を知ってからここに来たのではないようだな」

 

さすがに被害が出てるなんて訊いたらハルヒもおとなしくなるだろう。
しかしこの生徒会長、ハルヒを黙らせるとはたいしたもんだ。
「…それでぇ、その不審人物って、北高の生徒だったのかな?」
いくら訊いた話からの想像とはいえ、そろそろ朝比奈さんもしゃべらせないといかんよな。

 

朝比奈さんの質問に答えたのは喜緑さんだった、
不審人物は北高の生徒ではなかったそうだ。
「我々はこれで失礼する、その前に一つ忠告しておこう、
 この先には行かないほうがいい。と、言っても聴かないだろうがな」
それはハルヒにとってこの先に行けってことですよ会長。

 

そして、喜緑さんが去り際に、
「ひょっとしたら彼、転校することになるかもしれません」とハルヒに耳打ちしたそうだ。
───え!?どういうこと?
とハルヒはこの時思っていただろう。その現場に着くまでは。

 

      第七章

 

とうとう閉鎖空間が発生した。
心底その現場に俺がいなくてよかったと思う。
ハルヒ達が向かっていた場所は俺の家だった。だが、そこに俺の家はなかった。
火事があって全焼だったそうだ。マジで!?
古泉のやつがそのときの現場の写真を見せやがる、にこやかにそんな物出すな!

 

写真だけでも相当な衝撃だ、もし現場にいたらどんなだったろう。
さすがのハルヒも取り乱していただろう、近くにいた警官に経緯を聞き出していた。
ちなみにこの警官、機関の関係者だったそうだ。
そして重要参考人とされる不審人物の写真を見せてもらったとき、
閉鎖空間が発生したそうだ。

 

どうやって手に入れたのか、その写真は長門の妹とされる第四のインターフェースだった。
で、その写真はないのか?ちょっと見てみたいんだが。
残念ながらその写真は事件解決と同時に消えてしまったそうだ。

 

と、まあこんな感じでめでたく?閉鎖空間は発生した。大規模でしかも俺の家を中心に。
あとは古泉たちと長門で何とかなったんだろうと思ったんだが。
そうは問屋が卸さなかった。

 

ハルヒはその写真を見た瞬間、今きた道を走り出した。
ここに来る途中でその人物とすれ違ったからだそうだ。
すれ違った人の顔までよく覚えてるな、瞬間記憶能力者か?探偵にでもなればいい。
て、冗談はおいといて。
しかしいやな予感がするな、話を訊いてるだけでも不安になる。

 

はい、予感的中!
長門との情報戦の最中だろうか、第四のインターフェースも動きが緩慢だった。
とは言え、通常空間からだと逃げられる可能性があると判断して、
古泉たちは超能力が使える閉鎖空間側から長門の妹を引きずり込んだ。
と、同時に一斉攻撃。てのが作戦だったらしいのだが……。
あろうことかハルヒも一緒に閉鎖空間まで引きずり込んでしまったそうだ。

 

ハルヒが第四のインターフェースを見つけ出し、
「ちょっとあんた!待ちなさいっ」などと言って、腕でも掴んでたんだろう。
まったく余計なことをしてくれる。

 

「僕もその時はさすがに血の気が引きました、ですが、
 おかげでTFEIの隙を突くことが出来たのかもしれません」
それはそうかもしれんが。
 
「すでにTFEIへの一斉攻撃は開始されてましたから、
 涼宮さんも巻き添えをくらってしまうところでした、
 なんとか彼女を突き飛ばして僕が盾になることで事なきを得ました」

 

なんだかしらんがこいつの得意げな態度が無性に腹立たしいのはなんだ?
まあいい、古泉、一応感謝しておく。
で、ハルヒはというと、幸いなことに気を失っていたそうだ。

 

ところで、その時の閉鎖空間は少々いつもと違っていたそうだ。
ハルヒが中に入って来たからなのかわからんが、
古泉たちの能力がさらに強くなっていたそうだ。
そして、一斉に現れた数体の神人が第四のインターフェースに襲い掛かったのだ。
これが決定打となり、長門の逆転勝利となったのである。

 

「それに、ヒロインをかばっての名誉の負傷なんて、
 物語の主人公にでもなった気分ですよ」
と言ってにこやかに包帯を巻いた左腕を見せる古泉。
お前はひょっとしてMなのか。

      第八章

 

土曜日である。
この日、久々にSOS団の活動があったそうだ。
金曜の出来事は機関と宇宙人と未来人の協力のもと、
ハルヒの夢落ちにでっち上げた、ワンパターンだがな。

 

そこで問題は鶴屋さんだったのだが、
「めがっさ面白いもんも見れたし、ハルにゃんには悪いけど、
 今日の出来事は秘密のいないないばーって事にしとけばいいってことにょろね」
とまあこんな具合で問題は解決だ。

 

鶴屋さんが言う、めがっさ面白いもんってのは、
さっきまで焼失していた俺の家が、
あっと言う間にもとどうりになっていったことだそうだ。

 

で、前回気を失っていたハルヒだが、目覚めたのはSOS団の部室だった。
しかも気を失うより少し前に時間遡行させておくという念の入れようだ。
ちょうど閉鎖空間が発生した時刻あたりだな。
ハルヒのすごく戸惑った表情が見れなかったのが悔やまれるがな。

 

てなわけで、土曜日、長門も復活し、俺以外のSOS団メンバ-は、
団長様の号令のもと、不思議探検に出かけていった。
もちろん行き先は、俺の家だった。

 

団員には、
「意外と不思議な物って近くにあるかもしれないのよ、でもキョンのことだから、
 そのことにまったく気づかないで見過ごしてる可能性があるわ」
などといっていたらしいが、そのセリフそっくりそのままお前に返してやるぞ。

 

朝比奈さんと長門、俺の変わりに突っ込みを入れておいてくれ。
「僕が前日に気を失うほどの突っ込みをしておきましたから」と、古泉。
お前には訊いとらんっ!

 

    エピローグ

 

月曜日がやってきた。
登校中のことである。
「ようキョン、久しぶりだな」と言って肩をたたかれた。
なんだ、谷口か。まあ一週間休んだことになってるからな。
久しぶりだな、ってことにしとく。
しかし、俺がいない間いろいろあったらしいな。

 

「なにいってんだキョン、逆にまったく何もなかったぜ、
 涼宮も……お前がいないせいか、不気味なほどおとなしかったしな」
俺がハルヒを焚き付けてるみたいな言い方をするな、人聞きの悪い。

 

「ま、誰に訊いたかしらんが先週は平和だったってことだ、
 ところでキョン、今日は何の日か知ってるか?」
ああ、知ってるよ、そのおかげで昨日からいろいろ準備してんだからな。
「そりゃあ、ご苦労なこった」と、谷口が言ったところで会話は終了、
学校に着いた。

 

教室に入り、席に着く。
まず、やっておかなければならないことがある。おちつけ、悟られるな、俺。
ココさえ乗り切れば、計画は成功したも同然だ。
後ろの団長様に今日の部活に参加できないって事を伝えねばならん。
その為に昨日のうちにいろいろ言い訳を考えてきたからな。

 

前回はシャミセンが円形脱毛症になったってことにしたっけ。
今回は田舎に行ってる間に妹と出かける約束をしちまったってことにするか。
「あー、すまんがハルヒ。今日の部活、用事が出来て参加出来なくなっちまったんだ」

 

俺は、ハルヒが不機嫌な顔をすると思っていたんだが、
意外とキョトンとした顔で、「用事ってなに?」と訊いてきた。
少々拍子抜けしたが、ここで用意していた言い訳を伝えようとして口を開いた矢先。

 

「ひょっとして家庭の事情?、まさか妹の相手をしなきゃならないって言い出すんじゃ…」
そのまさかなんだが…先に言われるのは予想外だ。

 

妹は、葬式の間おとなしくしていたら好きなものを買ってもらう、
と親と約束したのはいいが、
次の休日まで待ちきれないっと駄々をこねた為、
今日、俺が妹の買い物に付き合うことになった。

 

というのが昨日考えたシナリオだ。もちろんハルヒの許可は下りた。
ともかくこれで準備は整った。あとは放課後を待つばかり。

 

 
で、その放課後だ。
昨日古泉とタクシーに乗って連れてこられた場所に俺は来てる。
古泉は俺より先に来ていやがった。
ま、ココは機関が用意した場所だからな、まあいい。
それより、最後の準備をしなければならん。

 

そろそろ鶴屋さんに誘われてSOS団の女性陣がココに来るころだ。
一応、鶴屋さんには事前に説明しておいた。
うまくハルヒ達を誘い出してくれてることだろう。

さて、ここがどこだと言うと、イートインもできる洋菓子店だ。
 
機関が用意したとしては、こじんまりとしていい雰囲気な店内だ。
そして今並べてるのが、昨日新川さんと森さんに教えられながら作った、
俺の手作りデザート郡だ。
古泉のヤツは名誉の負傷とかで細かい作業ができないらしくて、ほとんど俺の力作だ。

 

しかたない、今回ばかりは俺もこれくらいしないとな。恩返しも兼ねて。
ハルヒも朝比奈さんも長門も、あと、ついでに古泉も。
この一週間、俺のために大活躍だったらしいからな。

 

感謝してるとはいえ、ハルヒは夢落ちだし、
朝比奈さんは「私は何もしてません、未来からの指令に従っただけなんです」、
長門はまたもや「こちらの不手際」なんてこと言い出すに決まってる。
それに今日は三月十四日だ。先月のお返しもしなきゃならん。
ホワイトデーは三十倍の恩義で報いなければならんらしいからな。

 

てなわけで、昨日、古泉の話を聴きながらずっと作っていたのだが、足りるのか?
デザートバイキング形式にしたのはちょっとまずかったか?
朝比奈さんはともかくハルヒと長門と鶴屋さんは結構食べそうだ。
あとは飲み物で誤魔化すしかないな。と思っていたら、
「足りないかもしれませんね」と、古泉。
手伝えなかった、お前が言うな!

 

と、古泉の頭を叩いてやろうとハリセンを探しはじめた、
ちなみにハリセンは昨日古泉の話を聞いてる時に、
突っ込みを入れたくなる時が多々あったので今日用意してきたのさ。

 
しかし、そうこうしてる内に来客者が来たようだ、運がいいな古泉、
これから接客にいかねばならん、というわけで。

 

ほんじゃ、またな。

 

 

おまけ


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