谷口「爽やかな朝はとびきりに熱いブラックコーヒーを口にふくむ。そしてその香りでゆるやかな目覚めを楽しむのさ」

 

谷口「俺の名は谷口。探偵だ」

 

ルソー「お目覚めですか、クソ野郎」
谷口「はっはっは。相変わらず口が悪いな、キミは。朝ごはんを用意してくれたのかい?」

 

谷口「いつもいつも身の回りの世話を焼かして、すまないね。まあ、それがメイドロボであるキミの仕事なワケだけれど」
ルソー「御託はいいから、さっさと召し上がりやがれ谷口野郎」

 


~~~~~

 


谷口「いやあ、実にうまい。ルソーの焼くパンはいつも最高だよ。表面の黒いコゲが食欲をそそる香ばしさを教えてくれる」
谷口「それにこの期待を裏切らない苦味はどうだ。無味乾燥な食パンに、見事なまでの深い味わいアクセントを付け加えている」


谷口「どうやればこんなコゲパンが毎日毎日作れるのか。それが俺にはわからない。素晴らしいよ、このポンコツメカめ」
ルソー「お褒めいただき恐縮ですよコノヤロー」

 

谷口「ところでルソー。今日の俺のスケージュールはどうなっている?」
ルソー「今日のスケジュールは、午前中は血ノ池市の依頼人と喫茶、凡骨茶房で仕事の打ち合わせの後、針山町1丁目の鬼山さんと仕事状況の打ち合わせとなってます」

ルソー「午後は骨壷役場の出納課へ税の申告書を持っていくことになっています」
谷口「OK、ありがとう。じゃあ、早速用意をしようか」

 

 

 

谷口「ところでルソー。非常に些細なことで、まったくもって気にするほどのことでもないのだが、ひとつ俺の愚痴につきあってもらっても良いかな」
ルソー「イヤだ馬鹿野郎」

 

谷口「俺たち地獄の住人は皆、地上世界で生きていた頃になんらかの悪事を働いていた者たちだ」
谷口「そして再び地上世界へ生まれ変わるため、この世界で生活を送りつつ、もう二度と悪事に手を染めないためまっとうな生き方の訓練をしているんだよな」


ルソー「そうだ。地獄の住人たちの生前の記憶は地獄の門番である閻魔大王、泰山府君様がリセットされているから、自分がどんな悪事をしでかしたのかは覚えていないがな」

 

谷口「俺、昨夜変な夢を見たんだ。恐ろしいことに、その夢の中で俺は、女性用下着を喜々として頭にかぶったり、正面から堂々と銭湯の女湯に入ったりしているだよ」
ルソー「地獄市民の見本とも言うべき、清廉潔白なキミらしくもない下劣で下品な夢だね」

 

谷口「だろ? もしもあの夢が、俺の生前の罪だったとしたらならば。それはなんと恐ろしく下衆な人生だったのだろうかと、憂鬱になっていたのさ」
ルソー「気にするなよ、ブラザー。キミはそんな人間じゃないよ。それに仮にその夢がキミの生前の有り様だったとしても、今のキミは高潔な探偵、谷口なんだ。気にする必要はない」

ルソー「生きていた頃はみんな悪人だったんだ。ここに住んでいる連中は。しかし誰も生前のことなんか気にせず真面目に生きている。地獄とは、そういう世界なんだ」


谷口「そうだな。悪かったね、ルソー。変な話につきあわせてしまって」

ルソー「構わないさ。それより、スケジュールが迫っているぞ。早く着替えて出発するがいいクソヤロー」


谷口「相変わらず口の悪いメイドロボだぜ」

 

 

~~~~~

 

 

谷口「おや、誰かと思えば、藤原くんに中河くんじゃないか。久しぶりだな」
藤原「谷口くんじゃないか。お久しぶりだね」
中河「キミと会うのもいつぶりかな。電車に乗って、どこに行くんだい?」
谷口「仕事で血ノ池市までね」

 

藤原「ああ、そういえばまたあの界隈でテロリストが出たって話だからな」
中河「確か、生前の記憶を取り戻し、この地獄を人間の手によって支配しよう、なんて馬鹿げた口上をたれている狂気の集団だろ」


藤原「キミも大変だね。まあ、頑張って僕たちみんなの地獄を守っておくれよ」
谷口「ああ。閻魔大王の支配に楯突く愚か者たちを、早いところ根こそぎ滅ぼさなければ、この罪人たちの贖罪の場が冒されてしまいかねないからね」

 


中河「そういえば谷口くん。聞いたかい? 藤原くんたら、昨日変な夢を見たと言っているんだよ」
藤原「それはキミじゃないか、中河くん。女性物の下着をコレクションしてうすら笑っている夢なんて見て。キミは変態なんじゃないか?」
中河「何を言うんだい、藤原くん。キミだって電車の中で次々と女性のスカートに手を差し入れて痴漢行為をはたらく陰湿な夢を見たと言っていたじゃないか」

 

谷口「な、なんだって!? キ、キミたち、それは本当のことかい?」
中河「どうしたんだい、谷口くん。顔が真っ青だよ?」

 

谷口「実はね。俺も夕べ、君たちとまったく同じく、自分が卑猥な行為にふけって喜色を浮かべている夢を見たんだよ」
中河「……なんと。そろいもそろって、我ら仲良し三人組が同じタイミングで同じような夢を見るとは」
藤原「気にするなよ。ただの偶然だって。長く生きてりゃ、そんなこともあるさ」

 

 


老人「そこの三人。よく聞きなされ。それは紛れも無く、生前のおぬしたちの姿じゃよ」

 

谷口「ぬ!? そこのシルバーシートに座ってカクカク震えているご老体。もしかして、我々に話しかけられたのですか?」
老人「そうじゃ、そこの希望にあふれる若人たちよ」

 

老人「その夢こそ。まごうことなきお前たちの生前の記憶じゃ!」


藤原「な、なんだって!?」

 

中河「いくらご老人とはいえ、それ以上我らを愚弄すると許さないですぞ!」
谷口「そう。我らは、生前の記憶を取り戻したなどと寝ぼけたことを抜かして凶行に走るテロリストどもを殲滅するための鬼っ子ギルドの組織員なのだからね!」
老人「ほっほっほ。これはまた、怖いお役人さんたちじゃて」

 

老人「じゃが、お役人だろうが何だろうが、おぬしらが見た夢。それが生前の姿であることに違いはない」
中河「うぬぅ、まだ言うかこの老いぼれめ! この場でしょっぴいて留置場に放り込んでやっても良いだぞ!」
谷口「よさないか、中河。相手は老人だぞ」

 

老人「うっほっほっほ。老人とあなどることなかれ。どれどれ。そこまで疑われてしまっては致し方ない」

 

老人「よいか、お三方。わしの目を、よ~く見るんじゃぞ?」

 

 

~~~~~

 

 

谷口「な、なんだこの陶酔感は……? まるで自分の魂が頭上に吸い上げられて、時間を逆行していくような……」


藤原「頭が、ぼやけてくる……」

 

老人「さあ、思い出すんじゃ、若人たちよ。自らの過去の記憶を。そして甘酸っぱい青春のあの日を」

 

中河「うう……。頭が……」

 

谷口「う、うわあああああああああ!」

 


~~~~~

 


谷口「はあはあはあ!」
藤原「げほげほ!」


中河「俺たちは一体……」

老人「若人たちよ。思い出したか? 自分たちの生前の記憶を」

 

谷口「……なんで俺たち、こんな小汚い爺さんと見つめあっているんだ?」

 

藤原「さあ。なんだか頭がボーっとして、よく思い出せない」

 

老人「おや? 失敗じゃったかな?」

 

中河「はっ! 谷口氏、藤原氏! あそこな女子を見てみりゃりん! なんともかぐわしき鬼っ子だっちゃ!」
藤原「ふほおん! なな、なんというパンツ一丁! ここ、こんなOK牧場が存在してもよかとですか? よかとですか!?」

 

老人「お。催眠術によって生前の記憶が蘇ったようじゃな」

 

 

谷口「はあはあはあ」

 

谷口「はあはあはあはあ」

 

谷口「辛抱タクラマカン砂漠!!」

 

乗客A「きゃあ! なに!? いきなり変な三人連れが私のふとももに頬づりを!?」

 

谷口「もったいなや、もったいなや! このふともも様のすりすり具合ときたらもう!」
藤原「地獄の亡者もビックリマンな新事実でござるな! おほほんおほん! ありがたや、ありがたや!」

 

乗客B「いやああ! 変なラガーマンが私の下着に手をかける!!」

 

中河「よよ、よかんべさ? な? な? 1枚くらい、よかんべ!?」

 

老人「うむ! よくぞ目覚めた、若き勇者たちよ! この地獄の未来は、お前たち若い者の双肩にかかっておるのだ!」

乗客C「ひいいい! なによこのジジイ! 私のたわわなバストをテンポよく16ビートでアップ&ダウン&アップ&ダウン!」
老人「うっひょお! 若さあふれるパイパイは格別じゃて! むひひひひひ!」

 


車掌「こらあ! このテロリストどもめ! こんなところにまで現れやがったか!!」


老人「ふひゅん、そこな三人! 極楽浄土を味わいつくしたい気持ちは分かるが、この場はひとまず逃げるんじゃ。わしに続け!!」

 

乗客C「このクソジジイ! 私のブラジャー返せえ!」

 

 

~~~~~

 

 

藤原「はあはあはあ!」
中河「ひいひい、ぜえぜえ」

老人「ふい~。ここまで逃げれば大丈夫」


谷口「なんてことだ。俺たちは今まで、ずっと閻魔大王の洗脳を受け、知らず知らずのうちに地獄でごくごく平穏なピープル人生を送らされていたなんて」
藤原「げに恐ろしきは地獄!! 俺たちが正気を取り戻せたのも、あなたのおかげです、エロ老人」

 

老人「ひょほほほほ。礼にはおよばぬ。わしはただ、おぬしらのように生前の記憶が戻りかけている者たちにちょいと力を貸してやり、記憶を取り戻す手助けをしているだけの酔狂な因業ジジイじゃて」

 

谷口「あなたに出会わなければ、俺たちはすべからくこの地獄で、ベタベタ人生を送らされてつまらない画一人間に改造されてしまうところでした。ご老体は本当に恩人です。是非、お名前を」

老人「わしの名前か。名などとうの昔に捨ててしまったが……。それでもなおわしの名を知りたいというのなら、そうじゃな。鶴屋とでも呼んでおくれ」
鶴屋「自分の子孫あてに、あてどもない宝の地図を残したりしてみんなが慌てふためく様を想像しながらほくそ笑む。生前はそんなことが生き甲斐だったイタヅラ爺じゃよ」

 


中河「ははあ。ここのところ世間を騒がせている、生前の記憶を取り戻したというテロリスト集団の一味ですな、あなた様は」
鶴屋「まあ、そんなところじゃ。テロリスト集団と呼ばれるのも心外じゃが、その集団を旗揚げしたのは紛れも無くこのわしじゃ」

 

藤原「なんと! 御大はテロリストの親玉であらせられたか! ありがたや、ありがたや。何がありがたいか分からないが、とりあえず拝んでおこう」

谷口「御大! お願いがございます! どうか我々も、テロリストの末席に加えてください! このまま地獄の平穏ベタベタ世界の歯車として磨耗して消えていくなんて、あまりにも酷なこと」
谷口「是非とも革命の志士の一人として、断固戦い抜き、自らの未来を切り開きたく存じます!」

鶴屋「ふむふむ。心意気や天晴れ。朝一の股間の見事なチョモランマのごとく聳え立つ勇壮な志よ」


鶴屋「だがしかし。志だけで我らが革命の一員に加われるわけではないぞ。一つ条件がある」
谷口「条件、とは?」

 


鶴屋「古来より英雄は、色を好むという。つまり、スケベなやつほど英雄としての素質に恵まれているということ」


鶴屋「我らが望む同志は、英雄のみ! 中途半端なチンカスなどいらん! さあ、お前たちの色欲ストーリーをプリーズテルミー!!」


藤原「ふっ。それならば、俺たち三銃士のもっとも得意とするところ。とくと聞くが良い」

 

藤原「俺の得意とするのは痴漢! 特に電車内でのヒップタッチ! 俺は誰にも気づかれることなく、車輌内全ての女性の生ヒップをさわさわできるほどの痴漢の名手よ!」

 

中河「俺の得意分野は女性用下着だ! もう何千枚、何万枚の下着を盗んできたかも知れないぜ。今じゃ、ニオイをかいだだけで持ち主の顔や外見、性格までもが百発百中で当てられるほどの下着ソムリエの腕を獲得しているのだ!}

 

谷口「俺は特に得意分野とよべるものはないが、全てのジャンルにおいて天才的なまでの素質を秘めていると言っても過言ではないオールマイティーな力を持っている」
谷口「そんな俺のことを人は、下衆道を極めしKing of 下衆、下衆殿様の称号であがめ称えているのだ!!」

 

 

鶴屋「ふほほ。なかなか良い素材がそろっておるわ。それぞれが、十分に英雄になりえる素質をもっておる」
鶴屋「だがしかし! 一歩たらぬ! たとえ英雄にはなりえたとしても、このわしには一歩およばぬな!」

 

谷口「なにぃ!? ちみっ子たちから下衆殿様の名で呼ばれ親しまれているこの俺を、まだ発展途上の下衆ピープルと呼ばわるか!?」

 

鶴屋「その通りじゃ。おぬしらは、真のエロティカを知りえてない。それを獲得できねば、真の下衆道衆にはなれぬな!」

谷口「なんだって!? 老師、それは、いったいそれは何なのですか? 真のエロティカとは、一体!?」

鶴屋「それほどまでに聞きたいか、小僧どもよ!」

 

中河「うおおぉっす!」


藤原「お願いします! この腐りきった地獄を世直しするためなら、俺たちはどんなことでもやり遂げる所存であります!」

 

鶴屋「よし! では特別にお前らヒヨコのひよっこ共に、このわしが直々に下衆道のなんたるかをマウストゥマウスで教えてやろう!」

 

藤原「口づけは勘弁してください」

 

 

~~~~~

 

 

鶴屋「よいかこわっぱ共。真のエロティカとはな」

 

谷口「真のエロティカとは!?」

 

鶴屋「マタニティーじゃよ」

 

藤原「ま、またにてぃー?」
中河「マタニティーって、ご懐妊のことッスか?」

 

鶴屋「左様左様。孕ミックスじゃよ」
藤原「いやあ。それはどうスかねえ。だってアレでしょう。ご懐妊ってことは、要するに旦那にあたる男のお手つきってことでしょ。それは萎えるっしょ」


中河「そうそう。人妻というジャンルもあるけれど、ご懐妊はねえ。私はレッドゾーンですよって自己申告してるようなもんでしょ。扶養親族を誇示してるようなもんッスよ」

鶴屋「だほま。だからお前らはまだまだヒヨコちゃんだと言うのじゃ」

 

 

鶴屋「たとえば。そこの筋肉ガイ」
中河「拙僧でございまするか?」
鶴屋「そうじゃ。おぬしは女性用下着に命をかけているのだと言ったな」

 

鶴屋「お前の目の前に2枚のパンティがあったとしよう。1枚は美少女が着用した染みつきパンパン。もう1枚は買ってきたばかりの新品ほやほやのおパンティ」

鶴屋「どちらが欲しいね?」


中河「ふはっ。なにを問うかと思えば。そんなこと、尋ねずとも分かることではありませんか、老師。着用済みでなくて、なんのパンティでありましょうや」

 

鶴屋「そこの目つきの悪いゴロツキボーイ」
藤原「俺っスか?」
鶴屋「そうじゃ。お前じゃ。お前さんは、痴漢が生きがいと言ったな」

 

鶴屋「では問おう。人体を完璧に再現したやわらかボディのマネキンの尻と、むちむちプリンの美女の尻。どちらを触りたいね?」


藤原「ふはは。愚問だな。たとえ精巧な出来とはいえ、美女の生尻を前にして一体誰がマネキンの尻などに手を出す?」

 

鶴屋「そうであろうそうであろう。さもありなん。おぬしらのその答えが、まさに自然なのじゃ」

 

鶴屋「人は皆、誰の物でもない更地よりも、既に誰かの所有物となっている物にこそ価値を見出し、欲するものなのだ」
鶴屋「美女が所有していたパンティしかり、人間の魂がこもった尻しかり」

 

谷口「それは言えるかもしれないな。特に今のご時勢は、漫画やゲームなどの原作よりも同人など二次製作物の方が人気が出たりすることもある」
藤原「元々の物の価値が高ければ高いほど、その産物には同等の価値が見出される傾向があるからな」

 

 

鶴屋「では再びお前らに問おう」

 

鶴屋「誰の物でもない未通娘と、既に誰かの物になってるマタニティー、さあどっち!?」

 

中河「ぬはっ!? な、なんかそう言われるとマタニティーもいいかもって気が……」


藤原「た、確かに……。支配欲というか、征服意欲が刺激されて変な気分……」

 

谷口「だ、騙されるなお前たち! マタニティーは確かにひとつのジャンルとして確固たる地位を占めている。それは認めよう。だがそこに萌はあるのか!?」
中河「う……。そ、そうだ。あの幼い長門さんの上目遣いの表情……。男として守ってあげたくなってマイッチングマチ子先生な姿……ううぅぅぅ! 萌~~~!!}

 

鶴屋「谷口よ、ならば再び問おう! 萌とはなんぞや!?」

 

谷口「くっ、さすが老師。奥の深いクエッションだぜ。萌と一言に言ってもその意味は海より広く山より高い。言うなれば、魅力を感じる、好意を抱く際に生ずる興奮とでも表現しようか」
谷口「しかし魅力的といってもシンプルで格好のよいものに対しては萌とは言わない。主に、かわいらしく、見ていて守ってあげたくなるようなものと言おうか」
谷口「だがそこにユニセックスは存在しない。ただ純粋に自分のストライクゾーンに存在する好感情を刺激する、陶酔感を与えてくれる。萌とはそういうもののことだ」

 

 

鶴屋「ふふ。見ていて守ってあげたくなる、か。なんと不安定な定義よのう」

 

鶴屋「しからば! 頭に思い描いてみるがよい。想像してごらん。イメージするのだ」

 

 

鶴屋「独身のマタニティー」

 

谷口「ああ! なんという母子家庭!」


藤原「そ、それはヤバい!!」

 

鶴屋「○学生のマタニティー」

 

谷口「ひいぃ! 伏字必至の危険地帯!」


中河「や、やめて! それ以上攻められたら、この興奮を抑えきれなくなってしまう……」

 

鶴屋「配偶者に先立たれたうら若き幼な妻のマタニティー!」

 

谷口「ぐはぁ!!」

 

谷口「はあはあはあ! な、なんだ……?」

 

谷口「こ、この胸の奥からこみあげてくる熱い思い……!」

 

谷口「まさか、萌えている!? この俺が、萌えさせられているというのか!?」

 

鶴屋「借金のカタに20歳未満おことわりな店に売り飛ばされるマタニティー!!」

 

藤原「いやあああ! やめて、その子を売らないでぇ!!」


中河「俺が、俺が一生守ってやる! マタニティーちゃん、早く逃げて! こっちへくるんだ!」

 

 

谷口「ま、負けた……。完敗だ………よもや、俺たち三銃士が手も足も出ずにやられるなんて……」


藤原「はあはあはあ……あ、あんたこそ、本物の老師だ。この世のメシアだ」

 

鶴屋「分かれば良いのだ。分かれば、な」

鶴屋「さあ、行くぞ。若人たちよ。この地獄を、このストイックに支配されし悲しき世界を解き放つため」

 

中河「うおおぉぉぉ! 俺は老師について行くぜ! テロリストだってチュパチャプスだってなんでもやってやるぜ!」
藤原「俺もだ! こんな素晴らしい人には、もう二度とめぐり合えないにちがいない!」

谷口「感服いたしました。鶴屋老師、あなたほどの御仁だ。きっと何か人々から敬われるような称号をお持ちなのでしょう。是非、教えてたもれプリーズ!」

 

鶴屋「ふっ。何故そのようなことを問う」

 

谷口「後学のためでゲス!」

 

鶴屋「いいだろう。よく聞くがよい」

 

鶴屋「我が名は、鬼」

谷口「鬼?」

 

鶴屋「そう。鬼畜の鶴屋とはわしのことよ!」

 

谷口「鬼畜道万歳!」

 

 

 

 ~鬼っ子ギルド基地内~

 

 

鬼っ子「隊長! 本日午前10時、血ノ池市へ向かう列車の中にて鶴屋老人が現れ、テロを敢行した後、走行中の列車より飛び降り逃亡という報告が入りました!」

 

朝倉「またあの頭のボケた老爺が出たのね。でも小規模なテロなら放っておきなさい。もうすぐ奴らの本拠地が割り出せるのだから、小事にこだわる必要はないわ」

 

鬼っ子「はい……それが、その……なんと申しますか」
朝倉「どうしたの? 報告するべきことがあるなら、言いなさい」

 

鬼っ子「……その列車テロの際、鶴屋老人と接触した人物が三名いることが調べで分かりました」
朝倉「また生前の記憶を取り戻した、なんて暗示にかかったかわいそうな亡者が出たのね。おとなしく地獄の生活に従事していれば、現世への明るい最誕が臨めるというのに」

鬼っ子「その三名が、我ら地獄の治安を担う鬼っ子ギルドの構成員なのです」


朝倉「なんですって!?」

 

朝倉「そう。とうとうあのボケ老人も、我々ギルドに本格的に敵対行動をとるようになってきたというわけね」

 

朝倉「いいわ。そのケンカ、買ってあげるわ」

 

朝倉「もうすぐよ。もうすぐ、やつらの巣が判明する。そしたら、我らギルドが総力を挙げて乗り込んで、全力でぶっ潰してあげるわ」

 

朝倉「あははははは! エッチなのはいけないことだと思います!」

 


 ~つづく~


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