涼宮ハルヒは俺のことをどう思っているのだろうか?
古泉は俺がハルヒに選ばれたとか言っていたが、俺は宇宙人でも未来人でも超能力者でもないどこにでもいるただの男子高校生にすぎない。そんな俺が選ばれた?…なぜだ?

どうしてハルヒが俺を選ぶというのだ?
「……………」
真っ白な天井を眺めていても答えは出て来ない。
「……寝るか」
俺は考えるのをやめて電気を消した。

 

夏の暑さもひと段落し、この忌々しい坂道もようやく汗をかかずに昇り切れるようになった頃、ハルヒのことで毎日のように頭を悩ませている俺に新たな頭痛の原因となる出

来事が起きた。

いつものように教室に入りいつものようにハルヒに話しかける。
あいかわらずハルヒは俺の後ろの席にいる。というか、なぜ何度席替えをしてもハルヒが俺の後ろの席にいるんだ?
「よう。窓の外に宇宙人でもいたか?」
「んなわけないでしょ、バカ!」
バカと言われるのももう慣れた。
それにしても今日は機嫌が悪いようだ。
「っほんと毎日暇で死にそうよ。そろそろ怪奇現象のひとつやふたつ起こってもいいころなのに。キョン、SOS団のメンバーなら面白そうな事見つけて来なさいよ。あんたは頑

張りが足りないのよ頑張りが」
どう頑張れというのだ?そもそも頑張ればハルヒの望むものを見つけてこれるのか?まあ頑張る気なんてないのだが…。俺は適当に相槌を打って前を向いた。

この頃になると放課後には体が勝手に部室に向かうようになっていた。
今日は用事があって帰らなければならんのだがハルヒが許すだろうか…。許さなくとも帰ろうと決意し部室へ向かう。部室入口の古くなった扉を開けると部室の備品と化した

長門が読書をしながら座っているだけ。毎日の授業の疲れを朝比奈さんのメイド姿で癒すことが習慣になっていた俺には残念なことだった。
「朝比奈さんは?」
「来ない」
理由を聞こうとも思ったがやめておこう。
ハルヒはまだ来ていないようだし、古泉も機関がどうのこうの言っていたし、俺は用事がある、今日の活動は無しだろう。長門にそう告げて帰ろうとしたら
「待って…」
「話しておきたいことがある」
「今じゃないとだめか?はやく帰らないとならんのだが」
「すぐ済む」
「…そうか。なら早めにたのむ」
俺は鞄を手に持ったままパイプ椅子に座った。

長門は読んでいた本のページを開いたまま顔だけをこちらに向けてじっと俺の目を見ている。
話があるんじゃないのか、長門。
「対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースとして作られたわたしに本来備わっていない感情に似た感覚がうまれた。このことを情報統合思念体は対有機

生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースの進化ととらえている」
「長門有希という個体はあなたに情報統合思念体が持たない新しい未知の感覚を感じている」
いきなり理解に苦しみそうな話が出てきたようだ。もっとわかりやすく話してくれ。
「説明できる感覚ではない。が、あなたにわかりやすく言語化すると『好き』」
…ん?今何と言った?俺の聞き間違いでなければ『好き』と言ったように聞こえたが……まさかな。
「長門、よく聞き取れなかった。もう一度言ってくれ」
「好き」
どうやら聞き間違いではなかったようだ。こんなに無表情な顔で好きなんて言える人間がいるのか?いや、前言撤回。こいつは人間ではなかった。
「本気で…言ってるんだよな」
肯定
「ドッキリじゃないよな?ほら、ハルヒに言わされてるとか」
否定
「………そうか」
いつも何を考えているのか分からない奴だとは思っていたが、よもやこんなことを言われるなんて夢にも思わなかった。
「好きと言われても…おまえはその情報ナントカとかゆう奴につくられたいわば宇宙人なんだろ」
「肉体的には地球上の人間とそう変わらない」
手首だけでグローブを弾き飛ばす程の剛速球を投げたり、無数の鉄の槍に貫かれても死なない体のどこが変わらんのか。
「ハルヒの観察はどうするんだ?おまえの目的はそれだろ」
「今までどおり。影響はない」
それ以上何を話せばいいのかわからず俺は沈黙していると
「だから………だからどうしてほしいということはない。ただ知っていてほしかっただけ」
知っていてほしかっただけ、か。長門らしいというかなんというか…。
「………」
「………」
沈黙がこれほど苦痛に感じることが他にはあるだろうか。本当ならこんなとき答えを返せばいいのだろうが…なんせ相手は長門だ。
「………」
「………」
「時間」
「ん?あぁ、そうか、すまん」
俺は長門の言葉で用事に遅れそうなことに気づき、結局そのまま帰ってしまった。
……情けない。

頼まれた用事を済ましている間も長門の言葉が頭から離れない。こういうときは告白をどう断ろうか考えたり、これからのラブラブな生活を思い浮かべて気色悪いニヤニヤ顔

になったりするのだろうが今の俺はそのどちらにもあてはまらない。
長門が何を望んでいて、俺はどうすればいいのか。何度も頭の中を駆け巡る疑問に俺は答えを出せずにいた。

それは家に帰ってからも同じで俺は何もない真っ白な天井を眺めていた。
「キョンく~んどうしたの?」
「ぬぉっ!急に目の前に現れるんじゃない!」
「え~?ちゃんとノックしたよー。何か考え事?」
「お前には関係ない。用がないなら出て行け」
「はさみ借りてもいい?」
「かまわんが借りたものはちゃんと返すんだぞ」
「テヘッ☆」
………デジャブ。


今日もつまらん授業を終えて放課後になる。
とうぜん俺はいつものように部室へ向かう。…いつもより足が重い。
ガチャ
部室入口の扉を開ければやはり長門が読書をしている。長門はこちらを気にする様子もなく読書を続けている。
「あっ、今お茶入れますね」
朝比奈さんは俺に気づくとパタパタとお茶くみセットの方に走って行った。今日も朝比奈さんは眩いばかりのメイド姿を披露している。朝比奈さん、あなたを見るだけで俺は

無限の癒しを感じることができます。あなたの笑顔は俺のどんな悩みごとも吹き飛ばしてくれます。
「はい、どうぞ。熱いから気を付けてくださいね」
朝比奈さんのお茶で現実世界に帰ってくると昨日の長門の言葉を思い出した。さすがに朝比奈さんの前で昨日のことを長門に聞くわけにもいかず、(いや、たとえ長門と二人

きりだったとしても俺は何を聞けばいいか分からなかっただろう)朝比奈さんといつものように話をしていた。
ガチャリ
「おや、涼宮さんはまだのようですね」
古泉は一通り部室内を見渡すと前髪をちょいと指で弾いて俺の向かい側のいすに座った。
と同時に部室入口の扉が勢いよく開いた。
バン!
「みんなちゃんとそろってる~!」
ハルヒが満面の笑みで入ってきた。こいつのこの笑顔には見覚えがある。なにか余計なものを見つけてきたときの笑顔だ。
「市内で不審人物の目撃が多発!多発よ多発!これは何かあるに違いないわ」
ただの不審人物だろ?何を騒ぐことがある?
「キョン、あんたわかってないわね。不審人物が何もないわけないでしょ!」
「次の土曜日!つまり明日!朝八時に北口駅前に集合ね!遅れないように。遅れたら死刑だから!」
まて、八時だと!いつもより早いじゃないか。
「あたりまえでしょ!探索する範囲が広いんだから」
こりゃ死刑確定だな、なんて思いながらハルヒの明日についての説明を聞いた。

今回もいつものファミレスで市内探索前の会議を開いている。もちろん俺のおごりで。どうして俺のおごりなのかは説明しなくてもわかると思う。
「今日の探索についてはこんなとこ。じゃあふたつに別れるわよ」
そう言うとハルヒは備え付けのつまようじの先端を赤く塗り、頭だけが見えるように五本のつまようじを差し出した。俺たちはそのつまようじを一本ずつ取っていく。
俺の取ったつまようじは先端が赤く塗られていた。
さて、今回行動を共にするのは…
ハルヒのつまようじの先端は赤く塗られてはいない。どうやらこいつにあちこち引きずり回される心配はなくなったようだ。
朝比奈さんのつまようじの先端も赤く塗られてはいない。朝比奈さんと楽しいひと時を過ごすのはおあずけか、実に残念だ。
古泉のつまようじも二人と同じ。男二人で仲良く市内探索なんて気持ち悪いのはごめんだ。
…ん?ハルヒも朝比奈さんも古泉も違うとなると…
「じゃああたしたちは北側ね。キョンと有希は南側をお願い。キョン!ちゃんとやるのよ!なまけたら承知しないんだから!」

俺と長門はハルヒたちと駅前で別れてとりあえず歩き出したものの、市内探索をする気なんて毛頭なく、目的もないままさ迷い歩いているだけであった。
いつもは何とも思わない長門の沈黙ぶりが苦しく感じる。ここは何か話題を振るべきか?
「なな、ながと、おまえいつもせいふくだよなー」
「………」
「ながとのしふくすがたもみてみたいなーなんて…ははは」
「………」
「………」
「………」
「とりあえず図書館にでも行くか?」
「…(コクリ)」

初めての市内探索の時に長門と行った図書館に今回も行くことにした。
図書館に入るや否や、長門はふらふらと本棚の方に向かって行った。
俺は館内を見渡し、空いているソファーの席を見つけてそこに座り込んだ。
お気に入りの本を見つけたのか、さっきまで本棚の周辺をふらふらしていた長門は一冊の本を手に俺の隣にちょこんと座った。それは長門らしからぬ行動に思えた。
前回この図書館に来た時は俺のことなんかおかまいなしに本棚の前から動こうとしなかったのに、今は自分から俺の横に来て本を読んでいる。

初めて会った時の長門と現在の長門は明らかに違う。古泉が言い出したことだが俺もその意見には賛成だ。長門のちょっとした仕草や態度が微細に変化している。勘違いなん

かではない。顔もメガネっ娘の頃が谷口の言うAマイナーなら今はAプラスかAAぐらいはあげてもいいと思うのは俺だけか?長門は世間一般の目から見ればいわゆる美少女

ってやつなわけで、普通の奴ならその美少女からの告白を断るなんてことはしないだろう。しかし、俺は長門がただの美少女じゃぁないことを知ってしまっている。証拠も存

分に見せつけられた。長門だけじゃない。幸か不幸か、あの日涼宮ハルヒなんていう地雷を踏んでしまったがために、活動目的もはっきりしないSOS団なんてものに入れら

れ、毎日ハルヒにこき使われ、普通じゃない奴らと活動し、おまけに宇宙人に愛の告白を受けるはめになった。

頭の中で今までのSOS団活動記録を読み返していると携帯電話がふるえているのに気がついた。―――古泉から?
「今どの辺ですか?そろそろ戻ってきた方がよろしいかと思いますよ。遅れるとまた何があるか…、今の涼宮さんは機嫌がよろしくないようですし」
古泉が気を利かせて電話してきたようだ。無駄に気の利くところが腹が立つ。しかしまあ、遅れてハルヒにまたおごりなんて言われるのもごめんなのでそろそろ戻るとしよう


長門の読んでいた本は借りてやり、図書館をあとにした。

駅に向かって歩き、もうすぐ駅前のショッピングモールが見えるあたりに来た時
「そこに居るのはキョンくんじゃないかいっ!おやおやデートかな?隅に置けないね~」
「こっ、これはハルヒ主催の市内探索でして、たまたま…その…あえsrdtふじこkp@;」
「はっはっはっ、わかってるよっ!おおっとそうだっ、これみくるに渡しといてくれないかいっ!みくるのやつ忘れて行ったみたいでさぁ~」
「ノート…ですか?」
「もちろんっ中は見ちゃダメにょろよ!」
「はあ…わかりました」
「じゃあよろしくたのむよっ!にょろ~ん」
相変わらず元気のいい人だ…。


駅に戻ると今回の探索結果に満足のいかないハルヒがなにやら言っていたが、解散することとなった。帰り際に朝比奈さんに鶴屋さんからの預かりものを渡した。朝比奈さん

は中を見なかったか何度も聞いてきて、俺はそのたびに見ていないと答えた。実際、本当に見ていないし、見てはいけないものだとわかっていた。なぜならそれは朝比奈さん

の日記であったからだ。………ほんとは見たかった。

 


今日はいつもより寒い。くもりだってこともあるのだろうが、昨日との気温の差で調子が悪くなりそうだ。
こんな日でも授業はあるし、SOS団の活動がなくなるわけでもない。いつものように部室に行き、朝比奈さんの入れてくれたお茶を飲み、古泉とボードゲームをして、ハル

ヒのわがままにつきあい、いつものように一日が終わっていく。…予定だったのに今日は古泉に誘われて緑地公園を散歩している。
「~、というわけですよ」
「そうか。で、そんな話のために俺を公園散策に誘ったのか?」
「そうですね、本題に入りましょうか。ふふっ」
なにが ふふっ だ、気色悪い。
「いや~驚きましたよ、よもや長門さんがあなたに愛の告白をしていようとは」
「長門さんでも人を好きになることがあるのですね」
「!!」
どうしておまえが知っている。おまえの機関は長門まで監視しているのか?
「いえいえ、長門さんの監視はしていません。『できない』と言ったほうが正しいでしょうか。そもそも情報コントロールにおいて我々機関は長門さんの足元にもおよびませ

ん」
「だったらどうして知っているんだ」
「長門さんから相談されたんです。あなたの行動がデータにあったのと違う。何か間違いがあったのか、と。長門さんにも女の子らしいところがあるのですね」
「で、おまえはなんて答えたんだ?」
「ふふっ。『あなたの予想と違うのならその通りにしてしまえばいい。情報操作で相手の気持ちまでコントロールしてしまえばいかがですか』とね」
ナ、ナンダッテー!!!!まさか長門のことが頭から離れないのはそういうことなのか!!!!
「冗談ですよ。そのような助言はしていませんよ。したところで長門さんが実行するとも思えませんし。」
ふふっと笑う顔が余計にムカつく
「ただ、僕からひとつだけ言っておきたいことがあります。あなたの行動が涼宮さんの感情にどう影響するか、それを忘れないでください」

 


長門とのことがあったからって急に俺のお昼の時間が変わるわけもなく、いつものようにこうして谷口と国木田といっしょに弁当を食べているわけだが。どうして谷口の話は

こう面白くないのだろうか。
「ありゃ完全にデキてるな」
「へぇ~」
「どう思うキョン?」
どうも思わん。
「なんだその反応。つれねー奴だなぁ」
「…そういや昨日、長門を見かけたんだが」
「ぶふぉっ!」
「どうしたキョン?」
「いや、なんでもない。続けてくれ」
「それが朝比奈さんもいっしょでよ、朝比奈さんは楽しそうに笑ってたんだが長門のやついつもの無表情でさぁ」
「へぇ~」
「で、何してたと思う?キョン」
さあな
「なんだよキョン、とうとう涼宮に考えるのも禁止されたか?」
「じゃあ何してたんだよ」
「しらん」

 

さて、恒例行事となったこの市内探索が今日も始まろうとしている。ただいつもと違うのは長門が私服だということだ。俺が前回あんなことを言ったからか?
「ほら、キョン!くじを引きなさい!っほんとに、ぼーっとしてる暇なんてないのよ!」
どうせ何の結果も得られずに終わるんだから適当にやればいいだろ。
「何言ってるの!!そんなだから何も見つけられないんでしょ!」
はいはい、引けばいいんだろ引けば。

くじ引きの結果俺は朝比奈さんと二人きりで散歩することとなった。このときばかりは市内探索を毎週やってもいいかという気持ちになる。
「大丈夫でしょうか、ゆっくりお散歩なんかしていて。涼宮さんに怒られないでしょうか?」
あんな奴にバレるわけがありませんよ。それにバレたとしても適当な言い訳つけときゃいいんですよ。
「ところで、長門のあの私服、朝比奈さんが選んだんじゃないですか?」
「へっ、あっ、わかります?あの、へん…じゃなかったでしょうか」
いえいえ、とてもよかったですよ。むしろ朝比奈さんに着てほしいくらい。
「よかった…」
「ところで、朝比奈さん長門のこと苦手だったんじゃないんですか?」
「はい…最初は不安だったんですけど、いつもの長門さんじゃないみたいで。いろんなお店をまわっているうちに大丈夫になってきて。ほら、服を選ぶのってすごく楽しいじ

ゃないですか。それに、長門さんの私服、とってもかわいいんですよ」

 

このときから、いや、本当はもっと前から、俺は長門に違和感を感じていた。


またいつものように一週間が始まり、放課後になると俺は部室に行く。
今日は長門以外まだ来ていないようだ。自分でお茶でも入れようかと思ったが、朝比奈さんの入れたお茶の方が何倍もおいしいからここは我慢しておこう。
長門の方を見るといつものようにSFだか哲学だかわけのわからん分厚い本を………読んでない!?
よく見ると日に日に増えていく部室の本が減っているような気がする。
「長門、夏休み前に頼んだアレ、もうできたか?」
「………まだ」
「…そうか」
いままで溜まっていた長門への違和感が爆発した瞬間だった。
「ところで長門、俺が頼んだアレってなんだ?おまえに頼みごとをした覚えなんてないんだが」
「………」
「おまえ……誰だ?」
「うふっ…バレちゃったか」
世界がグニャっと歪んだ。今まで部室にいたはずなのにいつの間にかコンクリートの壁だけになっている。
まて!この部屋には見覚えがあるぞ!
次の瞬間、長門が足もとが光りだしその光が見る見るうちに長門を飲み込んでいった。
「どうして…どうしてお前がここにいるんだよ!!」
そこに立っていたのはいるはずのない人物………朝倉涼子だった。
「ああ、勘違いしないで、私はあなたの知ってる朝倉涼子じゃないわ。みての通り私には自分の姿を他人の姿に再構築する力がある。今はあなたに分かりやすいように朝倉涼

子の姿をしているだけ」
なぜだ…なんのために
「ふふ、『強進派は私だけじゃない』って朝倉涼子が言ったはずよ」
「あなたを涼宮ハルヒから遠ざけて、涼宮ハルヒの反応を見ようと思ったけど…失敗ね」
またハルヒか。でも何のために長門に……それに本物の長門はどこだ?
「長門さんなら異空間に閉じ込めているわ。朝倉涼子のときみたいに邪魔されると困るもの。それにあなたや涼宮ハルヒと行動を共にしている長門さんになれば行動もしやす

いし。とにかく、邪魔ものの長門有希を消し、その長門有希になりかわるのが一番合理的だったってわけ」
どおりで最近の長門の行動がおかしかったわけだ!俺たちが長門だと思っていたやつは偽物だったんだからな!
「でもそれももう終わり。あなたに気づかれた時点で作戦は失敗。空間閉鎖の力も弱まって長門さんも出てきたみたいだし」
いつからそこにいたのか…気がつくと後ろに長門が立っていた。
「情報連結解除、開始」
長門がそう言うと、あの日見たのと全く同じように朝倉涼子の…いや、朝倉涼子の姿をした奴の身体が消えていった。と同時に周りの様子も元の部室に戻っていた。

とすん、と軽い音がして、俺はそっちへ首をねじ曲げ、長門が倒れているのを発見して慌てて駆け寄った。
「おい!長門、しっかりしろ」
「処理能力を閉鎖空間からの脱出と情報操作で使いすぎた。動くまでに少し時間が必要」
「そうか、ならしばらくこうしてるか」
「WAWAWAわっすれーもの」
ガサツに戸をあけて誰かが入ってきた。
「うおっ!!すまん、ごゆっくり!!」
またおまえか…

 

毎度のことだが俺の身にどんなことが起ころうともハルヒはいつもと変わらない。なにが起きていたのか知らないのだから当然なのだが。
古泉にはあの後一部始終を話した。話を聞いたあとに何やらしゃべっていたようだがそんなもん覚えていない。
朝比奈さんにはしばらく話す機会がなく、市内探索に制服で来た長門を見て悲しそうな表情を浮かべていた。
長門はいつもと変わらず部室で分厚い本を読んでいる。


いつも長門に助けられてばかりだからな、たまには長門のお願いでも聞いてやろうか。
そんなことを考えながら今日も俺は部室へと向かう。


ちなみに、谷口にあの日のことを問い詰められたのは言うまでもない。


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