谷口「酸いも甘いも涅槃まで。暑さ寒さもムハンマド」

 

谷口「悲しい恋の結末は、あなたの涙のアメフラシ。どうも、谷口です」

 

阪中「あ、谷口くんなのね」
谷口「やあ、スイートハニー。こんなところで出逢うなんて、奇遇だね」
阪中「谷口くんも観にきてたんだ。女子プロレスの興行」
谷口「いやっはっはっは。実は意外にも、俺は女子プロレスが大好きなんだ」
阪中「意外でもなんでもないのね」

 

谷口「鍛え抜かれた肉体を駆使して、生でくんづほぐれつする女性たち」
谷口「サブミッションって素晴らしい」
阪中「ものすごく真っ正直な意見なのね」

 

 

鶴屋「あ! この谷口野郎、また来てた! 警備員さん、とっととつまみ出してちょうだいっ!」


警備員「おとなしくしたまえ、おとなしくしたまえよキミ!」


谷口「ちくしょう、離せ、離せよこの短小野郎!」


鶴屋「鶴屋家が取り仕切る興行でおかしなマネはさせないっさ!」

阪中「あの、彼は何か悪いことを?……だいたい想像はつくけれど」
谷口「俺はただのタニマチだ! 谷口だけに、タニマチ。なんつって! HUHIHIwww」

 


鶴屋「プロレスの興行って、メインとかセミファイナルとか、上の方の試合でスポンサーが勝った方の選手に景品を出したりするあるでしょ?」
阪中「ええ。缶コーヒー1年分とか、お米何kgとか」


阪中「作者が2年前、親知らずを抜いて医者に安静にしなさいって言われてたにも関わらず雨の降る中バイクで愛媛までプロレスを観に行った時は、地元でとれた野菜がダンボール詰めで積まれていたのね。ちょっと羨ましかったらしいのね」

鶴屋「そういうノリで、あの下衆男はたんぽん1年分を景品で出そうとしてたの」
鶴屋「その次はレディースコミック1年分を出そうとしたの」
鶴屋「著しく風紀を乱すとしてあいつを出禁にしたのさ」
阪中「……レディースコミックの1年分の基準が分からないのね」

 


谷口「くっそう、離せよコノ! ティンティン野郎! 俺が持ってきたコンドーム1年分あげるから!」


警備員「おとなしくしたまえ、おとなしくしたまえよキミ!」

 

 

~~~~~

 

 

谷口「ということがあったのだよ! どう思うよマイフレンズ&ブラザーズ!? ひどい話ではないかね!」
キョン「だから、いちいち文芸部室に来るなって」


谷口「どうせやることもなくて暇なだけの集団なのだろう! なら谷口さんの愚痴くらい聞いてやれよ男子ぃ女子ぃ!」
ハルヒ「暇なのはあんたでしょう。家に帰ってvipにでも駄スレ立てて愚痴ってなさいよ」
谷口「立てたけど2getすらされずに落ちたんだよ! どうしてくれる!」

 

谷口「どうしてくれる!? え!? どうしてくれる!?」
みくる「きゃあ! さりげなくエプロンを外そうとしないでください!」

 

ハルヒ「キョン、古泉くん、この牛乳をふいた後の雑巾みたいなニオイのする下衆人間を窓から放り出して!」
キョン「毎度のことながら、それに関しては全面的にハルヒと同意見だ」
古泉「よいしょっと」
谷口「ヴェノア」

 

 

~~~~~

 

 

谷口「ということがあったのだよ! どう思うよマイフレンズ&シスターズ!? ひどい話ではないかね!」
阪中「百歩譲って谷口くんが愚痴りたい気持ちは分かったとしても、あなたが何故私の部屋のタンスを漁っているのかが分からないのね」
谷口「これは、あれだよ。あれ。スキンシップ。衣服を交換しあえばお互いの理解も深まるであろうという、そういう心の温ま

る交流を描いたストーリー」
谷口「クロス (服) をクロス (交換) するという22世紀のコラボ的アポイントメントだよ。とても前衛的であろうよ。略して栗と栗鼠」

 

阪中「ルソー、やっちゃうのね」

 

 ルソー の かみつく こうげき !
 たにぐち に 150 の ダメージ!

 

谷口「キャインキャイン!」

 

谷口「はあはあはあ」


谷口「で、できれば阪中に噛んでもらいたいはあはあはあ」

 

 

~~~~~

 

 

谷口「はあ……」
谷口「結局、誰も俺の言うことなんて聞いてくれないんだ……」
谷口「孤独だなあ」

 

谷口「今日もあの夕日がビル群のむこうにある地平線へ沈んで、一日が終わっていくんだ」
谷口「今日の収穫といえば、阪中のパンテイが3枚きり」

 

谷口「これはこれで嬉しいが」

 

谷口「…………」

 

谷口「阪中、こんなパンツはいてるんだ」

 

谷口「…………」

 

谷口「俺もはいてみようかな」

 

谷口「ゲスゲスゲスwwww」

 

 

~~~~~

 

 

みくる「だいぶ陽が落ちるのが早くなりましたね」
古泉「もう秋ですからね。これからどんどん寒くなっていきますよ」
ハルヒ「あら? あれは何かしら」

キョン「何って、なにがだ?」


ハルヒ「ほら、あれよ。何か布きれみたいな物が、川を流れてない? それも、たくさん」
長門「………あれは、女性用下着」

 

みくる「え? え? ええ!?」
ハルヒ「暗くてよく分からないけど、言われてみればそう見えなくもないかな。行ってみましょう!」

 

 


ハルヒ「阪中じゃない。こんな時間に河原でどうしたの?」
阪中「あ、SOS団のみんな。こんばんは。ルソーの散歩で河原へ来たんだけど……これを見てなのね」
古泉「これは……本当に女性用下着のようですね」
阪中「それもただの下着じゃないのね。いくつか拾ってみたんだけど、紛失したと思ってた私の下着まで混ざってたのね」
みくる「ああ! こっちにある下着、ずっと前に私が無くしたと思ってた下着です!」


ハルヒ「よく見たら私が無くしたと思ってたのもあるじゃない! どういうこと!?」

キョン「あ、朝比奈さんのパンティ……」


古泉「どうしましょう? 川上の方から流れてくるようですが、調べてみますか?」
ハルヒ「あったりまえじゃない! こんなことをする不逞の輩、とっつかまえて警察へつきしてやるわよ!」

 

 

 

 

谷口「るるるーるー るるー」
谷口「るーるるるー るるるー」
谷口「友蔵、心の俳句」

 

ハルヒ「あ! あんなところに下衆男が! そうか、あいつが犯人だったのね!」
阪中「きゃあ、私の下着を頭にかぶってるのね!」
みくる「変態いいぃぃぃ!」

 

谷口「おやおや、どこのポニータかと思いきや。北高のプリマドンナたちの大行進。ご機嫌うるわしゅう?」
ハルヒ「キョン、古泉くん! たたみかけなさい!」

 

キョン&古泉「くらえ雑巾野郎! Wアームラリアート!!」


谷口「げっぶふうううぅぅぅ!!?」

 

 

~~~~~

 

 

谷口「ふひひふう ふひひひひふう」
ハルヒ「ほら。さっさと吐きなさいよ。あんたなんでしょ? 私たちの下着を盗んだ挙句、川に流すなんて暴挙に出たのは」
谷口「ちがーう! 俺はそんな非人道的な所業はけっしてやってない! 下着をかぶったことはあっても流したことなんて一度たりともうふふふん!」


ハルヒ「古泉くん、彼がもっと素直になれるよう、もう一個石を抱かせてあげなさい」
古泉「はい、了解いたしました」

谷口「げふん! はあはあはあ、石畳が僕の足をおしつぶす!」
みくる「あの、もうそろそろ白状しておいた方がいいですよ。尋常じゃない感じになってますし」
谷口「バカをおっしゃられるな! この程度のはあはあ責め苦などはあはあはあ」


キョン「いいかげんゲロしちまえよ。お前がやったんだろ? ん? さっさと言って、楽になっちまえよ」
谷口「北高の美女たちに囲まれて身体を緊縛された上に攻め立ててもらえるなんて……」

 

谷口「だがしかし! パンツを川に流したのは俺じゃない! 俺はそんなことは絶対にしない! いいか、絶対にだ!」
谷口「パンティ様はな、流すもんじゃない。かぶる物なんだ! どんな理由があろうとも、川に流すなど言語道断!!」
谷口「たとえこの谷口さんがここでSMの末に絶命したとしてもだ! この真理は変わることの無い宇宙の在り様なのだ!」

キョン「こんなこと言ってるが、どう思う?」
ハルヒ「でもこいつ以外に犯人なんて思い浮かばないし。阪中のパンツを頭にかぶって川原を歩いてたのよ?」

 

長門「………谷口は、犯人ではない」
古泉「な、なんですって!?」
長門「………谷口は嘘をついていない。彼は本当に心の底から、女性用下着は川に流す物ではなくかぶる物だと思っている」
みくる「……それはそれで問題ですけどね」


阪中「それじゃあ、一体誰がこんなことを?」

長門「………それに、数日前から私の下着も数枚紛失しているが、さっきから私の下着は流れてこない」
ハルヒ「そういえばそうね。有希の下着はなくて、私やみくるちゃん、阪中の物ばかりなのよね」
長門「………犯人の目星はついた。おそらく、彼の仕業。彼は川の上流にいるはず」

キョン「あ、おい、待てよ長門。彼って誰だよ?」
古泉「とりあえず、長門さんについて行きましょう。真犯人が他にいることは間違いないようですし」

 

 

~~~~~

 

 

中河「いろんな下着を見てきたけれど!」

 

中河「大きなのはダメだ! ダメに相違ない! やはり長門さんクラスの物が実によい!」

 

中河「うむ! 良い!」

 

キョン「お、お前は! 中河じゃないか!?」
中河「おお、そういうお前はキョン氏ではないか。お久しぶりナリ!」
古泉「……彼が、キョンさんの中学時代の知人の中河さんが、この下着流し事件の犯人ですか?」
長門「………そう」

キョン「中河! お前、なんでこんなことを」
中河「なんで? 何故かと聞かれては答えねばなるまいて」


中河「女性用下着が! 好きだから!」

 

中河「そう思っていろいろな女性用下着を掠めてきたが、やはり長門さんの下着が俺のハートにジャストヒットというわけさ!」
キョン「いや、すまん。まったく分からないんだが」

中河「長門さんのかぐわしきおパンツ様以外のパンティなど、取るにも足らない存在よ! だからして、こうして川に流して供養していたのだよ」
キョン「お前脳みそのネジがゆるんでるんじゃないか?」

 

ハルヒ「っていうことは、なに? あのアメフト男が私たちの下着を盗んだ挙句、川に流した真犯人ってこと?」
みくる「そのようですね。しかも、盗人猛々しく、長門さん以外の下着は低レベルだなんてバカにしているようです」
ハルヒ「なんですってえええええ!? なんてムカつくヤツなのかしら!!」
中河「でへ、でへへへへ~」

 

ハルヒ「キョン、古泉くん! こうなったら全力でやっつけちゃいなさい!」
キョン「ま、仕方ないわな。覚悟しろよ、中河。朝比奈さんのパンティをバカにするやつは、この俺が許さない」
古泉「涼宮さんの下着を盗み取るなど卑劣の極み。絶対に許せませんね」

キョン「くらええええええ!」


古泉「Wアームラリアート!」

 

中河「ぬふうううう! 甘いわ軟弱なモヤシっ子どもめ!!」

 

キョン「ぐわっ! バ、バカな! 二人がかりのツープラトンがこうもあっさり破られるなんて!」


中河「スポーツもせずに日々を怠惰に送ってきたお前たちが、このアメフト&パンティ一直線の俺に勝てると思っていたのか!?」
中河「ぬはははは! 体力と下着学をトレーニングしなおして出直すがいいわっ!!」

 

 

~~~~~

 

 

谷口「ふん。この筋肉バカめが。貴様のような浅薄な人間に下着学などと口にしてもらいたくないものだな」
中河「うふん!? 貴様は一体何者だ!?」
谷口「俺の名は谷口。シモの導きに従いし者さ。言うならば、そう。もち肌の使者とでも呼んでもらおうか」


中河「貴様もこの俺にはむかおうと言うのか? 愚か者め。平均的な男子高校生2人がかりでも倒すことのかなわなかったこの俺をたった一人でなんとかしようと言うのか?」

谷口「お前のごときパンティ道を踏み外した外道を葬るのに、力など必要ない」
中河「おもしろい! 俺を倒すことができるというのなら、やってみるがいい、こわっぱが!!」


谷口「うおおおぉぉぉ!! アナルスレよ、今こそ俺に力を与えてくれえええぇぇぇ!!!」

中河「な、なに!? やつの握りこぶしに光り輝くピンクのオーラが立ち昇っている!? あの力は……!」


谷口「これぞ下衆一族の底力!」

 

谷口「くらえ! 断罪☆ビューティフルセクシービーチク光レーザーパンチ2007!!」


中河「う、うわああああああ! 光が、桃色光線が俺の身体を包み込む……ぎゃあああああああああ!」

 

谷口「成敗!!」

 


谷口「終わった……中河。おそろしい相手だった」

 

 

~~~~~

 


谷口「だが、ただ一人の愛する人のパンティに心を奪われグローバルな下着精神を失ってしまった時から、既にお前は負けていたのだ」

 

谷口「下着に溺れ、下着に消えた。バカな男だ……」

 

 

 

ハルヒ「……わ、悪かったわね。疑って」
キョン「すまん、谷口。なんでもかんでもお前のせいにしちまって」
みくる「ありがとうございました、谷口さん。あなたのおかげで、消えた下着も戻ってきました」
長門「………私の下着も取り返せた」

 

谷口「いやいや、いいんだよ。分かってくれればいいんだ」
阪中「感謝はするけど、谷口くんがまだ持ってる私の下着もきっちり返してね」
谷口「え……? うそ、マジで……?」

 

古泉「本当にすいませんでした。石畳を抱かせてしまって」
谷口「あれはあれで良かったから」

 

谷口「下着はすべてを覆い隠す。人の隠したい場所、恥ずかしい部分。全てを、平等に」


谷口「俺も、そんな人間になりたいと心から思っているんだ。憧れているんだ、下着人間に」


谷口「だから、気にするなよエブリボディー!」

 

 


  あなたの股間を隠したい。
  羞恥するあなたが哀れだから。

 

  あなたの股間を隠せない。
  あなたの下着が存在しないから。

 

  それでもあなたの股間を隠したい。
  あなたの下着を盗んだのはわたしなのだから。

 

 

 

 ~おしまい~

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最終更新:2020年03月11日 00:34