「……なんですか、これは」
「だから、ハルヒが作った曲の歌詞」
「あなたは驚かないんですか」
「そりゃ驚いたさ。だからお前に見せてるんだ」
 
文化祭が終わり、例の活躍によってバンド活動に興味を抱いたハルヒ嬢。
もともとピアノを習っていたこともあったらしく、以前から我流で曲作りをしていたそうだ。
これには大変興味がわいたので、ダメ元で聞かせてくれと頼んだんだが……。
「いいわよ、確か四曲くらい入ったMDがあったと思うから明日持ってきてあげるわ」
意外とあっさり、翌日には曲入りMDと歌詞がプリントアウトされた紙を貸してくれた。
 
内容は、
①Party Night
一曲目は割と爽やかでポップな感じの曲で、所謂美メロ。中学二年ぐらいのときに初めて作った曲だそうだ。
歌詞はポップスにありがちな、ポジティブな単語を並べたって感じで、適当につけたっぽさがありありと伝わってくる。
 
②激情の末
二曲目はバラード。当時話題だった恋愛小説を呼んでみて思ったことを書いた詞だそうだ。
言いたいことは、「恋愛はくだらん」ってことらしい。にもかかわらず美メロ。まったく歌詞と曲調が合ってない。
まあ、ハルヒらしいといえばハルヒらしいかもな。
 
③red red red
三曲目はテンポがめまぐるしく変わる曲。音楽は詳しくないが、クラシックのように静と動、明と暗がはっきりしている。
歌詞はエキセントリックのひとこと。所謂ミーニングレスというヤツで、意味のない単語が無秩序に並べられ、雰囲気だけ出てる。
ハルヒは中学時代もかなり危ないヤツだったそうだが、これを聞けばなんとなく想像がつくというものがある。
 
④色彩を欠く、新しくなる。
そして四曲目は……なんだこれ。タイトルからして群を抜いて異常だ。曲の雰囲気も全然違う。……待てよ、『灰色の空間』?
「ああ、四曲目?それ確か五月ごろに作った曲だったかしら。変な夢を何回も連続で見た時期があったの。
よく覚えてないんだけどね、とにかくむしゃくしゃしてたわ。なんとなくその夢をイメージして作った曲よ」
 
五月ごろと言えば、SOS団発足、ハルヒの不機嫌爆発、俺閉鎖空間幽閉事件とまあ、いろいろあった時期だな。
その時期に書いた詞に『灰色の空間』か……偶然にしちゃあできすぎてる気がするな。
 
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『色彩を欠く、新しくなる。』
作詞・作曲 涼宮ハルヒ
 
空けていく空 崩れてく景色
すべてが変わる 予告もないまま
明日の夜には消えていくの
あなたとの日常を残して
 
見たい 見たくない でも消えない
あなたの心がわからない
 
知らない 知りたい 知るのが怖い
あなたを連れて行こう
 
新しい何かを創り出すために
すべてを壊さなきゃならない
くだらないものから壊せばいい
愛すべきものを抱いて……
 
灰色の空間で待ってるから
 
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「そうですね……これはあなたを連れて閉鎖空間を創ったあの夜を暗示していると考えるのが妥当でしょう。
しかし……あのまま事が進んでいたら、どうなっていたか想像もつきませんね」
 
それにしても、何度読み返してもゾッとする。
俺と古泉は顔を見合わせ、大きな溜息をついた。
「ときどき大変なときもありますが、変わらない毎日を過ごせるって幸せなことですねぇ」
 
……こればかりは同意せざるを得ない。


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