秋も深まり、もう冬になろうとしている今日この頃、
僕達SOS団はいつもと変わらぬ日常を過ごしていました。
もう涼宮さん達と出会って一年半となります。
その間ずっと涼宮さん、そして彼の様子を観察していますが、
もはやお二人の関係は円熟していると言っても過言では無く、お互い相思相愛なのは見て明らかで、
団内でそのことに気付いて無いのはお二人だけというところまで来ています。
あとはどちらが先に想いを伝えられるか……という段階です。
そんな中、僕はある人物から相談を受けました。話はそこから始まります。
 
 
僕はいつも通り学業を終え、SOS団の部室のドアを開きました。
 
「おや、長門さんだけですか。こんにちは。」
「……」
 
あいさつをしましたが特に返事はありません。
まあいつものことなので特に気にすることなく、
彼が来るまで詰め将棋でもしようかと将棋盤を取り出したところで
 
「……古泉一樹、あなたに相談したいことがある。」
 
長門さんから、思いもよらぬことを言われたのです。
 
「珍しいですね、あなたが僕に相談とは。」
「いろいろと考えた結果、あなたに相談することが最も適していると判断した。」
「それは光栄です。それで、悩みとは?」
「彼のこと。」
 
彼のこと……ですか。さて、一体?
 
「私の中に、彼を求める心がある。」
 
……なんと。正直驚きました。
涼宮さんと彼は非常に分かりやすかったのですが、
長門さんの気持ちについてはまったく気付けませんでした。
流石は長門さん、でしょうか。それとも僕が未熟なだけでしょうか?
 
「つまり、あなたは彼のことを愛していると……」
「そう。」
「しかし、彼は涼宮さんと……」
「分かっている。彼と涼宮ハルヒが相思相愛であることも、
 そのことがあなたの機関や情報統合思念体にとって望まれることも分かっている。
 分かっているから、辛い。」
「長門さん……」
「私の中にエラーが溜まっていくのが分かる。これを是正するには、どうすればいい?」
「それは……。」
 
参りましたね。こんな時どう答えればいいのか、僕にはわかりません。
僕の立場では、彼女を応援することなど出来ません。
しかし、彼女に対して「あきらめろ」と言う勇気も無かったのです。
結局僕は長門さんの専売特許である沈黙をするしか出来ませんでした。
 
「……彼が来た。涼宮ハルヒと一緒に。今の話はこれまで。」
 
彼女の言葉通り、涼宮さんが彼を引っ張って部室に入ってきました。
少し送れて朝比奈さんもやってきて、その後は彼とゲームをするいつも通りの団活。
しかし僕の心はいつも通り、とは行きませんでした。
彼女の気持ちを知ってしまった今、複雑な気持ちでいっぱいです。
 
しかし団活終了後、事態は更に急変しました。
涼宮さんが一足先に部室を出た後のことです。彼がいいました。
 
「みんな聞いてくれ。俺決めたよ。明日、ハルヒに告白する。」
 
ついにこの時が来た、といった感じでしょうか。
 
「わぁ~!頑張ってくださいねえ!」
 
朝比奈さんは自分のことのように喜んでいます。
昨日までの僕なら、朝比奈さんと同じように手放しで喜んだものでしょう。
しかし今はそうも行きません。何故なら彼女の気持ちも知っているからです。
思わず彼女の表情に顔を向けます。
 
「……頑張って。」
 
そう言った長門さんの表情は、どことなく曇っているように見えました。
さて、僕はなんと答えるべきでしょうか。
 
「頑張ってください。上手くいくことを願っていますよ。」
 
……すいません長門さん。
 
 
翌日、彼は宣言通り涼宮さんに告白しました。
彼女も同じようにキョン君のことを愛していたので、結果は言うまでも無いでしょう。
部室に手を繋いで入ってきた時点で、成功したと皆確信しましたね。
 
「というわけであたしはキョンは付き合うことになったからよろしく!
 でも団活をおろそかにする気はまったくと言っていいほど無いわ!
 だから安心して今まで通り部室に来なさい!いいわね?」
 
そう言う彼女の表情は今までの中でもトップクラスの笑顔。
僕は彼女の精神状態をある程度知ることが出来ますが、これほど嬉しい感情になっているのは始めてです。
 
「おめでとうございます。お二人の幸せを願っていますよ。」
 
僕は祝福の言葉を述べた。これは本心だ。今まで応援してきただけに、頑張ってほしい気持ちも一塩だ。
……しかし、一方で心の片隅にあるのは長門さんのこと。今はどう感じているのだろう。
 
「……おめでとう。」
 
小さな声でそう言った長門さんからは、今の気持ちを窺い知ることは出来ませんでした。
 
結局二人が付き合ってもなんら変わりない団活を終えた後、僕は長門さんと二人で歩いていました。
 
「すいません、長門さん。」
「何故あなたが謝るの?」
「僕はあなたの気持ちを知っていながら、彼の背中を後押しするようなことを。」
「いい。これがもっとも最良の結果。こうなることを皆が望んでいた。
 ……でも……私の中にあるエラーは増える一方。」
「長門さん……」
「このエラーを消すにはどうすればいい?」
 
長門さんが質問してきました。と言われても僕にはそのような経験はありません、恥ずかしながら。
だから僕は、一般的によく言われていることを答えました。
 
「そうですね……一般的には、新しい恋でもして忘れるのがいいと言われていますね。」
「新しい恋?」
「はい。新しい恋です。」
「あなたがいい。」
「………へ?」
 
いま、なんていいました?このひとは。
 
「あなたと、恋をしたいと思う、古泉一樹。」
 
……まさか!本気で言っているのですか!?
 
……しかし、ここで僕が断ったらどうなるでしょうか。
このままエラーを溜めつづけることは、彼女にとっても世界にとってもよくないことは明白。
僕が断るということは2重の失恋になり、エラーは更なる勢いで溜まることでしょう。
何より僕自身、彼女に惹かれています。付き合うことに抵抗などありません。
もし僕が彼女のエラー解消の手助けになるのであれば…
 
 
「僕でよろしければ……お付合い致しましょう、長門さん。」
 
続く


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