(※出題編のつづきです)

 

 

谷口「犯人は、この中にいる!」

キョン「な、なんだって!? それは本当か!?」
ハルヒ「な、なに言ってるのよ! バカ言わないで!」


鶴屋「まあまあ二人とも。ああ言ってるんだから、谷口くんのご高説を聞いてあげようじゃないの」

 

谷口「この事件の犯人は!」

 

みくる「私を殴った犯人は……!?」

 

谷口「………」

 

谷口「誰だっけ?」

 

長門「………」
キョン「………」
ハルヒ「………」
みくる「………」

 

ハルヒ「やるか」
キョン「やっちまうか」

 

 

~~~~~

 

 

古泉「なるほど。昨日、僕が神人退治のため早々に学校を出た後、そのようなことが」
古泉「それで朝比奈さんは今朝から、浮かない顔をしておられるのですね」
キョン「ああ。あんなことがあった後だし。それに、まだ記憶も戻っていないようだしな」


古泉「いえ。僕の推理が正しければ、朝比奈さんの事件当時の記憶はもう戻っているのだと思いますよ」

キョン「なんだって?」
古泉「だからこそ、彼女は浮かない顔をしているのです」
キョン「どういうことだ?」


古泉「確証はありません。記憶が戻り思い出してみた結果、朝比奈さんがよく知る人物が犯人だったから、名前を出すのを躊躇しているのでは、という推測にすぎません」

キョン「それじゃあ、お前、話を聞いただけで誰が朝比奈さんを殴った犯人か分かったって言うのか?」
古泉「話をうかがった上での推測で、ですよ」
キョン「それでもいい。お前の推理上での犯人は誰なんだ? 教えてくれ」
古泉「犯人は谷口さんがおっしゃった通り、昨日文芸部室にいたメンバーの中にいますよ」

 

古泉「みなさんが自己申告したアリバイを思い出してください。各々がばらばらの場所、時間を述べていますが、一つだけ共通していることがあります」
古泉「それは全員のアリバイ申告に、それを証明することのできる第三者がいるということです。だから、皆さんが語った話は、全て正しいのでしょう」
キョン「じゃあ、犯人は昨日文芸部室にいたメンバーの中にはいないということになるんじゃないか? 全員に証人がいるんだろ?」
古泉「そうでしょうか?」

 

古泉「確かに、全員に事件当時のアリバイを立証できる証人がいます。しかし一人だけ、そのアリバイに空白のある方がいます」

 

古泉「朝比奈さんが部室で頭を殴打されたのは、15:20。本人の申告なので、これは間違いないでしょう」


古泉「涼宮さんはホームルーム後、15:40までずっと担任の岡部教諭と共にいた。涼宮さんに犯行は無理です」


古泉「あなたも、クラスメイトと共に教室を掃除をしていた。あなたの言が正しければ、15:50まで教室にいたあなたに犯行は不可能」


古泉「谷口さんも、正確な時間の申告はできていませんが、犯人ではありません。僕の推理上で彼は犯人の条件に当てはまりませんから。納得できないのなら、阪中さんに証言をもらってもいいでしょう」


古泉「鶴屋さんが廊下で学友とお話しているところは僕も見ていますから、彼女が友人と一緒だったことは事実です。鶴屋さんは、事件のあった時刻に友人といたはずです。アリバイはある」

 

キョン「……ってことは、消去法でいくと」
古泉「犯人は長門さん、ということになりますね」
キョン「長門が!? どうして。宇宙人があんな骨董品の急須になんか興味を持つとは思えないんだが」
古泉「急須は関係ないでしょうね。もし本当に急須狙いの犯行だとしたら、大事な盗品を昇降口になんか置いていかないでしょう。必要なかったから、置いて行ったのです。もしかすると、捨てたつもりだったのかもしれません」

 

古泉「長門さんのアリバイを証明することができるのは、図書室の顔見知りの生徒です。しかし、長門さんは彼女の前から一度消えている」
キョン「本を返却して、一度図書室を出たところか」
古泉「そうです。長門さんが図書室から出た時間がどれだけのものかは分かりませんが、その間、長門さんにはアリバイがない」

 

 

古泉「そして決定的な証拠は、朝比奈さんが意識を失う前に残した血文字ですよ」
古泉「床に 『なが』 と書かれていたのでしょう? これは誰がどう考えても 『ながと』 と書こうとしたものに間違いないじゃないですか。解答そのものです」
キョン「いや、しかし……」


古泉「あなたは涼宮さんが朝比奈さんに長ネギを持たせて云々、という話をされていたようですが」
古泉「不意打ちをくらって意識を失う寸前の人間が、とっさに 『ながねぎ』 なんてメッセージを残すと思いますか?」

古泉「どうせメッセージを残すなら、犯人をもっとも象徴しているワードを書き残すと思いませんか?」


古泉「ミステリー作品のダイイングメッセージではよく、犯人にメッセージだと気づかれぬよう分かりにくい暗号を残すものだと相場が決まっていますが」
古泉「実際問題、暴行を受けた被害者が、突然のことで頭が混乱し急激に思考力が低下していく中、とっさに気のきいた暗号を思い浮かべることができると思いますか?」
古泉「メッセージを残すとしたら、その犯人を表すのにもっとも容易で具体的な単語、特に、犯人の氏名などを残すのが現実的な手段だとは思いませんか?」
キョン「まあ、そう言われれば……そうか」

 

古泉「長門さんは昨日、『私は朝比奈みくるを殴打していない』 と一言でも言いましたか?」
キョン「……そういえば、言っていないな。急須はいらない、と言っていた覚えはあるが」
古泉「長門さんが急須を奪ったのにどういう意味があったのかは分かりませんよ。強盗を装った犯行に仕立てたかったためか、それとも単なる嫌がらせのためか」
古泉「しかし。誰がなんと言おうと一つだけ確実にいえることがあります」

 

古泉「長門さんが、朝比奈さんを殴った犯人だということですよ」

 

 

~~~~~

 

 

ハルヒ「有希、お願いだからやめて!」
キョン「よせ、長門! これ以上罪を重ねるな!」
みくる「ちょっと痛かったですけど、私は気にしていませんから。だから、もうやめてください!」

 

鶴屋「どうしたの? 有希っ子が食堂に立てこもったって聞いて飛んできたんだけど」
古泉「昨日の事件のこと、うかがっていますか?」
鶴屋「……うん。キョンくんから聞いたよ。みくるを殴ったのが、有希っ子だったって」
古泉「なんでも、胸のことで話をしていたらカッとなって、手近にあった僕の将棋版でつい事に及んでしまったというのが、真相のようです」
鶴屋「……なんか、コメントしづらい展開だね」


古泉「現代人はキレやすいと言いますから。ちょっとしたことでも、ついカッとなって信じられないような行動に出てしまうものなのですよ」
鶴屋「他人にとってはどうでもいいことでも、身体的特徴って当人にとってはすっごいコンプレックスになったりもするし……有希ちゃん、コンプレックスだったんだね」

 

 

長門「………気休めはやめて。私は一時の気の迷いとはいえ、してはいけないことをしてしまった」
ハルヒ「だから、みくるちゃんも許してあげるって言ってるじゃない! ね?」
みくる「そうです。長門さん、あなたの気にさわることを言ってしまったのなら謝りますから、もう馬鹿なマネはやめてください」

 

長門「………私は、自分で自分が許せないだけ。だから私は、この業務用牛乳缶を一気に飲み干し、罪を精算することに決めた」
キョン「よせ長門! そんなことをしたら、全身が牛乳になってしまうぞ!」
長門「………今度生まれ変わることができたなら。その時はきっと、貧乳がデフォの世界に……」

 

谷口「やめるんだ、長門くん!」

 

ハルヒ「下衆男……」
キョン「下衆、お前……」
みくる「下衆さん……」
古泉「げs……谷口さん」
鶴屋「下衆」

 

谷口「どうやらキミは、勘違いしているようだな。長門くん。一言キミに言っておく」

 

谷口「ナイチチというジャンルを、キミは知っているか?」

 

長門「………ない…ちち?」

谷口「そう。要するに、貧乳のことだな。パイパイの大きさで女性の価値が決まると思い込んでいる女性がいるが、それは違う。巨乳が好きな男がいる一方で、貧乳が好きな男だっているんだ」
ハルヒ「何してるのみんな!? 下品なこと言ってるあいつを早くひっとらえないさい!」
キョン「神妙にしろ、谷口! 天下の食堂でなに卑猥なことを大声で叫んでるんだ!」
谷口「ちくしょう、離せ! 離せよ!」

 

長門「…………」

 

谷口「貧乳? 巨乳? そんなの関係ない! パイパイ様は、ただそこにあるだけでありがたいものなんだ! 大きさに拘っちゃいけない!」


古泉「谷口さん、観念してください!」
谷口「離せ! 俺の双肩に、ひとりの少女の命がかかってるんだぞ!?」

 

谷口「男の世界を見てみろ! イチモツが大きいヤツは英雄として扱われ、小さいやつは鼻で笑われる弱肉強食の修羅界だ!」


谷口「乳みたいに、大きいのと小さいのの両方に需要なんてありあしない! 小さいやつはそれだけで肩身のせまい思いをして一生を送らねばならぬのだ!」


ハルヒ「いい加減にしなさいよ、この下衆野郎!」
谷口「離すでゲス、離すでゲス!」

 

谷口「包茎者がどんな気持ちで日々を過ごしているか分かるか!? まだ需要のある貧乳なんてレベルじゃねぇぞ!」


谷口「仮性人だって同じだ! 銭湯じゃ思わずタオルで前を隠してしまうほどのコンプレックスを抱いて生きているんだぞ!」

 

鶴屋「殿中でござる! 殿中でござる!」
谷口「ちくしょう! 離せよぉ!」
谷口「離すでゲス、下衆でゲス!」

 

谷口「甘ったれるな! 牛乳飲んでデカくなるってんなら、俺が飲みたいわ! 俺によこせ!」

 

谷口「俺によこせえええぇぇぇ!」

 

長門「………」

 

谷口「おおきくしてくれええええええええええええ!!」

 

 

~~~~~

 

 

ハルヒ「よかった。有希が思いとどまってくれて。戻ってきてくれて……」
キョン「ああ。手段はともかく、今回ばかりは谷口に感謝しないとな」
古泉「ま、こういうこともありますよ」

 

長門「………あなたには、酷いことをしてしまった。こんなことが言えた義理ではないが、許してもらいたい」
みくる「いいんですよ。もう。言ったでしょう? 気にしてないって」


ハルヒ「これにて一件落着。雨降って地固まるということわざもあることだし。これを機に、さらにSOS団の絆は強固なものになったはずよ!}
キョン「ま、今はそういうポジティブな思考が一番いいな」

 

 

みくる「それにね。私も、長門さんの気持ちが、痛いほどよく分かったから」
長門「………え」
みくる「だって。私、豊胸手術で胸を大きくしたんですもの」


ハルヒ「だまされた……orz」
キョン「だまされた……orz」
古泉「だまされた……orz」
鶴屋「だまされた……orz」

 

みくる「長門さん。これからも仲良くしましょうね」
長門「………うん」

 

みくる&長門「(*゚∀゚)人(゚∀゚*)ナカーマ」

 

 

 

 ~おしまい~


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