「これから大車輪を作るわよ!」
綺麗に通った高い声が静かな部室に響いた。何を作るって?
「大車輪よ!!」
大車輪よ、じゃねぇよ。なんで大車輪なんだよ。
「……意味はないわ!でもこれを作る過程に意味があるのよ!!」
意味がないのに意味があるのか。そりゃあすごい。頑張ってな。
「何言ってんの、あんたも手伝うのよ。みくるちゃんと古泉くんは部室を片付けて。有希は工具の用意お願いね。あたしとキョンは材料を買ってくるわ」
ハルヒはそう言い放ったかと思った瞬間には俺の左腕を掴んで引っ張り走った。おいおいもう少し落ち着け、俺が転んじまう。
「あんたが遅いからでしょ!早く早く」
結局俺はそのままハルヒにずんずんと引っ張られながら近くのホームセンターへ行って木材を買ってきた。もちろん持つのは俺の役。
部室へ戻ってくると真ん中にあった机は片付けられて丁寧に新聞紙が敷かれていた。側に立っていた長門の手には工具入れとドデカいボンドを持っていた。
と、言っても実は既にホームセンターで買うときに加工してもらってきたので後は釘とボンドで組み立てればいいだけだった。
木材を持ってくるだけで汗びっしょりになって死に掛けていた俺は木材を置くとへたりと床に座って休むことにした。
「ご苦労様。あんたにしてはかなり頑張ったほうね。そこで休んでなさい。団長からのありがたーい気遣いよ」
そう言うとハルヒは古泉と長門と朝比奈さんを集めて木材を組み立て始めた。しばらく休んでいるとハルヒのブラチラが見えたりハルヒのパンチラが見えたりハルヒの項が見えたりとそれなりにいいものを見せてもらった。さすが団長様、サービス精神が旺盛だ。
途中から俺も参加してどうにか大車輪を組み立てることができた。高さは俺の頭より高く、なかなかの迫力だった。よく俺はこれを一人で持ってこれたなと自分に感心しているとハルヒが薄く汗ばったおでこを袖でぬぐいながら言った。
「じゃあ早速転がしに行くわよ」
そういえばなんでこれを作ったんだ?よりによって大車輪を、しかも片側だけを。
「だから意味なんてないって。さっきボーッとして何かを待ってたらさ、『>>381大車輪』って書いてあるのが見えたのよ。ただそれだけ」
ただそれだけって……だいたいなんだ381って?
「わかんない、その前についてる不等号もなんだかわからないけどなんとなく急げって言ってるように聞こえてね……」
全くわけがわからんな。まさか本当にそんな意味のない思いつきでこんなものを作らされる羽目になるとは……。
「あ!」
何かが思いついたような声を出したハルヒはすぐさま大車輪を担ごうとした。どこに持って行く気なんだ?
「今また何かが見えたわ。校庭で大車輪を転がせって!」
俺達は訝りながらもハルヒの言うとおり大車輪を校庭へ持っていき、適当なところで縦に置いた。すぐさまハルヒが滑らかな側面を押して転がす。
高さはあっても厚くはない大車輪は微風にすらよろめかされていたが、ゆっくりながらもどこかを目指して転がっているようだった。
「きっと宝の場所を教えてくれるのよ!」
そう言ってハルヒはキャッホゥとパンチラをも気にしないスキップをしながら大車輪の後を追っていく。そのパンチラに引かれるように俺は自然にハルヒの後を追っていた。
しばらく校庭を転がりまくった大車輪はある木にトスンと当って案内を終えた。その木には何かが彫られていた。

 

 それはかなり細かい文字が上から下までズラーッと彫られているものだった。俺はハルヒと一緒にそこに書き込まれている文字列の一部を見てみる。そこにはこう書かれていた。

406 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/13(木) 22:04:45.75 ID:2giDxQBUO
>>405
か、過激だ……

なんかちゅるやさんがすごくかわいくみえてきたwww

407 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/09/13(木) 22:05:26.82 ID:g4ZSOEpq0
AA職人か?

408 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/09/13(木) 22:07:01.85 ID:Facc1ld10
IDがファックwww

>>407
コピペですw


「……」「……」
ハルヒはむぅんと唸りながらこれらの怪奇な文字列を真剣に眺めていた。表情から察するに恐らくこれらは何かの暗号であると見ているに違いない。
実際俺にもこれらの文字列が何を意味しているのかは全くわからない。ただ唯一理解できるのは、これらは日本語で書かれていて、ある規則に則って彫られているということだけだ。
ハルヒは木のあちらこちらを上から下へと舐めるように見回しながら何かを探しているようだった。そしてちょうど一週してきた辺りの少し上を見て叫んだ。
「あった!これよ!あたしがさっき頭の中に見えてきたのは!」
なんだって?本当かそれ?
「本当よ!こっちきて見て見なさいよ!」
全身を細かく彫られている木が嫌に気色悪く感じて少し離れていた俺は仕方なくハルヒの人差し指が指し示す場所に近づいた。そこにはこう彫られていた。

384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/09/13(木) 20:43:47.71 ID:g4ZSOEpq0
>>381
大車輪

 

 確かにハルヒが言った通りのことが彫られていたので恐らくこれを見たというのは間違いではないだろう。だがこれは一体何を示しているんだ?
「それをこれから調べるのよ!あたしがざっと見た感じだと、この左に書いてある番号と不等号の後に書かれてる番号は繋がっているに違いないんだわ」
なるほど、さすが勘がいいだけある。そう見ると最初に見た部分でも会話が成り立っているように見える。ということは、381が彫られている場所を探せばこの謎が解けるかもしれないな。
「そういうこと。あんたも頭が回るようになったわね」
そらどうも、俺のことはいいからまずは381を探そうぜ。
「そんなの簡単よ。今見つけたのが384だからそのすぐ上に……あれ?」
先ほどまで381を指し示していたハルヒの指はいつの間にか422のwktkという謎の暗号を示していた。しかし俺が見たところではハルヒの指は先ほどの位置と全く変わっていなかった。一体何故?
俺はハルヒとあれあれと見失った381を探したがどこにも見つからなかった。しばらくしてもう一度先ほどの場所を見てみる。
「426になってる……」
ハルヒは愕然とし、俺は驚愕した。静かにその木から離れてその細かな文字列らを眺めてみると、それらは静かに、だが確実に上へと流れていたのだ。木の形の凸凹や色はそのままで、彫られた文字のみがまるで生きているように下から上へと木を登っていく。
目の前の不思議すぎる現象にどうやってハルヒに説明したらいいのかと一体何が起こっているんだということを考え始めようとしたとき、ずっと空気になっていた古泉が俺の肩に手を置いた。
「少しまずいことが起こっています。涼宮さんがあちらに興味を引かれている今のうちにちょっとこちらへ」
古泉に引かれながら少し離れた位置にいる同じく空気と化していた長門と朝比奈さんと合流する。いったい何が起きてるんだ、長門?

 

「情報統合思念体が検索した結果あの木には私達の世界とは異なる世界の極一部の情報とリンクしていることが判明した。原因は不明」
異世界の情報とリンク?あれはつまり何かの暗号とかじゃなくて別世界の言葉だったってことか?
「基本的な概念・仕様等は全く異なっていない。あれはこちらの世界にもある言葉」
というかどうしてそのパラレルな情報とやらがこの木とリンクしてるんだ?
「情報統合思念体が今新たな情報を得た。あちらの世界の情報の海の中で、ある局所的部分からの超高度エネルギーの情報爆発が連続で起きたことによる時空の歪みが原因」
あっちの世界の情報爆発とやらが原因?ということは今回はハルヒの仕業じゃないってことか?
「そう」
じゃあいったい誰の仕業かわかるか?
「現在情報統合思念体がリンクを通して調査中。あちらの世界とこちらの世界での相違点はごく少数。調査終了推定時刻は後1分」
「どうやら異世界と言ってもほとんど我々のいるこの世界と同じ、パラレルワールド程度の世界のようですね」
程度というな程度と、俺には十分恐ろしいことだと思ってるぞ。
「どうしてこんなことが起こってるんでしょうかねぇ。なんだかちょっと怖いけど、あちらの世界に行ってみたいなって気もしちゃいますね。うふふ」
後ろ手を組みながら無邪気な微笑みが可愛すぎる朝比奈さん。朝比奈さんならあっちの世界とやらでもたぶんやっていけますよ。
「え~どうでしょうか。あたしってすごくドジだからなぁ」
ハルヒが言ったらぶん殴りたくなるような台詞でもあなたが言うなら大歓迎できるほど可愛いからですよ朝比奈さん。
「……」
気付くと長門が静かな瞳でこちらを見つめていた。情報統合思念体の調査はもう終わったのか?
「オワタ」
ん?なんかアクセントが違うような。で、情報統合思念体の結論はどうなったんだ?
「あちらの世界とこちらの世界の相違点から考察した結果、あちらの世界には私達は全く異なる概念で存在している」
異なる概念?どういうことだ?と質問しようとした瞬間、急に長門は口をぽかんと開けて目の光が失っていき虚ろになっていった。どうした長門、大丈夫か?
長門は俺の問いかけには反応せず、数秒してからふいに唇を動かした。
「長門は俺の嫁」

 

 何を言ってるんだ長門?お前どうした?何かおかしいぞ。
「……膨大な量のののノイズがが……分裂吸収合併脚本家有刺鉄線アナルはやっぱりレベっ……」
壊れたラジオのような声で訳のわからない言葉を放っていた長門の口は急に閉ざされ、目にはいつもの静かな光が宿っていた。どうやら元に戻ったようだ。大丈夫か長門?
「おk。あの木のうrlを通して情報統合思念体に膨大な情報量が送り込まれたため、一時的にうrlとの通信を遮断した」
全然大丈夫じゃないんじゃないか?いつものお前とは少し違う言い方のような気がするが。
「さきほど送られてきたノイズの波によって私のデータの多くが改変された。ノイズを取り除ききるには少し時間がかかるが問題は無い」
時間ってどれくらいかかるんだ?
「おまいらが使ってる時間概念でいう一週間だお」
……まぁ微妙にかかってる気がするが、長門にしてみれば短い時間か。しかし何とも慣れない喋り方だ。
「サーセン」
それより結局今俺たちはどういう状況にあるんだ?詳しく教えてくれないか。
「あちらの世界では私たちはアニメキャラクターという概念で存在している」
なんだって?俺たちがアニメのキャラクター?なんじゃそりゃ。なんで俺らがアニメのキャラクターなんだよ。
「kwskはラノベというジャンルの小説のキャラクター。その小説の中から私たちはその世界に生まれている。タイトルは『涼宮ハルヒの憂鬱』だってお」
本になっても主役はハルヒなのか。で、そんな俺たちが実質的には存在してないような世界で何が起こったんだ?
「『涼宮ハルヒの憂鬱』と呼ばれる小説があちらの世界でベストセラーとなった。その後に続編を次々と発刊して更に人気を博し、今ではアニメ化しゲーム化も進んでいる」
おいおい俺たちがベストセラーになってる?なんつー世界だ。想像ができん。
「更に同人誌と言われる市場で『涼宮ハルヒの憂鬱』の二次創作が急激に増え始め、別方面としてはSSと呼ばれる二次創作小説もまた爆発的に書かれた。
その彼らの二次創作の根源となる妄想が世界中で止まることなく増幅していき、それが原因でついに情報爆発が発生した。しかしそれは偶然によって起こされたものではない」
偶然じゃないってことはもしかすると……。
「恐らくはあちらの世界の彼らの意志がそうさせたと思われる……常識的に考えて」

 

つづく


|