俺はいつぞやのごとく、再びノートパソコンの前で無駄な電力と労力を消費していた。

その理由は、文芸部存続の為、恒例となった会誌のおかげである。
ことの発端である生徒会長が「部活動なのだから定期的に活動しなければ意味がない。定期的に発行して、文芸部としての活動をすること。」
との伝令があった。

しかし以外にもハルヒは今回、あんなに毛嫌いしていた生徒会長の言葉を素直に受け入れたのだ。俺の言葉なんざまったく聞いちゃくれないのに・・・。
「別にいいじゃないの。前回あれだけの人気があったんだから、次回作を期待している読者だっているわ。」
と、我団長は話した。
「わかってるわね、キョン!! 私たちの作るものは常に前回を上回るものでなきゃダメなの。どこかのアメリカ映画みたいなくだらないの続編ものはゆるされないんだからね!!」
いつにもましてハイテンションだな。
って、さらにクオリティの高いものを作れないとダメなのか!?
「もっちろん!! それに今回は私もなにか小説を書こうと思うの。 ジャンルは・・・そうねぇ、前回なかったSFにしようかしら。」
・・・とかなんとか騒いでいる内にSOS団はあれよこれよという間に会誌vol.2をつくる羽目になった。
各自のジャンルは前回同様と同じものになった。その理由は「その方が慣れてるでしょ?」という団長の一言で決まってしまった。
「期限は一週間! ダラダラと長い時間をとるのは意味ないし、SOS団は他にもやらなくてはならないことは山程あるの! 一週間で仕上げちゃいなさい! 遅れたら罰金なんだからね!」

とまぁかくしてSOS団は再び会誌を作ることになったのだが・・・。
俺はまたしても恋愛小説を書かなくてはならなくなった。ああ、あの忌まわしき過去が、鮭の母川回帰本能ごとく俺のもとに舞い戻ってきやがった。
しかし、かくいう俺も少しうれしいことがあった。
それは鶴屋さんの冒険小説の続編が拝めるからだ。
前にも言ったが彼女の小説は、万人に笑いを与えられる秀作で、とても一般人が書いたとは思えない代物だった。
著者である鶴屋さんも「続編だね!? まっかせといてよ! キョン君の期待に応えるためにもめがっさはりきっちゃわなきゃね!」
といつもの明るい笑顔でオファーしてくださった。

製作開始から3日が経過した。
それぞれ前作同様、同じ手法で製作に取り組んでいるのだが、以外にも前回と比べると団員全員・・・訂正、1団員を除く全員の顔には余裕の表情が伺えた。
ハルヒの言うように、要領を掴んでいるせいか楽しんで製作していた。
ちなみに言うまでもないが1団員とは俺のことだ。
「どうです? 作業は捗っていますか?」
いつものように古泉が寄り添ってきやがった。
「しかし、涼宮さんは前回の貴方の作品では十分な満足は得られなかったようですね。 実を言うと私も、また貴方の作品を読んで見たいと思っていました。」
・・・こいつは本当になにを考えているんだ?
「普通の高校生と同じようなことを考えていますよ。 超能力以外、普通の高校生とまったく一緒なのですから。」
そんなことは前から何回も聞かされている。
俺は超能力者・古泉の思考ではなく、高校生・古泉の思考について疑問を抱いているんだ。
「キョン君は、今回はどんな恋愛小説を書くんですかぁ?」
と、SOS団のエンジェルこと朝比奈さんが質問を投げかけてきた。
「それがさっぱり・・・。前回のやつだって苦し紛れのもんでしたし・・・。 朝比奈さんはもうネタとかできているんですか?」
「私は、今回眠れる森の美女をイメージにした童話を書くつもりですぅ。」
また誰か寝ているんですね・・・。というか今回ハルヒはどのポジションにつくんだろう?
長門はというと、ただ黙々とノートパソコンの前でカチャカチャカチャと止まることのない音楽を奏でていた。
「なぁ、長門。前回の名前をつけるところの下り、もしかしてあれ、お前自身のことか?」
「・・・。」
「あの、発表会ってなんなんだ?」
「・・・。」
「歌っている男、って誰なんだ?」
「・・・。」
長門には前回の小説のことを幾度か質問してはいるのだが、返答はいつもない。
しかし次回作ではその謎が少なからず解かれるのであることをウイスキーボンボンの中身ぐらいの期待を持つことにしよう。
と考えていると、いきなり「できたぁ!」と叫ぶ声とともにハルヒが部室に入ってきた。
「ねぇねぇキョン!? 見てみて! 今回SFを書いてみたんだけどすんごい名作よ! 読んでみなさい!」
と、数枚の印刷されたてで、まだ暖かさが残る原稿用紙を手渡された。
俺は一応というか、こいつの作るものにはそれなりの評価はしているのでそれなりの期待をもちながら読み始めたのだが・・・。
ハルヒの作ったSFは期待通り、かなり濃密で斬新な作品であった。しっかりとした構成と話でできていて、とても3日で製作したとは思えない、鮮麗としたものだった。
「どう!?」
と、自信満々のハルヒだったが、
「それよりキョン、あんたできたの!?」と鬼編集長が迫ってきた。
「前回もそうだったけど、あんたは問題児なんだからね! これから私がしっかり編集長としてあんたをしごいてあげるわ!」

正直俺はまいっていた。なにを書くにもそんな経験や知識は皆無でとどめにもてたこともない。付け加えるとやる気もない。
そんな俺にハルヒは学校にいる間は愚か、家に帰ってもメールや電話で進捗度合いを俺に尋ねてきやがる。 一歩間違えればストーカーだ。

製作開始5日目、ネタに困った俺は放課後、谷口と国木田に相談した。
「ネタぁ? お前また恋愛小説書くのか? しかし前回のはひどかったな!」
うるさい。お前に言われたくはない。
ちなみに、こいつらは今回会誌には参加していない。ハルヒ編集長曰く、
「あんな作品はページの無駄よ無駄。無駄なことはあたしは好まないの。」
とここでも鬼編集長ぶりを発揮していた。お前が強引に書かせたくせに。
しかしそれをいうなら俺のもだって相当なもんだぜ?この際だから俺も打ち切りにしてくれないか?とたずねると
「あんたはSOS団員なのよ? 団員は必ず参加しないといけないの! そんなこともわからないの?」と怒られてしまった。
そんなことを俺は脳裏で回想していると、国木田が発言した。
「そうだねぇ。なにも出てこないならSOS団の人達を題材にしちゃえば?」
・・・!
「そりゃおもしれぇ! 涼宮の団は男女いい具合にいるからよ、昼ドラみたいのかいてみろよ!」
ドロドロ恋愛か・・・。いやそれは俺の力量ではかけないな。
「ドロドロは無理だがいい案を思いついた! サンキュー国木田!」
「どういたしまして。あ、SOS団のみんなによろしくね。」
そうして俺は、部室に向かった。
「って俺には礼なしかよ!」
と谷口が叫んでいたがそんなことは気にもとめなかった。

俺は部室に行くと、そこには長門がいつものように本を読みながら座っていた。
朝比奈さんもいつものようにメイド服に着替えていて「あ、キョン君」と優しい笑顔で挨拶してくれた。
そして古泉がいつものようにこちらを見て微笑んだ。こいつの微笑みは朝比奈さんの笑顔で明るくなった俺の心を台無しにしやがる。
しかし、ハルヒはそこにはいなかった。 まぁこれもよくあることだ。
俺は早速ハルヒがコンピ研から巻き上げたノートパソコンを起動して、テキストエディタに文章を叩き込んでいった。
しかし、一日で終わるわけもなく俺はこの作業を土日もすることになった。
ハルヒのストーカー行為にめげることなく、俺は土曜の夜に恋愛小説を完成することができた。
しかし日曜までかかると思っていたのだが・・・俺も知らないうちに書き慣れちまったんだな、恋愛小説。
その報告を編集長に連絡すると、
「そう、じゃあ今からチェックしてあげるからあたしんちまでもってきて。」
という返事が返ってきた。
「ちょっとまて。今からお前の家って・・・。」
「安心して。ママ達は土日は仕事でいつも家にいないの。だから気にすることはないわ。」
ってその方が余計に気にするわ!
「つべこべ言わずにさっさと来なさい! 10分以内で来るように! 遅刻したらジュース奢りだからね!」
と言い残し電話を切られた。
俺は仕方なくノートパソコンを鞄に詰め込み、ハルヒの自宅へと向かった。道中、果汁100%のジュースとコーヒーも買って行った。
ハルヒの自宅に到着した俺は大魔神のごときハルヒの怒りを静める為、ジュースを渡しなんとか機嫌をなだめた。
実際のところ、10分では到底たどり着くことのできない距離にハルヒ宅があるわけで、俺はどうあがいてもジュースを奢らされる運命にあったわけである。
ハルヒはただジュースが飲みたくて俺にあんなことを言ったのだ。
その証拠にこの後ハルヒは「まぁ買ってきたことに免じて私のジュース代は返してあげる。」といって部屋に案内されながら100円返してくれた。そういうならもう20円返せ。
「それより早くあんたの小説読ませなさい。おもしろくなかったらまた作り直さなきゃいけないんだから。」
とハルヒにせがまれたので俺は息つく間もなく、ノートパソコンの電源を入れた。
立ち上がるまでの間、俺はハルヒの部屋をきょろきょろ見渡していると
「こら、エロキョン! そんなにジロジロ見渡さないの!」と怒られてしまった。
そんなことをしているうちにノートパソコンは立ち上がり用意ができた。
「ほらよ。」
そう俺は言ってハルヒに俺の恋愛小説第2弾をご披露した。


俺はどこにでもいる高校生だ。そんな俺の夢描く高校生活とは、まったりと、しみじみとした普通の高校生活であった。
 しかしこんな俺の淡い夢も入学式から数日後、儚くも崩れ落ちていった。
 その原因は同じクラスでありながら、俺ら普通の高校生とはまったく違うエンジンを搭載した 一人の女子であった。
 クラスメイトがそれぞれ自己紹介するときから、いきなりその排気量の違いを見せつけられ、気づいた時には俺はその女子が立ち上げた部活動に入部させられていた。
 その犠牲者は他にも3名いたがなんとその3名もそれぞれ未来人、宇宙人、超能力者と奇怪な能力の持ち主で俺は三者三様、エキセントリックな経験をするハメになった。
 そんなわけで俺は毎日飽きることなく、常に刺激溢れる毎日を送ることとなった。
 初めの頃は迷惑極まりない、明日が恐ろしい日々だったが、人間というものは素晴らしい機能を持った生き物であり、半年も過ぎるとそれらの刺激が楽しいとさえ思えるようになっていた。
 そんな毎日を送っていた俺は精神的にも疲れていたせいか、ある変な夢を見てしまった。
 その夢とは、あの女子と俺だけしかいないもうひとつ世界、いわゆるパラレルワールドに迷い込んでしまうというものだった。
 このもうひとつ世界とは、女子が作り出した世界だった。
 現実に楽しみを失い、新しい世界を望む、女子の願いでできた世界であった。
 そんな世界に俺はただ一人歓迎されたのだった。
 その世界は灰色で、冷たくて、しかも舞台が俺のその女子が通っている学校だった。
 そしてその世界には巨大で、建物を破壊する青くて透明な生き物が存在した。
 なにもかもが違う世界に女子は感動していた。
 しかし俺は、この世界を否定した。
 女子はその意見にこう質問した。
 「あんたもつまらない毎日にうんざりしてたんじゃないの?」
 俺はこう言い返した。
 「俺はみんなのいる世界で、みんなと一緒に居たいんだ。」
 その言葉を口にした瞬間、俺は気づいてしまった。
 俺の生活の中心にいたあの女子もいつの間にか俺の『心』の中心にいることを・・・。
 たしかにお前といれることはうれしい。
 しかし俺にとってあの生活の中心にいるお前が一番好きであるなんだ。
 この気持ちをどうしたらお前に伝えられる?
 どうしたら・・・。
 俺は女子の両肩に手を置き、向かいながらこう切り出した。
 「俺、実はポニーテール萌えなんだ。」
 「いつぞやのお前のポニーテールは反則的なまでに似合っていたぞ。」
 
 「はぁ、・・・なにいってんの?」
 と、女子は戸惑った顔をしながら俺に大きな瞳を見せた。
 そして俺は次の習慣、女子に口付けをした。
 「・・・え?」っと驚いた声を出した女子だが、俺のキスに嫌がることなく、受け入れてくれた。
 俺の気持ちが届くいたのなら、もう一度元の世界で共に生きよう。
 できることなら・・・ずっと・・・。
 俺はそう祈りつつ、彼女にキスをした。
 そして次の瞬間、このパラレルワールドは崩壊し、二人は元の世界に、元の生活にもどるのだった。
 ただひとつ、違うことがあった。
 次の日、彼女はポニーテールだった。
 俺は少し嬉しくなったのでこういった。
 「似合ってるぞ。」
 
 終

読んでもらえばわかるであろう。俺は恋愛小説を書き慣れたわけではない。ただ前にあった事象を文字で表現しただけだ。
しかし。俺は前からどうしても知りたいことがあった。
ズバリ、涼宮ハルヒは俺をどう見ているのか。
古泉や長門、朝比奈さんはハルヒは俺のことを特別視しているというが、実際俺はハルヒ本人からそんな類の話は聞いたことが無い。
俺とハルヒが一番近づいた日の出来事。しかもこれは俺とハルヒしか知らない夢の話。(本当は現実の話だが、ハルヒは夢だと思っているからな。)
このことを書けばハルヒの本心が少しでも垣間見れるのでは。
そう俺は心に思いながらこの恋愛小説を執筆した。

・・・・・。

ハルヒから何の反応もない。
もう読み終わってもいい時間は経過した。

・・・・・。

ハルヒはどうやら混乱しているようだ。
しかし表情はあっけにとられたような顔をしていた。 正直かわいい顔をしていた。


ハルヒはついに沈黙を破って話し出した。
「あたし・・・、この話、知ってる。」

「そうか。」

「なんであんたこのこと知ってるの!? あれはたしかに夢だったはずなのに・・・。」

まぁここまでは期待通りの反応だな。俺はそう思いながら話を続けた。
「・・・実は俺も見たんだ。この夢。てかハルヒもこの夢見たことあるのか。」
当然、俺はハルヒが見たことを知っているが、話がややこしくなるので適当に話を合わせるために言った。
「そうなんだ・・・あんたもあの夢見たんだ。」
そしてハルヒはこう言った。
「すごいわ、違う人間がここまで同じ夢を見るなんて!」
・・・あれ?
「これはきっと、宇宙人か未来人か超能力者か異世界人が私達に対してメッセージを送ったのよ!」
あれあれ?
「こうしてはいられないわ! キョン、この夢を見たときの状況を詳しく話しなさい!」
そうして俺はこの夢を見たときの状況などを話すことになった。
ハルヒには俺の恋愛小説はもうどうでもよく、あの時の話に釘付けだ。
はぁ・・・古泉よ。ハルヒは俺より不思議現象の方が気になるそうだ。
まぁ、当然といえば当然の話か。入学当初と変わってないってことさ。

とまぁそんなこんなで昔話を小一時間程話した。
あの日の夢の話。ハルヒにとっては悪夢だったはずだが、今ではそんなことも忘れて妄想ネタとなれ果てている。
「まさかこんなところに不思議現象があったなんて・・・。気づきもしなかったわ!」
ハルヒは目をキラッキラさせながら話を続けた。
「でも今考えてみればあの夢はいつもの夢とはなにか違っていたわね。くぅ~!SOS団団長として一生の不覚だわ!」
いや、気づかなくて普通だろ?そもそも夢なんだし・・・。一応はさ。
「そうとわかれば試してみるしかないわね!」
・・・なにをだ?
「決まってるじゃない、もう一度メッセージを受け取れるかどうかを調べるのよ! SOS団始まって以来、やっと掴んだ不思議現象なんだからこのまま逃す手はないわ!」
まぁお前にとっては初めての不思議現象そうだろうけどな。
「で・・・どうやって調べるんだ?」
「あの夢の登場人物はあたしとキョンだけ。他の団員がこの体験をしているとは思えないわ。」
それで?
「あんたとあたしが同じ場所、時間で寝ればもしかしたらまたあの現象が起こるかもしれないわ!」
なんでそう思うんだ?
「そんなのカンよ、カン。だいたいこんな現象が起こったのかわからない以上、手当たり次第実行するしかないじゃない。」
真相を言ってやってもよかったが、それを言うと今まで隠してきたことの核心を伝えることになるのでやめておこう。
古泉はともかく、長門にまで怒られそうだからな。
「というわけで、キョン。あんた今日ここに泊まりなさい。 大丈夫。ママ達は帰ってこないし、邪魔者もいないし。」
「・・・ってちょっと待て! なんでそうなるんだよ!」
俺は思わず大声を出してしまった。俺がハルヒの家に泊まるなんて・・・。
「より高いシンクロにするためにもここで寝てもらうから。感謝なさい。こんなかわいい女の子と一緒の部屋で寝れるなんて、あんたの生涯で二度と無いチャンスなんだから。」
おいおいおい。一応俺だって健康な男なんだぜ!?
「変なことしたら、死刑だからね!」
だから、そういうならせめて違う部屋とかにしろよ!
「もう、うるさいわね! 団長命令よ! 文句言わないの!」

とまぁ俺は結局、団長の権力により同室で寝ることになってしまった・・・。
くぅ、これが朝比奈さんだったら・・・。俺は今日を命日にしたって構わないぜ・・・。
「なにごちゃごちゃ言ってんの? 寝るわよ。」

といいながらハルヒはベットに潜っていった。・・・あれ?俺の寝床は? せめて毛布の一枚くれたって・・・。
「早くあんたも入りなさいよ。」
・・・どこに?
「ベットに決まってんじゃない。それともあんた、床で寝るタイプ?」
・・・こいつはなにをいってるんだ?
「言ったでしょ!?より高いシンクロをするって。近づけば近づくほど、シンクロ率も上がるってもんよ。そんなこと言われなくても気づきなさいよ。」
「それは・・・つまり・・・俺とハルヒが添い寝をするってことか?」
「私の許可無しに変なことしたら、地獄行きだからね!」
そうかい。俺は天国いきたし、まだこの世にたくさんの未練もあるしね。生き延びる為にも、頑張るとするか・・・。

こうして俺とハルヒは一緒のベットで一緒に寝ることになった。
なんだ、この罰ゲーム・・・いや、ボーナスタイム?
どちらとも捕らえられるこの状態に俺の頭には今までにないアドレナリンが発生していた。

今俺は、ハルヒと背中を合わせて寝ている状態にある。
・・・正直、俺の鼓動がハルヒどころか部屋中反響しまくっているのではと思うくらい高鳴っていた。

「・・・ねぇ」
ドキィィィ!
「もう・・・寝ちゃった?」
こんな状態でそんな早く寝れるわけないだろ。むしろ、今日は寝れないかもって思うくらい頭が冴えきってるぜ。
「あの夢なんだけどさ・・・。あんた最後、あたしと・・・なにしたか覚えてる?」
・・・不意打ちもいいとこだぜ。
「あんた、さっきの話では、私と向かい合ったとこまでしか話てなかったけど・・・。」
俺は正直とまどった。その質問は確かに俺の求めていた質問に近い意味を持った質問だった。だが、このタイミングで聞かれるとは予想してなかった。
いや、そんなことはとっくの前に頭の中から消えちまっていた。
「あたしは覚えてる。 あの時の状況、あんたの顔、あんたの話したこと、あんたとの・・・。」
いやはや、今更ながらあの時はよくあんな大胆なことができたな、俺。
「どうなのよ!?」
「覚えているとも。」
忘れるわけが無いだろ。俺の始めての告白なんだからな。・・・ポニーテール萌えなんて。
「・・・じゃああの時と同じことをすれば、不思議現象起こるかな。」
なんでそう思うんだ?
「扉と一緒よ。入口も出口も場所は一緒。つまり、出口でした事をすれば、入口にいけるんじゃないかなって。」
ハルヒよ。今一度問うぞ。お前は俺と最後にしたことをすると言っているのだな?
「・・・そうよ。」
・・・その後、数秒の無言の時間が流れた。俺の気持ちの整理をするには十分の時間はあった。
無言の時間が与えてもらった俺の回答は、
「ハルヒ。お前、もう少し自分を大切にしろよ。」
「お前が不思議現象をどれだけ渇望しているのか、これまで行動を共にしてきた俺には良く分かる。だがなハルヒ。いくら不思議現象を追いかけるためとはいえそこまで自分を粗悪に扱うな。」
・・・俺はいったいなにを言っているんだ?
正直に言おう。俺はハルヒとキスしたさ。
このままの流れでいけばきっとすんなり出来た筈さ。
だが。それは違う。俺がキスをしたい相手はSOS団団長のハルヒではない。高校生、涼宮ハルヒなんだ。
好奇心からキスをするようなハルヒとなんかキスなんかしたくない。したくもない。
第一不思議と遭遇するためにほいそれとキスなんかしてほしくなかった。
そんな思いが、そのまま言葉となって具現化されていく。
「たしかにお前の言うとおりにすれば道が開けるかもしれん。だけどなハルヒ、それはお前にとって本当に心の奥底から求めていることなのか?」
ハルヒの応答はない。だが俺は構わず話を続けた。
「たかが不思議現象ひとつの為に、軽率な行動はしてほしくないんだ。・・・わかってくれるか?」

グス。

ハルヒからの応答がきた。
俺は殴られるのかと思っていた。蹴飛ばされるのかと思っていた。
この応えは確かに痛かった。しかし、体がではない。心がだった。
ハルヒは泣いていた。
そして俺は・・・抱きしめられていた。
「・・・なんだよ。」
「・・・。」
また応答が途絶えた。だんまりは長門の得意技だぞ?そもそもハルヒにこんなスキルがあったのか?
「・・・ごめん、出しゃばったこと言ったな。誤る。」
「違うの。」
「・・・じゃあ・・・なんなんだ?」
「キョンはいつも有希やみくるちゃんのことばかり気にしてたから・・・。」
「・・・。」
「あたしは見放されてるのかなって思ってたから・・・その・・・うれしいの。キョンが私のこと・・・心配してくれたことが。」

どれくらいだろう?

時間はほんの数分しか経っていないはずだが、俺には数時間のような時間が流れた。

ハルヒが俺に見せた本音。
それは今までのものとは違い、どこかテレもあり、且つうれしさからでたといった暖かい本音だった。
いつもは見せないハルヒだったせいもあってか、俺は言葉というか、思考することさえも忘れていた。
ただ、背中でハルヒのぬくもりを感じていた・・・。


夢を見た。

いつものように晴れた日。
いつものようになる目覚ましのアラーム。
「・・・あと5分。」
と、いつものように寝ぼける俺。
「ちょっと、いつまで寝てるの!?」
いつものように起こしに来る妹。
「ほんとに毎日だらしないわね。早く起きなさいよ。さもないと罰金よ!」
・・・あれ?
何か違う。というか何が違うのかはわかっている。
そうか、俺はハルヒと・・・。

ピピピピピピピピピ!

と、俺の眠りを妨げる音が当たり一面に鳴り響いた。
「・・・あと5分。」
「ちょっと、いつまで寝てるの!?」
「ほんとに毎日だらしないわね。早く起きなさいよ。さもないと罰金よ!」
ガバッ!
あまりのデジャヴに俺はあわてて目覚めた。
・・・寝ぼけているせいか、今の自分の状況が掴めない。
「おはよ。もう朝よ。」
そこにはパジャマではなく、普段着に着替えたハルヒが立っていた。
そしてようやく、頭の整理ができてきた。
「そうか、俺、ハルヒん家に泊まったんだっけ。」
夢と現実をまだ区別仕切れていないが、今の現状はなんとか把握できるくらいまで目が覚めてきてはいるが、未だに世界がぼやけている。
「まだ寝ぼけているようね。シャワーでも浴びてきたら?」
それを察してか、ハルヒは俺に古来から伝わる目覚めの方法を提供してくれた。
用は水を浴びて来いってこったな。
まぁ、俺がそう勝手に解釈しただけだけど。
「そうさせてもらうよ。」
俺はハルヒのご好意に甘えることにして、シャワーを浴びた。

浴び終わり、風呂から出ると、キッチンからなにやら音が聞こえた。
その音に導かれるかのように、俺はキッチンに向かった。
「どう? 目が覚めた?」
「ああ、バッチリだ。」
何気ない会話がそこにあった。
なんだこの会話は。まるで俺の夢の続きじゃないか。
今起きている自分の人生の展開に少々戸惑っていたら不意にハルヒが
「それじゃ朝ごはんにしましょ。」
と満面の笑みを浮かべながら食卓に座った。
それにつられ、俺もそのまま席に着いた。

「いただきます。」

なにげない朝食。
しかし、ハルヒあまりにもリアルに再現されている。気持ちの悪いくらいに。
そして俺は聞いた。
「なぁハルヒ、今朝はどんな夢をみたんだ?」
ハルヒはハムエッグを突きながら
「なんでそんなことを聞くのよ。」
と返答してきた。
「いや、なんというか、昨日の実験は成功したのかな・・・と思ってさ。俺、実を言うと朝、目が覚める夢しかみてないからさ。」
「フフ。そっか。」
なんとも不敵な笑顔を俺にしてきた。
なんだよ、その笑みは。
そしてハルヒは言った。

「団長命令よ、昨日の夢、必ず守りなさよ。」

fin

 

 


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