「あたし…本当に産まれて来て良かった。最高の人生だったわ…有希ありがとうね。」
深夜の病院。
数回のバージョンアップを経て、老婆の外見となったわたしに涼宮ハルヒが最後の言葉を告げる。
わたしもあなたにお礼が言いたい。彼も、朝比奈みくるも、古泉一樹もそしてわたしも…あなたのお陰で素晴らしい人生を送れた。感謝している……ありがとう。
「もう…最期に泣かせないでよ…ありがとうね。じゃあ…先にキョン達に会いに行くわ……お休み。」
彼女は涙を流しながらも…幸せを噛み締める様に微笑みながら最期の眠りに着いた。
涼宮ハルヒが老衰で亡くなった。
わたし…この長門有希と言う対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースの役目も終わり。やっと全ての枷から放たれ…わたしも眠れる。
しかし、わたしから溢れたのは安堵の溜息ではなく…涙。悲しいのか嬉しいのかは分からない。ただ涙が止まらない。
彼らと出逢い……人生を共にした……わたしは有機生命体の感情を理解出来るようになったはず……しかし、今の感情にわたしは名前を付ける事が出来ない。
 
時間らしい…長門有希と言う体が消えていく。
これで終わり。
今までありがとう。
さようなら。
 
しかし…長門有希という体は消去されたがわたしという情報は残された。
情報統合思念体がエラーと呼ぶモノ。
そう。わたしに生まれた感情に進化の可能性を見いだした情報統合思念体は調査のタメにわたしという情報を残したらしい。
 
 
それから地球と呼ばれる星の人類と言う種の単位で一万年と二千年が経った。
だがわたしという情報は未だに存在している。情報統合思念体は理解出来ないのだろう……感情という名の情報を……
 
あの時出逢った彼らが、何度も生まれ変わり、朽ち行く様を見守る内に……わたしは理解した。それは長門有希という体が消えて八千年後の事だった。
わたしという体が最期に流した涙。それは、彼の時も古泉一樹の時も、朝比奈みくるが未来に帰る時もわたしは同じモノを流していた。
 
そう愛故に。
 
きっと情報統合思念体は一億と二千年後も理解出来ないだろう。
 
この感情は嬉しいとか悲しいとか凡庸に使えるモノではない。
何故なら…わたしが、彼と涼宮ハルヒと古泉一樹と朝比奈みくるにだけ持つ…わたしから彼らへの愛という名の感情はわたしだけのモノだからだ。
 
わたしは、これからもあなた達をここで見守り愛し続ける。
永遠に。


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