きっと俺は、あるのかわからない目に見えない力を信じていた。



友情なんて物は簡単に壊れる。
SOS団の活動を通じて徐々に人付き合いを学んでいったハルヒは、その容姿と頭脳も合わさってクラスの人気者の地位を獲得していた。
そんな矢先、俺はひょんな事からハルヒに嫌われてしまった。
きっかけは馬鹿らしくて思い出すことすらできない些細な事。
こちらから謝る気にもならず、その内なんとかなるだろうと希望的観測を抱いていた。
だがクラスの人気者に嫌われる、というのは学生生活においてもっとも恐ろしい事だと俺は思い知る事になる。

要するに、いじめを受けるようになったのだ。

最初は無視や机に落書き程度だったいじめは加速度的に悪意を膨らませていき、殴られるのが日常となるまでそう時間はかからなかった。
なにより辛いのは友達だと信じていた谷口や国木田までいじめに加担していること。
肉体よりも精神が悲鳴をあげる。
今日の昼休みにも二人に連れ出され、俺は校舎裏で鉄の味を噛み締めながら空を眺めていた。

午後の授業の始まりを知らせるチャイムが聞こえたが立ち上がる気力が湧かない。
俺は不思議なくらいさみしい青空に手を伸ばした。
指の隙間から漏れだすように降る光を眺めながら思考の海に埋没していく。
SOS団に顔を出す事はハルヒに禁じられた。
またハルヒを観察するのに打ってつけである環境を守るため、団員達に反論する者もいない。
最後に皆と話したのはいつだったか。
古泉は
「申し訳ありませんが涼宮さんのご機嫌を損ねるような行動は謹みたいので」
と、悪怯れた風もなくいつものにやけ面で言っていた。
あいつにしてみれば俺は疫病神なのだから仕方ないのかもしれない。
今回のことでまた閉鎖空間の対策に追われるのはあいつ自身なのだから。
朝比奈さんは涙を流しながらごめんなさいと言い続けていた。
朝比奈さんを泣かせたやつは誰だ!出てこい!と一人芝居をしていると、泣き笑いの顔で俺の事をぎゅっと抱き締めてくれた。
この先どうなるのか教えて欲しかったが、禁則事項に触れそうなのでやめた。
それでも教えてくれたかもしれないがこれ以上朝比奈さんに負担をかけたくなかった。
長門はこの件の後見ていない。
最後に見たのはいつものように部室で分厚いハードカバーを読んでいる姿だ。
俺はそれでいいと思っている。

空気と混ざって希薄していくかのように頭がぼんやりとしていく。
打ち所が悪かったのかもしれない。
誰かが見つけてくれるまで寝ているのも悪くないかもしれない。

誰か教えてくれないか?
あの魔法のような幸せな日々がどこに行ってしまったのか。
ハルヒに振り回され、朝比奈さんのいれたお茶を飲んで、長門と図書館に行って、ついでに古泉とボードゲームを楽しむような毎日が。
次に目が覚めたら願いが叶っておかしくなれるような日々が戻って来ているだろうか。




俺は一人、絶望の丘で立ち尽くす。

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