クリスマスイヴ前日。「しっと団」の3人は再び一堂に会していた。
「先走ったか……『フォックス』」
「バカよね~。長門さんがいる前で戦ったって、勝ち目あるわけないのに。
あの娘に勝てるのは私だけよ。」
「随分と自信があるようですな。」
「当たり前よ。私はあの娘と戦うために「しっと団」に入ったようなものですもの。」
ガチャリ
ドアが開き、一人の人間が入ってくる。『トゥモロー』だ。
「みなさん、心の準備はよろしいですか?」
「もちろんですとも。」
「ええ。問題ないわ。」
それを聞いて、『トゥモロー』は微笑んだ。
「では、いよいよ明日、決行します。全てのカップルを、地獄に落としましょう。」
「「イエッサー!」」
さて、今日はクリスマスイヴだ。そして俺達SOS団は、セントラルタワーの入り口前にいる。
来たはいいが、具体的には何をすればいいんだ?
「とにかく警備するのよ!んで悪の親玉を見つけてしょっぴくの!」
んな無茶な……
そんでハルヒ。それは何だ。
「見てわからない?いつものつまようじクジよ。組み分けするの。」
実はこのセントラルタワー、西館と東館に分かれているんだ。
いくつかの階に連絡通路が設けられているが、基本的には別々の建物ってことだな。
まあハルヒにしては組み分けは妥当な判断だろう。
そんなこんなで組み分けが決まった。
俺 ハルヒ 朝比奈さん
長門 古泉
……断固やり直しを要求するっっ!!
戦力に偏りがありすぎる!なんだそっちのペアは!最強コンビじゃねえか!
「いえいえ、僕もここでは普通の人間なので、長門さん頼りですよ。」
頼りになる人間がいるだけマシだろ!こっちは一般人3人揃いだぞ!
「涼宮さんがいるという時点で、そちら側に敵はいないと思いますが?」
何を言っているんだ。わけわからん。ニヤニヤするな気持ち悪い。
まあそんなこんなで、物凄く納得が行かないがこの組み分けで行動することになった。
ちなみに、俺達は西館担当だ。
「キョンく~ん、涼宮さ~ん、怖いですよぉ……」
朝比奈さんがかわいらしく小動物のように震えている。
ああ朝比奈さん、俺もまったく同じ気持ちですよ。長門、せめて古泉が居てくれたらなあ…
「何言ってるの!我がSOS団に敵は無いわ!みくるちゃんも戦うのよ!」
「ひぇ~~~」
「おいハルヒ。俺達は所詮は一般人だぞ。向こうが例えば、ヤクザとかだったらどうすんだ。」
「それは無いわよ、だって谷口がメンバーにいるくらいだもん。」
確かに。そう言われてみればそうだ。
だがハルヒさん、向こうには『機関』の人間や、ヒューマノイドなんちゃらがいるかもしれないんだぜ?
もちろん口には出せないがな。
「それに……あんたが居るから大丈夫よ……頼りにしてんだから……」
え?ハルヒ、そんな小さな声じゃよく聞こえないぞ。なんて言った。
「なんでもないわよ!このバカ!」
ハルヒは朝比奈さんを引っ張ってさっさと歩き出してしまった。
おい待てよ!人も多いんだから離れると……
はい、はぐれました。
今は2階の休憩広場にいる。今は人はほとんどいない。
参ったなあ。あいつと朝比奈さんじゃいくらハルヒが強いといっても危険すぎる。
さっさと合流しないと……
「誰かお探しですかな?」
ええちょっと連れを……って聞き覚えのある声だな。……まさか!
「お久しぶりです。」
「新川さん!なんでここに!?」
「想像はつくのではないでしょうか?最も私は今は新川ではありません。」
……またこのパターンか。
「私はコードネーム、『スネーク』!」
ツッコまねえぞ、もう。
「ていうか新川さん、あなたいい大人なんだからこんなことしなくても……」
「はい、確かに私は大人ですな。今年で48歳になります。
組織の中でもダントツで最年長。正直少し浮いているのは否めませぬ。」
「はぁ……」
「そして私の彼女いない暦をご存知ですかな?」
「いえ……」
「では教えて差し上げましょう……!48年です!!」
うっわあ……これはひどい。
「今「これはひどい」とか思いましたね!?そうですひどいのです!
だからこそ、カップルを憎む気持ちも人一倍!
そしてそれを邪魔するあなたは……排除させて頂きます!」
くっ……やはりこうなるのか!
「うぐっ!」
俺は新川さんのケリを食らってしまった。モロに食らった。息が上手くできねぇ……!
「ふふ、あなたは確かに「鍵」。しかし結局は極普通の高校生。
『機関』によって鍛えられた私に勝てるはずは無いのです。」
まったくだ……そもそもこんなのと戦うのが間違ってる。
……だが!
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頼りにしてるんだからね……
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俺はよろよろと立ちあがった。
「俺は負けない。」
「ほう?まだしゃべれますか。そして、勝つおつもりですか?」
「ああ。分かるんだよ。俺が負けるワケないってな。」
「何故ですか?」
「ハルヒがそう望んでいるはずだからさ。」
そう、ハルヒは俺が負けないことを望んでいるはずさ。そしてハルヒには願望を実現する能力がある。
だったら俺に出来ることは?そう願ってくれていることを信じて戦うだけさ!
「あなたはもうここまでです。さあ止めを……」
「来い!」
「食らいなさいいいいいいいい!?」
それは、突然の出来事だった。
新川さんが回し蹴りをしようとしたその時
足をすべらせ 頭を打って
気絶した。
「………」
俺は呆然と立ち尽くすしか無かった。
これが……ハルヒパワーか。
結果オーライなのはいいことだが、俺の盛りあがったテンション、どうしてくれる……
あ!こんなことしてる場合じゃない!ハルヒと朝比奈さんを探さないと!
東館SIDE
僕達は東館を歩いています。彼には悪いですが、長門さんと一緒だと心強いですね。
「長門さん、敵の居場所はわかりますか?」
「わからない。まだ情報プロテクトがかかっている。」
「相変わらず、ですか。……敵側にいるインターフェイスに心当たりはありますか?」
「この地球に存在するインターフェイスは3人しかいなかった。
私と、喜緑江美里と、朝倉涼子。そして朝倉涼子は私が情報連結を解除して今は存在していない。」
「ということは、まさか喜緑さんが?」
「それは無い。彼女とは現在進行形で情報統合思念体を通じて連絡を取り合っている。」
「そうですか……では、誰が?」
「わからない。」
どういうことなのでしょう?朝倉さんがいない今インターフェイスは喜緑さんと長門さんだけのはず
その二人がいないのであれば、一体誰が情報プロテクトをかけているのでしょうか。
「存在しない、ってのはひどいんじゃないかなあ、長門さん♪」
!?
突然背後からした声に、僕と長門さんは振り返ります。そこには……
「朝倉涼子……」
そう、長門さんに消されたはずの朝倉さんがそこに立っていた。
「何故あなたがここに?あなたは私が……」
「ふふ、『トゥモロー』のおかげ、かな?」
『トゥモロー』……彼から聞いた話では、谷口君がボスのことをそう呼んでいたと……
ということは、その『トゥモロー』は朝倉さんを復活させることが出来る人間……!?
「でも、今は朝倉涼子じゃないのよね。」
朝倉さんはそう言うと、ナイフを取り出した
「『キラー』って、呼んで頂戴♪」
続く!