谷口こと、コードネーム『ジャッカル』がハルヒに瞬殺されたその日の夜、
4人の男女が一同に会していた。
世界のカップルを撲滅させることを目的とした「しっと団」の緊急会合である。
「たにぐ……もとい、『ジャッカル』がやられたというのは本当か?『スネーク』。」
「『ジャッカル』は、涼宮ハルヒにやられたようですな。」
『スネーク』と呼ばれる男は、淡々と説明をする。
「チッ……役立たずが。」
「そう言わないの『フォックス』君。彼がダメってことぐらい、分かってたことじゃないの。」
「しかしだな『キラー』、まさかここまでの役立たずだとは……。」
「彼はちゃんと役に立ってくれましたよ。」
『トゥモロー』は穏やかにそう言った。
言い合っていた『フォックス』と『キラー』、そして『スネーク』が『トゥモロー』を見る。
「彼に涼宮ハルヒを倒すことなんて期待していません。
彼の役割は涼宮ハルヒをセントラルタワーにおびき出すこと。
この計画を伝えれば彼女のことです、きっと首をつっこむはずです。」
「しかし『トゥモロー』。彼女を呼び出す必要はどこに?」
『スネーク』が疑問を呈した。それに『トゥモロー』は、不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「彼女がいないと意味ないんですよ……」
谷口が電波なことを言った翌日、俺とハルヒは部室で古泉、長門、朝比奈さんに昨日あったことを伝えた。
「ふぇ~、まさかそんなことがあるんですかぁ~?」
「もし本当なら、これは問題ですね……」
「……。」
古泉の言う通りだ。冗談にしちゃタチが悪すぎるぜ。
「というわけでみんな!当日はそこに乗り込んで、計画を阻止するわよ!!」
「ひぇ~、で、でも危なくないですかぁ?」
「何言ってるのみくるちゃん!私達がやらないで誰がやるのよ!!」
警察の人とかに任せればいいんじゃないか?
「何言ってるの!警察に言ったって信じてもらえるわけないでしょ!
私達がやらなきゃ!」
「あのなあハルヒ。最近ではネットにウソの爆破予告があったって警察は動くんだぞ。
事情を説明すればきっと……」
「私も彼女と同意見。」
「……長門?」
長門の意外な発言に驚く俺。
長門なら、警察も動いてくれることぐらい知っているはずだが……
「ほらね!有希もこう言ってるのよ!当日はいつもの場所に集合!
その後みんなでセントラルタワーに乗りこむわ!」
やれやれ……どうやら俺達がやることに決定しちまったらしい。
まあいざとなったら長門がいるし、大丈夫だとは思うが……。
帰り道、俺は長門と古泉と一緒に歩いていた。ハルヒと朝比奈さんは別の方向だから道は別だ。
さて……ハルヒもいなくなったことだし、ハルヒの前じゃ聞けないことを聞くとするか。
「古泉、今回の件についてどう思う?」
「さて、僕はなんとも……ただ、『機関』でそういう動きが無いことだけははっきり言えます。」
「なるほど。つまり今回は『機関』は関係無いということか。」
「いえ、そうとも言い切れません。」
ん?どういうことだ。機関では動きが無いんじゃなかったのか?
「それはあくまで『機関』全体としての動きです。個人の行動までについては把握できていません。」
「つまり『機関』の人間もその……「しっと団」とやらのメンバーの可能性があるってワケか。」
「ええ。もちろん、あくまで可能性としての話ですけどね。」
可能性であってほしいね。『機関』の連中はなんというか、べらぼーに強そうだからな。
「長門は、どう考えてる?」
少し気になることがあった。先程の長門の態度だ。
警察に相談することを止めたのには何か理由があるのだろうか?
「……先程から「しっと団」という組織に関して情報探索を行っている。」
「マジか。それで何か分かったか?」
「無理。何物かによって情報プロテクトがかけられている。」
「つまり長門さんの力による介入を、何物かがブロックしているということですか?」
「そう。そしてそのようなことが出来る存在は限られている。
私と同じように、情報統合思念体と繋がりのある存在……」
「ってことは、長門と同じ対有機なんちゃらが「しっと団」にいるってことか?」
「そう。」
おいおい……冗談じゃねぇぞ。
さっきは長門がいるから大丈夫だと思ったが……こりゃそう安心も出来ないんじゃないのか?
「大丈夫。私が守る。」
頼もしいぜ長門。
「ふふ、それは無理というものだよ。」
ん?誰の声だ。聞き覚えがあるよな無いような……
とそこで、前方から歩いてくる男の存在を確認した。お前は……!
「生徒会長!」
「これは奇遇ですね。こんなところで会うとは。」
古泉があいさつをする。しかし会長は鼻で笑い流した
「とぼけるのはよしてもらおうか。貴様らが計画を阻止しようとしていることは知っている。
そして今の俺は生徒会長ではない。「しっと団」メンバー、コードネーム『フォックス』だ。」
……またコードネームか。頭が痛くなる。
「『トゥモロー』は涼宮ハルヒがセントラルタワーに来ることを望んでいる。
だから今は始末することは出来ない。忌々しいことだがね。
だが貴様らは別だ。この場で始末してやろう!」
おいおい、まさかこんな街中でバトルするつもりじゃないだろうな!
通行人だっているんだぜ!?
「大丈夫。情報操作は得意。」
そうかい。そりゃ安心だね。別の意味で不安だがなっ!
「まずは貴様からだ!古泉一樹!
知ってるぞ!貴様最近、そこのヒューマノイドインターフェイスといちゃいちゃしてるらしいな!」
「おや、ご存知でしたか。」
「忌々しい!喜緑君は私がいくらアピールしてもまったくなびいてくれないというのに!
何故貴様だけ……!!」
うっわあ……流石は「しっと団」。全身から負け組のオーラがこれでもかと言うくらい出ている……
「それはあなたの魅力が足りないのでは?」
「黙れ!そもそも身分をわきまえろ!宇宙人なんかと付き合ってどうする!」
言いたい放題だな……って長門さん?何をしているのですか?
長門「…@@@@@@」
とその時であった!会長が古泉に攻撃をしかける!
古泉はとっさに右手で防御し……防御したら
「うわあああああ!!!」
会長が遥か彼方へ飛んでった。……なんだこれ。
「………」
古泉も口をあけたまま呆然としている。珍しい表情だな。
長門「……古泉一樹の右腕をブースト変換、ホーミングモードにした。」
つまりアレか。野球大会の時のバットと同じようになったってわけか。古泉の右腕が。
しかしそこまでせんでもよかったような気もするが……
「問題無い。それに、私と古泉一樹の関係をとやかく言われたくは無かった。」
なるほど、宇宙人と付き合ってどうするとか言われたのに腹が立ったってワケか。お熱いことで。
長門を怒らせるのはマズいってことがよーく分かった。
「と、とにかく、これで「しっと団」は残り3名ということですね。」
ようやく落ち付きを取り戻した古泉がそう言った。顔が若干赤いのは見逃してやる。
さて、クリスマスイブは2日後だ。いよいよ「しっと団」との決戦が始まる!
……って煽り文句をつけてみても、なーんかカッコつかないな。やれやれ……
続く!