SOS団結成から一年半が経過し、冬の到来を予感させる11月のある日に、
紆余曲折を経て、ようやく俺はハルヒと付き合いだした。
それからの1ヶ月間は、はっきりいって天国だったね。
二人きりだと甘えてくるハルヒのかわいさったら無いぜ?
最初はどうなることかと思ったが、こんなにも楽しいもんなんだな、恋愛ってヤツは。
そして12月下旬となった今、俺達二人は公園のベンチで肩を寄せ合って座っている。
「ねえねえ、もうすぐアレじゃない?」
「アレってなんだよ。」
「クリスマスに決まってるじゃない!」
「ああ、もうそんな季節か……楽しみだな。」
「でしょ!?あのね、行くところはもう決めてあるの!」
そう言うとハルヒは、一枚のチラシを取り出した。
「なになに?『セントラルタワー、クリスマスの日は恋人達だけの夢の楽園に!』……なんじゃこりゃ。」
セントラルタワー。二つほど隣の駅にある人気スポットだ。主に若者向けの店などが並んでいる。
俺はほとんど行く機会無かった場所だが……
「あのね、クリスマスの日にカップルで行けば、いろんな店で割引きやサービスをしてくれるらしいの!
これは絶対行かなきゃダメでしょ!!」
なるほど。クリスマスにあやかった戦術ってワケか。まあ確かに得できるのはいいことだし、
何よりそこに行くことでハルヒとカップルであるということをより実感できるからな。
クリスマスデートの場所としては、最適かもな。
「でしょでしょ?じゃあ決まりね!早速……」
「やめた方がいいぜ。」
んん!?どこからともなく声が聞こえてきた。
この声は……
「谷口!」
そう、こいつは俺のクラスメイトであり友人である、谷口である。
「チッチッチ。違うぜ。」
指を振り否定する。何が違うというんだ。あとカッコつけてもお前じゃカッコつかないからやめろ。
「俺はコードネーム『ジャッカル』だ。」
……はぁ?頭でも打ったのか?
「あんた、頭でも打ったの?」
ハルヒが俺の思ったことをそのまま言葉にしてくれた。
「友人のよしみで教えてやる。クリスマス、その場所は地獄となるぜ。
だから行くのはよした方がいい。」
「おい待て。お前は何を言っているんだ。」
「俺は「しっと団」のメンバーに入れて貰えたんだ。そう、我等がボス『トゥモロー』によってな。
しっと団の目的はカップルの撲滅。最もカップルが多くなるであろうその場所を、ぶち壊してやるのさ。」
「おい……正気か?」
「俺は正気だぜ?そして、『トゥモロー』はさらに本気だ。本気でカップルを撲滅させるつもりでいるぜ。」
「そんなこと、させるわけないじゃない!」
ハルヒが叫ぶ。
「ククク、俺達しっと団に逆らうつもりか?なら見せてやる……しっと団の力おををを!?!!」
谷口がファイティングポーズを取った瞬間、ハルヒの回し蹴りが谷口にクリーンヒットした。
おいおい、瞬殺にも程があるだろう。
「くっ……!これで終わりだと思うなよ、しっと団には俺以外にも4人いる……!」
なんか悪役がやられる時のよくあるパターンなセリフを言い出した。
しかも全員で5人かよ。思った以上に小規模で脅しにもなっちゃいない。
「しかも全員俺より強い!!」
そりゃ当たり前だ。
「冥土の土産に教えてやるよ……俺達はクリスマス、セントラルタワーを爆破す……る……ガクッ」
っていきなりヤバいこと言うな!
爆破……マジかよ?そんなことしたら……
「そんなことになったら……カップル達の幸せな時間がメチャクチャじゃない!」
そうだ。下手したらケガどころじゃすまなくなるかもしれん。
「当然阻止よ!SOS団全員集めて、しっと団の企みを止めるのよ!」
それには同感だが、なんか話が変な方向に動き始めた気がしなくもない。
俺とハルヒのラブラブデートは一体どこへ……
続く!