それはアル晴レタ日ノ事。
 夏から秋に成り代わろうとする九月手前の八月末の事。
 俺は偶然ブックオフでテニプリのアンソロジーを立ち読みしている佐々木と出会った。
 いや、偶然なのか必然なのかは俺の独断で判断出来るようなものではないのだが、
 運命によって位置づけられた必然とも言えるし全く予測されない偶然とも言えるのである。
 まぁ、SOS団という連中や、橘京子達のような存在に今まで遭遇した俺にとっては、
 必然だろうが偶然だろうが個人的にはこの小さな出来事は気にしなくて良いことなのだと思う。
 さて、そんな訳で出会った俺達は流れで喫茶店に入る事になったわけだ。
 その喫茶店というのが妙な作りで普通の席と何故か個室があった。
 俺はどちらでも良かったのだが佐々木が個室を望むから俺達は個室へ入る事となった。
 最初のうちはコーヒー等を口に入れながら本当にただ単に普通の会話を楽しんでいたのだが、
 ふと周辺近辺の話となって、超能力者、宇宙人、未来人の自慢合戦に発展してしまった。
 長門のカレーに対するこだわり自慢をすれば、九曜の歌声がかなり凄いという話で返され、
 朝比奈さんのお茶スキルについて言うと、藤原のパンジーに対するガーデンスキルの話で返される。
「古泉は我慢強さなら誰にも負けないだろうな。閉鎖空間の中で戦って戦って疲れても笑顔は絶やさないんだからな。
あれだけの精神は今時の高校生にはないだろうな。とくに柄の悪い不良なんかは」
 自慢合戦はいよいよ最後の超能力者勝負となった訳だが、勝負と言えるかどうか疑問が残るし、
 そもそも初っ端から何処が自慢なのか曖昧模糊極まりないワケ喜・・・ゲフンゲフン、ワケワカメな話もあったし、
 混沌としたこの合戦に勝ち負けが無いし自慢合戦の意味が無いのはもはや言うまでもないのだが、
 まぁ、楽しければそれで良いのだと思ってしまえば確かにその通りなのでもう気にしない。
「僕らも負けてないよ。橘さんはああ見えて殺人的料理を作るのが物凄い得意なんだ。
この前作って貰ったんだけどそれはそれはもう三途の川が見えるくらい美味しくなかったね」
 うん、やっぱり自慢合戦なのかもう微妙すぎる。
「それは人物自慢なのか?」
「どうかは人の定義によって異なるだろうけど、超人的味覚というのはある意味自慢ではないかな?」
「なるほどな」
「橘さんといえば・・・・キョン」
「ん?」
「悩み相談聞いてくれるかな?」
 ズイ、と佐々木が前のめりで顔を近づけてくる。古泉とは違って悪い気はしない。佐々木だからな。
「どうした?」
 真剣そのものの佐々木の顔を俺はずっと凝視していた。
 その顔は段々と赤みを帯びてきて、何かを堪えているかのように微妙な表情になっていく。
「えっと・・・ね、キョン・・・あの、その・・・橘さんのことなんだけどね・・・」
「あぁ」
 急にモジモジとしだした佐々木が可愛く見えて仕方が無く、話を聞けるか不安がある。
 俺は佐々木が好きなのだから好きな人フィルターの効果も相まって凄まじくヤバいというか、
 もはや朝比奈さんを超えるザキューティストガールとして目に映ってしまうそれは、
 俺の集中を四方八方に飛散させるには十分すぎるほど魅力的なのだ。
「・・・そのぉ・・・えっと、彼女さ・・・あ、あ・・・アナ、ルに興味持ちはじめ、ちゃってさ・・・」
「・・・はぁ?」
 だが、まぁ、いくらなんでも話の内容が素っ頓狂過ぎるとそうでもないわな。
「そ、そのね・・・わ、解らないんだけど、その・・・うん・・・・・」
 アナルという言葉を言ったときから物凄い顔が急激に真っ赤になって今では最高潮。
 佐々木は初なんだな~と思うと感情がこみ上げてきてドドドドーと波のように押し寄せてきて、
「今の佐々木、物凄い可愛いぞ」
 と思わず声に出していた。我ながら素晴らしいぐらいあっさりと言ったと思う。
「へ!?」
 佐々木もびっくりだぁ、と言わんばかりの顔で俺を見ている。
「なんでもない。で、それでどうしろと?」
「そ、それで・・・そのぉ・・・キョンがよければなんだけど・・た、橘さんのそこを・・・いじりまわしてやって欲しいんだ」
 ・・・・・・。
 どういう状況なんだろうねこれは。
 まぁ、落ち着いて考えると断る理由は無いよな。
 橘は物凄い可愛いし、あいつのアナルを弄り回せるのはありがたいかもしれないな。
 何て思ったとき。
「ちょっと待ったー!!」
 店内に轟く聞きなれた叫び声が近付いてきて個室のドアがドカーンをぶち破られた。
「・・・なんだハルヒ」
「今の話はバッチリ聞かせてもらったわ」
 何処から聞いていた、なんて事は聞かないさ。
 月臣学園の新聞部の部長さんみたいに触れてはいけない事がこの世には存在するのだと、
 この一年以上の間に色々と強制的に学ばされた俺は迂闊な事はしないさ。
「で?」
「その権利を巡って私とバトルなさい!!」
「争奪戦か?」
「そうよ!!」
 ハルヒのオーラが物凄い膨れ上がっている。そんでもって何かスタンドが見える。
 っていうか、俺は別にどうでも良いんだけどな。丁度良いや。
「しなくて良い。ハルヒにくれてやる」
 こいつにくれてやろう。
「え? ほ、本当に!? ワーイ!!」
ハルヒは物凄い勢いで喫茶店を飛び出していった。
「・・・良いのかい?」
「あぁ。生憎俺は好きな女性が居るのでね」
「そうか・・・」
「なぁ、そんなわけで佐々木。俺のアリスになってくれないか?」
「・・・え?」
「俺はお前が好きだ」
 言った自分でもビックリのワケのわからない展開。だが、巡った歯車は止まらない~!
 振られたらさらば青春フォ~エバァ~♪
「ぼ、僕なんかで良いのかい?」
「佐々木が好きなんだ。唇も、目も、顔も、声も・・・全てが」
 長い長い耳を劈くような沈黙が個室の中に響く。ふと佐々木が恥ずかしそうに微笑んだ。
「僕でよければ・・・君と共に居させて欲しい」
「・・・ありがとう」
 こうしてその日は終わった。
 
 
 あれからしばらくしたある夜。俺は今、佐々木の家に居る。
 今日はご家族が全員外出してる為、居るのは俺と佐々木だけだ。
「キョン、君は今ここに居る事を少し怖いと思っていないかい?」
 佐々木が俺を見据えて微笑を浮かべている。
「・・・まぁ、確かに怖いな」
 やや赤く火照った、白い肌を俺はそっと抱き締める。
「ならどうしてこの道を選んだのかな?」
 服を纏ってないから直接肌の温もりがあたる。
 これが服越しに感じていた佐々木の温もりなのかと思うと、なんか、うん、照れるものだ。
「俺のアリス、君が望んだからさ」
 そんな照れ隠しも含めて俺は大仰に答えてみた。
「僕が望めば君はそれを叶えてくれるのか?」
「当然。お前が好きだからね、佐々木」
「そうか。ふふっ・・・僕も君が好きだ」
「・・・なぁ、佐々木」
「何かな?」
「さっきお前が言った質問をそっくりそのまま返すが、お前は今ここに居る事を怖いと思ってないか?」
「・・・・・うん。でも覚悟は出来てる。痛みの果てに喜びがあるなら、痛みを甘んじて受け入れるよ」
「・・・力抜けよ? 俺を掴むのは良いけど」
「やっぱり怖くて・・・」
「やめるか?」
「ううん。大丈夫・・・きて、キョン」
 
・・・・・・・・・・。
 
 事の後。
 俺達は衝撃の事態に陥っていた。
 明らかに俺のミスであるのだが、いやまさかこうなるとは思って居なかったわけだし、
 これは何と言うべきか何と言わせてもらえば良いのか解らないぐらい混乱しているのだが、
 まず佐々木に謝るべきなのだろうという事は解った。
「どうしよう」
「まさか、穴が開いてたなんてな・・・・・すまん」
「・・・・・」
 佐々木は黙って俯いている。あ~、これはピンチだっぜ。
「えっと・・・佐々木。万が一の時には俺が責任を取るから・・・心配するな」
俺がそう言うとあたかもカタツムリのようにゆっくりと顔を上げて俺を見る。
「・・・そうか。キョンは僕の願いを叶えてくれるんだもんね?」
「あぁ」
 何だその笑顔は、と疑問というか恐怖というか、何だかわからないものに包まれつつ俺は頷いた。
 ふと佐々木の顔がぎゅん、と近付いてきて俺の唇に当てられる。
「キョン・・・。この結果がどういう事になろうとも、つまり出来ようが出来まいが僕と・・・いや、私とずっと一緒に居て欲しい・・・・・」
 上目使いでそう言われ、拒否出来るだろうか。いや出来まい。
 さて、これだけ愛しい人に、これだけの事を言われた俺は返答をする必要があるわけだが、
 まぁ、返す言葉なんて考えなくてももう決まっているわけで、それをもって返事となせば良いんだ。
「俺のアリス。君が望むならどこまでも一緒だ」
 
 
なんてロマンチックな夜を俺達は過ごしてたのだが・・・。
 
世の中というのは物凄い広いもので、
 
 
「ハルヒ様ー! もっと私のアナルを苛めてくださいー!!」
「もっともっといじめてあげるわよ・・・へへへ!」
「んぁー!! アッー!!」
 
ビクッビクン・・・。
 
「あふぁ・・・あ・・・・・」
「何惚けてるのよ。ほら!」
「や、らめぇ・・・あ、またきちゃう・・・来ちゃうのぉ・・・アッー!!!」
「もっともっと・・・あはははは、アハハハハハ!!」
「ハルヒさま・・・ハルヒしゃまー!!」
「橘さん、もっと足掻いて、もっと喜びなさい! ほら、変態でしょうがッ!!」
「ひゃい! 私はアナルいじられて喜ぶ変態ですぅ!!」
 
 
こういう夜を過ごした奴も居るようだ。
翌日学校にやってきたハルヒは物凄い目の下にクマを作っていて
「・・・やっぱり私は男の人に攻められる方が性分にあってるみたいなんよねぇ・・・」
だとさ。やれやれ。


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