(※ これは鬱エンドのssです。人が死にます。ご注意ください)

 

 

みくる「キョンくん、来てくれたのね」
キョン「どうしたんですか朝比奈さん。突然、校舎裏にきてくれなんて」
みくる「キョンくんに話があるの。聞いてくれる?」
キョン「話ですか。部室や電話じゃできない話なんですか?」
みくる「うん……。実はね。昨日、街へ買い物に行った時に私、すごい物を拾っちゃったんです」
キョン「すごい物?」
みくる「キョンくん、デスノートって知ってる? 名前を書かれた人が死んでしまう、ノートの話」
キョン「知ってますよ。有名な漫画だし、映画化もされてますから」
みくる「……あのね。驚かないで聞いてね。こんな現実離れした話をできるのは、キョンくんだけだから」
キョン「まさか、デスノートを拾った、なんて言うんじゃないでしょうね。そんな物が実在するわけないじゃないですか。あれはフィクション世界のアイテムなんですから」
みくる「デスノートじゃないんですけど………それに類するとしか思えない物を拾っちゃったんです。本当なの! 信じてください!」

キョン「そんな……。まさか、冗談ですよね?」
みくる「本当なんです。自分でも信じられないんですけど。……それが、これなの」


キョン「……バット、ですか?」
みくる「そう。でもね、これただのバットじゃないんです。これで人の頭を殴ると、殴られた人は死んでしまうんです」
キョン「そ、そんな馬鹿な」
みくる「本当なんです! 昨日、偶然会った古泉くんが 『ここで朝比奈さんと出会ったのも、運命かもしれませんね』 なんてキザなこと言うから、やだ~って言いながらジャレて肩を叩くノリで古泉くんの延髄を殴ったら……」
キョン「古泉が……死んだって言うんですか……?」
みくる「……はい。私、どうしたらいいか分からなくて……」

キョン「落ち着いてください、朝比奈さん。とりあえず、冷静に話しましょう」
みくる「私、こわいんです! こんな呪われたバットを拾ってしまって……私……どうしたらいいのか!」
キョン「古泉の死体は、どうしたんですか?」
みくる「周りに人がいなかったから、思わず逃げてきちゃったから。たぶん、誰かが見つけて警察に……」
キョン「そうですか。困ったことになりましたね。古泉の死は、仕方ないこととして済ますにしても、朝比奈さんが警察に逮捕されないようにしないと」
みくる「キョンくん、私をかばってくれるんですか?」
キョン「当然じゃないですか。俺たちは仲間ですよ。困った時には助け合わないと。それに、俺に助けてもらいたかったからここに呼んだんですよね」
みくる「キョンくん……。ありがとう!」

 

 

 ~次の日~

 

 

警察「すいません。あなたが、朝比奈みくるさん、ですか?」
みくる「はい? そうですが。どちらさまでしょう?」
警察「私、大石といいます。少しお話、よろしいでしょうか?」
みくる「あ、は、はい……(これ、警察手帳!?)」
警察「昨日、街でこの北高の男子生徒が殺されているのが発見されたんですよ。被害者は古泉一樹さんという方なのですが、ご存知ありませんか?」
みくる「古泉くんとは、同じ部活の、お友達です」
警察「お友達、ですか。じゃあ、昨日一緒に街へお買い物に行った、なんてことはないでしょうか?」
みくる「いえ。私は昨日、一人でいましたので。古泉くんとは会っていません」

警察「本当に? おかしいですねえ。昨日、あなたと古泉さんが仲よさげに話しているのを目撃している人がいるのですが」

 


みくる「……くっ!」
警察「あ、ちょっと! 待ちなさい!」

みくる「なんで警察が!? 私と古泉くんが一緒にいたところは、誰にも見られてないはずなのに!」
みくる「もしかして、キョンくん? キョンくんが警察に話したの!? そうに違いない。あのことを知っているのは、彼だけだもの」
みくる「そんな……。信じてたのに。彼なら私のこと、助けてくれるって信じてたのに!」

 

 


キョン「ま、待ってくれ朝比奈さん! 本当に俺は話してない! 信じてください」
みくる「信じてましたよ! でも、キョンくん以外に警察に通報できる人は他にいないんだもの!」
キョン「何かの間違いです! 本当に、俺は言ってない! だから……!!」

 

 

みくる「はあはあ……」
みくる「はあはあはあ………!」

 

みくる「……死んじゃった……。キョンくん……」
みくる「10回しか殴ってないのに……。やっぱり、これは呪われたバットなんだわ!」

 

 

みくる「ここまで来れば……。しばらくここに身を潜めて、ほとぼりが冷めるのを待とう」

 

 


みくる「………古泉くん。………キョンくん」
みくる「……ぅぅう……ひぐ………」
みくる「………誰か…。誰か」

 

みくる「……あれから、何時間たったかな。おなか、すいたな……」

 


ハルヒ「みくるちゃん? やっぱり。みくるちゃんだ」
みくる「!? 涼宮さん」
ハルヒ「どうしたのよ、みくるちゃん。そんなにボロボロになって。やだ、すごい顔。ちょっとこっち来なさいよ。拭いてあげるから」
みくる「……ううぅ……。涼宮さ~ん! ぅえぇぇん!」
ハルヒ「ちょっと、どうしたのよ!?」
みくる「だって、だって、だってぇ!」
ハルヒ「みくるちゃん……」

 

ハルヒ「なんでよ」
みくる「え?」
ハルヒ「なんで、古泉くんだけじゃなくて、キョンまで……」
みくる「!」
ハルヒ「ね。警察に、行こう? 一緒に行ってあげるから」
みくる「ま、まさか……涼宮さんが……警察に?」
ハルヒ「ちょっとムシャクシャしてたのよね? 受験勉強でイライラしてて、ついやっちゃっただけなのよね? ね? じゃないと、みくるちゃんがこんなこと、するはずないものね?」
みくる「うわあああああああああああああ!」

 

 


みくる「………」
みくる「……どうしよっかな」
みくる「私が、この時代にいる意味、なくなっちゃった」
みくる「今度は、どこに逃げようかな」
みくる「………つかれた……」

みくる「そうだ……逃げる前に、あそこへ行こう……」

 


ピンポーン

 

藤原「はーい」 ガチャ

 

ゴスッ

 


みくる「ああ、すっきりした」
みくる「さて。逃げよう」

 

 

橘「やだぁ、佐々木さんったら。もう~」
佐々木「ふふ」

 

みくる「こんにちは」
佐々木「こんにちは。えと、確かキミは、キョンのお知り合いの朝比奈さん、だったよね?」
みくる「覚えててくれたんですね」
佐々木「記憶力には、けっこう自信があるんでね。キョンは元気にやっているかい?」
みくる「ええ。キョンくんも古泉くんも元気ですよ」
橘「古泉さんは余計ですよ~」
みくる「そんなことないですよぉ」


佐々木「しばらく彼にも会っていないな。今度、会いに行こうかな」

みくる「すぐにあわせてあげましょうか?」
佐々木「うん? 彼は、近くにいるのかい?」
みくる「ええ。とっても近くにいますよ」
佐々木「へえ。じゃあ、ちょっと挨拶程度に会っておこうかな」
みくる「じゃあ、今。あわせてあげますよ。うふふふふ」

 

 

みくる「すごいな、このバット。ちょっと叩いただけで人が死んじゃうなんて」
みくる「すごいなぁ」
みくる「あ、いけない。こんなことしてる場合じゃないや。早く逃げないと」

 

 


警察「本当に、こちらに朝比奈みくるさんは来ていないんですね?」
長門「………本当。彼女とは、2日前から会っていない」
警察「そうですかぁ。それじゃ、もし彼女をみかけたらこちらまで、ご連絡ください」
長門「………わかった」

 

バタン

 

みくる「よかったんですか? 私を隠したりして」
長門「………かまわない。あなたは、同じSOS団の仲間」
みくる「でも……知ってるんでしょ? 長門さんは。私が、なにをしたか」
長門「………私が、仲間だと思っている人間は。もうあなたしか残っていないから」
みくる「……うらまないんですか?」
長門「………あなたにまで、いなくなってもらいたくないから」
みくる「……信じても、いいんですか?」
長門「………それは、あなたの勝手」
みくる「………」

みくる「じゃあ、信じさせてください。長門さんのこと。お願いだから」

 

 

みくる「長門さん、お茶がはいりましたよ」
長門「………」
みくる「また本読んでるんですか? 今日は土曜日なんだし、たまにはお買い物とか散歩とかどうです?」
長門「………私がいないと、あなたはひとりになってしまう」
みくる「長門さん……」
長門「………心配しないで。私はずっとあなたを、守ってあげる」
みくる「……ありがとう……。ありがとうございます、長門さん、ありがとう……うわああぁぁぁん」
長門「………泣かないで」

 

 

 

みくる「私がここに来て、何日たったんだろう」
長門「………今日で、10日経つ」
みくる「なんだか、こうして長門さんと一緒にいると、分かったような気がする」
長門「………なにが?」
みくる「生きてるっていうことが」
長門「………そう」

 

長門「………あのバットは?」
みくる「うん。隣の部屋においてある。もう、使うつもりはないよ。一生」
長門「………そう」

 

 

 

 

みくる「あれ?」
みくる「あれれ?」
みくる「長門さん? どこに行ったんですか? 長門さん~?」
みくる「買い物かな」
みくる「せっかくご馳走つくったのに」

 

喜緑「こんにちは、未来人さん」
みくる「あなたは、長門さんと同じTEFIの喜緑さん?」
喜緑「今日は、あなたに伝えることがあってきました」
みくる「なんでしょう?」
喜緑「長門有希は、情報統合思念体によって消去されました」
みくる「………え?」
喜緑「長門有希は、涼宮ハルヒの観測を行うために作られたTFEI。涼宮ハルヒがいなくなった以上、その存在に意味はなくなりました。だから、破棄されました」
みくる「ちょ、ちょっと待ってください! それじゃ、長門さんは……」
喜緑「ですから、破棄されました」

みくる「ああ……あああ………ああああああああああ!!!」
喜緑「や めて  くださ …………」
みくる「消えて、消えて、消えて! 私の前から消えて!!」

 

ガッ

 


みくる「長門さん………またやっちゃった。私、どこに行けばいいのかな……」

 

 

 

 

みくる「あはははは、すごいなあ。廊下が真っ赤だ」
みくる「すごーい。みんな真っ赤になっちゃった。なんかきれい~」

 

みくる「あれ。鶴屋さん、いたんだ。全然気づかなかったよ」
みくる「まあ、居ても居なくても同じだけどね」
みくる「みんな真っ赤なんだし。鶴屋さんだってきれいになっちゃったもんね。よかったね」

 

みくる「ああ、おかしい」

岡部「もうやめろ、朝比奈!」
みくる「あれぇ、キョンくんたちの担任の先生だ」
岡部「学校の周りは警察に包囲されている。もう逃げ場はないんだ。これ以上罪を重ねるな」
みくる「罪じゃないですよ~。これは、このバットが呪われているだけなんです。ただ、それだけのことなんです」
岡部「そのバットを置いて、こっちへこい。な?」
みくる「………先生も、同じですよ」
岡部「え?」
みくる「このバットはですねえ。すごいんですよ。魔法のバットなのです」
岡部「ぐわっ! くぅ……、よせ、朝比奈!」
みくる「あれぇ? あれれぇ? なんで?」
岡部「そのバットをよこすんだ!」
みくる「なんで? なんでですかぁ? なんで先生は殴っても死なないんですかあ!?」
岡部「くそ、血で滑って……! 観念しろ、朝比奈!」
みくる「ずるい、ずるい! インチキです! 先生はインチキしてるんです! ずるいことしちゃいけませんよ! 死んでくださいよぉ!」

 

みくる「それがルールなんですよぉ!」

 

 

みくる「はあはあ!」
みくる「はあはあはあ!」

岡部「待て、朝比奈!」
みくる「嫌です。インチキしてる先生の言うことなんて聞けません!」
岡部「なんのことを言ってるんだ、そこから先は屋上だぞ」
みくる「はあはあはあはあ!」

 

 


みくる「あ~、今日は満月だ」
みくる「………きれい」
岡部「朝比奈!」
みくる「きもちいいなぁ」
岡部「何してる、朝比奈! 下がれ、落ちるぞ!?」
みくる「あれ? 学校のまわりにパトカーがいっぱい。なにかあったのかな?」

 


みくる「ランプがきれい。真っ赤に光ってる。おもしろいなあ。長門さんにも見せてあげたいな」
みくる「岡部先生、カメラもってませんか? 写真とって長門さんに見せてあげるんです」
岡部「朝比奈……」


みくる「あれ? 先生もってないんですか? じゃあ、キョンくん、持ってないですか? あれ? キョンくんいない」
みくる「涼宮さんは持ってませんか? あれ? 涼宮さんもいない。またパソコンでも調達にいってるのかなあ」
みくる「古泉くんは持ってますよね? 古泉くん? あれあれ? どこにいるの?」

みくる「どうしてみんな、いないんですか? こんなに大騒ぎなのに。こういう時に活動するのがSOS団じゃないですかぁ」
みくる「まったく。どうしてみんないないんですかぁ。長門さんはカメラ持ってないですかぁ?」


みくる「長門さん?」

 

みくる「ながとさぁん?」

 

みくる「あ。そうだ。長門さん、いないんだ」

みくる「ああ、涼宮さんもキョンくんも古泉くんもいないんだった」

 

みくる「………」
岡部「朝比奈、よせ! あぶない!」

 

 

 

みくる「みんな~。私もそっちにいきますよ~」

 

 

みくる「うけとめてくださいねぇ」

 

 

 

 


 ~おしまい~

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最終更新:2020年12月17日 22:48