今年は冷夏とか誰がいったんだろうな?猛暑だよ猛暑。

ここは俺の自宅、そして俺の部屋である。
一般的な高校生の1人部屋としてふさわしいのかどうかわからんが、クーラーなんて高級品はない。
あってもせいぜい扇風機とうちわくらいだな。
あと、妹が図工の時間に作ったやたらとガランガラン五月蝿い風鈴。
教師よ風鈴はそれ自体が鈴なんであって、中にでっかい鈴を仕込むもんではないとなんで教えてやらなかったんだ。
あと、いらなくなったからって俺の部屋に飾るな妹。

そんなわけで、とてつもなく温度が上がった上に、涼をとる術を失っていた俺たちはさっきから黙りっぱなしだった。


「あつい。」
堰を切ったようにそうつぶやいたのは、ご存知涼宮ハルヒ。

こんな時期になっても宿題が一向に減らないことを危惧し……もとい
『そんなもんちゃっちゃと終わらせなさいよ!!夏休みは残り少ないのよ!?
宿題が終わってないから〜 なんていう理由で活動サボったりしたら死刑よ!死刑!!』
という学生にあるまじき発言ととも、我が家に踏み込んで来た。
そんなにいうなら、お前のノートを丸写しさせてくれ。一番の近道だ。
んが、例年通りやすやすと見せてはくれない。
『あたしの写したら、あんたの普段の成績じゃ考えられないような仕上がりになっちゃうわよ。 それで、休み明けのテストはボロボロ。
写しましたーって両手あげて言ってるみたいなもんよ。』
……いえっさー。というわけで、解らないところは質問しながら空白を埋めて行く作業にとりかかっていた。

普段しない勉強をしてるせいもあるが、ただでさえこの暑さだ。頭も茹だる。
そこで、ルールを作った。
『暑いと言ったら負け』
小学生か!! だいたい何に対しての負けだよ?
『夏に対してよ! たかが気象に屈することは無いわ!!
あ 負けた方はアイス!ダッシュで買いに行くこと!』
……アイス 食いたいだけじゃないのか?


途中、扇風機の首フリをハルヒに固定されたり、うちわで自分を扇いでいたら
『あたしを扇ぎなさい!』という女王様発言に対して、手に持つそれで頭をベシベシ叩き続けていたところ
二刀流で反撃が来たりと、わーわーやってて暑さはどんどん増していった。



そして、その時は来た。
もともと、口数は少ない方だからな。年がら年中マシンガントークのお前にこの勝負に勝ち目は無かったのさ。
それにな、俺はこの1年間で我慢ならそこいらのヤツに負けないスキルを獲得してるんだ、 誰かさんのせいで。
さ アイスはなにを買って来てもらおうかな〜 ジャイアントコーンかスーパーカップのクッキー、どっちにしようかな。
人に奢ってもらうってだけで気持ちが軽くなるもんだ。
まぁ 俺も鬼ではない。超激安こどもの味方ガリガリくんで許してやらんことも………


背中がずしりと重くなった。っていうか  暑い。
「ハルヒ、なんだ。」
「いや 暑いかなーって。」
いやいや暑いよ!わかってやってんのか。そんなことよりも、カラダが……
ハルヒは、手を前に回し、俺の背中にカラダをべーっとり預けていた。
ふ ふにふにする、って何考えてんだお前は!!

「だって ずるいわよ。言い忘れてたけどあたし、暑いの苦手なんだから。
ハンデもらってもいいくらいよ!5回までOKとか。」
小学生か。
はぁー もう わかったよ、俺が買ってくるから。降りてくれ。いろいろヤバイ。
「…………。」
動かない。ただのしかばねのようだ、じゃなくて。
「ハールーヒー  あつい ギブアップ!」
「…………。」
お前は長門か。 暑いの苦手なんだろ? 離れてくれ。
「………苦手だけど 好きになったみたい。」
「え  ?」
腰にまわされていたハルヒの手が、きゅっと力を込めて結ばれていた。



「で、結局俺も買いに行くのか?勝負はどうした。」
「あら さっきキョンもあついって言ってたからおあいこよ。
それに団長には200PT先に与えられてるはずだから、むしろあたしの逆転満塁勝ちだわ。」
そういうのを理不尽か傍若無人っていうの知ってるか? やれやれ……
ため息をつきつつ実はそんなに嫌な気がしない。

ほてった手をつないで、体温を共有しながら、太陽の下へ。

今年の夏は、去年よりあつい。



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