※このお話は『えれべーたー☆あくしょん りた~んず』の後日談です※



清らかな水の中を流れる黄色がかった麺を、細い箸の先がさっとたぐり寄せます。それを小振りのガラス器の中のつゆに浸して、会長はずぞぞぞっ!と一息に中華麺をすすり上げました。


「いかがですか、お味は?」
「うむ、悪くない。『冷やし中華』ならぬ『流し中華』というのは、俺も初めて食べたが」


サラダのように添えた、チャーシューやら細切りのきゅうりやら錦糸卵やらも一緒にもぐもぐと咀嚼しながら、


「これはこれで、なかなか乙な物だ」


そう言って会長は、さらにもう一すくいした麺を豪快にすすり上げました。
その健啖ぶりにわたしは思わず、ふふっと小さく笑ってしまいます。学校などでは決して見せたりしない、ここがわたしの家だから、二人きりの食卓だからこそ見せてくれる、それはわたしだけの彼の素の姿です。


「お口に合ったようで、何よりです。でもこの機械、本当はそうめんを流す物なんですよね」


追加の中華麺を水に流し入れながら、わたしはしげしげとテーブル上の機械を眺めました。卓上コンロほどの大きさのそれは、正式には『家庭用電動流しそうめん機』という名称の装置だそうです。つい先刻、商店街サマーセールの福引で当てたばかりの懸賞品で、せっかくだからとこうして使ってみているのですが。

 

「確かにその通りだが、晩飯用には既に冷やし中華の材料を買い揃えてしまっていたのだから、致し方あるまい。これでも十分風情は楽しめるしな。
それとも穏健派の喜緑江美里としては、やはり様式美というものにこだわりたいのか?」
「そういう訳でもないですけど」
「大体こういう物は2、3度もやれば、飽きて使わなくなってしまうものだ。普通に器に盛った方が楽だし、第一そうめんなど季節物だからな。
いったん物置に片付けたら出すのが面倒になって、以来ずっと眠ったままという事が案外多い。そうなる前に、バザーか何かで処分した方が良いかもしれんな」


薬味類をつゆに足しながら、会長はさも当然とばかりにそう言い放ちます。けれどもその一言に、わたしはお箸を止めて、わずかにうつむいてしまいました。


「バザーになんて…出したりしませんよ」
「うん?」
「だってこの流しそうめん機は、会長が引き当ててくれた物じゃないですか。
あなたと一緒に買い物に出掛けて、思いがけず福引のチケットを貰って、そうしてあなたがガラガラを回してくれたから、頂いた景品じゃないですか。たとえどんなにつまらない物でも、処分なんて出来ません」


消え入りそうなか細い声でそう告げるわたしに、会長は一瞬目を見開き、それからやれやれといった様子で苦笑しました。


「意外だな。お前は物事を、もっとドライに考える奴だと思っていたが」
「…誰のせいで、こうなってしまったと思ってるんですか」

「はて、一体どこの誰のせいやら?」


唇を尖らせたわたしの前でわざとらしくとぼけてみせながら、会長はまたずるずると中華麺をすすり上げます。まったく、この人はいい性格をして…ひゃっ!?
反射的に小さな悲鳴を上げてしまって、わたしは慌ててたたずまいを直しました。だって、いきなり何かがわたしのふくらはぎに触れたんですもの。


この部屋に居るのはわたしたち二人きりなのですから、“それ”の正体が何かは分かりきっています。そう、テーブルの上では平然と食事を続けている会長の、しかしテーブルの下で伸ばされた爪先が、わたしの脚をふにふにと撫ぜ回していたのです。
わたしが拒むように身をよじってみせても、むしろ会長の爪先は大胆にスカートの内側、ふとともの辺りまで絡み付いてきます。ああもう、どうしてあなたという人はこういういたずらばかりを…。
だ、だいたいなぜ今さら、こんな真似をするんです!? 会長がお望みならばわたしは、んっ、謹んで応じてさしあげるというのに…。


「あいにくだが、それでは趣きという物が無いからな」
「お…おもむ、き…?」
「そうだ。たとえばこの流しそうめんというのは、味自体にはさして変化は及ぼさない。だが流れる水の演出を加える事で、我々は清涼感をも味わう事が出来る。
それと同様に、だ」


頬を赤らめ、息を荒くするわたしの向かいで、会長はニヤニヤと笑いながら得意げに解説を続けていました。


「単に愛おしいからコトに及ぶというだけでは、いまいち芸が無い。どうせならこうして背徳感を煽り立てた方が、より燃えるというものだ。
ことに江美里、普段は聡明な生徒会書記として皆から尊敬と憧れの念を抱かれている、お前のような女を相手にする時は、な」

 

 な、何が背徳感ですか。その実はただわたしを弄び、辱めたいだけのくせに。この人は本当に筋金入りのサディストなんですから!
それは確かに、食事中に突然襲われるというこのセクハラじみたシチュエーションにはぞくぞくと倒錯した悦びを、はンっ…、感じなくは、ないですけれど…。


「どうした? 目がとろんとしてきたな」
「…だから、それもこれも誰のせいだと思ってるんですか」
「ふっ、一体どこの誰のせいだろうな」


拗ねてそっぽを向くわたしに、会長はくっくっと愉快そうに笑いながら腰を上げ、テーブル越しにわたしとの距離を詰めてきます。頬に手を添えられ、強引に反対側へ振り向かされると、すぐ目の前には会長の切れ長の瞳があって。わたしは雰囲気に流されるまま、彼と唇を――。


しかし、その時。
わたしは、ハッと表情を強張らせてしまいました。心身の全てを支配していた官能の波が、あっという間に引いていきます。まるで夢から醒めたように、突然現実に戻ったわたしの様相に彼も気付いたのでしょう、会長は浮かせていた腰を椅子に落として、ふむとひとつ鼻を鳴らしました。


「どうやら、急な用事のようだな」
「ええ。ちょっと支援要請が入りまして」
「やはり涼宮ハルヒ絡みか…。いや、聞くまい。俺がお前の領分に足を踏み入れても、ただ事が面倒になるだけだろうからな。
行って来い、江美里。後の片付けは俺がやっておく」
「………ご厚情のほど、感謝いたします」


そ知らぬ顔で再び食事に戻った会長の態度に、わたしは席を立って合鍵をテーブルに置き、深く一礼してから玄関へ向かいました。
背後から聞こえる流しそうめん機のモーター音が、やけに単調に耳に響いていました。

 


 

 玄関の扉を閉めたわたしは、冷房の効いた室内とは真逆の、ねっとりと湿気をはらんだ夕刻の外気に、ふぅとひとつ息を吐きました。いえ、夏の蒸し暑さに辟易としている訳ではありません。情報端末たるわたしにとってはこの程度、どうとでもなる事です。
わたしを嘆息せしめているのは、どうにも制御しがたい感情の揺らぎでした。


(わたしは…引き止めて貰いたかった…?)


すぐさま「何を馬鹿な事を」と理性的な自分がその考えを一蹴します。わたしが何の為にここに居るのか、ここに居続けるために何を為さなければならないのか、そんなのは考えてみるまでもない事です。
それはもちろんあの人にも分かっていて、だからこそ会長は素っ気なくわたしを送り出したのでしょう。実際、あの人に引き止められたとしてわたしはただ困惑するばかりですから、だから会長の判断は正しいのです。

 でも。それでも。
もしもあの時、わたしの手を掴んで『行くな、江美里』と言われたなら…?


「何をくだらない妄想に耽っているんでしょうね、わたしは」


ぽそりとそう呟いたわたしは、次の瞬間には渡り廊下の柵に手を掛けてその向こう、黄昏の空に向かって一息にジャンプしていました。

 たちまち、わたしの体は40メートルほどの高さを落下していきます。ハイビスカス柄の南国風ワンピースの裾も、会長が「この柔らかなウェーブと甘い芳香に溺れたくなる」と褒めてくださった髪も、逆巻く気流の中で狂ったようにはためきます。
けれどもわたしは、至って冷静でした。この程度、情報封鎖空間に向かってダイブする事などに比べれば、全く何でもありません。


「属性変更申請、ステルス。重力負荷制御、及び視聴覚遮断フィールド展開」


高速詠唱からステルスモードへ移行したわたしは、3.47秒後にはアスファルトの地面に音も無く着地していました。
時刻は宵の口の頃。まだ帰りそびれていた鳩たちの内の一羽がこちらへ首を向けますが、それ以外には特に留意する事柄もありません。競歩のような前傾姿勢で、わたしは目的地の駅前繁華街に向かって足早に歩み始めました。


…何をしているのでしょうね、わたしは。
長門さんから支援要請が入ったのは事実です。なんでも涼宮ハルヒ率いるSOS団ご一行と佐々木団の面々が、偶然にもカラオケボックスの前で鉢合わせ。その場の勢いで対抗歌合戦のようなものが始まる中、歌唱にのめり込むあまり一時的なトランス状態に陥ってしまった涼宮ハルヒから、無自覚な情報改竄が検出され始めたそうで。


しかしながら、それは日常の範囲内で起こり得る出来事です。決して世界崩壊の危機などではなく、わたしの役割も周囲に要らぬ悪影響が及ばぬよう、情報統制とデータの計測を行うだけの事。
つまり、わたしはそれほど大慌てで現場に向かう必要など無かったのです。普通にエレベーターで階下に降って、普通に出掛けるだけでも十分だったでしょう。
だのに、わたしは宙を飛び降りた。それは例えるなら赤に変わりかけの信号に向かって乱暴にアクセルを踏み込むに等しい行為であり、わざわざ危険を呼び込むような真似をするというのは、穏健派としてあり得ない選択肢のはずなのですが。

 

(以前のわたしなら、これもエラーとしか判断できなかったかもしれませんね)


でも今のわたしには、この非論理的な衝動の原因が、何となく分かります。
確かに、わたしは課せられた任務をきちんと果たさなければなりません。しかしそれは、言わば建前です。本音のわたしは、会長のお傍から片時だって離れたくはなかったのです。たとえ、世界の全てを敵に回してでも。そして何より、会長にもわたしと同じ想いでいてほしかったのです。
でも現実には、会長はあっさりとわたしを手放してしまって。わたしはその事が、寂しくて切なくてたまらなかった。わたしもあの流しそうめん機のように、要らなくなればバザーに出されるような存在なのかもしれない、と。


馬鹿ですよね、会長はわたしのためを思って身を引いてくださったのに。わたしの心をさざめかせている衝動は、実に子供っぽく、自己中心的な考えです。こんな事を知ったら、会長はわたしを軽蔑なさるかもしれません。
それでもわたしは、嘘でもいいから「お前は俺の物だ」と主張してほしかった。力の限りこの身体を拘束し続けて貰いたかった。ついそんな風に思ってしまうわたしは、ワガママな女でしょうか。


「あなたの明察と配慮には、本当に感謝しています。でも、いささか物分かりが良すぎですよ、会長…」


少しだけ足を止めて振り返り、マンションの一室に向かってわたしが洩らした言葉は、当然ながら誰の耳に届く事も無く、街の雑踏に溶けて消えていきました。

 


 

 結局わたしが家路に就いたのは、朝日がとっくに昇ってからでした。涼宮ハルヒ、並びにその他のメンバーは昨晩中に全員帰宅していましたが、彼女が周囲に及ぼす影響に関しては経過を観察しなければならない面もあるので、どうしてもこの程度の所要時間は掛かってしまいます。
それでも下手をすれば数日を要する場合などもありますし、今回のケースは穏当に片付いた方でしょうね。諸々に関しての事後処理というのがわたしの本来の役割ですし、それなりのデータも取れましたから、その点で不服は無いのですけれど。
ただわたしは疲労感とは別に、足取りにどこか重い物を感じていました。


今はもうほとんど習慣的に身に付いた道程を通って、エレベーターを降り、いつの間にかたどり着いていた自宅玄関の扉の前。わたしはごくりとひとつ息を呑んで、それから手にした鍵を鍵穴に差し込み半回転させます。
ガチャリ、という金属質の音。そうして開かれた扉の向こうに――やっぱり会長の靴は在りはしませんでした。


いえ、別にガッカリなんてしてませんよ。むしろ当然ですよね。わたしがいつ帰るかも不明なのですし、昨晩に合鍵をお渡ししたのも、どうぞ今日はお引き取りくださいという意味合いだったのですから。
ええ、まかり間違っても会長が爽やかな笑顔で出迎えてくれるなんて、そんな恥ずかしすぎる幻想は最初から抱いていなかったんですわたしは。


「…はぁ」


それなのに、まるでドラマで見かけるくたびれたOLのように、わたしは嘆息していました。いいえ、『ように』ではなく、今のわたしはくたびれたOLそのものですね。


「どうして、よりによって会長が遊びに来てくださった日に…」

 

 思わず、愚痴がこぼれてしまいます。涼宮ハルヒを恨むわけではありませんが、それでもやはり自分の不遇さを嘆かずにはいられません。
なにしろ、今は夏休みなのです。世の学生たちには花の長期休暇であっても、わたしにとっては単にあの人との接点が失われる期間でしかありません。そんな中での限られた蜜月の時を、こんなにもあっさりドタキャンさせられるとは…。

 もちろんわたしたちは、逢おうと思えばいつでも逢えます。ですが大学受験を控えたこの時期に、会長の重荷になるような真似は、やはり控えねばならないでしょうし。ああ、ここでもまた本音と建前がわたしの心をさいなむのですね。


「出来るなら、ただわたしだけを見ていて貰いたい。でも会長にはわたしの事など気にも留めないほど、高みに向かってひたすら突き進んでほしい。
どっちも本心だというのが、乙女のつらい所です――」


って、なんだか疲れが脳にも来ているような。悲劇のヒロインを気取っている暇があったら、遅い朝食でも摂ってリフレッシュした方がマシですね。
パタパタとスリッパを鳴らしながら、わたしはキッチンへと向かいます。けれどもその途中で、わたしは「あらっ?」と声を上げました。


「これは…」


ダイニングテーブルの上に見つけたメモ用紙。そこには、こう記されていたのです。


『お役目ご苦労。
冷蔵庫に食事が入っている。早めに食べろ』


想定外の内容に少々驚きながら、ともかくわたしは冷蔵庫の扉を開けて中身を確認してみます。すると確かに、そこにはラップ掛けされた白いお皿が鎮座していました。


「ってコレ、冷やし中華じゃないですか。
かしこまって『食事』と書かれているから、一体何かと思えば」


要するに、それは昨日の流し中華の残りを盛り直しただけの代物だったのです。合理的と言えば合理的と言うか、会長らしいと言えば会長らしいと言うか…。
さすがに少しばかり呆れ果てながら、でもわたしはいつの間にか、くすっと小さな笑みをこぼしていました。料理と呼ぶには手抜きもいい所ですけれど、せっかくのお心遣いですものね。ありがたくご馳走になりましょうか。


冷蔵庫からお皿を取り出して、わたしはテーブルに着きました。ふうん、意外にもお店で出てくる冷やし中華のように、麺も具も丁寧に盛り込まれていますね。つゆも麺が延びないよう別にして添えてある辺り、気が利いているじゃないですか。
さて、では肝心のお味の方はいかがなものでしょう。いただきますと両手を合わせたわたしは、するすると麺をすすり上げました。
うん、全体にきりりと冷えていて、なかなか美味しいです。黒酢を効かせたつゆの酸味と甘さが、疲れた体に染み渡るようですね。確かにこれなら徹夜明けでもさっぱりと食べられ――


と、その時。ポタポタっとふたつの水滴が、お皿の中に落ちます。わずかにつゆの色を薄くしたそれは、他でもない、わたしの頬を伝って流れた涙の雫でした。
それを認識した途端、わたしの両の瞳から堰を切ったように、熱い涙が止めどなく溢れてきます。拭っても拭ってもそれは抑えきれず、わたしはいつしか、えぐえぐと肩を震わせていました。

 

 ええ、この冷やし中華は美味しいですよ。美味しいですけれど、でも。一人で食べてたら、味気なくてしょうがないじゃないですか。
特別な料理でなくてもいい。わたしはただ、あなたと同じテーブルで食事がしたかった。あなたのシニカルな冗談に眉をひそめたりして、他愛も無い会話を楽しみたかった。受験勉強に励むあなたに、冷たい麦茶を差し入れしてあげたかった。あなたがこの家を訪れてくれている時くらい、あなたの横顔を独占していたかった。熱帯夜に二人溶けてなくなってしまうほど、情熱的に愛して貰いたかった。


どれもこれも、仕方のない事だと思っていたのに。自虐気味な冗談まで口にしながら、諦めようと努力していたのに。あなたがこんな料理を、中途半端な優しさを残していくから…。わたしは、にっちもさっちも行かなくなってしまったじゃないですか!


「馬鹿――。会長の、馬鹿っ!」
「ん、呼んだか?」


………は?
顔を伏せて泣きはらしていたわたしは、雷にでも打たれたかのように、慌てて声のした方向へ向き直ります。はたして、そこには。網戸の向こう側のベランダには、トランクスに白のランニング姿で頭には鉢巻のようにタオルを巻いた、何と言うか田吾作ルックな会長が不思議そうな顔で突っ立っていたのです。


「妙だな。今、あいつの声が聞こえたような気がしたんだが…」


室内を見渡しながら首をひねっている会長の様子に、わたしは当初、何のおふざけだろうと訝しんでいましたが、すぐに「ああ」と合点しました。そういえばわたしは、昨晩からずっとステルスモードに移行したままでしたね。
さっそく解除解除♪ って、いえそうではなく――


「か、会長! どうしてそんな所に!?」
「おう。居たのか、江美里。なんだ、その涙は一体? 冷やし中華のカラシが効き過ぎたか?」
「あっ、これはその…ええハイそうなんですよ、うっかり錦糸卵と一緒にかき込んでしまって!」


驚きのまま声を張り上げてしまったわたしは、不注意にも自分が泣きはらしているのを忘れていた事に気付かされ、しどろもどろにそう答えていました。
幸い、会長は勝手に勘違いしてくれたようですが。それくらい、他の何事もまともに考えられないくらい、わたしは思いがけない会長の出現に完全に舞い上がっていたのです。
ああ、もう、会長…! 会長会長会長会長!


今度は嬉し涙さえにじむほど、それほどまでに幸福感でいっぱいのわたしの唇は、しかしなぜでしょう、逆に彼を問い詰めるようなセリフを発していました。


「それより会長、きちんとわたしの質問にお答えください!
どうしてそんな所にいらっしゃるんです? わたしはもう、てっきりお帰りになったものだとばかり…玄関に靴だって無かったのに…」


そう口にしてから、わたしは自分の内なる心情に気が付きました。会長の存在に安心した途端、「居るならもっと普通に出迎えてくれれば良いのに!」という拗ねたような不満が湧いて出てしまったのですね。
そんな大人気ないわたしの詰問を、しかしさすがは会長、あっさりと受け流します。


「お前は俺にヤケドをさせたいのか? 朝方とはいえ、炎天下のベランダに裸足で出ていられるわけが無いだろうが」
「いえ、ですからベランダで何を…しかも、そんなだらしない格好で…」


相変わらずこの人の答弁は自己中心的ですね。むしろ惚れ惚れしてしまう程です。そうしてさらに、会長は『質問に質問を返してはいけない』という大前提を完全無視した問い掛けを、わたしにぶつけてきました。


「江美里。お前、この部屋の掃除は自分でしているのか?」
「はい?」


またいきなり、何を言い出すかと思えば。当たり前でしょう! わたしがお掃除もしていない部屋に会長をお迎えするとでも思ってらしたんですか!?


「お前が綺麗好きなのは、俺も承知している。実際、見た所この部屋にはチリひとつ落ちてはいない。ほぼ完璧だ」


言いながら会長は、窓の桟を小姑のように指先でなぞります。が、もちろんひとかけらの埃だって付きはしません。まあ、当然ですよね。わたしの仕事に手抜かりなどあり得ませんから。


「ああ、パッと見た所は、な。だが江美里、敵はどうやらお前の目の行き届かない場所に潜んでいたようだぞ」


誇らしげに胸を張っていたわたしに、会長はそう告げて、ちょいちょいと人指し指の先で斜め上を示してみせます。そこに在るのは、備え付けの大型エアコンでした。


「そのエアコンが、何か…?」
「実は前々から、どうも冷房の効きが悪いような気がしていてな。それで試しにカバーを開けてみれば案の定、という訳だ。
江美里、お前エアコンのフィルターを掃除した事が無いだろう」
「え、エアコンのフィルター、ですか?」


少なからず驚いて、オウム返しに訊ねてしまうわたし。その正面で、会長はやれやれと首を左右に振っていました。


「やはり、フィルターの存在自体を知らなかったか。
さもあらん。お前たちの人間世界に於ける日常生活の経験値は、わずか4年間分しか無いのだからな。北高の教室にもエアコンの設備は無いし、これまでエアコンを掃除するという概念そのものが無かったんだろう」


的確な指摘に、わたしは黙って頷くばかりです。今日の今日まで家電製品というのは、スイッチを入れればテレビは映り、オーブンは料理を温め、エアコンは空調を整えるものだとばかり思っていました。
外面的に付着した埃などは掃除していても、カバーを開いて内面的なメンテナンスを行う必要など、考えた事さえ無かったのです。


「論より証拠だな。まずはその目で見てみるがいい」


くいっと会長にあご先で促されて、わたしも窓際に歩み寄ってみます。夏の日差しにギラギラと容赦なく照らされているベランダには、確かに水に濡れた小型の網戸のような物が壁に立て掛けられていました。
なるほど、会長はこのフィルターを水洗いなさっていたんですね。それであの格好の謎が解けまし………えっ?


「うくっ!?」


わたしは思わず、踏みつけられたカエルのように引きつった声を上げていました。会長の足元に置かれているバケツ。その中にはドブからすくってきたような、黒く濁った汚水がちゃぷちゃぷと揺れていたのです。


「ま、ま、まさか、これが…?」
「そのまさかだ。このエアコンの中に溜まりに溜まっていた、4年間分の埃だな」


そのドス黒さをとてもまともに見ていられず、わたしは片手で口元を抑えてしゃがみこんでしまいました。ううううう。み、認めたくありません、こんな…。

 若さ故の過ちなんてものじゃないですよ!男の人には分かりづらいかもしれませんが、自宅の汚れた部分を、それも恋しい人に見られるというのは、乙女にとって裸を見られる以上に恥ずかしい事なのです!

 ショックのあまり、またまた涙目で嗚咽を洩らしてしまうわたしを、さすがに哀れに思われたのでしょうか。会長はわたしの肩をポンと叩いて、優しい声を掛けてくださいました。


「まあ、知らなかった物は仕方があるまい。今日の事を教訓として、これからはせいぜい小まめに………あ?」


大海のように広いお心で、わたしの失態を慰めようとしてくれていた会長。ところが彼は言葉の途中で、不意にうつむいて何事か考え込まれます。


「いや、待てよ…。エアコンにあれだけ埃が溜まっていたとなれば、やはり…」
「あの、会長? どうかなさいましたか?」
「江美里、俺と一緒に来い」


乱暴にベランダへ靴を脱ぎ捨てた会長は、わたしの手を引いて、ドカドカと足音も荒々しく室内を進んで行きました。あら、でもその行き先は…お風呂場、ですよね。
やだ会長ったらもう、確かに昨晩はいい場面で中断されてしまいましたけど、でもこんな明るい内からいきなりだなんて、そんな☆


「何をブツブツ言っている。江美里、きちんと俺の質問に答えろ」
「へっ? あ、はい質問ですね何でしょう?
ちなみにわたしは会長がお望みなら、上でも下でもどちらでも」
「いや、いい。訊くまでもないな。その様子だとお前、コイツも洗った事は無いのだろう」


なぜだか眉をぴきぴきと引きつらせた会長が、そう言って片手でバンバン叩いたのは、脱衣所の横に設置してある洗濯機でした。えっ…。洗う? 洗濯機を?


「ああ。こういう一槽型の全自動洗濯機は、外槽の中で内槽を振動させて脱水等の作業を行うわけだが、実は外槽~内槽間の水の還流は意外と少ないそうでな」
「はあ…」
「つまりそこに残った水の中の――。
いや御託を並べるより、実際に見せてやった方が早いか。少し待っていろ。俺が話している事の意味を理解させてやる」


大上段からそう宣言するなり取って返し、ガチャガチャと工具箱を鳴らしながら戻ってきた会長は、あーでもないこーでもないと呟きつつ洗濯機のあちらのネジやこちらの金具を取り外し始めました。
わたしは『特に手伝うような事も無いから、さっさと冷やし中華の残りを片付けてしまえ』との事でリビングに追い返されてしまいましたが。一体あの人は、何を企んでいるのでしょうね?


とにもかくにも食事と洗い物を済ませて、おおよそ1時間ほどの後、わたしは再び脱衣所を訪ねてみました。会長は頭をほとんど洗濯機の中へ突っ込んで、いまだに何やら作業中です。
エアコンが清掃中で使えないために玉のように吹き出す汗で、肌に張り付いたランニングシャツがほとんど透けていますね。普段のクールで知的でカミソリみたいに鋭利な会長も格好良いですけれど、こうして汗と油にまみれてる会長も頼もしくって素敵…などと、わたしが彼の剥き出しの二の腕から背中に掛けての筋肉に見入っていると、突然。


「よし!」


という一声と共に、会長は洗濯機の中から何か円柱状の物体を取り出しました。


「さあ、見るがいい江美里! これがッ――」


見事、目的を果たした達成感からでしょうか。会長は雄叫びのような声を上げ、円柱状のそれをお風呂場に転がします。そして、それを目撃した途端。


「ひうっ…!?」


声にならない悲鳴が、勝手にわたしの口から洩れていました。白い外面を覆うように繁殖した、くすんだ黒。黒。絶望的なまでの黒。見るからにおぞましい、暗黒物質の塊が、そこには転がっていたのです。


「――洗剤カスを糧に水カビが繁殖した、洗濯槽の姿だ」
「そ、そ、そんな…。わたしはいつもこんな洗濯機で、お洗濯を!?」


あまりに残酷すぎる現実に、わたしは唇をわななかせる事しか出来ませんでした。
既に、恥ずかしいとかそういうレベルではありません。自分のお腹からエイリアンが飛び出してきたって、これほどまでの衝撃は受けないでしょう。くらくらっと、わたしの意識は今にも飛んでしまいそうでした。


「うぷっ! ダ、ダメですっ! わたしもう、こんなっ…」


甘い雰囲気など完全に吹っ飛び、ただ単に立ち続けている事さえ出来ず、わたしはとにかくこの場から逃げ出そうとします。が、しかし。わたしの反応を予測していたのか、いつの間にか背後に回り込んでいた会長の両腕が、がっちりと羽交い絞めにわたしを捕らえていたのです。


「は、放してください、会長! わたしはもう限界突破寸前です!」
「ええい、目を逸らすな江美里ッ! 逃げた所で何も状況は変わらんのだ、きちんと現実というものを直視しろ!」
「いやっ、いやあっ! 後生ですから堪忍してぇ~~~っ!!」


魂の底からのわたしの叫びが、お風呂場にむなしくこだまします。それはセミたちがしょわしょわ鳴いている、真夏の昼下がりの出来事でした。

 



「………それで?」


家庭用流しそうめん機という、ミニチュア版流れるプールのようなけったいな装置からすくい上げたそうめんをずぞぞぞぞ!とすすりつつ、わたしは江美里にそう応じていた。
まったく、『面白い機械を入手しましたので、お昼におそうめんでもいかがですか』などと言うので家に上げてみれば、また性懲りも無くノロケ話か。いいかげんあなたはワンパターンが過ぎると自省すべき。と、そう忠告した所で素直に悔い改めるような人物なら、わたしも苦労しないのだが。


「それでもこれでもありません。わたしが情報操作もままならないほど精神的ダメージを負っているというのに、会長はわたしを羽交い絞めに拘束して、嫌でもあの洗濯槽の惨状を見せつけようとするんですもの。
本当に、会長のサディストっぷりには閉口するばかりです。長門さんもそう思うでしょう?」


一見、同意を求めているような発言。しかし江美里のワンパターンを、わたしは完全に見切っていた。そう、次にあなたは『でも会長ったら』と言うッ!


「でも会長ったら『仕方のない奴だな』とか言って、結局わたしの代わりに洗濯槽を洗ってくださったんですよ。うふふ、なんだかんだでお優しいんですよねえ♪
エアコンが掃除中で使えないにも関わらず、汗だくになってまで作業してくださるんですもの。もちろんお世話になってばかりもいられませんから、お礼にその後お風呂場で、わたしで会長を洗ってさしあげましたけどね」


ほら、やっぱり。結局、江美里は彼氏自慢をしたいだけなのだ。この程度のトラップ、わたしに見抜けないとでも思ったか。
だが完全に予測通りの展開のハズなのに、激しくげんなりした気分になってしまっているのは何故だろう。いやそれよりも今、何か奇妙な発言があったような気が。


「………わたし“で”洗った?」
「はい、そうですよ」
「わたし“が”ではなく?」
「ええ、わたし“で”会長を洗ってさしあげました。
まあ長門さんには、ちょっとばかり難しい芸当かもしれませんけれど」


臆面もなく言ってのけて、江美里はやたら得意げに胸を反らせてみせた。くっ…少しばかり脂肪の蓄えがある程度で、偉そうに…。
一瞬、猛烈に情報連結を解除したい衝動に駆られるが、いけない、相手は喜緑江美里なのだ。うかつに手を出せばこちらが殺られる。0.14秒の逡巡の後、わたしは無理矢理に憤懣を抑え込んだ。


しかしこのままでは抑圧されたエラーの行き場が無いため、後々に重大な過失が発生する恐れがある。とりあえず応急処置として、わたしは古泉一樹の携帯の着信音を『光速電神アルベガス』に改変する事とした。
エラーの消散を確認。人間の概念で言うと、溜飲が下がった。これにより世界改変の確率が軽減したので、結果的に彼は宇宙の平和に貢献したと言えるだろう。古泉一樹としてもホモ、もとい本望のはず。


「ホモでも本望でもどちらでも良いですけど。それはそれとして」


と、そこで江美里はつゆの入った器と箸を置き、改まった様子で口を開いた。


「わたしが今日こうしてこの部屋を訪れたのは、他でもありません。長門さん、あなたエアコンのフィルターを掃除した事がありますか?」
「…………」
「では、洗濯機の内部を点検した事は?」
「…………」


沈黙を守るわたしの前で、江美里は深く溜息を吐いた。なに、その憐れみの眼差しは。


「確かに過去において、わたしはあなたの質問に該当する清掃活動を行った事は無い。しかしわたしの家に限って、問題は無いはず」
「そう思いたい気持ちはよく分かりますよ、長門さん。わたしも同様でした。
でも、甘く考えない方が身のためです。もしも会長が居なかったら、わたしはあの場で洗濯機、もしくはお風呂場そのものを情報連結解除していたでしょう。それくらい有無を言わせぬ威圧感があったのです、あの光景には――」
「…………」
「それでも自分一人で大丈夫だと仰るのなら、どうぞご自由に。
ただ、このお部屋にはSOS団の皆さんをお招きする事もあるのでしょうから、早めの対処をお願いしますね?」


そう言い含めて江美里は立ち上がり、この場を離れようとする。そんな彼女の手を、気付けばわたしは何故か握り引き止めていた。


「………対処法の、指示を」
「はい?」
「意地悪、しないで」


上目遣いでわたしがそう言うと、江美里は微笑みながらわたしの頭を撫ぜた。


「困った人ですね、あなたも。
では、こうしてはいかがでしょう。自分一人では対処しきれないのであれば、やはり後腐れが無く、それでいて責任感のある人物をこき使…いえ、頼るべきです。そう、たとえば――」


身を屈めた江美里は、わたしの耳元で小さくささやく。その内容に、わたしは少なからず双眸を見開いた。


「さすがは喜緑江美里。普通のヒューマノイドインターフェースでは思いも付かないような腹黒い企みを、平気で立案する。…別に痺れて憧れたりはしないけれど」
「うふふ、冗談が過ぎると本気でぶっ飛ばしますよ長門さん?」


冗談のつもりは全く無いが、ぶっ飛ばされてはかなわないので適当に頷いておく。ともかく、江美里の入れ知恵は事実として有効だろう。わたしは所有する携帯電話を取り出し、さっそく計画を実行に移す事とした。善は急げ。

 



…ふう、強烈な日差しで目が覚めてしまいました。今日も今日とて真夏日ですね。それでもこうして昼過ぎまで寝ていられたのですから、今が夏休みである事に僕は感謝するべきでしょう。
それにしても、昨夜の神人はなかなか手強かったですね。やはり涼宮さんとしても脅威を感じているのでしょうか、佐々木さんの存在には。


あの日、カラオケボックスの前で佐々木団の皆さんとお会いしたのは本当の本当に偶然だったようですが、それで逆に油断してしまいましたね。
まさか佐々木さんが皆の面前で、積極的に彼をデュエットに誘おうとは。さすがに僕も思いも寄りませんでした。しかも曲は『目を閉じておいでよ(バービーボーイズ)』。こんなあからさまな挑発もありません。…彼だけはやはり何も気付いていない様子でしたけど。


しかしながら涼宮さんの方は、とても平静ではいられなかったようで。だからこそあれほど、周囲の何物も目に入らなくなるほど一心に歌い込まれていたのでしょうね。
でも『情熱の薔薇(THE BLUE HEARTS)』を歌っている最中、室内の壁一面に本物のバラが次々と咲き始めたのには、久々に驚かされました。歌い終わった涼宮さんを彼が必死で褒めそやしている内に――いえ、涼宮さんの歌自体は事実お見事だったので、単なるお世辞では無かったでしょうけれど――バラは全部消えてくれたので、ホッとしましたが。一時はどうなる事かと思いましたよ。
けれどもこの一件で、かえって僕は確信を深めました。やはり涼宮さんの傍には彼の存在が必要だ、とね。


まあそういった点を除けば、なかなか楽しいカラオケだったように思います。朝比奈さんと藤原くんのド演歌合戦は、かなり聞き応えがありましたし。それにしても、あれはお二人の個人的な趣味だったのでしょうか? 未来の歌謡界というのも一体どうなっている事やら…知りたいような知りたくないような。
それでも、長門さんと周防さんが『淋しい熱帯魚(wink)』をダンスまで完璧に歌いこなしていたのに比べれば、まだ理解可能ですけれど。あの二人に関しては本当に…いえ、敢えて触れないでおきましょう…。


ああ、そういえば参加者はもう一人いましたっけ。橘さんは確か…『ふたりはお肉屋』でしたか? そのようなタイトルの曲を歌っていたと思いましたが、正直あまりよく憶えていません。
橘さん本人は『いま女の子に大人気の曲なんですよっ!』と必死に訴えていましたけど、涼宮さんも佐々木さんもご存知ないようでしたし…。まあ、別にどうでもいい事ですね。


それよりも気に掛かるのは、僕が『ス・ト・リ・ッ・パ・ー(沢田研二)』を歌ってから、彼が妙によそよそしくなった事でしょう。
やはり年齢的な違和感ですかね? 普段、僕をカラオケに誘ってくれるのは多丸さんたちが主なので、どうしてもレパートリーがそちらの年代に偏ってしまいます。現役高校生としては、最近のヒット曲等も押さえておくべきかもしれません。これは今後の課題ですね。ところで森さんの十八番が『ひと夏の経験(山口百恵)』なのにはツッコんではいけないのでしょうか、やっぱり。


そんなこんなで今回も綱渡り的様相ながら、特に大きな問題も無く切り抜けられたのですから、まあ良しとしておきましょう。ひょっとしたら今夜もまた、閉鎖空間が発生するかもしれませんが。それに備える意味でも、ふわぁ…もう一眠り………。


『ガーンガーンガーン! ガンガンガン! ガーンガーンガーン! ガンガンガン! 迫る悪魔のかーげだーっ♪』


うわあっ、何この電波ソング!?

 って、鳴ってるのは僕の携帯じゃないですか。間違っても僕はこんな着信音を設定した憶えはありません。じゃあ一体誰が?とそこまで進んだ所で、僕はそれ以上考えるのを止めました。
こんな真似が出来る人物は限られていますし、その人物が相手ならば逆らうだけ無駄です。それよりも今はまず、この電話に出なければ…って、メールですか。どれどれ?


『古泉一樹へ

 これは不幸のメール。あなたはわたしの指示に従うべき。
以前に指示に従わなかったR・Aさんは、有機情報連結を解除される事となった。あなたも不幸な目に遭いたくなければ、今すぐわたしの家に来て。

長門有希』


…………。
ええと。どこからどうツッコめば良いやら。あのですね長門さん、こういうチェーンメールは典礼的に自分の名前を名乗ったりはしない物なんですよー、とか考えてしまう僕は相当なお人好しなんですかねえとほほ。


いいですよ、行きましょう! 外は思いっきり容赦の無いカンカン照りですけど! まだ半分頭がボーッとしてますけど! このメールを受け取った時点で確かに僕は不幸ですし、これを無視したりすればさらに不幸になるのは確実でしょうから!
身支度もそこそこに、僕は家を出発しました。寝不足のせいでしょうか、見上げた太陽はやけに黒く輝いて見えました。




江美里の一番黒い夏   おわり

 

-放課後屋上放談につづく

 

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最終更新:2021年11月21日 22:13