コント『占い師』

 


 ・キャスト

  占い師:谷口

  客:キョン

 

 

 黒い暗幕で覆われた舞台の上に机と椅子を置き、水晶玉の台座を机上に置いた谷口。

 そこへ悄然とした様子のキョンが登場。

 


キョン「ここが良く当たるっていう噂の占い師の店か。占いなんてちょっと信じられないけど、しょうがない。入ってみよう」

 

 声をかけて占い師の店の中に入るキョン。

 

谷口「へい、らっしゃい!」

キョン「……やけに威勢のいい占い屋だな。こんにちは」

谷口「まあ、どうぞ。おかけください」

 

 谷口に椅子を勧められ、遠慮がちにその対面に座るキョン。

 

谷口「今日はどのようなご用件で?」

キョン「実は、俺の父親が1ヶ月前から行方不明なんです。警察にも捜索してもらってるんですが、なんの進展もなくて。それで、ワラにもすがる思いで、よく当たるって噂のここへ……。お願いします、俺の父が無事なのか、どこにいるのか占ってください!」

谷口「なるほど。それはお困りでしょう。少々お待ちください。早速、占ってみましょう」

 

 水晶玉に手をかざし、ブツブツと小声で呪文を唱える谷口。

 

谷口「……チチンプイプイヨーロピアン、サブマリンゲルマニウムオンセン……」

キョン「何だこの呪文。ゲルマニウム温泉とか言ってる気がするんだが。確かに呪文っぽいけどさ、ゲルマニウム」

谷口「見えました」

キョン「え、本当ですか!? それで、父は、父は今どこに!?」

谷口「近くに……アヒル……池で泳いでいる、白いアヒルの姿が見えます」

キョン「アヒル? そのアヒルの近くに父が? どこだろう、公園とかかな。もっと詳しい手がかりはないんですか?」

谷口「……子どもが……たくさんの子どもの姿が見えます。子どもたちの、歌声が聞こえます……」

キョン「アヒルのいる池のそばで、子どもの歌声? 幼稚園とか? その子どもたちは、どんな歌をうたっているんですか?」

谷口「よ~くかんがえよ~、お金は大事だよ~」

キョン「アフラックだ、それアフラックだよ! 保険のCMじゃないか! 古いな!」

谷口「いや、ちょうど昼ドラやってる時間だからね。チャンネル合わせたらCMだったんだ」

キョン「CMだった、じゃないですよ! 今仕事中なんでしょ? 昼ドラなんて観てないで、っていうか、その水晶玉テレビ!?」

谷口「まあまあ。落ち着いて。次はちゃんと占うから」

キョン「お願いしますよ、ホントに」

 

 

谷口「……チチンプイプイアジアンテイスト、ホッケアカガイサバサンマ……」

キョン「ホッケ、赤貝、鯖、秋刀魚って言ってる……」

谷口「……見えてきました。……棚に積まれたたくさんのジャガイモが見えます。その隣には、にんじんが……」

キョン「ジャガイモに、にんじん? もしかして、スーパーマーケット?」

谷口「食品店です。白い衛生服とマスクをつけた店員が、近くを通りかかりました……男性の店員です……」

キョン「まさか、その店員が父!?」

谷口「その店員は……特売のラベルを貼って行きました……。今日はジャガイモとにんじんが特売です」

キョン「は?」

谷口「……今日の晩ご飯はカレーにしようっと」

キョン「あんたの晩ご飯のメニューはどうでもいいよ! ひょっとしてスーパーの安売りを調べるために見てたんですか?」

谷口「当たり前じゃないか。特売品を手に入れようと思ったら、1分1秒を争うんだ。本当は仕事なんてしてる場合じゃないくらいだよ」

キョン「真面目に相談してるんだよ、こっちは! 父が蒸発して1ヶ月も経って家族全員、尋常じゃないくらい心配してるんだよ! ちゃんと占え!」

谷口「なんだお前! 客のくせに生意気な! 俺がカレー食べようがサーモンステーキ食べようが勝手だろ! 他人のプライベートに口出しするな!」

キョン「なんだよ客のくせにって。そんなのいつだって良いだろ!? ちゃんと仕事しろよ! こっちは切羽詰ってるんだよ!」

谷口「言うに事欠いていつだっていいとは何事だ! 後になって 『あの時ちゃんとカレー食べていれば、こんなことには……』 って後悔したくないだろう!」

キョン「カレー食べなかったからって何も起きねぇよ! どんな主張の仕方だよ!?」

谷口「カレーをバカにするな! インド人もビックリだよまったく! チ○コ小さいくせに。この仮性人め」

キョン「ちょ、見たこともないくせに何いって……関係ないだろそんなこと!」

谷口「そら親父も逃げるわ」

キョン「だから関係ないだろ! もういいから親父の居場所を占えよ!」

谷口「あれ」

キョン「なに。何だよその、いやらしい目つきは」

谷口「お前ひょっとして、マジ? マジで気づいてないの? ねえ、マジ?」

キョン「気づいてないって、何がだよ……」

谷口「おまえ、ここ来る途中で受け付け寄った?」

キョン「え? 行ったけど。そこでこの部屋に通されたんだから」

谷口「スルーしてきたの?」

キョン「だから何がだよ。言いたいことがあったらはっきり言えよ」

谷口「その受付にいたのがお前の親父」

キョン「親父ぃ!」

 

 

 キョンと谷口が一礼して舞台裏へ下がる。

 

 

 

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 コント『ゴージャス刑事』

 

 

 ・キャスト

  ゴージャス刑事:長門

  平刑事:古泉

 

 

 

 街角風の背景を配した舞台上に、警察官の服を着た古泉が登場。

 パトカーの無線で部下と連絡をとりあっている演技。

 

 

古泉「現場の状況はどうなっているんです? ……ああ、うん。なるほど。刃物を持った男が、女性店員を人質にとって立てこもっているのですね。で、犯人の要求は? ……離婚した妻と、よりを戻させろ? 困った犯人ですね」

 

 一度無線から耳を離し、遠くをみつめる演技。

 

古泉「それで、現場の人手は。不足してないか? ……本庁から腕利きの刑事がくる? そうですか、それは心強いですね。それで、いつ?……ああ、分かった。こっちへ来るんですね。では僕がまず事情を説明して、そっちへ行ってもらうようにします」

 

 無線を切る。

 

古泉「本庁から腕利きの刑事か。今回の事件は無事に解決できそうだな」

 

 古泉がパトカーの前で腕を組んでいると、舞台端からもう一台のパトカー(大道具)が現れる。

 

古泉「あ、来たようだな」

 

 古泉のパトカーの横で、新しく現れたパトカーが停止。

 扉が開き、中から金色のラメ入り衣装に身を包み首に毛皮のマフラーを巻いた長門が札束を持って登場。大げさな素振りで、ゆっくりとした動作でかけていたサングラスを外す。

 

古泉「何この人。めっちゃ派手な服装してるけど……パトカーから降りてきたって言うことは」

長門「ふぅ。シャバの空気はうまいな」

古泉「やっぱ違う、この人ちがうっぽい。なんか出所したての任侠みたい」

長門「さて。さっさと事件を解決するとするか」

古泉「でも刑事かも?」

長門「早く帰って……あれ食べて……お風呂入って……あれ食べて……歯みがいて……あれ食べて……」

古泉「ものすごい普通の人っぽい発言だけど、どれだけ食べる気だよ。歯みがいた後に何を食べる気なんだろう。あの、すいません。もしかして、あなたが本庁から来た刑事でしょうか?」

長門「そう。私が本庁から今回の事件を解決するよう派遣された、人呼んで、ゴージャス刑事」

古泉「……ゴージャスデカ…? すいません、本名の方は…?」

 

 古泉の鼻先を人差し指ではじく長門。

 

長門「同じ刑事といえど、プライベートなことにまで口を挟まないでくれたまえ。私はキミとステディーな関係になるわけではないのだから」

古泉「そういう意味で訊いたんじゃないんですけど……」

長門「ところでキミ、現場の状況はどうなっているんだね?」

古泉「あぁ、はい。30歳代の男性が包丁を持ち、コンビニに押し入って女性店員を人質に、なおも店内に立てこもっている模様です」

長門「なるほど。コンビニ強盗か」

古泉「いえ、強盗ではないんです。なんでも、妻に一方的に離婚をせまられたのが納得できず、妻とよりを戻させろと無茶苦茶な要求をしているんです」

長門「ふむ……」

 

 考え込むように腕を組んでうなる長門。

 

長門「で、いくら出せば犯人は納得するんだね?」

古泉「は?」

長門「は?じゃないよ。いくら金を出せば、犯人はこの件から手を引くのかと訊いているんだよ」

古泉「あ、いや、あの……。僕の話を聞いてました?」

長門「当たり前じゃないか。人の話を聞くのは刑事の仕事みたいなもの。バカにしてるのかねキミは」

古泉「いえバカにはしてませんよ。犯人は、別れを迫っている妻とよりを戻すことを要求してるんです。今のところ金銭の要求はありませんが」

長門「この平刑事!」

 

 持っていた札束でパシパシ古泉の頬をたたく長門。

 

古泉「いた! な、なに、何なんですかあなた!?」

長門「金銭を要求せずに事件を起こす犯人がどこの世界にいるんだ! 金だろ、金! 金を要求してこその事件じゃないか!」

古泉「や、やめ……! 札束を鼻先に突きつけるのはやめてください! 何なんですか、その偏った価値観。あなた本当に刑事ですか!?」

長門「当たり前じゃないか。この通り、警察手帳もある」

古泉「とにかく、犯人は金銭の要求はしてないんですよ。別れた妻をつれてこいと言ってるんですから」

長門「妻を連れてくるより、金を出した方が早いし確実じゃないか」

古泉「なんでそんなに金を出すことにこだわってるんですか。今の犯人に金なんか出したら、適当にあしらわれたと思って逆上して、どんな行動に出るか分かりませんよ?」

長門「そりゃ妻にも捨てられるわ!」

古泉「ちょ、なに笑ってるんですか!? いや、まあ、正直言うとその通りですけど、そうじゃないでしょ。人質の命がかかってるんですから。真面目に考えてくださいよ」

長門「じゃあこうしよう。妻に金を渡そう」

古泉「だから何でそんなに金を払いたがるんですか、あなたは! 奥さんを説得して、ここに来てもらって、話をしてもらったらいいじゃないですか。犯人はそれを要求しているんですから。そうすれば冷静になって人質を解放するかもしれませんし」
長門「手切れ金だって言って、妻に金を渡したいじゃないか」

古泉「なんでそうやって犯人の意向を無視した方向にばかり話を進めるんですか!? あなた事件を解決する気があるんですか? て言うか最後の方ちょっと、あなた個人の願望みたいになってましたよ」

長門「仕方ない。キミがそこまで言うなら、犯人の妻をここへ呼ぶよう手配しよう」

古泉「ものすごい引っかかる言い方だなぁ。まあいいけど」

長門「でも、せめて交通費くらいは私に払わせてくれよ」

古泉「パトカーで連れてくるんですよ、緊急車両で。バスとか電車を使うわけじゃないんですから。交通費くらい経費で出ますよ」

長門「じゃあ私は一体なにに対して金を払えばいいんだ!?」

古泉「いいんですよ、ポケットマネー出さなくても! あなたはただ犯人の妻と一緒に、犯人を説得するだけでいいんです!」

長門「それじゃ、うん。なら、こうしようじゃないか」

古泉「なんですか」

長門「キミの給料を払わせてくれ」

古泉「もうええわ」

 

 

 一礼して退場


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