以下、発言と発言者の情報を主として報告します。
 なお、以下に登場する朝比奈みくるは、現時間平面に常駐している朝比奈みくるとは異なる時間平面に所属している異時間同位体であることを申し添えます。
 
 
 
 (鶴屋がお茶を飲み干す)
 
(鶴屋)「ぷはぁー。みくるん、だいぶ腕をあげたね」
(朝比奈みくる)「あれから年はとりましたから」
(鶴屋)「まだまだ若いじゃないか、みくるんは。まだ、高校生でも通用するにょろよ。そんなこといっちゃ、世の爺さん、婆さんから怒られるにょろ」
 
 (森園生が茶菓子を配膳)
 
(鶴屋)「ありがとさん。悪いね、森さん。『機関』前線即応部隊指揮官殿にメイドさんなんかさせちゃってさ」
(森園生)「いえいえ。普段から練習を欠かすわけには参りませんので」
(鶴屋)「そうだね。ハルにゃんは、勘が鋭いからね。不自然なところがあっちゃいけない」
(森園生)「精進いたします」
(鶴屋)「しかし、えみりんの趣味が、有希っ子と同じだったなんて、意外だね」
(喜緑江美里)「この本という情報媒体は、非常に興味深いものですので」
(鶴屋)「へぇ、そうなのかい。しかし、こうしてみると、SOS団がもう一つできたみたいだね」
(森園生)「役者が一人足りませんが」
(鶴屋)「ハッハハハ。まさにそのとおりさ。キョンくんの代役は誰にも務まらないってことだね。それは、佐々木団の方でも同じみたいだけどさ。神様は、ハルにゃんや佐々木さんじゃなくて、キョンくんかもしんないよ」
 
(森園生)「ところで、お嬢様。そろそろ、このたびの召集の目的について、お聞かせ願えますでしょうか」
(鶴屋)「目的も何も、前に言ったとおりだよ。みんなで仲良く静養でもしようってわけさ。まあ、お三方がこの機会をどう利用しようと、あたしが関知するところじゃないけどね」
 
 (鶴屋が茶菓子をほおばる)
 
(森園生)「情報統合思念体の佐々木さんに関する見解は?」
(喜緑江美里)「情報統合思念体の中でも、意見が割れてます。涼宮さんのときほど、まとまってはいません。結局のところは、天蓋領域の出方次第でしょうね」
(森園生)「天蓋領域?」
(喜緑江美里)「前まで広域帯宇宙存在と呼称していたものに暫定的につけられた固有名詞です」
(森園生)「その天蓋領域の目的は?」
(喜緑江美里)「不明です。情報統合思念体の全力をもってしても、天蓋領域の思考プロセスの解析には成功していません。あの九曜さんという端末もあんなですから、コミュニケーションに困っているというのが現状ですね」
(森園生)「どう出てくるか分からないということですね?」
(喜緑江美里)「はい。未来の情報なら、朝比奈さんの方がお詳しいのではありませんか?」
(朝比奈みくる)「お話しできることは多くはありません。詳細で正確な予言は必ず外れるというのが、私たちの基本的な常識です。余計なことを話して、規定事項に影響があるといけませんから」
(森園生)「それは、どういうことです?」
(喜緑江美里)「予言を知った者は、それに合わせて言動を変化させます。その結果として、予言どおりの出来事は起きなくなる。そういうことでしょう?」
(朝比奈みくる)「そのとおりです。予言の自己成就が成立するのは極めて稀な条件がそろった場合に限られます」
 
(森園生)「では、あなたがたの佐々木さんに関する見解は?」
(朝比奈みくる)「イレギュラー要素たりうる存在といったところです。涼宮さん、キョンくんに加えて彼女。さらに、藤原くんたちの介入もあります。
その結果として、規定事項からの乖離可能性がこの時間平面以降は急上昇しています。私たちの時間工作は、これからが本番といったところですね」
(森園生)「時間工作ね。あなたの誘拐事件のときのように『機関』を操り人形にするのはやめてほしいのだけれども」
(朝比奈みくる)「確約はできません」
 
(鶴屋)「二人とも、そんな怖い顔してると、美人が台無しにょろ。あたしからも、一点確認したいことがあるんだけどね」
(森園生)「なんでございましょうか?」
(鶴屋)「お三方とも、目的は違えど、ハルにゃんとキョンくんの保護には全力を尽くす。これには間違いないかい?」
(森園生)「はい」
(朝比奈みくる)「それはもちろんです」
(喜緑江美里)「現状に変化がない限りは」
(鶴屋)「えみりん、それは聞き捨てならないね」
(喜緑江美里)「穏健派は現状維持を望んでますが、急進派がどう動くか分かりませんし、主流派が考えを変えないとも限りません」
(鶴屋)「穏健派に踏ん張ってほしいところだね」
(喜緑江美里)「上の方のことは、私個人ではどうしようもありません」
 
(鶴屋)「みくるん」
(朝比奈みくる)「はい?」
(鶴屋)「これから何が起こるのか、どうしても教えてはもらえないのかい?」
(朝比奈みくる)「駄目です。特にあなたが未来の情報を知ることは大変危険です。御自覚がないようなのでいっておきますが、イレギュラー要素という点では、鶴屋さんもそうなのですよ。御自重していただかなければ困ります」
(鶴屋)「分かってるさ。おやっさんからもきつく言われてるしね。あたいは、いつもどおり、傍観者を決め込むさ」
(朝比奈みくる)「そうしていただけると助かります」
 
 
 
 以上、鶴屋家別荘における会談内容の報告を終了します。
 20××年4月×日 パーソナルネーム喜緑江美里。

 

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最終更新:2020年09月08日 01:11